I  基本的考え方

I -1 金融サービス仲介業者の検査・監督に関する基本的考え方

  • (1)情報通信技術の発展により、オンラインで円滑に金融サービスを提供することが可能となっている。金融サービス仲介業は、こうした金融を取り巻く環境が変化する中、利用者が様々な金融サービスの中から自身により適したものを選択しやすくすること等を実現する観点から、1つの登録で銀行業・金融商品取引業・保険業・貸金業全ての分野の金融サービスの仲介が可能であり、特定の金融機関への所属を求めずに複数の金融機関と連携・協働しやすい新たな業種として創設されたものである。
     こうした制度趣旨の下、金融サービス仲介業者には、複数業種かつ多数の金融機関が提供する多種多様な金融サービスをワンストップで提供し、顧客の多種多様なニーズに横断的に対応する金融サービスの仲介者としての重要な役割が求められている。
     金融サービス仲介業者の監督の目的は、こうした金融サービス仲介業を行う者の業務の健全かつ適切な運営を確保し、金融サービスの提供を受ける顧客の利便の向上及び保護を図り、もって国民経済の健全な発展に資することにある。

  • (2)金融庁としては、発足当初より、明確なルールに基づく透明かつ公正な行政を確立することを基本としている。このため、監督をはじめ検査・監視を含む各分野において、行政の効率性・実効性の向上を図り、更なるルールの明確化や行政手続面での整備等を行うこととしている。

  • (3)行政の透明性や公正性は、今後も行政運営の基本である。しかしながら、ルールを明確化しようとするばかり過度に詳細なチェックリスト等を策定し、問題の根本原因やこれが広がりをもって他の問題として生じる可能性を踏まえた実質的な検証等を行うことなく、網羅的な検証項目に基づいた事後的かつ一律の検証を機械的に反復・継続するに止まれば、かえって、金融サービス仲介業者において、経営全体や問題の根本原因を踏まえた真に重要な課題の把握、再発防止に向けた根本原因の解決、将来に向けた早め早めの対応、より良い実務に向けた創意工夫の発揮が進まない等の弊害を惹起しかねない。
     金融庁としては、各金融サービス仲介業者の規模・特性やコンプライアンス等に係る重大な問題が発生する蓋然性等に応じて、金融サービス仲介業者の検査を行う担当課室、財務局(福岡財務支局及び沖縄総合事務局を含む。以下同じ。)及び証券取引等監視委員会等(以下「検査部局」という。)とも連携しながら、実態把握や対話等によるオン・オフ一体のモニタリングを継続的に行い、必要に応じて監督上の措置を発動すること等により、重大な問題の発生を事前に予防し、併せて、必要に応じて、対話等を通じ金融サービス仲介業者によるより良い実務に向けた様々な取組みを促していく。
    (参考)「金融検査・監督の考え方と進め方(検査・監督基本方針)」(平成30年6月29日)

  • (4)金融サービス仲介業者の監督に携わる職員は、(1)から(3)の基本的考え方を踏まえつつ、業務遂行に当たって、以下の事項を行動規範とし、監督行政の信認の確保に努めることとする。

    • マル1国民からの負託と職務倫理の保持
       自らの業務が国民から負託された職責に基づくものであって、その遂行に当たってはI-1(1)における金融サービス仲介業者の監督の目的を最優先の課題として行う必要があることを意識するとともに、職務に係る倫理の保持に努め、金融行政に対する国民の信頼を確保することを目指す。

    • マル2綱紀・品位、秘密の保持
       金融行政の遂行に当たり、綱紀・品位及び秘密の保持を徹底し、穏健冷静な態度で臨む。

    • マル3大局的かつ中長期的な視点
       金融サービスを利用する国民や企業の目線に立って、局所的・短期的な問題設定・解決のみに甘んじるのではなく、根本原因を把握し、大局的かつ中長期的な視点から、早め早めに問題解決に取り組む。

    • マル4公正性・公平性
       法令等に基づく適正な手続に則り、各金融サービス仲介業者の状況を踏まえて、公正・公平に業務を遂行する。また、国内の金融サービス仲介業者と、日本において営業を行っている外国法人又はその子会社である金融サービス仲介業者との間で、法令等に基づく合理的な理由なく、異なる取扱いを行わない。

    • マル5金融サービス仲介業者の自主的努力の尊重
       I-1(1)における監督の目的を達成するためには、金融サービス仲介業者による自主的な取組みと創意工夫が不可欠であることを自覚し、私企業である金融サービス仲介業者の業務の運営についての自主的な努力を尊重するよう配慮する。

    • マル6自己研鑽
       諸外国を含む金融に関する法令・諸規制や金融サービス仲介業者の動向等のほか、金融という経済インフラを取り巻く幅広い社会・経済事象について、基本的知見を養う。また、対話等を行う自らの業務遂行に当たっては、各金融サービス仲介業者固有の実情に係る深い知見はもとより、経営分析、ガバナンス、リスク管理等課題に応じた高い専門性に基づいた分析等が必要であり、これらの能力の習得に向けた自己研鑽に日々努める。

    • マル7適切かつ密接な組織内外の関係者との連携
       実効性の高い監督を実現するためには、自らの所管に限らない広い視野が重要であり、庁内外の様々な主体と適切かつ密接に連携する。

I -2 金融サービス仲介業者向け監督指針の位置付け

I -2 -1 本監督指針策定の趣旨

 金融サービス仲介業者が顧客の多種多様なニーズにワンストップで横断的に対応するとの重要な役割を適切に果たしていく上では、金融サービス仲介業者が自ら主体的に創意工夫を発揮し、ベストプラクティスを目指して顧客本位の良質なサービスの提供を競い合い、より良い取組みを行うことにより国民からの信頼を得ることが望ましいことに加え、金融行政として、健全なイノベーションを促進するとともに顧客保護も図るという観点から、適切な制度設計と併せて、金融サービス仲介業者が顧客保護や適切なリスク管理などを意識したガバナンスを強化するよう適切に動機付けていくことが必要となる。
 この点、金融サービス仲介業者においては、1つの登録で銀行業・金融商品取引業・保険業・貸金業全ての分野の金融サービスの仲介が可能であることから、その取り扱う金融サービスの分野に応じ、過不足なく必要な監督上の対応を的確に行うことが求められる。
 このような趣旨に基づき、日常の監督事務を適切に遂行するため、既存の業態別監督指針の内容も踏まえ、金融サービス仲介業者の監督に必要と考えられる項目等を整理し、金融サービス仲介業者に対し、包括的かつ横断的に、監督の考え方や監督上の着眼点と留意点、具体的な監督手法等を整備することとした。
 

I -2 -2 本監督指針の位置付け

  • (1) 本監督指針は、金融サービス仲介業者の検査・監督を担う職員向けの手引書として、検査・監督に関する基本的考え方、事務処理上の留意点、監督上の評価項目等を体系的に整理したものである。

  • (2) 金融庁は、検査・監督に関する方針として、本監督指針のほかに、分野別の「考え方と進め方」や各種原則(プリンシプル)、年度単位の方針、業界団体等への要請等の様々な文書を示しているが、検査・監督を行うに当たっては、各文書の趣旨・目的を踏まえた用い方をするとともに、金融サービス仲介業者に対し当該趣旨を丁寧に説明することとする。

  • (3) 財務局は、本監督指針に基づき金融サービス仲介業者の検査・監督事務を実施するものとし、金融庁担当課室にあっても同様の扱いとする。
     その際、本監督指針が、金融サービス仲介業者の自主的な努力を尊重しつつ、その業務の健全かつ適切な運営を確保することを目的とするものであり、金融サービス仲介業者の実態を十分に踏まえて様々なケース(例えば、個人で金融サービス仲介業務を行うケースや法人ではあるが規模が小さく内部監査機能を独立した部門等として組織することが難しいケース、取締役会や社外取締役を設置していないケース等)に対応できるように作成したものであって、本監督指針に記載されている監督上の評価項目の全てを各々の金融サービス仲介業者に一律に求めているものではないことに留意する必要がある。
     本監督指針の運用に当たっては、各評価項目の字義通りの対応が行われていない場合であっても、公益又は利用者保護等の観点から問題のない限り、不適切とするものではないことに留意し、各金融サービス仲介業者の個別の状況等を十分踏まえ、機械的・画一的な取扱いとならないよう配慮する必要がある。一方、評価項目に係る機能が形式的に具備されていたとしても、公益又は利用者保護等の観点からは必ずしも十分とは言えない場合もあることに留意する必要がある。

I -3 本監督指針の構成

 本監督指針は、多様な金融サービス仲介業者の監督に利用可能な包括的・横断的なもので、かつ、重複する記述を少なくするという意図で策定されている。
 そのため、「I  基本的考え方」、「II  金融サービス仲介業者の検査・監督に係る事務処理上の留意点」は、基本的には金融サービス仲介業者に共通する留意事項等を念頭においた記述になっている。
   また、それに続く「III  監督上の評価項目と諸手続(共通編)」及び「IV  保証金・金融サービス仲介業者賠償責任保険契約」には、金融サービス仲介業者に共通する監督上の留意事項等並びに保証金及び金融サービス仲介業者賠償責任保険契約の手続等を記し、続く「V」から「VIII」までの部分では、各業務種別(預金等媒介業務、保険媒介業務、有価証券等仲介業務、貸金業貸付媒介業務)に特有の、追加的な留意事項等について記している。
 したがって、これら金融サービス仲介業者を監督する者は、まずは「III  監督上の評価項目と諸手続(共通編)」及び「IV  保証金・金融サービス仲介業者賠償責任保険契約」を参照するとともに、対象となる業者の業務の種別に応じ、その業者に特有の留意事項が記されている「V」から「VIII」までの部分を参照することとする。

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