職員への年頭訓示をする竹中大臣

 奥山日本公認会計士協会会長より伊藤副大臣に「引当に関するDCF的手法の監査上の留意事項の公開草案」等について報告


目 次

【トピックス】

 ○

預金保険法及び金融機関等の更生手続の特例等に関する法律の一部改正について

 ○

金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法について

 ○

「証券市場の改革促進」について(金融審議会第一部会報告)

 ○

公認会計士試験制度の改正について

 ○

新しい証券税制について

 ○

金融再生プログラムの進捗状況について

 ○

生命保険のセーフティネットの再構築について

 ○

米国の企業会計改革法への対応について

【金融ここが聞きたい!】

 Q:

今年の経済の見通しはどうですか?

 Q:

大手行に様々な経営改革の動きが出てきていますが、これをどのように見たらいいでしょうか?

【金融便利帳】

 ○

今月のキーワード:ペイオフ

【竹中大臣に質問!】

【お知らせ】

【12月の主な報道発表等】



【トピックス】
 

 「預金保険法及び金融機関等の更生手続の特例等に関する法律の一部を改正する法律」が昨年12月11日、第155回国会において成立し、本年4月1日から施行されます。
 以下、この法改正の概要についてご説明いたします。

I

.平成16年度には不良債権問題を終結させるとの政策強化を行う中、ペイオフについては決済機能の安定確保のための制度面での手当てを行い、解禁の準備を整えるが、その実施は金融システムの安定確保の観点から、不良債権問題の終結した後の平成17年4月からとされました。したがって、平成15年4月1日から平成17年3月31日までの間、現在と同様、流動性預金(当座預金、普通預金、別段預金)が全額保護されることとなりました。
 

 (注

)ペイオフについては、アクセスFSA本号の【金融便利帳】(今月のキーワード:ペイオフ)をご覧ください。
 
 
 (※1) このほか、納税準備預金、掛金、預金保険の対象預金を用いた積立・財形貯蓄商品が該当します。
 (※2) 決済用預金といいます。「無利息、要求払い、決済サービスを提供できること」という3条件を満たすものです。
 (※3) 定期積金の給付補てん金、金銭信託における収益の分配等も利息と同様保護されます。

II

.また、この改正は、金融機関の破綻時においても決済を円滑かつ確実に完了することを可能とする措置を講ずることにより、決済機能の安定確保を図ることを目的としています。
 具体的には、金融機関破綻時に全額保護される預金(決済用預金)の要件等を定め、それを保護する措置を講ずるとともに、仕掛かり中の決済の結了を可能とするため、預金保険法等の一部を改正することとなったものです。


 預金保険法の目的について
 旧預金保険法では、「預金者等の保護」を図ることを目的としておりましたが、更に「破綻金融機関に係る資金決済の確保」を加えることとなりました。


 決済用預金について
 次の3要件を満たす預金については「決済用預金」とし、各金融機関は営業年度毎に当該預金に係る保険料を納め、破綻時には預金保険機構がその全額に相当する額の保険金を支払うこととなりました(決済用預金の全額保護)。
 
その契約又は取引慣行に基づき為替取引等に用いることができるものであること(通常必要な決済サービスを提供できること)。
その預金者がその払戻しをいつでも請求することができるものであること(要求払いであること)。
利息が付されていないものであること。


 仕掛かり中の決済の履行確保
 
(1) 仕掛かり中の決済資金の保護
 金融機関が破綻前に依頼を受けた振込など(仕掛かり中の決済)に係る債務等については、決済用預金に係る債務等とみなし全額保護することとなりました。
(2) 仕掛かり中の決済の結了のための資金の貸付け
 預金保険機構は、仕掛かり中の決済の結了のため必要があると認めるときは、必要な資金を破綻金融機関に対して貸し付けることができることとなりました。
 
(注 )預金保険機構がこの貸付けを決定した場合には、裁判所は管財人等の申立てにより決済の結了のための破綻金融機関による債務の履行を許可することができることとなりました。
(3) 破産法等の特例
 金融機関間の決済システムにおいて仕掛かり中の決済を結了することができるよう、倒産手続における相殺の禁止等の例外として、預金保険機構が上記(2)の貸付けをしたときは相殺による清算ができることとなりました。


 その他
 金融機関においては、破綻した場合に決済用預金の円滑な払戻し等を確保するための措置を講じなければならないこととなりました。
 




 「預金保険法及び金融機関等の更生手続の特例等に関する法律の一部を改正する法律」について、もっと詳しくお知りになりたい方は、金融庁ホームページの「国会提出法案」の「第155回国会における金融庁関連法律案」の中からご覧になれます。
 また、今回の法改正によって整備された新しい預金保険制度について、金融庁ホームページの「新しい預金保険制度について」にも掲載しております。


 「金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法」が、昨年12月11日、第155回国会において成立しました。
 以下、本法律の概要についてご説明いたします。

 I.法律の目的 

 我が国の金融機関が、その金融仲介機能・決済機能を十全に発揮し、厳しい経済情勢におかれている地域経済の活性化に貢献するためには、個々の金融機関の経営基盤を一層強化することが必要です。
 合併等の組織再編成は、経営基盤強化のための有力な一手段ですが、これらの金融機関が合併等の組織再編成を選択する場合、各種手続や自己資本比率の低下、預金保険限度額を意識した急激な預金分散への懸念といった様々な障壁があることを踏まえ、本法において、金融機関が自主的な経営判断により行う合併等を円滑化するため、手続の簡素化や資本増強等、このような障壁を除去するための特別措置を手当てしたものです。

 II.法律の内容 
 
.概要
 金融機関等(注1)が合併等の組織再編成(合併、会社分割、持株会社化、営業・事業譲渡、株式の発行等を通じた子会社化・関連会社化)を行う場合、「組織再編成」と「改革方針の策定」により収益性の相当程度の向上を図ることを内容とする「経営基盤強化」に関する計画を提出し、主務大臣の認定を受けることにより、組織再編成にかかる手続の簡素化、預金保険機構(以下「機構」という。)による資本増強等の特例措置を受けることができるほか、広く合併等を円滑化する観点から計画提出・認定を要件としない特別措置として、預金保険限度額の経過措置、合併等の総会手続の特例、債権者異議の手続の特例を設けています。
 

 (注1

)本法での金融機関等とは、銀行、長期信用銀行、信用金庫、信用協同組合、労働金庫、信用金庫連合会、信用協同組合連合会、労働金庫連合会、農林中央金庫、信用農業協同組合連合会、信用漁業協同組合連合会、信用水産加工業協同組合連合会、銀行持株会社、長期信用銀行持株会社をいいます。


.経営基盤強化計画
 金融機関等は、5年を超えない期間を対象とした、収益性の向上の程度、組織再編成の内容と実施時期、改革方針(注2)の内容等を記載した経営基盤強化に関する計画(以下「経営基盤強化計画」という。)を主務大臣に提出し、その認定を受けることができます。

 (注2

)本法での改革方針とは、(1)収益性の高い分野への特化又は参入(収益力の強化)、(2)業務の合理化又は業務の提供方法の改善(既存業務の見直し)、(3)業務のための必要度が低い資産又は収益性の低い資産の処分(不稼動資産の整理)のいずれかの方針をいいます。


 主務大臣は、経営基盤強化計画が(1)計画の実施により、当該金融機関の業務の効率の向上が図られ、その収益性が相当程度向上すること、(2)計画が円滑に実施されること、(3)当該金融機関が業務を行っている地域の金融の円滑が阻害されないこと、等に適合すると認めるときはその認定を行い、認定を行った経営基盤強化計画(以下「認定経営基盤強化計画」という。)を公表するものとしています。
 また、金融機関等が経営基盤強化計画において機構による優先株式等の引受け又は劣後特約付金銭消費貸借による貸付け(以下「優先株式等の引受け等」という。)を求める場合は、上記に加え、組織再編成金融機関等の自己資本の充実の状況に照らし組織再編成の実施のために必要な範囲を超えないことその他の基準に適合すると認める場合に認定をすることとしています。
 金融機関等は認定経営基盤強化計画の履行状況について報告を行うこととし、主務大臣はその履行状況に照らして必要があると認めるときは、計画を提出した金融機関等に対し、報告又は資料の提出その他監督上必要な措置を命ずることができることとしています。


.経営基盤強化計画の認定を受けた金融機関等に係る特別措置
 経営基盤強化計画が認定された場合、手続面の特例として(1)根抵当権の譲渡手続に係る特例、(2)優先出資の発行口数に係る特例(協同組織金融機関について適用)、(3)一定の持分について消却に係る特例(信用金庫若しくは信用金庫連合会又は労働金庫若しくは労働金庫連合会について適用)の適用を受けることができます。


.組織再編成を行う金融機関等に対する資本増強に関する特別措置
 
(1)  資本増強
 合併等により相対的に高い自己資本比率を有する金融機関の同比率が低下することが合併等の支障になり得ることから、本法では、当該自己資本比率を回復するため優先株式等の引受け等による資本増強措置を用意しています(前述)。優先株式等の引受け等は機構の委託を受けて協定銀行(整理回収機構)により行われます。
(2)  協同組織中央金融機関を通じた資本増強
 全国を地区とする信用金庫連合会、信用協同組合連合会、労働金庫連合会(以下、「中央機関」という。)は、従来から業界内での相互支援制度の下で資本増強を行う制度を有しており、これを補完することにより傘下の金融機関の合併等を支援することは効率性の観点から優れていると考えられるため、中央機関を活用した資本増強スキームを盛り込むこととしました。
 具体的には、中央機関が傘下の金融機関から経営基盤強化計画とともに資本増強の申請を受け優先出資の引受け又は劣後ローンの供与を行った場合には、当該優先出資・劣後ローンを信託財産等とする信託受益権等(注3)の協定銀行(整理回収機構)を通じた買取りを機構に対し求めることができるものとし、その際、主務大臣は、中央機関による傘下の金融機関の経営基盤強化に対する適切な指導を確保するため、「経営基盤強化指導計画」の提出を求めることとしています。
 また、中央機関による傘下の金融機関の経営に対する適切な指導を確保するため、主務大臣は、中央機関に対し、経営基盤強化指導計画の履行状況に関し参考となるべき報告又は資料の提出その他監督上必要な措置を命ずることができることとしています。
 

  (注3

)信託受益権等とは、中央機関が経営基盤強化計画に従い取得した優先出資等のみを(1)信託する信託の受益権、(2)当該取得優先出資等を特定資産とする資産の流動化に関する法律に規定する優先出資、又は(3)特定社債、をいいます。


.その他の組織再編成の促進のための特別措置
 
(1)  預金保険等の保険金の額の特例
 近隣の金融機関に預金を分散している預金者等は、合併等により預金保険限度額が合計1,000万円となることを意識して、当該金融機関の経営状況にかかわらず、再び預金分散を行うことが考えられ、このことが、合併等にとっての障壁になり得るとの指摘があります。こうした点を踏まえ、執行面も考慮することにより、合併又は営業(事業)の全部譲受けを行った金融機関について、これらの組織再編後1年間に限り、
 
(1)  保険事故が発生した日前1年以内に行われた直近の組織再編成が合併である場合
 当該直近の合併を行った金融機関等の数×1,000万円
(2)  保険事故が発生した日前1年以内に行われた直近の組織再編成が営業(事業)の全部譲受けである場合
 当該直近の営業(事業)の全部譲渡を行った金融機関の数に1を加えた数×1,000万円
を保険基準額とする特例を認めることとしています。
(2)  合併等における総会手続等の特例
 合併により消滅する協同組織金融機関の総会員(総組合員)の数が、合併後存続する金融機関の総会員数(総組合員数)の20分の1を超えない場合であって、かつ、合併により消滅する金融機関の最終の貸借対照表により現存する総資産額が、存続金融機関の最終の貸借対照表により現存する総資産額の20分の1を超えない場合は、存続金融機関の合併について総会の議決を要しないこととするほか、所要の規定を設けています(営業、事業又は信用事業の全部又は一部の譲受けの場合も同様の規定を設けています。)。
(3)  合併等における債権者の異議の手続の特例
 
(1)  信用金庫、信用金庫連合会、信用協同組合、信用協同組合連合会、労働金庫、労働金庫連合会が合併する場合において、合併を行う側が債権者に対する異議の申出に関する公告を官報のほか、公告をする方法として定款に定めた時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載してするときは、知れたる債権者に対する各別の催告は必要ないこととしています。
(2)  銀行、長期信用銀行、信用金庫、信用協同組合、労働金庫、信用金庫連合会、信用協同組合連合会、労働金庫連合会、農林中央金庫、信用農業協同組合連合会、信用漁業協同組合連合会、信用水産加工業協同組合連合会が営業、事業又は信用事業の全部の譲渡又は譲受けを行う場合においても、上記(1)と同様としています。


.施行等
 この法律は、平成15年1月1日から施行されています。ただし、資本増強及び預金保険等の保険金の額の特例に関する規定は、平成15年4月1日から施行することとしています。また、施行後平成20年3月31日までの間に、社会経済情勢の変化を勘案しつつ、この法律の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとしています。
 
 
 
 「金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法」について、もっと詳しくお知りになりたい方は、金融庁ホームページの「国会提出法案」の「第155回国会における金融庁関連法律案」の中からご覧になれます。


 

 金融庁金融審議会金融分科会第一部会(部会長 神田秀樹 東京大学法学部教授)は、昨年12月16日に、第8回の部会を開催し、「証券市場の改革促進」(金融審議会第一部会報告)を確定・公表いたしました。金融庁といたしましては、この報告に基づき、速やかに所要の制度整備を行ってまいりたいと考えております。
 以下、本報告書の概要を簡単にご紹介いたします。


 証券市場を幅広い投資家の参加する真に厚みのあるものとし、市場機能を中核とした我が国金融システムの中心を担うものとしていくため、証券市場の構造改革の一環として、市場仲介者、ディスクロージャー、取引所について、次に述べるような制度の整備が必要である。
 

(1)

 まず、市場仲介者については、国民と市場とをつなぐ市場仲介者が、投資家本位の金融サービスをアクセス容易な方法で提供するとともに、投資家の信頼を確固たるものとしていくため、投資家保護に配意しつつ、証券代理店制度(仮称)の創設、証券会社・投資信託委託業者・投資顧問業者の最低資本金の引き下げ及び主要株主ルールの導入等が必要である。
(2)  次に、投資家と企業をつなぐ情報の架橋であるディスクロージャーについては、投資家の信頼が得られる市場を確保する観点から、米国における不正会計事件の教訓も踏まえて、事業や財務に関する開示情報の充実強化を図るとともに、企業活動の活性化を通じた経済の活性化を図る観点から、企業の事業資金調達の円滑化及び事業再編の迅速化に資するよう、「適格機関投資家」の範囲の拡大などの私募制度の見直しをはじめとする措置の具体化が必要である。
(3)  最後に、取引所については、金融証券取引のグローバル化に伴う市場間競争に、我が国市場が適切に対応できるよう、投資家保護や不公正取引の防止等に配意しつつ、海外取引所による国内への端末設置に関するルールの明確化や、我が国に支店のない海外の証券業者も我が国の取引所取引に直接参加できる制度の整備が必要、市場の公正性・中立性・信頼性の確保に配意しつつ、内外取引所の資本提携を可能とするための株主ルールや持株会社制度といった法的な枠組みの整備が必要である。


 以上の制度整備案が、「証券市場の改革促進プログラム」に盛り込まれている他の措置とあいまって、市場機能を中核とした金融システムの実現に向けた大きな一歩となることを期待しており、制度整備の速やかな実施を要請する。
 しかしながら、結局のところ、こうした制度改革が真に実のあるものとなるかどうかは、市場のメーンプレイヤーである発行体企業、市場仲介者、市場関係者等が投資家の確固たる信頼を得るとともに、創造的かつ意欲にあふれる事業展開を行うことができるかにかかっている。市場関係者の奮起を促したい。


 「証券市場の改革促進」(金融審議会第一部会報告)について、もっと詳しくお知りになりたい方は、金融庁ホームページの平成14年12月16日 「証券市場の改革促進」(金融審議会第一部会報告)にアクセスしてください。
 また、金融審議会第一部会における議論をご覧になりたい方は、金融庁ホームページの「審議会など」の「金融審議会」から「議事録等」にアクセスしてください。
 さらに、「証券市場の改革促進プログラム」について、ご覧になりたい方は、金融庁ホームページの「報道発表など」から「「証券市場の改革促進プログラム」について」(平成14年8月6日)にアクセスしてください。


 昨年12月17日に金融審議会公認会計士制度部会から「公認会計士監査制度の充実・強化」が公表されました。
 この報告においては、試験体系を「1段階・2回」に簡素化、試験科目の見直し、科目合格制の導入等、受験生の負担を軽減するべく、試験制度の見直しを行うことが適切であるとの提言がなされています。
 この報告を踏まえて、今(第156回)通常国会に公認会計士法の改正案を提出するために、試験制度を含む公認会計士制度の見直しの作業をしているところです。
 

(注

)現在、法案提出に向けて作業中の段階であり、確定的なことは申し上げられませんが、受験生の準備期間の関係もあり、相当の経過的な措置を設けることが必要であると考えており、平成18年から新試験制度を実施することを目指して所要の準備を進めているところです。


 金融審議会公認会計士制度部会報告PDF「公認会計士監査制度の充実・強化」をご覧になりたい方は、金融庁ホームページの「審議会など」の「金融審議会」からアクセスしてください。


 平成15年度税制改正において、金融庁は、「貯蓄から投資へ」の流れを加速し、個人投資家の積極的な市場参加を促すため、簡素でわかりやすく、将来的に安定的で、投資を優遇する証券税制を要望してまいりました。その結果、昨年12月に、証券税制が大幅に見直されることが決定されました。
 
見直しが行われる主な点は、
(1)  株式譲渡益・配当、株式投資信託分配金について、国税・地方税とも源泉徴収のみで納税が完了する仕組み(申告不要)を導入する、
(2)  全ての株式の譲渡益・配当、株式投資信託の分配金について、一律に5年間は、税率を10%に軽減する、
(3)  株式投信の償還・解約差損について、株式譲渡益との損益通算を可能とする、
(4)  特定口座制度について、地方税についても源泉徴収(特別徴収)の仕組みを導入するとともに、税務署等に年間取引報告書が提出されないこととする、
などとなっています。

◎ 新証券税制(案)の全体像

 今回の税制改正案については、金融庁、証券業協会、各証券会社などにおいても十分な周知を図ってまいりたいと考えています。より詳しい内容についてお知りになりたい方は、金融庁ホームページの「証券に関する税制が大幅に改善されることとなりました」のコーナーにアクセスしてください。


I 事務ガイドラインの改正(平成14年12月10日)について

 「金融再生プログラム」には、新しい金融行政の枠組みを構築することを目的に、「自己査定の是正不備に対する行政処分の強化」や「早期是正措置の厳格化」や「『早期警戒制度』の活用」といった施策が盛り込まれています。
 これに関して、昨年12月10日、金融庁は上記の内容に係る事務ガイドラインを以下のように改正し、公表と同時に実施しました。
 (1)  「自己査定の是正不備に対する行政処分の強化」
 正当な理由がないにもかかわらず自己査定と検査結果の格差が是正されない場合には、銀行法第26条に基づき業務改善を求める方針を明確化しました。
 (2)  「早期是正措置の厳格化」
 預金者等の信認を確保する観点から、早期是正措置に係る命令を受けた金融機関の自己資本比率改善までの期間を3年から1年へ短縮等することとしました。
 (3)  「『早期警戒制度』の活用」
 早期是正措置の対象とはならない金融機関であっても、その健全性の維持及び一層の向上を図るため、継続的な経営改善への取組みがなされる必要があります。
 このため、行政上の予防的・総合的な措置を講ずることにより、金融機関の早め早めの経営改善を促進することとしました。
 具体的には、
 
 基本的な収益指標、有価証券の価格変動等による影響、預金動向や流動性準備の水準を基準として、収益性、安定性や資金繰りについて経営改善が必要と認められる金融機関に関して、
 原因及び改善計画等についてヒアリング等を行い、必要な場合には銀行法第24条に基づき報告を求めることを通じて、必要な経営改善を促し、
 さらに、以上の措置に関し、改善計画を確実に実行させる必要があると認められる場合には、銀行法第26条に基づき業務改善命令を発出する
  旨を規定し、監督体制を整備することとしました。
 

(注

)以上の改正に加え、経常的な監督事務であるオフサイト・モニタリングについても規定するなど所要の規定を整備しました。


 本事務ガイドラインの改正について、もっと詳しくお知りになりたい方は、金融庁ホームページの「報道発表など」から「事務ガイドライン(第一分冊:預金取扱い金融機関関係)の一部改正について」(平成14年12月10日)にアクセスしてください。

II DCF的手法の採用及び引当金算定期間の見直し

 「金融再生プログラム」において、資産査定の厳格化を図るための方策として「資産査定に関する基準の見直し」等が盛り込まれたことから、日本公認会計士協会では、「DCF等検討プロジェクトチーム」を設置し、検討を行ってきております。
 金融庁としても、検査・監督当局の立場から、日本公認会計士協会と必要な調整を行うため、昨年11月、「公認会計士協会との連絡協議会(ワーキング・チーム)」を設置し、これまで6回に及ぶ検討を行ってきたところですが、今般、引当に関するDCF的手法の採用及び引当金算定における期間の見直しについて、金融検査マニュアルを改訂することとし、パブリックコメントに付すこととしたところであります。
 今後、頂いたご意見を踏まえ所要の作業を行い、15年3月期決算に適用できるよう、通達として発出・公表したいと考えております。


 DCF的手法の採用及び引当金算定期間の見直しについて、もっと詳しくお知りになりたい方は、金融庁ホームページの「報道発表など」から「金融再生プログラム関連等に係る検査マニュアルの改訂について」(平成14年12月26日)にアクセスしてください。

III 金融審議会における検討

 「金融再生プログラム」の作業工程表で「金融審議会において検討」とされている事項について、専門的な見地から検討していただくため、金融審議会第二部会の下に「公的資金制度に関するワーキンググループ(以下「WG」)」、「自己資本比率規制WG」、「リレーションシップのあり方に関するWG」を昨年中に設置しました。
 「公的資金制度に関するWG」においては、新しい公的資金制度について、その必要性などについて、半年程度で結論を得るべく、幅広い観点から議論を開始しました(第一回会合1月16日開催)。
 「自己資本比率規制に関するWG」においては、繰延税金資産に関する算入上限について、法律、会計、税制等の幅広い観点から速やかに検討を行うほか、自己資本のあり方に関する考え方について検討を開始します。
 「リレーションシップバンキングのあり方に関するWG」においては、主要行とは異なる特性を有する「リレーションシップバンキング」のあり方について、多面的な尺度から検討を開始しました(第一回会合は1月15日に開催)。
今後、各WGにおいて工程表に従い精力的な議論が行われることになります。


 各WGのメンバーについては、金融庁ホームページの「報道発表など」から「金融審議会第二部会におけるワーキンググループについて」(平成14年12月27日)をご覧ください。

IV 金融問題タスクフォースについて

 金融再生プログラム(平成14年10月30日公表)及びその作業工程表(平成14年11月29日公表)を受けて、昨年12月27日、金融庁内に「金融問題タスクフォース」を発足させ、そのメンバーを公表しました。このタスクフォースでは、不良債権処理の状況のモニタリング等を実施していくことになります。


 メンバーについては、金融庁ホームページ「報道発表など」から「金融問題タスクフォースについて(平成14年12月27日)」をご覧ください。
 
 「金融再生プログラム」、「作業工程表」について、もっと詳しくお知りになりたい方は、金融庁ホームページの「金融再生プログラム」のコーナーにアクセスしてください。


 生命保険のセーフティネットについては、生命保険契約者保護機構(保護機構)が創設されており、万が一保険会社が破綻した場合には、保護機構が、救済保険会社に対する資金援助等を行うことにより、保険契約者等の保護を図る こととされております。

 保護機構は、平成10年に4,600億円の規模で創設され、平成12年に、3年限りの措置として、政府補助の特例措置を含め、5,000億円の規模のセーフティネットが追加的に整備されました。

 平成14年度末で政府補助の特例措置が期限切れになりますが、現下の生命保険を取り巻く環境に鑑み、保険契約者等の保護を図り、生命保険に対する信頼を確保するため、平成15年度から3年間の破綻に備えるものとして、同様のセーフティネットを改めて整備することとしております。(今(第156回)通常国会に保険業法改正案を提出予定。)

 具体的には、平成15年度から平成17年度までの破綻について、業界対応分1,000億円、国対応分4,000億円の合計5,000億円の財源を用意し、平成15年4月以降の破綻に係る資金援助の額が1,000億円を超えれば、政府補助(4,000億円)を可能とする仕組みとなります。



.はじめに
 

(1)

 昨年7月30日に成立した米国のサーベーンズ=オクスリー法(Sarbanes-Oxley Act of 2002)(以下「企業会計改革法」と呼びます)は、米国の証券市場に対する投資家の信認を回復するための重要な成果であると考えられます。
(2)  企業会計改革法は、監査法人の監視体制強化のための新機関の設置、監査法人の独立性の強化、コーポレート・ガバナンスの強化、企業のディスクロージャーの強化、企業責任の強化など、広範な内容を含むものです。
 米国におけるエンロン社(一昨年11月末)やワールドコム社(昨年6月)などの会計不正による企業破綻や企業会計改革法の成立を契機として、これらの課題について国際的に議論されています。例えば、昨年9月に公表された金融安定化フォーラム(FSF)の報道発表では、これらの課題が「市場の基盤」として位置づけられています。また、証券監督者国際機構(IOSCO)においては、監査法人の独立性および監督などに関する原則が昨年10月にとりまとめられています。
(3)  金融庁としても、こうした国際的な証券市場改革の動きを踏まえつつ、昨年8月6日に「証券市場の改革促進プログラム」を発表しました。昨年末にとりまとめられた金融審議会第一部会報告及び公認会計士制度部会報告において改革の具体的措置が示されたことを受け、引き続き積極的に取り組んでいるところです。国際的にも、欧州連合(EU)諸国などにおいて改革が進められているところです。


.米国の企業会計改革法への懸念
 

(1)

 一方、米国の企業会計改革法は、我が国の監査法人及び米国上場の日本企業を含む外国の監査法人及び外国企業にとって、主に2つの懸念を生じさせるものです。我が国を含む外国の法制度と抵触する問題をはらむものだからです。
(2)  第1の懸念は、同法第106条(外国監査法人)です。この規定は、米国上場の外国企業の監査を行う外国監査法人についても、監査法人を監督する「新機関(公開会社会計監督委員会:PCAOB)」に登録させ、その監督(検査、懲戒手続など)に服させるものです。外国の監査法人がこの規定の適用を受けるとすると、外国の監査法人に米国の監督権限が直接及ぶことになり、本国の当局の監査法人への監督制度と重複または矛盾を来たすなどの懸念が生じます。
(3)  第2の懸念は、同法第301条(公開会社の監査委員会)です。この規定が米国上場の外国企業に適用されると、当該企業は、全員「独立取締役」から成る「監査委員会」を設置しなければならず、この「監査委員会」が監査法人の選任、報酬及び監督について直接の責任を負うことになります。
 これは、我が国のコーポレート・ガバナンス制度、すなわち、「大会社」に「監査役会制度」と「委員会制度」との自由な選択を認める商法特例法上の制度(本年4月に施行)と抵触するものです。また、我が国では株主総会で監査法人を選任する点でも抵触するものです(多くの主要国で同様)。さらに、「独立取締役」の人数などについても異なります。
(4)  従って、我が国監査法人及び企業を含む外国の監査法人及び外国企業については、それぞれ企業会計改革法106条及び301条からの適切な適用除外が必要であると考えられます。このような考え方は、欧州委員会(EC)とも共通するものです。
(5)  企業会計改革法には、この他にも、監査人の独立性強化(第2章)、企業役員への個人融資の原則禁止(第402条)、「監査委員会」における金融専門家の有無の開示(第407条)、弁護士の責任強化(第307条)など、外国の監査法人や米国上場の外国企業などに影響を与えうる規定が数多く含まれています。


.米国の企業会計改革法への対応
 

(1)

 米国の企業会計改革法については、基本的には、米国証券取引委員会(SEC)が規則の制定などを通じて、実施する責任を担っています。そこで、金融庁としては、国内の関係省や関係機関などと緊密に連携しつつ、様々な機会を活用して、SECと建設的な対話を継続してきました。
  その際には、上記のような我が国の懸念を伝えるとともに、我が国においても、企業会計改革法と同様に、投資家の信認確保を目的として、様々な改革に取り組んでおり、SECがその規則制定に当たって、こうした我が国の同等な取組みを尊重するよう要請してきました。このような観点から、我が国の監査法人の監督制度やその独立性確保のための制度、コーポレート・ガバナンス制度、これら諸制度を一層強化するための最近の取組みなどについて、SECに実務的な説明を行ってきました(注)。
 
(注)  具体的には、SEC幹部(委員を含む)との面会や書簡の発出(昨年7月以降)、日米財務金融対話(昨年10月・12月)、日米官民会議(昨年11月)、日米投資イニシアティブ会合(昨年11月)、官民ミッションのSEC訪問(昨年12月)、SEC主催のラウンドテーブルへの参加(昨年12月)、SEC規則案へのパブリック・コメントの発出(昨年8月、11月、本年1月)などを通じて、行ってきました。
(2)  一方、企業会計改革法への対応に当たっては、我が国の国内における関係者の間で情報交換や認識の共有を図ることが重要です。このため、関係省(法務省、外務省、経済産業省)、関係機関など(日本経済団体連合会、日本公認会計士協会、日本弁護士連合会、日本監査役協会、米国上場の日本企業)と連絡会を開催する(これまで3回開催)など、緊密な連携を図っているところです。
(3)  SECは、本年1月9日、301条に関する規則案を公表し、パブリック・コメントに付しています。この規則案には外国企業についての一般的な適用除外条項が含まれており、一定の評価に値するものとなっていると考えられます。今後、規則案の内容を十分分析し、関係者と連携を図りつつ、必要に応じてパブリック・コメントを提出する考えです。また、監査法人の問題など、企業会計改革法のその他の問題についても、引き続き積極的に対応していく考えです。

【金融ここが聞きたい!】へ続く