「年度末金融の円滑化に関する意見交換会」で挨拶する竹中大臣(2月24日)

 奥山日本公認会計士協会会長より伊藤副大臣に対し、繰延税金資産の合理性の確認等に関する検討結果について報告(2月24日)


目 次
【トピックス】
 ○ 14年9月期の不良債権の状況等について
 ○ 金融再生プログラムの進捗状況について
 ○ 米国SEC規則案へのパブリック・コメントの発出について
 ○ 年度末金融の円滑化に関する意見交換会の開催について
【海外通信】
 ○ 最近の米銀の収益動向等(在ニューヨーク総領事館領事 長田 敬)
【金融ここが聞きたい!】
 Q:  株価が下落していますが、実体経済に与える影響はどうでしょうか?
 Q:  株価が下落していますが、金融危機の恐れはありませんか
 Q:  日本公認会計士協会の奥山会長が繰延税金資産の合理性の確認に関する会長通牒を出しましたが、これを踏まえ、金融庁としてはどう対応するのですか?
【金融便利帳】
 ○ 今月のキーワード:自己資本
【竹中大臣に質問!】
【お知らせ】
【2月の主な報道発表等】


【トピックス】
 

 14年9月期の全国銀行の不良債権(金融再生法開示債権ベース)は40.1兆円となっており、14年3月期の43.2兆円と比べて3.1兆円の減少となっています。
 不良債権の増減を内訳別にみると、不良債権のうち比較的リスクの小さい要管理債権については、若干の増加(+0.3兆円)となったものの、一方、よりリスクの大きな危険債権及び破産更生等債権については減少(▲3.4兆円)となりました。
 全体として不良債権が減少した主な要因としては、引き続き厳しい経済情勢の下での債務者の業況悪化に伴う不良債権の新規発生がみられたものの、それを上回る積極的なオフバランス化が進展したことが挙げられます。
 
 14年9月期の不良債権の状況等について、詳しくは、金融庁ホームページの「報道発表など」から、「14年9月期における不良債権の状況等(ポイント)」(平成15年2月7日)にアクセスしてください。

 

PDF◎金融再生プログラムの進捗状況(図)(平成15年2月28日現在)

I 第三者割当増資時のコンプライアンスに関する事務ガイドラインの整備

 今般、2月21日(金)に、「金融再生プログラム」(14年10月30日公表)及び「作業工程表」(同11月28日公表)を受け、第三者割当増資時のコンプライアンスについて銀行監督上の事務処理手続きを定めた事務ガイドラインを整備・公表したところであります。
 第三者割当増資は、銀行が取引先等に対し直接に株式を割り当てるので、例えば、
 ○ 商法の「資本充実の原則」の遵守、
 ○ 独占禁止法の「優越的な地位の濫用」等不公正な取引の防止、
 ○ 適正なディスクロージャーの確保、
 ○ 預金との誤認防止のための適切な説明
 といった点に係る法令等遵守態勢(コンプライアンス)の確立について、健全性や誠実さ等の観点から、特に十分な経営努力が払われる必要があり、また、増資は恒常的に行われるものではないことから、こうした増資時のコンプライアンスについては、増資の都度構築・徹底される必要があります。
 こうした点を踏まえ、今般の事務ガイドラインの整備に当たり、当局としては、増資を行おうとする銀行に対し、経営の責任において、(1)法令等遵守に係る内部管理態勢の確立、(2)適正な増資の遂行、(3)遵守状況の事後的な点検等を行うよう求めることとし、そのための監督上の着眼点と事務フローを明確にしたところであります。
 第三者割当増資を行う銀行自身が自らの責任においてコンプライアンスに万全を尽くす必要があると考えていますが、当局としても、銀行の第三者割当増資については、この事務ガイドラインに沿って適切にチェックを行っていくこととしております。
 

 「第三者割当増資時のコンプライアンスに関する事務ガイドライン」について、詳しくは、金融庁ホームページの「事務ガイドライン」から「事務ガイドラインの一部改正に関する報道発表」に入り、「平成15年2月21日 事務ガイドライン(第一分冊:預金取扱い金融機関関係)の一部改正について」にアクセスしてください。

II 「金融再生プログラム関係等に係る検査マニュアルの改訂について」に対するパブリック・コメントの結果及び金融検査マニュアルの改訂

 「金融再生プログラム」において、資産査定の厳格化を図るための方策として「資産査定に関する基準の見直し」等が盛り込まれたことから、日本公認会計士協会では、「DCF等検討プロジェクトチーム」を設置し、検討を行ってきました。
 金融庁としても、検査・監督当局の立場から、日本公認会計士協会と必要な調整を行うため、昨年11月、「公認会計士協会との連絡協議会(ワーキング・チーム)」を設置し、6回に及ぶ検討を行い、12月26日、引当に関するDCF的手法の採用及び引当金算定における期間の見直しについて、金融検査マニュアルを改訂することとし、パブリック・コメントに付しました。
 本年1月27日、パブリック・コメントを締切り、19先より頂いた121件のご意見等を踏まえ表現等の改善を行い、2月25日、金融検査マニュアルを改訂し、通達として発出・公表したところです。
 
 「金融再生プログラム関係等に係る検査マニュアルの改訂について」に対するパブリック・コメントの結果及び金融検査マニュアルの改訂について、詳しくは、金融庁ホームページの「報道発表など」から、「「金融再生プログラム関連等に係る検査マニュアルの改訂について」に対するご意見等の公表について」(平成15年2月25日)にアクセスしてください。

III 繰延税金資産の合理性の確認、DCF的手法の採用等についての日本公認会計士協会における検討結果

 昨年11月、金融再生プログラムに関して、金融庁から日本公認会計士協会に対し、
 (1) 繰延税金資産の合理性の確認
 (2) 引当に関する冠するDCF的手法の採用
 (3) 引当金算定における期間の見直し
の検討を依頼しました。

 これを受けて、日本公認会計士協会では、「DCF等検討プロジェクトチーム」を設置し、検討を行ってきましたが、その結果を2月25日に公表しました。
 
 繰延税金資産の合理性の確認、DCF的手法の採用、貸倒引当金の計上における1年・3年基準の検討について、詳しくは、日本公認会計士協会のホームページから「プレスリリース」に掲載の「記者会見(公認会計士法改正及び銀行等金融機関のDCF法採用・貸倒引当金・繰延税金資産に係る対応ほか)について(2003年2月25日)」にアクセスしてください。

IV 金融審議会金融分科会第二部会「リレーションシップバンキングのあり方に関するワーキンググループ」地方懇談会の開催
 

第1回地方懇談会(大阪)(2月24日)

第2回地方懇談会(仙台)(2月26日)


 リレーションシップバンキングのあり方に関するワーキンググループ(座長 堀内昭義東京大学大学院経済学研究科教授)においては、金融再生プログラム及び同作業工程表を踏まえ、主要行と異なる特性を有するリレーションシップバンキングのあり方を多面的な尺度から検討しているところでありますが、検討の一環として、リレーションシップバンキングの担い手である中小・地域金融機関のエンドユーザーからのご意見を幅広く伺うため、以下のように大阪市、仙台市の2箇所で地方懇談会を開催しました。
 懇談会の中では、パネリストの方から様々な意見が出されましたが、中小・地域金融機関が地域で果たす役割は大きく、かなり貢献しているというポジティブな評価が与えられる反面、近年は中小・地域金融機関の対応が事務的になっている面があるなどさらに改善すべき面もある、といった意見が多く出されました。
 ワーキンググループにおいては、地方懇談会でのヒアリング結果も参考としつつ、今月末までの報告書の取りまとめの作業を精力的に進めていく予定です。

 
開催状況)
(1) 大阪市(2月24日(月))  参加 223名

[参加パネリスト]
   
青戸  紘 (株)川島織物取締役社長
有岡 恭助 (株)大阪中小企業投資育成社長
稲岡真理子 ライフマネジメント研究所所長
川邊祐之亮 (有)ジャパンスタイルシステム代表取締役
武内  勇 (株)ミレニアムゲートテクノロジー社長
寺田 勝史 大阪府商工労働部副理事
中村 隆司 (株)ダイドー住販代表取締役
服部 盛隆 池田銀行頭取
西村 忠禧 みなと銀行頭取
溝口  肇 大阪信用金庫理事長
和泉 吉俊 兵庫県信用組合理事長
 
[参加ワーキンググループ委員]
   
堀内 昭義 東京大学大学院経済学研究科教授
多胡 秀人 ブラクストン(株)プリンシパル
田作 朋雄 PWCフィナンシャル・アドバイザリー・サービス(株)
取締役パートナー
藤野 次雄 横浜市立大学商学部教授
淵田 康之 野村総合研究所資本市場研究部長
三井 逸友 横浜国立大学大学院環境情報研究院教授
村本  孜 成城大学経済学部教授
吉田 和男 京都大学大学院経済学研究科教授
吉野 直行 慶應義塾大学経済学部教授
   
  (2) 仙台市(2月26日(水))  参加 205名

[参加パネリスト]
   
佐伯 昭雄 (株)東北電子産業代表取締役社長
須田 精一 由利工業グループ代表
高田登志江 (株)宮城運輸代表取締役専務
村松  巌 仙台商工会議所 会頭
山田 慶太 (株)アサカ理研工業代表取締役社長
横山 英子 (株)横山芳夫建築設計監理事務所専務取締役
瀬谷 俊雄 東邦銀行頭取
日下 睦男 仙台銀行会長
齋藤 有司 宮古信用金庫理事長
須佐 喜夫 福島県商工信組理事長
 
[参加ワーキンググループ委員]
   
堀内 昭義 東京大学大学院経済学研究科教授
多胡 秀人 ブラクストン(株)プリンシパル
田作 朋雄 PWCフィナンシャル・アドバイザリー・サービス(株)
取締役パートナー
淵田 康之 野村総合研究所資本市場研究部長
三井 逸友 横浜国立大学大学院環境情報研究院教授


 金融審議会金融分科会第二部会「リレーションシップバンキングのあり方に関するワーキンググループ 地方懇談会」の議事録や堀内座長が行ったプレゼンテーションの資料については、金融庁ホームページの「報道発表など」から「「金融審議会 金融分科会第二部会 リレーションシップバンキングのあり方に関するワーキングループ 地方懇談会について」(平成15年3月17日)」にアクセスしてください。


 金融審議会金融分科会第二部会「リレーションシップバンキングのあり方に関するワーキンググループ」については、アクセスFSA第3号【トピックス】「金融再生プログラムの進捗状況について II金融審議会における検討」、同第2号【トピックス】「金融再生プログラムの進捗状況について III金融審議会における検討」もご覧ください。
 
 「金融再生プログラム」、「作業工程表」について、もっと詳しくお知りになりたい方は、金融庁ホームページの「金融再生プログラム」のコーナーにアクセスしてください。


 
1.パブリック・コメントの発出

 金融庁は、2月14日、米国の企業会計改革法(サーベーンズ=オクスリー法)第301条(注1)に基づく米国の証券取引委員会(SEC)の規則案に対して、パブリック・コメントを発出しました(注2)。その詳細については、金融庁ホームページの「インフォメーション」から「国際機関関連情報」の「その他」に入り、「米国SEC規則案へのパブリック・コメントの発出について」(平成15年2月14日)にアクセスしてみてください。
 

(注

1)同条は、SEC登録企業(米国上場企業など)について、全員が「独立取締役」から成る「監査委員会」の設置などを義務づけるものです。

(注

2)米国SECは、その規則を制定するに当たり、まず規則案を公表し、その規則案に対して広く一般からパブリック・コメントを募った上で、最終的な規則を制定します。
 
2.米国の企業会計改革法への対応
 

(1

)米国の企業会計改革法(平成14年7月30日成立)は、会計法人の監督体制強化のための新機関の設置、会計法人の独立性強化、コーポレート・ガバナンス(企業統治)の強化、企業のディスクロージャー(開示)の強化、企業責任の強化など、広範な内容を含んでおり、証券市場への投資家の信認を確保するための重要な成果であると考えられます。

(2

)一方、金融庁は、米国の企業会計改革法の適用が我が国の監査法人や米国上場の日本企業に及ぼす影響などにかんがみ、米国SECと建設的な対話を行ってきました。そうした対話の一環として、同法に基づくSEC規則案について、これまで数回にわたるパブリック・コメントを発出してきました。


 これまでの金融庁の取組みについては、アクセスFSA第2号【トピックス】「米国の企業会計改革法への対応について」にもアクセスしてみてください。
 
3.今回の対応と今後の動き
 

(1

)同法第301条に基づくSEC規則案は、外国企業について一定の適用除外を認める(注4)など、評価に値するものとなっていますが、今回、米国上場の日本企業への影響などにかんがみ(注5)、法務省を含む関係省や関係機関と緊密な連携を図りつつ、パブリック・コメントを発出したものです。
 

(注

4)我が国の商法特例法に基づく監査役会制度を念頭に置いたと考えられる適用除外規定が含まれています。

(注

5)SEC規則案には、我が国の「委員会等設置会社」(商法特例法上の「大会社」は本年4月から選択可能)についての明示的な適用除外規定が含まれていません。

(2

)SECの最終規則は、本年4月26日までに制定されることになっています。SECがパブリック・コメントを受けてどのような最終規則を定めるか、今後注視する必要があります。

(3

)なお、米国の会計法人の新監督機関である「公開会社会計監督機関(PCAOB)」が、3月4日付けで、会計法人の登録制度に関する規則案を決定しています。
 規則案には外国会計法人の適用除外が含まれていませんが、外国会計法人に関する問題は認識されています。今後、パブリック・コメントの発出やラウンドテーブル(3月31日に開催予定)への参加などを通じて、対応していく必要があると考えられます。

 
年度末金融の円滑化に関する意見交換会(2月24日)
 去る2月24日(月)に、金融機関代表者、関係省庁等を集め、「年度末金融の円滑化に関する意見交換会」を開催しました。
 本会合では、年度末の資金需要期を迎えることを踏まえ、竹中金融担当大臣から金融機関代表者に対して、健全な中小企業に対する必要な資金供給の円滑化には格別の配慮をするよう要請するとともに、中小企業金融の実態認識について意見交換を行いました。
その際に、昨年10月に設置した「貸し渋り・貸し剥がしホットライン」に関して、寄せられた情報の実績を紹介しつつ、かかる情報に基づき、今後、金融機関に対し四半期毎にヒアリングを実施する等積極的に活用する旨説明をしました。
 なお、同様の意見交換会は、昨年末にも開催しましたが、中小企業を巡る金融情勢がなお厳しい状況が続いていることに鑑み、重ねて強く要請すべく実施されたものです。

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