【法令解説】
 
 このコーナーでは、先に閉会した第156回国会で成立した金融庁関連の法律について、その経緯や内容を詳細に説明します。本号は、「ヤミ金融対策法施行に伴う貸金業規制法施行令、施行規則の一部改正について」についてです。
 
ヤミ金融対策法施行に伴う貸金業規制法施行令、施行規則の一部改正について
 
 第156回国会において「貸金業の規制等に関する法律及び出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律の一部を改正する法律」が成立したことを受け、先般、同法施行のための「貸金業の規制等に関する法律及び出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律の一部を改正する法律の施行期日を定める政令」、「貸金業の規制等に関する法律施行令の一部を改正する政令」及び「貸金業の規制等に関する法律施行規則の一部を改正する内閣府令」が公布されました。本稿においては、これらの概要等について紹介致します。


.ヤミ金融対策法の成立背景、概要
 近年、ヤミ金融と呼ばれる貸金業の無登録営業、違法な高金利による貸付け、悪質な取立てなど違法行為が多発し、大きな社会問題となっています。こうした状況を受け、ヤミ金融の被害を未然に防止し、被害者の救済に資するよう、違法業者を厳しく取締るとともに、借り手を保護するために必要な措置を講じるべく、議員立法により、貸金業の規制等に関する法律及び出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律の一部を改正する法律(いわゆるヤミ金融対策法。以下「改正法」という。)が成立致しました。
 改正法は、(a)貸金業者の登録要件の厳格化、(b)無登録業者に対する取締り強化、(c)取立行為規制の強化、(d)貸金業務取扱主任者制度の創設、(e)罰則強化、(f)年109.5%を超える高金利を内容とする貸付契約の無効化等の対策が講じられており、公布(平成15年8月1日)後6ヶ月以内で政令で定める日から施行されることとなっております。(なお、政令・内閣府令の整備を伴わない(b)無登録業者による広告・勧誘の禁止、(e)高金利要求罪の新設を含む罰則の強化、(f)年109.5%を超える高金利を内容とする貸付け契約の無効化、については公布後1ヶ月を経過した日である平成15年9月1日から施行されております。)
(※改正法の詳しい内容につきましてはアクセスFSA第9号をご参照下さい。)


.「貸金業の規制等に関する法律及び出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律の一部を改正する法律の施行期日を定める政令」及び「貸金業の規制等に関する法律施行令の一部を改正する政令」について
 平成15年10月29日に公布されました改正法の施行期日を定める政令において、改正法の施行日を平成16年1月1日とすることとしました。また、併せて公布されました貸金業の規制等に関する法律施行令の一部を改正する政令の概要は以下のとおりです。
 
(1 ) 手数料
 今般の法改正において貸金業の登録要件が厳格化されたことを踏まえ、内閣総理大臣(財務局登録業者)の登録の更新の手数料の金額を4万3千円から15万円に改めることとしました。(令第2条関係)
(2 ) 登録申請書の添付書類
 登録申請書の添付書類として、新たに本人(法人にあっては、役員)及び政令で定める使用人の本人確認書類が追加されたところですが、この本人確認書類の提出を求める使用人を営業所又は事務所の業務を統括する者等とすることとしました。(令第3条関係)
(3 ) 債権譲渡等の規制等に関する条文の読替え規定を整備
 無登録業者、無登録業者から債権を譲り受けた者等について準用する貸金業者に係る規制の規定、貸金業者から債権を譲り受けた者等に係る規制の規定の読替えを行うこととしました。(令第3条の3関係)
(4 ) 貸金業務取扱主任者研修の事務委託先の指定
 都道府県知事が貸金業務取扱主任者研修に関する事務を行わせることができる団体を指定する権限については、金融庁長官が行うこととしました。(令第6条関係)
(5 ) 施行期日等
 
(a)  施行期日
 この政令は、平成16年1月1日から施行することとしました。ただし、(1)、(5)(b)、(5)(c)についてはこの政令の公布日である平成15年10月29日から施行されております。(令附則第1条関係)
(b)  手数料に関する経過措置
 改正後の貸金業の規制等に関する法律に基づき審査を行うこととなる有効期間の満了日の翌日が平成16年1月1日以後となる登録の更新の申請について、改正後の手数料を適用することとしました。(令附則第2条関係)
(c)  登録の更新に関する経過措置
 有効期間の満了の日の翌日が平成16年1月1日から平成16年3月1日までの間の登録に係る登録の更新の申請について、申請期限等の所要の経過措置を設けることとしました。(令附則第3条関係)
(d)  権限の委任
 改正法附則における内閣総理大臣の権限を金融庁長官に委任し、金融庁長官は財務局長等に委任することとしました。(令附則第4条関係)
(e)  標準手数料政令の一部改正
 都道府県登録業者に係る登録手数料、更新手数料についても、全国統一した取扱いとするため、標準手数料政令を改正し、国の登録免許税、更新手数料と同水準の15万円と規定することとしました。(令附則第5条関係)


.「貸金業の規制等に関する法律施行規則の一部を改正する内閣府令」について
 改正法の施行のため、貸金業の規制等に関する法律施行規則の一部を改正する内閣府令が上記政令と同時に公布されました。その概要は以下の通りです。
 
(1 ) 登録申請の添付書類
 
(a)  登録申請に添付すべき本人確認書類は、運転免許証、旅券等の写真付の公的証明書、これらを所持していない場合には公的証明書に写真を添付したもの等とすることとしました。(規則第4条第2項関係)
(b)  財産的基礎要件の確認のための添付書類として、法人の貸借対照表及び監査報告書、個人の財産調書を規定することとしました。(規則第4条第3項第7号〜第9号関係)
(2 ) 登録拒否要件
 
(a)  「貸金業に関し不正又は不誠実な行為をするおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者として内閣府令で定める者」とは、登録取消し処分のための聴聞の通知後に廃業の届出を行ったことにより登録取消処分を免れた者で5年を経過しない者等とすることとしました。(規則第5条の2関係)
(b)  「貸金業を遂行するために必要と認められる内閣府令で定める財産的基礎」とは、以下の純資産を有する者とすることとしました。(規則第5条の3第1項関係)
 ・ 法人(日賦貸金業者を除く。):500万円以上
 ・ 個人(日賦貸金業者を除く。):300万円以上
 ・ 日賦貸金業者:150万円以上
(c)  財産的基礎要件が適用除外となる「資金需要者等の利益を損なうおそれがないものとして内閣府令で定める事由がある者」とは、会社更生手続及び民事再生手続きにより事業の再建を図っている者とすることとしました。(規則第5条の3第2項関係)
(3 ) 広告規制
 貸金業者登録簿に登録された連絡先でなければ広告等において表示できないという規制の対象となる連絡先として電話番号、ホームページアドレス、電子メールアドレスを定めるとともに、電話番号については、固定電話の電話番号又はフリーダイヤルに限定し、携帯電話の電話番号は使用できないこととしました。(規則第3条の2及び第12条第6項関係)
 さらに、ホームページアドレス又は電子メールアドレスを表示して広告等を行う際には、電話番号も併せて表示しなければならないこととしました。(規則第12条第2項第3号関係)
(4 ) 取引経過の記録
 債務者等その他の者との交渉の経過の記録を貸金業者の帳簿に記載させることとしました。(規則第16条第1項第6号関係)
(5 ) 取立行為規制
 
(a)  取立てを行うのに不適当な時間帯は、午後9時から午前8時までの間とすることとしました。(規則第19条第1項関係)
(b)  債務者に送付する支払い催告のための書面に記載すべき事項は、法律で定められた事項(貸金業者の商号、催告書を送付する者の氏名、契約年月日、貸付金額・利率、催告金額等)に加え、残存債務の額、催告する金額の内訳(元本、利息及び賠償額)等とすることとしました。なお、この記載事項の内、契約年月日、貸付金額・利率については契約番号等の明示により代替することができることとしました。(規則第19条第3項及び第4項関係)
(6 ) 貸金業務取扱主任者制度
 
(a)  貸金業務取扱主任者は営業店毎に設置し他の営業所等と兼務できないこととしました。ただし、自動契約機等のみの営業所等や代理店の貸金業務取扱主任者は、他の営業所等との兼務ができることとしました。(規則第26条の25関係)
(b)  貸金業務取扱主任者が受講すべき研修は3年毎に受けるべきものとしました。(規則第26条の26第4項関係)
(c)  都道府県知事が実施する貸金業務取扱主任者研修の事務を受託できる者として金融庁長官の指定を受けようとする者は、非営利団体、研修実施事務を適正・確実に実施するために必要な知識・能力を有する等の基準に適合しなければならないこととしました。(規則第26条の28関係)
(7 ) ディスクロージャー関係
 事業報告書(貸付残高が500億円以上の貸金業者に提出義務あり)の記載事項に消費者向無担保貸付金の新規契約状況等を追加することとしました。(別紙様式第8号関係)
(8 ) 施行期日等
 
(a)  施行期日
 平成16年1月1日から施行することとしました。ただし、(5)(b)は平成16年5月1日、(8)(b)はこの内閣府令の公布日である平成15年10月29日から施行されております。(規則附則第1条関係)
(b)  経過措置
 
 平成16年1月1日より前にされる有効期間の満了の日の翌日が平成16年3月1日より後である登録の更新の申請は、改正後の貸金業の規制等に関する法律の例により行うこととしました。(規則附則第4条関係)
 都道府県知事が貸金業務取扱主任者研修の実施に関する事務を行わせることができる団体の指定については、平成16年1月1日より前においても申請し、指定することができることとしました。(規則附則第5条関係)

【海外最新金融事情】
 

最終段階に入ったバーゼル委員会のBIS規制見直し協議

 

金融庁総務企画局国際課企画官
白 川 俊 介
 
 バーゼル銀行監督委員会は、2003年10月10日及び11日にスペインのマドリッドで会合を開き、新BIS規制に係る「第3次市中協議案(CP3)」に対して世界各国から寄せられたコメントについて議論した。その結果、CP3の部分的な修正案について市中からの意見聴取を本年末までもう一度実施し、その上で遅くとも来年(2004年)央までに最終的な合意を目指すこととなった。本稿では、今回新たに提示された修正案の概要に加え、新BIS規制実施に向けた動きについて紹介することとしたい。
 なお、CP3の概要については、当庁ホームページにも掲載している2003年4月29日付け報道発表資料「自己資本に関する新しいバーゼル合意」をご参照いただきたい。
 

 パブリックコメントの結果

   バーゼル銀行監督委員会は、1998年以来5年以上にわたりBIS規制の見直しに取り組んでいるが、1999年6月の第1次市中協議案、2001年1月の第2次市中協議案に続いて、2003年4月に、これまでの作業を集大成する形で第3次市中協議案(CP3)を公表した。同委員会としては、本年末までに新BIS規制について最終的に合意し、その後、国内での準備期間を経て2006年末から新規制を実施することとしていた。
 CP3に対しては、2003年7月末のパブリックコメント締切りまでに、全国銀行協会等我が国からの意見を含め、計200を超えるコメントが寄せられた。コメントの内容は、国際決済銀行(BIS)のホームページ(www.bis.org)で誰でも見ることができる。これらのコメントは、規制の複雑性については懸念を示す向きがあるものの、よりリスク感応的な自己資本比率規制を目指す現在の方向性を大筋において支持するものであった。
 他方、信用リスクに係る枠組みの一つである内部格付手法に関し、期待損失額(EL:Expected Loss)と非期待損失額(UL:Unexpected Loss)の合計をベースとするリスク計測手法については、業界より、非期待損失額(UL)のみをベースとする現行の実務に整合的なものとすべきとの本質的なコメントが示された(注)。すなわち、銀行の内部管理においては、ELは引当金に加え利ざやでカバーすることを前提としており、エコノミック・キャピタルの計算上も視野の外に置いているとの指摘である。これに関し、米国当局が国内規制の策定手続において改めて意見聴取を行うとともに、新規制の枠組みの見直しに意欲を見せたことから、バーゼル委員会としては、EL/UL問題への対応が当面の焦点となった。
 

(注

)信用リスクの計測において、一定期間経過後(例えば、1年後)の損失額分布を把握する際、損失額を長期的にとらえた場合の平均値を「期待損失額(EL)」というのに対し、一定の確率(例えば、信頼区間99.9%)の下で生じ得る「最大損失額」からELを控除することにより求められる、予想を超えて発生し得る損失のことを「非期待損失額(UL)」という。(別図参照)

PDF< 別 図 >
 

 EL/UL問題と引当金の取り扱い

   CP3においては、内部格付手法におけるEL+ULの枠組みに関し、各国ごとに引当に関する基準や実務が大きく異なっている実態に着目し、これを所要自己資本額に反映させるため、リスクアセット(分母)を算出する際にELと引当金の差異を考慮することになっていた。これにより、引当の基準等の違いにより各国銀行間の競争条件に差が生じることを防ぐとともに、監督上の観点からも引当水準を視野に入れた慎重な対応が可能になると考えられた。これを自己資本比率の計算式で表すと次のとおりである。
 
 

Tier1 + Tier2’(excl.GPT2) + GPT2


{UL + EL - SP’- GP’} * 12.5

 
 Tier2’(excl. GPT2):一般貸倒引当金を除くティア2の額
 GPT2:一般貸倒引当金のうちティア2に算入できる額(リスクアセットの1.25%内)
 SP’:個別貸倒引当金(但し、ELの範囲内)
 GP’:一般貸倒引当金(GPT2を超える一般貸倒引当金で、SP’とあわせて、ELの範囲内)

 これを見ると、分母はUL+ELをベースとしつつ、ELの範囲内で個別引当金及び分子(ティア2)に含まれない一般貸倒引当金を控除して算出することになっている。他方、分子は現行規制と同じ扱いであり、リスクアセットの1.25%の範囲で一般貸倒引当金をティア2に含めることができる。この仕組みは、ある意味では今回のバーゼル委員会のプレスリリースが述べているとおり、「引当に関する監督当局の対応が国ごとに異なることに対処するための現実的な妥協の所産」であった。
 

 EL/UL問題に関する新提案の概要

   バーゼル委員会は、パブリックコメントを踏まえ、本件について再検討した結果、内部格付手法の下でのリスクアセット(分母)の計測についてはULのみをベースとする一方、ELと引当金(個別貸倒引当金と一般貸倒引当金の合計額)の差異を資本の要素(分子)において調整することを提案し、これに関する業界の意見を改めて本年末まで求めることとした。今回の提案を自己資本比率の計算式で表すと次のとおりである。
 

i)

もし、EL > P(=GP(一般貸倒引当金)とSP(個別貸倒引当金)の合計) ならば、
 

{Tier1 - 50%(ELP)} + {Tier2’excl.GPT2)- 50%(EL - P)}


UL * 12.5


ii)

もし、P > ELならば、
 
Tier1 + {Tier2’excl.GPT2)+ (P - EL)}

UL * 12.5

 

(但し、P - EL はTier2の20%以下。)


 今回のバーゼル委員会における協議の過程で問題となったのは、引当金がELを下回る場合と上回る場合で対称的に考えてよいか、という点であった。これについては、引当金がELを下回る場合は、その差異を100%勘案しティア1とティア2から半分ずつ控除することとする一方、引当金がELを上回る場合は、その差異を資本の要素に加えることに慎重な意見が多かったため、ティア2にその20%を限度として加算できるとの枠組みをとることとした。その際、分母がULのみになったこととの見合いで、分子(ティア2)に一般貸倒引当金を含める現行の枠組みは撤廃され、新たな枠組みに置き換えられることとなった。
 新提案は、リスクアセット(分母)の計測をULのみとすることにより、業界の要望に応えたことに加え、以下の2点でメリットがあると考えられる。まず、CP3の枠組みにおいては、自己資本比率算出の際に引当金を分母と分子の両方で勘案することとしており、さらに一般貸倒引当金と個別貸倒引当金の扱いが整合的でないという問題があったが、新提案はこれを分子で一括して処理することにより簡素化した。また、CP3においては、クレジットカード等のリボルビング型消費者信用に限り、将来の利ざや(FMI:Future Margin Income)をELの削減要素として勘案できる枠組みであったが、その他のポートフォリオとのバランスや監督上の問題が指摘されていたところ、新提案ではこの枠組みは除かれることとなった。
 内部格付手法に関するこの新提案の詳細については、前述のBISホームページに加え、日銀及び金融庁のホームページでも仮訳を掲載しており、本年12月31日までコメントを受け付けている。なお、標準的手法については変更しない方向であるが、これについても併せてコメントが求められている。
 

 今後の見通し

   今回のバーゼル委員会では、マドリッドにおいて、民間との意見交換を図るため恒例となっているIIF(国際金融協会)との会合を本会合に先立ち開催した。その際、IIF側からは、各銀行が新BIS規制に対応するための準備作業を既に開始している状況にかんがみ、最終合意を半年以上遅れさせないで欲しいとの強いメッセージが送られた。
 これを踏まえ、今後バーゼル委員会では、EL/UL問題に関する新提案についての市中協議と並行して、作業部会レベルにおいて、証券化の取扱いの簡素化、クレジットカードの与信枠の取扱いの見直し、信用リスク削減手法の取扱いの再検討等に期限を切って取り組むこととしており、来年1月中旬に予定している次回会合において、市中協議の結果を評価するとともに、これらの議論の進展状況を確認することになる。その際、同委員会としては、引き続き新BIS規制による全体的な所要自己資本の水準を現行規制と比較して重くも軽くもしないとの目標を維持しているため、内部格付手法における所要自己資本の水準調整が重要な論点になり得ると予想される。
 なお、残された論点については、バーゼル委員会として遅くとも来年 (2004年)央までに解決する決意が明らかにされたところであり、2006年末の新BIS規制の実施予定時期については、今のところ変更されていない。
 

 新BIS規制の実施に向けて

   今回のバーゼル委員会に当たり、業界からは、銀行が新BIS規制の実施に備え準備を進める際に、できる限り不確実性を取り除いてもらいたいとの要望が寄せられていた。プレスリリースは、こうした声に応えて以下の段落を盛り込んだところである。
     「当委員会は、銀行が新合意の実施に向けた作業を進めていることを歓迎し、そうした作業の継続を推奨する。当委員会はこのプレスリリースで述べるように追加的な検討を進めているが、これによって、銀行が新合意に向けた準備のためにデータベースやリスク管理システムを改善する必要性が変化することはないと考えている。」
   当局側においても、新BIS規制の実施に向けての対応を強化しつつある。日銀及び金融庁においては、国内実施の枠組みに関し全銀協等との間で意見交換の場を設けるなど、銀行による新規制対応を側面から支援する一方、金融庁監督局が中心となり、銀行法に基づく告示等の改正作業を開始している。
 新BIS規制は、銀行のリスク管理体制全般に関わるものであり、その実施に当たっては官民双方において相当の準備が求められることは否めない。しかしながら、この機会にリスク感応的な枠組みの導入に向け努力することは、基本的により強靭な金融システムの構築に資するものと考えられる。金融庁としては、できる限り速やかにバーゼル委員会において良い合意に至るよう、引き続き積極的に協議に参加するとともに、新規制実施に向けた準備についても最善を尽くしてまいりたい。
 
(文中意見にわたる部分は筆者の個人的見解である)

【金融ここが聞きたい!】


 このコーナーは、記者会見における質疑・応答(Q&A)などの中から、金融を巡る時々の旬な情報をセレクトしてお届けするものです。もっと沢山ご覧になりたい方は、是非、金融庁ホームページの「記者会見概要」のコーナーにアクセスしてください。
 
先日、15年9月期を対象として実施した特別検査のフォローアップの結果が公表されましたが、所感をお聞かせください。


:特別検査そのものにつきましては、その場でもペーパーの中で記されていたというふうに、説明資料の中にあったというふうに思いますが、基本的には、ご指摘のあった特に大口債務者については、事業再生に向けた取り組みが進捗しているものと、事業の実態の悪化が進んでいるものと二極化が進行しているということだと思います。数字については申し上げませんけれども、銀行の対応としても、こうした企業実態の変化を受けて、銀行の経営方針として自らその再生に向けた取り組みを実施する事例も見られていると。銀行の対応にしても変化が見られているということであろうかと思います。
 それについては、基本的には再建計画検証チームで様々な評価を行っておりますので、これを今後、監督にどのように反映していくかということを我々としても前向きに、積極的に検討をしている段階にあります。
 一方で、先般のフォローアップに関して言うならば、下位遷移がそれなりの数があったにもかかわらず、集計ベースで不良債権の処分損はかなり減少しているということが見られる。これは主要行の一般的な傾向として、今年の3月期までに引当ての水準がある程度高くなっているということの現れだというふうにも思っておりますので、再建をしっかりとやっていくと、先送り型の再建は見逃さないようにしていく。一方で、今、申し上げたように、ある程度の引当ての水準が高くなっているということを踏まえて、更に財務の健全性を目指していただく、その2点が今後特に重要だと思っています。
平成15年11月18日(火) 竹中大臣記者会見抜粋)


 特別検査のフォローアップ結果公表文についてご覧になりたい方は、金融庁ホームページの「報道発表など」から「特別検査フォローアップの結果について」(平成15年11月14日)にアクセスしてください。

 
先日、主要行に対して繰延税金資産の情報開示の拡充を行うよう要請されましたが、その期待される効果と今後更に取組が必要な点についてお聞かせください。


:繰延税金資産に関しては、今回の趣旨は皆さんご承知のように、これに関する情報開示をしようと。繰延税金資産に関しては、その予見可能性を高めようというのが1つの非常に大きなポイントになります。それともう1つは、その回収可能性についての市場の評価をしっかりとしていただけるようにしようということでありますから、今回の情報開示というのは、その意味では今までになかった大きな一歩になるだろうと思っています。
 しかし、これで全ての問題が片付くかというと、それはそんなことはあり得ないわけで、繰延税金資産等々の問題、自己資本の充実の問題は、引続き金融審のワーキンググループで、これはBISの動向等々も睨みながら、これもこの秋色々な展開があると考えられますので、しっかりと引き続き議論していかなければいけない重要課題だと思います。
平成15年10月31日(金) 竹中大臣記者会見抜粋)

 


 繰延税金資産の情報開示について、詳しくは「繰延税金資産の情報開示の拡充について」(平成15年10月31日)をご覧下さい。

【金融便利帳】


 このコーナーは、とかく専門的でわかりにくい金融に関する用語や様々な疑問について、わかりやすく解説するものです。
 今月のキーワードは「ソルベンシー・マージン比率」です。


 ソルベンシー・マージンとは「支払い能力」を意味します。保険会社は、将来の保険金などの支払いを確実に行うため責任準備金を積み立てて、通常予測できる範囲のリスクについては、これでもって対応することとされています。しかし、環境の変化などによって通常の予測を超えた出来事が起こる場合があります。例えば、大災害や異常な死亡率の発生などですが、このような場合にも契約通りの保険金を支払う義務があります。「ソルベンシー・マージン比率」とはそのような通常の予測を超えて発生するリスクに対応できる「支払い能力」をどれだけ有しているかを判断するための指標の一つとされ、平成10年の金融システム改革法による保険業法の改正により、早期是正措置の指標とされました。
   
 

 ソルベンシー・マージン比率(%)=

 

ソルベンシー・マージン総額

 

×100


リスクの合計額×1/2

と計算されます。


 次に分母、分子のそれぞれについてご説明していきます。
 


ソルベンシー・マージン総額
・資本の部合計(社員配当準備金繰入額等の社外に支出する予定の額、繰延資産等を除く。)
 
・価格変動準備金: 株式などの価格変動の著しい資産について、その価格が将来下落した時に備えるために積み立てている準備金
・危険準備金  : 予定した死亡率より実際の死亡率が高くなり、保険金等の支払いによって損失が発生する場合、または資産運用による実際の利回りが予定利率を確保できない場合に備え、積み立てている準備金 [生保]
・異常危険準備金: 大災害に備えて積み立てている準備金 [損保]
・一般貸倒引当金: 貸付金等が相手先の破産などにより回収不能となる危険に備え、積み立てているもの
・その他有価証券: 保険会社が保有するその他有価証券の時価と帳簿価格との差額含み損益
・土地の含み損益: 保険会社が保有する土地の時価と帳簿価格との差額
など
リスクの合計額
 
・保険リスク  : 大災害の発生等により保険金支払いが急増するリスク
・予定利率リスク: 運用環境の悪化により資産運用利回りが予定利率を下回るリスク
・資産運用リスク: 株価暴落・為替相場の激変などにより資産価値が大幅に下落するリスク及び貸付先企業の倒産などにより貸倒れが急増するリスク
・経営管理リスク: 業務上の運営上通常の予想を超えて発生し得るリスク

 これらの数値が先に記した数式にあてはめられ、「ソルベンシー・マージン比率」が算出されているのです。


 なお、金融庁では、保険会社のソルベンシー・マージン比率が200%を下回った場合、早期に健全性の回復を図るための措置がとられます。措置内容はソルベンシー・マージン比率の区分に応じて、下表のようになっています。
 
 
ソルベンシー・マージン比率 措 置 内 容
 200%以上 なし
 100%以上200%未満 経営健全性回復のための改善計画の提出、及びその実効命令
 0%以上100%未満 保険金支払能力充実の計画の提出と実行命令、配当・役員賞与の禁止又は抑制、契約者配当又は剰余金分配の禁止又は抑制、新規保険契約の保険料算出方法の変更、事業費抑制 等
 0%未満 期限を付した業務の全部又は一部の停止命令
 

【お知らせ】

〇 「ヤミ金融対策法のポイント」リーフレットを作成

 「貸金業規制法及び出資法の一部改正法」(いわゆるヤミ金融対策法)の成立を受け、10月29日、「貸金業の規制等に関する法律施行令の一部を改正する政令」及び「貸金業の規制等に関する法律施行規則の一部を改正する内閣府令」が公布され、併せて金融会社関係の事務ガイドライン(「金融監督等にあたっての留意事項について(第三分冊:金融会社関係 3 貸金業関係)」)を改正したところです。
 当該法令等の改正を踏まえ、今般、金融庁では法令のポイントをまとめたリーフレットを作成し、各財務局を通じて、都道府県、警察、貸金業協会、登録貸金業者、国民生活センター、日本弁護士連合会、日本クレジットカウンセリング協会、日本消費者金融協会等に配布しております。

〇 大臣・副大臣への質問募集中

 本号では休載させていただきましたが、アクセスFSAでは、読者の皆様から寄せられた金融を巡る大臣や副大臣へのご質問に、大臣・副大臣が直接お答えする【竹中大臣に質問!】、【伊藤副大臣に質問!】のコーナーを設けております。「金融庁のやっている金融行政って、よくわからないんだけれど、大臣・副大臣にこんなことを、是非、直接聞いてみたい!」というご質問がございましたら、金融庁ホームページの「ご意見箱」にお寄せください。その際、ご意見箱の件名の欄には、必ず「大臣に質問」あるいは「副大臣に質問」とご記入ください。また、本文の欄にご質問の内容をご記入下さい。ご意見箱のコーナーには、「45行以内」とありますが、「大臣に質問」、「副大臣に質問」の場合には、ご質問の趣旨を明確にさせていただくために、恐縮ですが100字以内に収めていただきますようお願いいたします。お寄せいただきましたご質問の中から1問選定させていただき、「アクセスFSA」において大臣または副大臣の回答を掲載させていただきます。大臣・副大臣へのご質問がございます方は、「ご意見箱」へどうぞ。また、「大臣・副大臣への質問募集中」にもアクセスしてみてください。

〇 新着情報メール配信サービスへのご登録のご案内

 金融庁ホームページでは、新着情報メール配信サービスを行っております。皆様のメールアドレス等を予めご登録いただきますと、毎月発行される「アクセスFSA」や日々発表される各種報道発表など、新着情報を1日1回、電子メールでご案内いたします。ご登録をご希望の方は、「新着情報メール配信サービス」へどうぞ。


【10月の主な報道発表等】
 
1日(水) 「タリバーン関係者等と関連すると疑われる取引の届出について(追加要請その22)」の発出
 
3日(金)   企業会計審議会第一部会の開催
 
6日(月)   公認会計士第2次試験合格者の発表の概要
  「貸金業の規制等に関する法律施行令の一部を改正する政令(案)」及び「貸金業の規
      制等に関する法律施行規則の一部を改正する内閣府令(案)」の公表(パブリック・コメント)
 
7日(火)   全国財務局長会議の開催
  学校における金融教育の一層の推進に資する副教材の公表
  リレーションシップバンキングの機能強化計画の概要
 
14日(火)   公認会計士の懲戒処分
    地域経済シンポジウムの開催(関東財務局)
 
16日(木) 金融機関の自己資本充実に関する税制研究会の開催
 
17日(金)   第10回金融審議会金融分科会第一部会の開催
 
21日(火)   企業会計審議会第一部会の開催
    中小企業金融に関するシンポジウム イン 大阪の開催(近畿財務局)
 
23日(木)   中小企業金融に関するシンポジウム イン 名古屋の開催(東海財務局)
 
24日(金) 金融税制に関する研究会の開催
  「貸し渋り・貸し剥がしホットライン」情報の受付・活用状況の公表
 
28日(火) 「貸金業の規制等に関する法律施行令の一部を改正する政令案」及び「貸金業の規
      制等に関する法律施行規則の一部を改正する内閣府令案」に対するパブリック・コメントの結果
 
29日(水) 事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係)の一部改正
 
31日(金)   企業会計審議会総会の開催
  企業会計審議会の意見書の公表
  主要行に対する繰延税金資産の情報開示の拡充についての要請
  金融活動作業部会(FATF)特別勧告VII(電信送金)の実施に関するお知らせの発出
   
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