【法令解説】 |
このコーナーでは、先に閉会した第156回国会で成立した金融庁関連の法律について、その経緯や内容を詳細に説明します。本号は、「ヤミ金融対策法施行に伴う貸金業規制法施行令、施行規則の一部改正について」についてです。 |
第156回国会において「貸金業の規制等に関する法律及び出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律の一部を改正する法律」が成立したことを受け、先般、同法施行のための「貸金業の規制等に関する法律及び出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律の一部を改正する法律の施行期日を定める政令」、「貸金業の規制等に関する法律施行令の一部を改正する政令」及び「貸金業の規制等に関する法律施行規則の一部を改正する内閣府令」が公布されました。本稿においては、これらの概要等について紹介致します。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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.ヤミ金融対策法の成立背景、概要 近年、ヤミ金融と呼ばれる貸金業の無登録営業、違法な高金利による貸付け、悪質な取立てなど違法行為が多発し、大きな社会問題となっています。こうした状況を受け、ヤミ金融の被害を未然に防止し、被害者の救済に資するよう、違法業者を厳しく取締るとともに、借り手を保護するために必要な措置を講じるべく、議員立法により、貸金業の規制等に関する法律及び出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律の一部を改正する法律(いわゆるヤミ金融対策法。以下「改正法」という。)が成立致しました。 改正法は、(a)貸金業者の登録要件の厳格化、(b)無登録業者に対する取締り強化、(c)取立行為規制の強化、(d)貸金業務取扱主任者制度の創設、(e)罰則強化、(f)年109.5%を超える高金利を内容とする貸付契約の無効化等の対策が講じられており、公布(平成15年8月1日)後6ヶ月以内で政令で定める日から施行されることとなっております。(なお、政令・内閣府令の整備を伴わない(b)無登録業者による広告・勧誘の禁止、(e)高金利要求罪の新設を含む罰則の強化、(f)年109.5%を超える高金利を内容とする貸付け契約の無効化、については公布後1ヶ月を経過した日である平成15年9月1日から施行されております。) (※改正法の詳しい内容につきましてはアクセスFSA第9号をご参照下さい。) |
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.「貸金業の規制等に関する法律及び出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律の一部を改正する法律の施行期日を定める政令」及び「貸金業の規制等に関する法律施行令の一部を改正する政令」について 平成15年10月29日に公布されました改正法の施行期日を定める政令において、改正法の施行日を平成16年1月1日とすることとしました。また、併せて公布されました貸金業の規制等に関する法律施行令の一部を改正する政令の概要は以下のとおりです。 |
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.「貸金業の規制等に関する法律施行規則の一部を改正する内閣府令」について 改正法の施行のため、貸金業の規制等に関する法律施行規則の一部を改正する内閣府令が上記政令と同時に公布されました。その概要は以下の通りです。 |
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バーゼル銀行監督委員会は、2003年10月10日及び11日にスペインのマドリッドで会合を開き、新BIS規制に係る「第3次市中協議案(CP3)」に対して世界各国から寄せられたコメントについて議論した。その結果、CP3の部分的な修正案について市中からの意見聴取を本年末までもう一度実施し、その上で遅くとも来年(2004年)央までに最終的な合意を目指すこととなった。本稿では、今回新たに提示された修正案の概要に加え、新BIS規制実施に向けた動きについて紹介することとしたい。 なお、CP3の概要については、当庁ホームページにも掲載している2003年4月29日付け報道発表資料「自己資本に関する新しいバーゼル合意」をご参照いただきたい。 |
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パブリックコメントの結果 |
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バーゼル銀行監督委員会は、1998年以来5年以上にわたりBIS規制の見直しに取り組んでいるが、1999年6月の第1次市中協議案、2001年1月の第2次市中協議案に続いて、2003年4月に、これまでの作業を集大成する形で第3次市中協議案(CP3)を公表した。同委員会としては、本年末までに新BIS規制について最終的に合意し、その後、国内での準備期間を経て2006年末から新規制を実施することとしていた。 CP3に対しては、2003年7月末のパブリックコメント締切りまでに、全国銀行協会等我が国からの意見を含め、計200を超えるコメントが寄せられた。コメントの内容は、国際決済銀行(BIS)のホームページ(www.bis.org)で誰でも見ることができる。これらのコメントは、規制の複雑性については懸念を示す向きがあるものの、よりリスク感応的な自己資本比率規制を目指す現在の方向性を大筋において支持するものであった。 他方、信用リスクに係る枠組みの一つである内部格付手法に関し、期待損失額(EL:Expected Loss)と非期待損失額(UL:Unexpected Loss)の合計をベースとするリスク計測手法については、業界より、非期待損失額(UL)のみをベースとする現行の実務に整合的なものとすべきとの本質的なコメントが示された(注)。すなわち、銀行の内部管理においては、ELは引当金に加え利ざやでカバーすることを前提としており、エコノミック・キャピタルの計算上も視野の外に置いているとの指摘である。これに関し、米国当局が国内規制の策定手続において改めて意見聴取を行うとともに、新規制の枠組みの見直しに意欲を見せたことから、バーゼル委員会としては、EL/UL問題への対応が当面の焦点となった。 |
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< 別 図 > |
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EL/UL問題と引当金の取り扱い |
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CP3においては、内部格付手法におけるEL+ULの枠組みに関し、各国ごとに引当に関する基準や実務が大きく異なっている実態に着目し、これを所要自己資本額に反映させるため、リスクアセット(分母)を算出する際にELと引当金の差異を考慮することになっていた。これにより、引当の基準等の違いにより各国銀行間の競争条件に差が生じることを防ぐとともに、監督上の観点からも引当水準を視野に入れた慎重な対応が可能になると考えられた。これを自己資本比率の計算式で表すと次のとおりである。 |
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Tier2’(excl. GPT2):一般貸倒引当金を除くティア2の額 GPT2:一般貸倒引当金のうちティア2に算入できる額(リスクアセットの1.25%内) SP’:個別貸倒引当金(但し、ELの範囲内) GP’:一般貸倒引当金(GPT2を超える一般貸倒引当金で、SP’とあわせて、ELの範囲内) |
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これを見ると、分母はUL+ELをベースとしつつ、ELの範囲内で個別引当金及び分子(ティア2)に含まれない一般貸倒引当金を控除して算出することになっている。他方、分子は現行規制と同じ扱いであり、リスクアセットの1.25%の範囲で一般貸倒引当金をティア2に含めることができる。この仕組みは、ある意味では今回のバーゼル委員会のプレスリリースが述べているとおり、「引当に関する監督当局の対応が国ごとに異なることに対処するための現実的な妥協の所産」であった。 |
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EL/UL問題に関する新提案の概要 |
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バーゼル委員会は、パブリックコメントを踏まえ、本件について再検討した結果、内部格付手法の下でのリスクアセット(分母)の計測についてはULのみをベースとする一方、ELと引当金(個別貸倒引当金と一般貸倒引当金の合計額)の差異を資本の要素(分子)において調整することを提案し、これに関する業界の意見を改めて本年末まで求めることとした。今回の提案を自己資本比率の計算式で表すと次のとおりである。 | ||||||||||||||||||
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今回のバーゼル委員会における協議の過程で問題となったのは、引当金がELを下回る場合と上回る場合で対称的に考えてよいか、という点であった。これについては、引当金がELを下回る場合は、その差異を100%勘案しティア1とティア2から半分ずつ控除することとする一方、引当金がELを上回る場合は、その差異を資本の要素に加えることに慎重な意見が多かったため、ティア2にその20%を限度として加算できるとの枠組みをとることとした。その際、分母がULのみになったこととの見合いで、分子(ティア2)に一般貸倒引当金を含める現行の枠組みは撤廃され、新たな枠組みに置き換えられることとなった。 新提案は、リスクアセット(分母)の計測をULのみとすることにより、業界の要望に応えたことに加え、以下の2点でメリットがあると考えられる。まず、CP3の枠組みにおいては、自己資本比率算出の際に引当金を分母と分子の両方で勘案することとしており、さらに一般貸倒引当金と個別貸倒引当金の扱いが整合的でないという問題があったが、新提案はこれを分子で一括して処理することにより簡素化した。また、CP3においては、クレジットカード等のリボルビング型消費者信用に限り、将来の利ざや(FMI:Future Margin Income)をELの削減要素として勘案できる枠組みであったが、その他のポートフォリオとのバランスや監督上の問題が指摘されていたところ、新提案ではこの枠組みは除かれることとなった。 内部格付手法に関するこの新提案の詳細については、前述のBISホームページに加え、日銀及び金融庁のホームページでも仮訳を掲載しており、本年12月31日までコメントを受け付けている。なお、標準的手法については変更しない方向であるが、これについても併せてコメントが求められている。 |
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今後の見通し |
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今回のバーゼル委員会では、マドリッドにおいて、民間との意見交換を図るため恒例となっているIIF(国際金融協会)との会合を本会合に先立ち開催した。その際、IIF側からは、各銀行が新BIS規制に対応するための準備作業を既に開始している状況にかんがみ、最終合意を半年以上遅れさせないで欲しいとの強いメッセージが送られた。 これを踏まえ、今後バーゼル委員会では、EL/UL問題に関する新提案についての市中協議と並行して、作業部会レベルにおいて、証券化の取扱いの簡素化、クレジットカードの与信枠の取扱いの見直し、信用リスク削減手法の取扱いの再検討等に期限を切って取り組むこととしており、来年1月中旬に予定している次回会合において、市中協議の結果を評価するとともに、これらの議論の進展状況を確認することになる。その際、同委員会としては、引き続き新BIS規制による全体的な所要自己資本の水準を現行規制と比較して重くも軽くもしないとの目標を維持しているため、内部格付手法における所要自己資本の水準調整が重要な論点になり得ると予想される。 なお、残された論点については、バーゼル委員会として遅くとも来年 (2004年)央までに解決する決意が明らかにされたところであり、2006年末の新BIS規制の実施予定時期については、今のところ変更されていない。 |
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新BIS規制の実施に向けて |
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今回のバーゼル委員会に当たり、業界からは、銀行が新BIS規制の実施に備え準備を進める際に、できる限り不確実性を取り除いてもらいたいとの要望が寄せられていた。プレスリリースは、こうした声に応えて以下の段落を盛り込んだところである。 | ||||||||||||||||||
「当委員会は、銀行が新合意の実施に向けた作業を進めていることを歓迎し、そうした作業の継続を推奨する。当委員会はこのプレスリリースで述べるように追加的な検討を進めているが、これによって、銀行が新合意に向けた準備のためにデータベースやリスク管理システムを改善する必要性が変化することはないと考えている。」 | ||||||||||||||||||
当局側においても、新BIS規制の実施に向けての対応を強化しつつある。日銀及び金融庁においては、国内実施の枠組みに関し全銀協等との間で意見交換の場を設けるなど、銀行による新規制対応を側面から支援する一方、金融庁監督局が中心となり、銀行法に基づく告示等の改正作業を開始している。 新BIS規制は、銀行のリスク管理体制全般に関わるものであり、その実施に当たっては官民双方において相当の準備が求められることは否めない。しかしながら、この機会にリスク感応的な枠組みの導入に向け努力することは、基本的により強靭な金融システムの構築に資するものと考えられる。金融庁としては、できる限り速やかにバーゼル委員会において良い合意に至るよう、引き続き積極的に協議に参加するとともに、新規制実施に向けた準備についても最善を尽くしてまいりたい。 |
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(文中意見にわたる部分は筆者の個人的見解である) |
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このコーナーは、記者会見における質疑・応答(Q&A)などの中から、金融を巡る時々の旬な情報をセレクトしてお届けするものです。もっと沢山ご覧になりたい方は、是非、金融庁ホームページの「記者会見概要」のコーナーにアクセスしてください。 |
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特別検査のフォローアップ結果公表文についてご覧になりたい方は、金融庁ホームページの「報道発表など」から「特別検査フォローアップの結果について」(平成15年11月14日)にアクセスしてください。 |
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繰延税金資産の情報開示について、詳しくは「繰延税金資産の情報開示の拡充について」(平成15年10月31日)をご覧下さい。 |
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このコーナーは、とかく専門的でわかりにくい金融に関する用語や様々な疑問について、わかりやすく解説するものです。 今月のキーワードは「ソルベンシー・マージン比率」です。 |
ソルベンシー・マージンとは「支払い能力」を意味します。保険会社は、将来の保険金などの支払いを確実に行うため責任準備金を積み立てて、通常予測できる範囲のリスクについては、これでもって対応することとされています。しかし、環境の変化などによって通常の予測を超えた出来事が起こる場合があります。例えば、大災害や異常な死亡率の発生などですが、このような場合にも契約通りの保険金を支払う義務があります。「ソルベンシー・マージン比率」とはそのような通常の予測を超えて発生するリスクに対応できる「支払い能力」をどれだけ有しているかを判断するための指標の一つとされ、平成10年の金融システム改革法による保険業法の改正により、早期是正措置の指標とされました。 |
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と計算されます。 | |||||||||||||||||||||||||||||||
次に分母、分子のそれぞれについてご説明していきます。 |
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これらの数値が先に記した数式にあてはめられ、「ソルベンシー・マージン比率」が算出されているのです。 |
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なお、金融庁では、保険会社のソルベンシー・マージン比率が200%を下回った場合、早期に健全性の回復を図るための措置がとられます。措置内容はソルベンシー・マージン比率の区分に応じて、下表のようになっています。 |
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〇 「ヤミ金融対策法のポイント」リーフレットを作成 「貸金業規制法及び出資法の一部改正法」(いわゆるヤミ金融対策法)の成立を受け、10月29日、「貸金業の規制等に関する法律施行令の一部を改正する政令」及び「貸金業の規制等に関する法律施行規則の一部を改正する内閣府令」が公布され、併せて金融会社関係の事務ガイドライン(「金融監督等にあたっての留意事項について(第三分冊:金融会社関係 3 貸金業関係)」)を改正したところです。 本号では休載させていただきましたが、アクセスFSAでは、読者の皆様から寄せられた金融を巡る大臣や副大臣へのご質問に、大臣・副大臣が直接お答えする【竹中大臣に質問!】、【伊藤副大臣に質問!】のコーナーを設けております。「金融庁のやっている金融行政って、よくわからないんだけれど、大臣・副大臣にこんなことを、是非、直接聞いてみたい!」というご質問がございましたら、金融庁ホームページの「ご意見箱」にお寄せください。その際、ご意見箱の件名の欄には、必ず「大臣に質問」あるいは「副大臣に質問」とご記入ください。また、本文の欄にご質問の内容をご記入下さい。ご意見箱のコーナーには、「45行以内」とありますが、「大臣に質問」、「副大臣に質問」の場合には、ご質問の趣旨を明確にさせていただくために、恐縮ですが100字以内に収めていただきますようお願いいたします。お寄せいただきましたご質問の中から1問選定させていただき、「アクセスFSA」において大臣または副大臣の回答を掲載させていただきます。大臣・副大臣へのご質問がございます方は、「ご意見箱」へどうぞ。また、「大臣・副大臣への質問募集中」にもアクセスしてみてください。 金融庁ホームページでは、新着情報メール配信サービスを行っております。皆様のメールアドレス等を予めご登録いただきますと、毎月発行される「アクセスFSA」や日々発表される各種報道発表など、新着情報を1日1回、電子メールでご案内いたします。ご登録をご希望の方は、「新着情報メール配信サービス」へどうぞ。 |
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