【ピックアップ:中小企業金融】
 
年度末金融の円滑化に関する意見交換会の開催について

 去る3月1日(月)に、金融機関代表者、関係省庁等を集め、「年度末金融の円滑化に関する意見交換会」を開催しました。
 本会合では、年度末の資金需要期を迎えることを踏まえ、竹中金融担当大臣から金融機関代表者に対して、健全な中小企業に対する資金供給の円滑化には格別の配慮をするよう要請するとともに中小企業金融の実態認識について意見交換を行いました。
 その際、竹中金融担当大臣から金融機関代表者に対して、2月26日に改訂を行った「金融検査マニュアル別冊〔中小企業融資編〕」の紹介をしたのをはじめ、融資取引に際して顧客に対して十分に説明を行うことや担保・保証に過度に依存しない融資について積極的に取組むことなどを要請しました。

<意見交換会参加機関等>
 全国銀行協会、社団法人 全国地方銀行協会、社団法人 信託協会、社団法人 第二地方銀行協会、社団法人 全国信用金庫協会、社団法人 全国信用組合中央協会、社団法人 全国労働金庫協会、農林中央金庫、日本政策投資銀行、国民生活金融公庫、中小企業金融公庫、中小企業総合事業団、沖縄振興開発金融公庫、商工組合中央金庫、社団法人 全国信用保証協会連合会


 昨年の「年度末金融の円滑化に関する意見交換会」の模様については、アクセスFSA第4号の「【トピックス】年度末金融の円滑化に関する意見交換会の開催について」にアクセスしてください。

金融検査マニュアル別冊〔中小企業融資編〕等の改訂について

 金融庁検査局では、「リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラム」において、「中小企業の実態に即した検査マニュアル別冊〔中小企業融資編〕の改訂」が盛り込まれたことから、昨年10月に「金融検査マニュアル別冊〔中小企業融資編〕改訂検討会(PT)」を設置し、7回に及ぶ検討の結果、改訂案をとりまとめ、平成15年12月22日から平成16年1月21日までパブリックコメントに付しました。
 結果、金融団体、中小企業団体及び中小企業庁等、45先から約240件の御意見が寄せられました。主なパブリックコメントとしては、「改訂された別冊の現場の検査官への周知徹底とその運用の確保について」や「具体的な取扱いの明確化及びこれらに関する詳細な質問について」等です。お寄せいただいたコメントを踏まえ、平成16年2月26日に改訂を行いました。
 また、今回の別冊改訂に併せて、現行の会計ルールを反映させる等、金融検査マニュアル等について所要の改訂を行いました。改訂のポイントは以下の通りです。

金融検査マニュアル別冊〔中小企業融資編〕改訂のポイント


.債務者との意思疎通

 金融機関が、日頃の企業訪問や経営指導などの債務者との密度の高いコミュニケーションを通じ、債務者の経営実態を適切に把握しているかを検査において、検証。
 その検証結果が良好であれば、(i)債務者区分の判断に当たって、企業の成長性や経営者の資質等に関する金融機関の評価を尊重、(ii)金融機関による再生支援の実績を引当率に反映。


.擬似エクイティへの対応(DDS)

 金融機関が、中小・零細企業向けの債権を、債務者の経営改善計画の一環として、資本的劣後ローンに転換(DDS)している場合には、債務者区分等の判断において、当該劣後ローンを資本とみなす。


.小口・多数の債権の分散効果

 検査でのサンプル抽出における金額抽出基準を現行の2,000万円から5,000万円に引き上げ。


.運用の改善
 
 赤字や債務超過といった表面的な現象のみで債務者区分を判断するのではなく、キャッシュフローを重視することを明確化。
 経営者の資質等に関する検証ポイントとして、過去の約定返済履歴等の取引実績や経営者の経営改善に対する取組み姿勢を追加。
 債務者の実態に関する疎明資料として、金融機関側が債務者管理や自己査定のために用いる資料を活用できることを明確化。


.事例の大幅な拡充

 現行の16事例から27事例に拡充。


 「金融検査マニュアル別冊〔中小企業融資編〕」について、詳しくは金融庁ホームページの「政策ピックアップ」の「金融検査マニュアル別冊(中小企業融資編)」のコーナーやアクセスFSA第14号から続く「集中連載:金融検査マニュアル別冊〔中小企業融資編〕の改訂について」(第1回【改訂の背景】、第2回【「債務者との意思疎通」、「擬似エクイティへの対応」】、第3回【「運用の改善」、「検証ポイントの検討と事例の大幅な拡充(その1)」】)にアクセスしてください。


【集中連載】
 
金融検査マニュアル別冊〔中小企業融資編〕の改訂について(第3回:「運用の改善」、「検証ポイントの改訂と事例の大幅な拡充(その1)」)

 金融検査マニュアル別冊〔中小企業融資編〕は、中小企業向け融資に焦点を合わせた金融検査の手引書(事例集)です。金融機関も融資に当たって参考にしており、借り手である中小企業の皆様にも参考になると思われます。
 金融庁は、中小企業の実態を反映したより一層きめ細かな検査を目指して、この金融検査マニュアル別冊〔中小企業融資編〕を改訂しました。
 アクセスFSAでは、第14号より金融検査マニュアル別冊〔中小企業融資編〕の改訂の内容についてより多くの方々に知っていただくため詳細な解説を連載しており、第1回目の「改訂の背景」第2回目の[「債務者との意思疎通」、「擬似エクイティへの対応」] に続いて、今回は「運用の改善」、「検証ポイントの検討と事例の大幅な拡充(その1)」について記載します。


.「運用の改善」
 
(1 )キャッシュフロー重視の明確化
 キャッシュフロー重視の明確化については新たな施策ではなく、今まで実施していた検査においても、重視していた点です。
 なぜ、中小・零細企業の資産査定において、キャッシュフローを重視するのかというと、中小・零細企業は総じて景気の影響を受けやすいこと等、損益計算表や貸借対照表に現れる表面的な事象が、必ずしもその実態を現すものではないことから、キャッシュフロー(資金繰り)により、債務者の実態を把握することを明記したものです。
 今回のパブリックコメントでの意見において、キャッシュフローの計算方法を示して欲しいとの意見も寄せられたところです。
 例えば、中小企業の代表者が多大な報酬を得ていても、その報酬は個人の借入金の返済に充てられていれば、代表者との一体性を勘案しても、企業のキャッシュフローとはみれない場合もあれば、逆に代表者が生活を切り詰め、企業に対して、資金を供給している場合には、企業のキャッシュフローとしてみることができると考えられます。
 このように、中小・零細企業のキャッシュフローは様々であり、一律的な基準を設けることは適切ではないと回答しているところです。
(2 )疎明資料の明確化
 検査では、債務者の実態を把握するために、様々な資料が必要となりますが、この資料は、金融機関の通常の債務者管理や自己査定での判断の元となった資料です。
 当該資料については、債務者の実態を示す資料であればよいのであって、検査の為に作成する必要はないと考えています。
 例えば、金融機関が通常の債務者管理の際に利用する資金繰表は、正式なキャッシュフロー計算書ではありませんが、債務者の実態を現す資料であれば、検査で活用することになります。


.「検証ポイントの改訂と事例の大幅な拡充」
 
(1 )経営改善計画の取扱い
 今回の改訂は、中小・零細企業等の場合、経営改善計画等の進捗状況については、○必ずしも精緻な経営改善計画等を作成できないこともあること、○総じて、景気の影響を受けやすく一時的な収益悪化が発生しやすいこと等を勘案したものです。
 経営改善計画については、以下の3点について記載しています。
 1点目として、債務者が経営改善計画等を策定していない場合であっても、債務者の実態に即して金融機関が作成・分析した資料を踏まえて債務者区分の判断を行うことが必要であること。
 これは、中小企業が精度の高い経営改善計画等を策定できなくとも、金融機関がリレーションシップを発揮して、その作成を行っている現状を勘案したものです。
 2点目として、経営改善計画等の進捗状況が計画を下回る場合であっても、その進捗状況のみをもって機械的・画一的に判断するのではなく、計画を下回った要因について分析するとともに、今後の経営改善の見通し等を検討することが必要であること。
 これは、別冊のアンケートにおいても、相当のご意見を頂いた点です。金融検査マニュアルでは、8割の進捗状況と記載していますが、これを引き下げて欲しいとの意見が多数寄せられました。しかしながら、一定計数を示すのではなく、その債務者が本当に立ち直れるか否かを、判断することが重要であるとの考えにより、「計画を下回った要因について分析するとともに、今後の経営改善の見通し等を検討すること」と記載することにしました。
 3点目として、経営改善計画等の進捗状況や今後の見通しを検討する際には、キャッシュフローの見通しをより重視することが適当としました。
 この点は、前記のキャッシュフローの重視においても記載したように、中小企業の実態を判断するには、キャッシュフローが最も適切な実態を現すこととなるからです。

 次回については、「検証ポイントの改訂と事例の大幅な拡充」の中で、貸出条件緩和債権の取扱いと、別冊以外の金融検査マニュアルの改訂部分について、記載したいと考えています。そして、第5回目に、パブリックコメントを踏まえた修正点と、パブリックコメントの考え方の補足をしたいと考えております。


 「金融検査マニュアル別冊〔中小企業融資編〕」について、詳しくは金融庁ホームページの「政策ピックアップ」のコーナーにある「金融検査マニュアル別冊(中小企業融資編)」にアクセスしてください。
 金融検査については、アクセスFSA第10号の「金融便利帳:金融検査」で解説しておりますので、アクセスしてみてください。

【法令解説】
 
「証券取引法等の一部を改正する法律」の施行に伴う政府令等の整備について


.はじめに
 第156回国会において、「証券取引法等の一部を改正する法律」(平成15年法律第54号(以下「改正法」という。)が平成15年5月30日に公布されました。その主な改正部分が本年4月1日に施行されるため、先般、関係政令及び関係府令等について改正・制定を行いました(平成16年1月30日公布、なお、一部の内閣府令については3月下旬に改正の予定)。また、平成14年12月16日の金融審議会第一部会の報告を踏まえ、証券会社や投資信託委託業者の最低資本金を引き下げるための関係政令の改正を同時に行いました。本稿では、これらの政令及び府令等の改正・制定の概要について、説明を行いました。
 

(参

考) 平成16年1月30日に公布された関係政府令及び今後、公布を予定している内閣府令は、以下のとおりです。
 
(1 ) 証券取引法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備等に関する政令(平成16年1月30日政令第9号)
 
 ・ 証券取引法施行令の一部改正(第1条)
 ・ 外国証券業者に関する法律施行令の一部改正(第2条)
 ・ 投資信託及び投資法人に関する法律施行令の一部改正(第3条)
 ・ 有価証券に係る投資顧問業の規制等に関する法律施行令の一部改正(第4条)
 ・ 金融先物取引法施行令の一部改正(第5条)
(2 ) 証券仲介業者に関する内閣府令(平成16年1月30日内閣府令第1号)
(3 ) 外国証券取引所に関する内閣府令(平成16年1月30日内閣府令第2号)
(4 ) 証券取引法第161条の2に規定する取引及びその保証金に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令(平成16年1月30日内閣府令第3号)
 
 ・ 証券取引所に関する内閣府令の一部改正(第2条)
 ・ 証券会社の行為規制等に関する内閣府令の一部改正(第5条)
 ・ 銀行法施行規則の一部改正(第8条)
 ・ 金融先物取引法施行規則の一部改正(第14条)
 ・ 証券会社に関する内閣府令の一部改正(第25条)
 ・ 金融機関の証券業務に関する内閣府令の一部改正(第26条)
 ・ 外国証券業者に関する内閣府令の一部改正(第28条)
(5 ) 今後改正を予定している主な内閣府令(3月下旬公布予定)
 
 ・ 金融機関の信託業務の兼営等に関する法律施行規則
 ・ 有価証券に係る投資顧問業の規制等に関する法律施行規則
 ・ 投資信託及び投資法人に関する法律施行規則


.法改正の概要
 改正法では、証券市場の構造改革の促進を図る観点から証券取引法等の改正が行われましたが、今般の政令・府令の改正等に関係する主な内容は、以下のとおりです。
 
(1 )有価証券の販売経路の拡大・多様化を図る観点から、証券会社等の委託を受けて、証券会社等と顧客との間の有価証券の売買の媒介等を営業として行う証券仲介業制度を創設しました。(証券取引法の一部改正)
(2 )証券会社等の信頼性の一層の向上を図るため、証券会社等の経営に影響力を有し得る主要株主(原則として20%以上の議決権保有者)について、不適格者を排除するための制度を導入しました。(証券取引法、投資信託及び投資法人に関する法律、有価証券に係る投資顧問業の規制等に関する法律の一部改正)
(3 )我が国証券取引所の国際競争力の強化と流動性の向上を図る観点から、これまで証券取引所の5%超の議決権保有を一律に禁止していたルールを改め、証券取引所の主要株主(原則として20%以上の議決権保有者)について認可制を導入し、また証券取引所の持株会社制度を創設しました。(証券取引法の一部改正)
(4 )海外証券取引所が端末を国内に設置することについて、認可制とするなど、投資家保護の観点からルールの明確化を行いました。(証券取引法の一部改正)
(5 )許可を受けた外国証券業者が、国内に支店を設置することなく、我が国の取引所市場の取引参加者となって直接発注することを可能とする制度(以下「許可外国証券業者制度」という。)を創設した。(外国証券業者に関する法律の一部改正)


.「証券取引法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備等に関する政令」の概要について
 
(1 )証券会社等の最低資本金の引き下げ
 平成14年12月16日の金融審議会第一部会において取りまとめられた「証券市場の改革促進」において、「競争を通じて特色ある金融サービスの提供が行われるようにするため、証券会社においては顧客資産の分別管理や投資者保護基金制度の整備が行われており、また、投資信託委託業者、認可投資顧問業者においては顧客資産の預託の受入の禁止等の投資家保護の仕組みが整備されていることも踏まえつつ、参入促進の観点から、証券会社、投資信託委託業者、認可投資顧問業者の最低資本金を現行の1億円から5千万円程度に引き下げることが適当である。」と提言されたことを受け、今般の改正において、証券会社、外国証券会社、投資信託委託業者の最低資本金をそれぞれ5千万円に引き下げるための措置を行いました(証券取引法施行令第15条、外国証券業者に関する法律施行令第6条第1項、投資信託及び投資法人に関する法律施行令(以下「投信法施行令」という。)第10条)。施行日は、他の改正部分と同様、本年4月1日となっています。なお、認可投資顧問業者の最低資本金の引き下げについては、別途、内閣府令の改正により措置を行う予定であります( 7.(2)参照)。
(2 )証券会社等の主要株主に関する改正
 証券取引法において、原則として証券会社の議決権の20%以上を保有することとなった場合には主要株主の届出が義務付けられましたが、(i)証券取引法第28条の4第4項において、保有する議決権の数の判定に際し、政令で定める特別な関係を有する者が保有する議決権についてもこれを保有するものとみなすとされたことから、この「特別な関係」として、議決権の共同行使を合意している関係や夫婦の関係などを定めた(証券取引法施行令第15条の2)ほか、(ii)主要株主の届出先をその本店又は主たる事務所(個人の場合は住所又は居所)の所在地を管轄する財務局長(当該所在地が福岡財務支局の管轄区域内の場合には、福岡財務支局長。以下同じ。)とするなど、金融庁長官の権限の委任について規定しました(証券取引法施行令第42条の2)。なお、(i)については投資信託委託業者及び認可投資顧問業者の主要株主の「特別な関係」についても同様の措置を行っており(投信法施行令第14条の2、有価証券に係る投資顧問業の規制等に関する法律施行令(以下「投資顧問業法施行令」という。)第14条の3)、(ii)については認可投資顧問業者の主要株主の届出などについて同様の措置を行いました(投資顧問業法施行令第23条)。
(3 )証券仲介業制度に関する改正
 証券仲介業者について、(i)証券取引法第66条の12において、証券仲介業者は顧客の金銭や有価証券の預託の受入れが禁止されると同時に、政令で定める密接な関係を有する者にそれらを預託させることも禁止されていることから、この「密接な関係を有する者」として、証券仲介業者の親族や役員・使用人及び証券仲介業者と支配・被支配関係にある者を定めた(証券取引法施行令第18条の2)ほか、(ii)証券仲介業の登録の申請先を登録申請者の本店又は主たる事務所の所在地を管轄する財務局長とするなど、金融庁長官の権限の委任について規定しました(証券取引法施行令第43条の2)。
(4 )外国証券取引所に関する改正
 証券取引法第155条の3第2項第1号において、海外証券取引所の国内における端末設置の認可基準の一つとして外国有価証券市場を開設してから政令で定める期間を経過していることを求めていることから、その期間を3年と定めました(証券取引法施行令第19条の4)。なお、金融先物取引法においても、海外金融先物取引所による国内の端末設置について認可制とするなど、証券取引法と同様の措置が講じられたことから、金融先物取引法施行令においても、認可の要件として必要な経験年数を3年と定めました(金融先物取引法施行令第2条の5)。


.証券仲介業者に関する内閣府令について
 
(1 )制定の趣旨
 証券取引法において、証券仲介業制度が創設されたことに伴い、「証券仲介業者に関する内閣府令(以下「仲介業府令」という。)」を新たに制定し、証券仲介業者の登録手続に関する事項や、業務に関する規制などを規定することとしました。
(2 )規定の主な概要
 
 登録の申請について(第1条〜第4条)
 証券取引法第66条の3第1項の証券仲介業の登録申請書の記載事項について、同項第6号の「その他内閣府令で定める事項」として(i)個人の登録申請者及び法人の登録申請者の役員が常務に従事している他の会社の商号及び事業の種類、(ii)法人の登録申請者の役員の兼業、(iii)登録申請者の事故による損失の補てんを行う所属証券会社等の商号等(所属証券会社等が複数の場合)を定めました。(iii)については、所属証券会社等が複数の場合、責任の所在が不明確となりうる事態も想定されることから、一義的に損失の補てんを行う所属証券会社等を明確化し、投資者保護に支障が生じることを防止するために設けられたものです。また、同条第2項の添付書類について、同項第2号の「業務の内容及び方法として内閣府令で定める書類」として(ア)業務の内容及び方法を記載した書面、(イ)業務分掌の方法(法人の場合)を、同項第4号の「その他内閣府令で定める書類」として(ウ)個人の登録申請者又は法人の登録申請者の役員の履歴書及び住民票の抄本、(エ)役員が登録拒否要件に該当しないことを誓約する書面、(オ)委託契約書の写し及び(カ)登録申請者の事故による損失の補てんを行う所属証券会社等について定める契約書の写しを、それぞれ定めました。また、登録申請書の様式を別紙様式第1号に定めました。
II  標識の掲示について(第8条)
 証券取引法第66条の7第1項において、証券仲介業者の営業所等への標識の掲示が義務付けられており、その様式を別紙様式第2号に定めました。なお、営業所等が無人端末であることも想定されることから、これに対応する標識の様式も定めています。
III  明示義務について(第9条)
 証券取引法第66条の10において証券仲介業者が証券仲介行為を行う際に事前明示を行わなければならない事項が定められていますが、同条第4号の「その他内閣府令で定める事項」として、顧客が取引条件などをあらかじめ確認した上で取引を行うことができるようにするため、(i)取引につき顧客が支払う金額又は手数料が所属証券会社等間で異なる場合は、その旨、(ii)投資顧問業を兼業する際に、投資顧問業の顧客に対する証券仲介行為により得る報酬の額、(iii)顧客の取引の相手方となる所属証券会社等の商号等(所属証券会社等が複数の場合のみ)を定めました。
IV  禁止行為について(第13条)
 証券取引法第66条の13において証券仲介業者の禁止行為が定められています。同条第3号の「内閣府令で定める行為」として、証券会社の行為規制等に関する内閣府令(以下「行為規制等府令」という。)第4条に規定されている証券会社の禁止行為のうち、有価証券の売買の媒介、募集の取扱いや勧誘行為など、証券仲介業者が行い得る業務に対する規制について、証券仲介業者に対しても基本的に同様の規制(虚偽又は誤解を生ぜしめるべき表示をする行為、実勢を反映しない作為的相場が形成されることを知りながら有価証券の売買等の媒介をする行為などの禁止、など)を設けたと同時に、証券仲介業者が投資顧問業を兼業する際に、当該業務に係る顧客の取引を結了させるため他の顧客に対して有価証券の売買などを勧誘する行為など、兼業を行う際の禁止行為を規定しました。
 業務の状況に是正を加えることが必要な場合(第15条)
 証券取引法第66条の14において準用する同法第43条第2号の「業務の状況が公益に反し、又は投資者保護に支障を生ずるおそれがあるものとして内閣府令で定める状況」として、行為規制等府令第10条に規定されている証券会社の業務の状況につき是正を加えることが必要な場合のうち、(4)と同様の観点から証券仲介業者にも適用すべき規制について、同様の規定(金融機関との共同店舗において業務を営む際に誤認防止を講じていない状況や、投資信託の受益証券の所謂乗換え勧誘に際し、重要な事項について説明を行っていない状況、など)を設けたと同時に、証券仲介業者が知り得た顧客情報を所属証券会社等に提供する場合には、一定の場合を除き、顧客の書面による同意が必要である旨の規定を設けました。
VI  証券仲介業者に関する報告書及び法定帳簿の作成義務(第16条、第18条)
 証券取引法第66条の15第1項において証券仲介業者が営業年度ごとに提出を義務付けられている証券仲介業に関する報告書について、別紙様式第3号に定めた。その具体的な内容、証券仲介業者の限定された業務内容等に鑑み、証券仲介業に係る口座の状況や受入手数料の状況などとしました。また、証券取引法第188条の規定による所謂法定帳簿については証券仲介補助簿のみを規定し、その記載内容について別表第1に定めました。


.外国証券取引所に関する内閣府令

 証券取引法において、海外証券取引所端末の国内設置についてルールが明確化されたことに伴い、「外国証券取引所に関する内閣府令(以下「外国証券取引所府令」という。)」を新たに制定し、外国証券取引所の認可の手続きに関する事項等を規定することとしました。
 具体的には、認可申請書の記載事項及びその添付書類について定めた(第4条、第5条)ほか、法第155条の5において作成が義務付けられている業務報告書や、法第188条に基づく外国証券取引所府令第9条において作成が義務付けられた取引高報告書について、それぞれ別紙様式第1号及び別紙様式第2号に記載内容を定めるなど、所要の事項について規定を整備しました。


.証券取引法第161条の2に規定する取引及びその保証金に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令
 
(1 )証券取引所に関する内閣府令の一部改正
 証券取引法において、証券取引所の株主に関するルールの見直しが行われたことから、対象議決権保有者(証券取引所の総株主の議決権の5%を超える議決権の保有者)の届出及び証券取引所の主要株主や証券取引所持株会社の認可の手続について、届出書及び認可申請書の記載事項や、その添付書類の内容など、必要な事項を定めたほか、法第188条の規定により証券取引所持株会社に対し提出を義務付ける書類について定める(第30条の2)などの改正を行いました。
 なお、今回の改正において、証券取引所持株会社に関する規定を盛り込んだことから、内閣府令名を「証券取引所及び証券取引所持株会社に関する内閣府令」に改めました。
(2 )証券会社の行為規制等に関する内閣府令の一部改正
 証券取引法第66条の22において、証券会社は委託を行う証券仲介業者の損害賠償義務を負う旨が規定されているが、さらに、行為規制等府令において、証券会社の業務の状況につき是正を加えることが必要な場合として、「委託を行った証券仲介業者の証券仲介業に係る法令に違反する行為を防止するための措置が十分でないと認められる状況」を規定し、委託を行う証券仲介業者に対する証券会社の監督責任について定める(第10条第12号)などの改正を行いました。
(3 )金融先物取引法施行規則の一部改正
 金融先物取引法において、証券取引所と同様の観点からその株主ルールや持株会社制度の創設について同様の改正が行われたと同時に、海外金融先物取引所の国内における端末設置についてルールが明確化されたことに伴い、証券取引所に関する内閣府令及び外国証券取引所府令と同様の措置を行いました。
(4 )証券会社に関する内閣府令の一部改正
 証券会社の主要株主規制の導入に伴い、証券会社の主要株主の届出書である対象議決権保有届出書を別紙様式第1号の2に定めたほか、主要株主の議決権の判定に際し、保有の様態などを勘案して保有する議決権から除く議決権として、信託業を営む者が信託財産として保有する議決権(自ら行使することができるものを除く)などを定める(第7条の3)とともに、議決権の保有割合を計算する際の総株主の議決権の数について原則として主要株主となった日の総株主の議決権の数とする一方で、例外として直前期の有価証券報告書に記載されている総株主の議決権の数などを用いることができる旨(第20条の2第2項)などを規定しました。また、新たに証券業の登録申請を行う際の添付書類として、主要株主に証券取引法第28条の4第10号又は第11号の不適格要件に該当する者がいない旨の誓約書を追加しました(第5条第6号)。
(5 )外国証券業者に関する内閣府令の一部改正
 許可外国証券業者制度の導入に伴い、許可外国証券業者の許可申請書の記載内容を別紙様式第1号に、営業報告書の記載内容を別紙様式第2号にそれぞれ定めました。また、許可外国証券業者が国内の証券取引所に直接発注を行うことに鑑み、外国証券業者に関する法律第14条第4項においては証券取引法第42条に規定する証券会社の禁止行為のうち取引の公正性の確保の観点から許可外国証券業者に適用する必要がある規制を準用することとしています。このため、同項において準用する同条第1項第9号の「内閣府令で定める行為」として、行為規制等府令第4条に規定されている証券会社の禁止行為のうち、必要な規制(実勢を反映しない作為的相場を形成させるべき一連の有価証券の売買取引の禁止、など)について、許可外国証券業者に適用するための改正(第24条第23項)などを行いました。
(6 )銀行法施行規則の一部改正
 証券仲介業制度の創設に伴い、銀行法の改正が行われ、銀行の子会社の範囲に証券仲介業者が新たに加わったことから、その業務範囲などについて整理を行った。なお、長期信用銀行法施行規則、信用金庫法施行規則、協同組合による金融事業に関する法律施行規則、保険業法施行規則、労働金庫法施行規則(※1)、農業協同組合及び農業協同組合連合会の信用事業に関する命令(※2)、漁業協同組合等の信用事業に関する命令(※2)、農林中央金庫法施行規則(※2)についても同様の改正を行いました。
 
(注
(※1)については、労働金庫法施行規則の一部を改正する命令(平成16年内閣府・厚生労働省令第一号)において改正を行いました。
(※2)については、農業協同組合及び農業協同組合連合会の信用事業に関する命令等の一部を改正する命令(平成16年内閣府・農林水産省令第1号)において改正を行いました。


.今後改正を予定している主な内閣府令
 
(1 )金融機関の信託業務の兼営等に関する法律施行規則の一部改正
 昨年の法改正により信託業務を営む金融機関に投資一任業務が解禁されたことに伴い、金融機関の信託業務の兼営等に関する法律施行規則において信託業務を営む金融機関が行うことのできない業務として規定されている投資顧問業を削除する改正を行います。
(2 )有価証券に係る投資顧問業の規制等に関する法律施行規則の一部改正
 認可投資顧問業者の主要株主規制の導入に伴い、認可投資顧問業者の主要株主の届出書を定める等、証券会社に関する内閣府令と同様の措置を行うほか、ラップ口座の円滑な実施のため、昨年の法改正において措置された自己売買記録の顧客への書面交付義務の免除のための承認基準として、(i)証券会社の自己売買を行う部門と投資一任業務を行う部門との組織的分離によるこれらの部門相互の情報遮断、(ii)内部管理部門の独立性の確保等、法令遵守体制の整備等を要件として規定する等の制度整備を図ります。また、証券会社、外国証券会社、投資信託委託業者と同様、認可投資顧問業者の最低資本金を現行の1億円から5千万円に引き下げるための措置を行うほか、法改正において信託業務を営む金融機関への投資一任業務が解禁されたことに伴い、認可基準等の制度整備を行います。
(3 )投資信託及び投資法人に関する法律施行規則の一部改正
 投資信託委託業者の主要株主規制の導入に伴い、投資信託委託業者の主要株主の届出書を定める等、証券会社に関する内閣府令と同様の措置を行うほか、公募の範囲の人数計算について、適格機関投資家が含まれている場合における当該適格機関投資家を除くための要件の改正を行います。
(文中意見にわたる部分は筆者の個人的見解である)


 改正法をご覧になりたい方は、金融庁ホームページの「国会提出法案」から「第156回国会における金融庁関連法案」に入り、「証券取引法等の一部を改正する法律(平成15年3月14日提出、平成15年5月23日成立)」にアクセスしてください。

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