【集中連載】
 
ペイオフ解禁拡大(第1回:ペイオフ解禁拡大(本格実施)とは?)


.はじめに
 ペイオフ解禁拡大(「全面解禁」とか「本格実施」とか様々な表現がなされているようですね。この特集では、ペイオフ解禁拡大又はペイオフ本格実施という表現を使います。)まであと数ヶ月となりました。
 そこで、本誌では、ペイオフ解禁拡大(本格実施)を更に皆さんの身近なものとしていただくため、金融庁に寄せられた質問などへの回答や、金融庁がペイオフ解禁拡大のために取組んでいる施策などの内容を中心に特集を組むこととしました。
 本号から来年3月号までの特集をご覧頂き、皆さんがペイオフに対して持つ不安や疑問を解消して、来る4月1日を迎えましょう。


.ペイオフ解禁拡大(本格実施)とは?
 さて、来年4月1にペイオフ解禁拡大を迎えますが、一体何が起こるのか、正確に答えられる方はいるでしょうか?
 まずは、預金保険制度を説明する必要がありますね。預金保険制度とは、万が一金融機関が破綻した場合でも、皆さんの預金の一定額までと、決済のために振り込んだ資金等を保護しながら、円滑に金融機関の破綻処理を行うための仕組みのことです。
 そして、来年4月1日に預金保護の範囲が変わることを、ペイオフ解禁拡大(本格実施)と呼んでいます。
 具体的には、図のように、現在(平成16年11月)、全額保護されている普通預金、当座預金、別段預金のうち、普通預金及び別段預金の一部が全額保護ではなくなり、定期預金などと同様に、1つの金融機関ごとに1人当たり元本1千万円までとその利息が保護されることになるのです。こうして預金を取り扱う金融機関が破綻しても、最小限の預金を保護し連鎖破綻などが起こらないように配慮しつつ、破綻金融機関の営業などを受皿となる金融機関に譲渡し、その後の破綻処理を円滑に進めるための制度が預金保険制度なのです。

(図)預金等の保護範囲について
預金等の保護範囲について
 
(※1 )決済用預金といい、「無利息、要求払い、決済サービスを提供できること」という3要件を満たすものです。
(※2 )当分の間、金融機関が平成15年4月以降に合併を行ったり、営業(事業)のすべてを譲り受けた場合には、その後1年間に限り、当該保護金額が1,000万円までではなく、「1,000万円×合併等に関わる金融機関の数」による金額(例えば、2行合併の場合は、2,000万円まで)になります。
(※3 )定期積金の給付補てん金、金銭信託における収益の分配等も利息と同様保護されます。

 では、来年4月1日以降も全額保護される預金はあるのでしょうか?
 図の右上に「利息がつかない等の要件を満たす預金」と書いてありますね。これを「決済用預金」と言い、「利息が付かないこと(無利息)、いつでも払い戻し請求できるもの(要求払い)、振込みなどの決済サービスに使うことができる」という3つの要件を満たしたものは17年度以降も、引き続き、全額が保護されます。
 この決済用預金については、皆さんから様々な照会を受けていますので、12月号から2月号にかけて特集を組む予定です。


.お知らせ
 さて、このペイオフ解禁拡大に向け、金融庁では皆さんにこの預金保険制度をわかりやすく広報することに努めています。特に金融広報中央委員会が主催する「全国キャラバン金融講座」には金融庁として後援し、10月23日の東京・新宿会場では伊藤大臣が講演を行いました。
 ちなみにこの日は、リードスピーカーの藤沢久美氏(ソフィア・バンク副代表)も、ペイオフ解禁拡大の概要について大変わかりやすく説明されました。
 
伊藤大臣による講演「一人ひとりの夢の実現に向けて〜ペイオフ解禁拡大・自己責任を考える〜」 伊藤大臣による講演「一人ひとりの夢の実現に向けて〜ペイオフ解禁拡大・自己責任を考える〜」

 主な内容は、(1)ペイオフ解禁拡大に向けた金融庁の施策により、不良債権問題が着実に正常化に向かっていること、(2)ペイオフ解禁拡大後は、資金の運用・管理について、預金の分散や預金以外の金融商品の活用など自ら最適と思われるスタイルを考え実践していくことが重要であること、(3)一人一人が自己責任の下でお金の新たな運用・管理を実践されるようになると、社会全体として資金の流れに変化が出ると予想されること、(4)金融機関はこうしたニーズに応えられるよう、自らの健全性を高めるとともに、経営内容の情報を判りやすく発信することが更に重要になること、(5)金融行政としては、こうした「貯蓄から投資へ」の流れがスムースに展開されるよう株式市場や公社債市場など金融・証券市場の構造改革と活性化に取り組んでいくこと、というものでした。
 また、講演後は、会場の皆さんと伊藤大臣と藤沢氏との間で活発な意見交換や質疑応答が行われ、伊藤大臣並びに藤沢氏も自身の経験なども織り交ぜて回答するなど、予定された時間を超過する程の盛況ののち無事幕を閉じました。

 なお、この日は東京会場のほか、金沢会場では白石真澄氏(東洋大学経済学部助教授)と松村淳一氏(北陸財務局理財部長)が、岡山会場では神戸孝氏(FPアソシエイツ&コンサルティング代表取締役)と岡嶋公則氏(財務省中国財務局岡山財務事務所長)が講演を行ない、両会場ともに盛んな質疑応答が行われました。
 全国キャラバン金融講座は来年3月までの間、全国22箇所で開催し、ペイオフ解禁拡大に向け「自己責任とは何か。」といったテーマのもと各界でご活躍中の方々が講演を予定しています。本誌でのペイオフ解禁拡大の特集を待ち切れない方、金融取引における自己責任とは何か?とお考えの方など、ご興味のある方は金融広報中央委員会のホームページ(http://www.caravan2004.net/)をご覧頂き、是非会場に起こしください。

 次回12月号は、「決済用預金」の要件について解説します。

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