アクセスFSA 第25号 (2004年12月)
ペイオフ広報ポスターモデル(歌原奈緒子さん)と伊藤大臣 「中小企業金融の円滑化に関する意見交換会」において挨拶する伊藤大臣
ペイオフ広報ポスターモデル(歌原奈緒子さん)と伊藤大臣(11月19日) 「中小企業金融の円滑化に関する意見交換会」において挨拶する伊藤大臣(12月6日)

目 次
【トピックス】
 ○  主要行の平成16年度中間決算について
 ○  特別検査の結果について
 ○  証券取引法等の一部を改正する法律の12月施行に伴う政省令及びガイドラインの概要について
 ○  「コングロマリット室」及び「国際監督室」の設置について
【ピックアップ:中小企業金融】
 ○  中小企業金融の円滑化に関する意見交換会の開催について
【海外最新金融事情】
 ○  経済連携協定(EPA)交渉について
【集中連載】
 ○  ペイオフ解禁拡大 (第2回:決済用預金誕生!)
【法令解説】
 ○  違法年金担保融資対策法の概要について
【金融ここが聞きたい!】
【金融便利帳】
 ○  今月のキーワード:「証券仲介業」
【お知らせ】
【11月の主な報道発表等】


【トピックス】
 
主要行の平成16年度中間決算について

 主要行は、11月22日から25日にかけて決算短信を発表しました。それを受けて、金融庁では、主要行各行が発表した平成16年度中間決算の計数等を集計し、11月25日に公表したところです。
 以下、主要行の平成16年度中間決算の概要について説明します。


.主要行の決算
 実質業務純益は、1.8兆円でした。不良債権処分損は、不良債権処理が進展していることを受けて1.1兆円となり、実質業務純益の範囲内に収まりました。株式等関係損益は、0.1兆円となりました。
 この結果、経常利益、当期利益は、それぞれ0.3兆円、▲0.0兆円となりました。


.主要行の不良債権処理の進捗状況
 不良債権(金融再生法開示債権)残高は、全体で12.1兆円となり、対16年3月期に比べ11.3%減少しました。
 破綻懸念先以下については、対16年3月期に比べ30.1%増の8.7兆円となり、要管理債権については、対16年3月期に比べ51.0%減の3.4兆円となりました。これは、金融機関自らが不良債権の処理を決定したことに伴う債務者区分の引下げがみられたことや、業況改善に伴う上方遷移がみられたこと等が要因と考えられます。
 この結果、不良債権比率は、平成16年3月期の5.2%から約0.5%ポイント減の4.7%となりました。平成14年10月30日に公表した金融再生プログラムにおける「平成16年度には、主要行の不良債権比率を現状の半分程度に低下させる」という目標の達成に向けて、順調に低下してきているものと考えております。


 主要行の平成16年度中間決算の計数等については、詳しくは金融庁ホームページの「報道発表など」から「主要行の平成16年度中間決算について《速報ベース》」(平成16年11月25日)にアクセスしてください。

特別検査の結果について


.はじめに
 金融庁は、16年9月期を対象として、主要行に対する特別検査を実施し、その結果を取りまとめ、11月12日に公表しました。


.特別検査の内容
 
(1) 特  徴:  これまで9月期においては、前期の特別検査のフォローアップを実施してきたところでありますが、今9月期においては、主要行の不良債権問題の終結を目指し、「金融再生プログラム」の達成を確実なものとするため、フォローアップにとどめず、特別検査を実施しました。
 検証対象は、既往対象者127先、新規対象者8先、計135先の大口債務者としました。

(2) 日  程:

 本年8月18日に主要行全11行に対して一斉に特別検査の実施を予告し、その後順次立入検査を行い、11月5日に全行に対して検査結果を通知しました。

(3) 検証方法:

 これまでの特別検査と同様、メイン行において検証を行い、直近の企業業績等をリアルタイムに反映した適正な債務者区分の確保を図りました。その過程において、再建計画を有する債務者については、再建計画検証チームと特別検査班が連携して再建計画の検証を行い、その結果も踏まえて債務者区分を判定しています。


.特別検査の結果
 今回の特別検査の結果により、以下のような実態が明らかとなったものと考えています。
 
(1)  今回の特別検査の結果により、主要行の大口債務者について、
 
 (a)  企業実態の二極分化が進んでいる
 (b)  主要行の引当水準が相当高くなっている
といったこれまで認められた一般的傾向が、一層明確なものとなってきていることがうかがえます。
 具体的には、
 
 (a)  事業再生に向けた取組等により経営の改善が進んでいるものと、企業実態の悪化が進んでいるものとの二極分化の進行が、過去に策定した再建計画の進捗に伴い、更に鮮明となっています。
 
(イ )再建計画の策定・実施等による債務者の経営の改善(上位遷移した19先や、債務者区分の変更がなかった74先のうち9割強)、経営が悪化した債務者の早期処理(下位遷移した39先のうち約1/3)など、主要行における不良債権処理の進展が見受けられます。
(ロ )他方、再建計画の実現可能性などに問題があったことなどから、事業再生や経営実態の改善につながっていないもの(下位遷移した39先のうち(イ)以外のものや、債務者区分の変更がなかった74先のうち(イ)以外のもの)が見受けられます。

(2)

 また、各行からのヒアリング結果では、主要行全体で見ると、大口債務者に関して、貸倒引当金が手厚くなっている一方、追加的な不良債権処理コストは低下しています(特別検査対象先についての不良債権処分損:14年3月期1.9兆円 → 16年9月期0.4兆円)。
 これは、今回の特別検査では、相当数の下位遷移がみられるものの、これまでのDCF法の定着や資産査定の厳格化に向けた諸施策により、既に相当程度引当て済みであったことから、追加の不良債権処理コストが少なくなっているものと考えられます。また、その他の要因として、債務者企業の経営実態が改善していることなども考えられます。

 以上のとおり、大口不良債権処理は一部に遅れがみられるものの、総じて金融再生プログラムの成果が着実に現れています。
 金融庁として、今後とも、金融システムの更なる健全化を推進していくこととしています。
 

(注

)債務者区分の遷移状況は16年3月期決算ベースの債務者区分と今回の特別検査の結果とを比較したものです。


 特別検査の結果について、詳しくは金融庁ホームページの「報道発表など」から「特別検査の結果について」(平成16年11月12日)にアクセスしてください。

証券取引法等の一部を改正する法律の12月施行に伴う政省令及びガイドラインの概要について

 先の第159回通常国会において成立した「証券取引法等の一部を改正する法律」は、金融資本市場の基盤整備を進め、市場機能を中核とする金融システムへの再構築を行うという観点から様々な項目につき改正が行われましたが、このうち平成16年12月1日に施行がされたものとしては、主なものとして(a)有価証券定義の見直し、(b)ディスクロージャーの合理化、(c)主要株主制度の見直し、(d)金融機関への証券仲介業務の解禁があげられます。その施行に伴い、所要の政省令の整備を行ったところです。


.有価証券定義の見直し
 組合型投資スキームについても有価証券法制による投資家保護の仕組みを適用するため、投資事業有限責任組合契約に基づく権利、投資事業有限責任組合契約に類する組合契約に基づく権利等をみなし有価証券とする証券取引法の改正が行われたことを受け(証券取引法第2条第2項第3号及び第4号)、今般の政令改正においては、これらの組合型スキームにつき(証券取引法施行令1条の3の2参照)、以下の事項を定めました。
 
(1)  みなし有価証券から除外するもの
 商品投資に係る事業の規制に関する法律の規制の適用を受ける商品投資契約(いわゆる「商品ファンド」)
(2)  みなし有価証券とされるもの
 
 ・  民法組合契約については(a)〜(c)の全ての要件を満たすもの
 
(a)  金銭その他の財産のみをもって出資の目的とするもの
(b)  一人又は数人の組合員に組合の業務の執行を委任するもの
(c)  投資事業有限責任組合契約に関する法律に掲げる事業の全部又は一部を営むことを約するもの
 ・  匿名組合契約については上記(c)の要件を満たすもの


.ディスクロージャーの合理化
 
(1)  目論見書制度の合理化
 
(a)  投資信託証券に係る目論見書の記載内容の簡素化
 投資信託証券の目論見書について、投資者のニーズに応じた情報の入手を容易とするため、「交付目論見書」と、「請求目論見書」に区分するための所要の規定整備が行われました。(政令第3条の2、特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令第15条〜第16条の3、第4号様式等)
(b)  募集又は売出しにおける条件決定時の訂正目論見書の特例
 ブック・ビルディング方式等による募集又は売出しを行う場合の訂正目論見書の交付について、これに代えて、発行価格等の決定事項を日刊新聞紙2紙による公表、又は日刊新聞紙1紙による公表、かつ、発行者等のホームページへの掲載による公表が可能となるよう、所要の規定整備が行われました。(企業内容等の開示に関する内閣府令第14条の2等)

(2)

 公開買付制度への投資証券の導入
 公開買付制度は、会社の支配権等の移動等に着目したものであることから、投資法人の支配権の獲得に繋がる議決権を有する投資証券についても公開買付制度の適用対象とするための所要の規定整備が行われました。(政令第6条、発行者以外の者による株券等の公開買付けの開示に関する内閣府令第1条、第4条、第2号様式等)

(3)

 投資事業有限責任組合等の出資持分のみなし有価証券化
 前述1.のとおり、みなし有価証券とされた投資事業有限責任組合契約に基づく権利等について、投資信託証券と同様、投資する対象資産の状況が当該権利等の価値に関する重要な情報であるため、「特定有価証券」と位置付けました。また、当該権利等の名称を「組合契約出資持分」と定義するとともに、有価証券届出書様式や私募要件の整備等の所要の規定整備が行われました。(政令第3条の4、特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令第1条、第6号の2様式、証券取引法第二条に規定する定義に関する内閣府令第5条〜第7条等)


.主要株主規制
 証券会社等の健全性を確保する観点から、主要株主制度が平成16年4月より施行されたところです(証券取引法33条の2〜33条の5)。この主要株主制度につき、証券会社の議決権を直接保有している会社と同じ企業グループに属していても、当該会社を議決権により支配はしていない会社については、「特別の関係」の範囲を変更することにより主要株主ではないこととし、主要株主の範囲を、議決権を通じて証券会社に影響を及ぼす者に限定することとしました(証券取引法施行令15条の2)。また、同様の趣旨の改正を投資信託委託業者及び認可投資顧問業者についても行いました(投資信託及び投資法人に関する法律施行令14条の2、有価証券に係る投資顧問業の規制等に関する法律施行令14条の3)。


.金融機関への証券仲介業務の解禁について
 間接金融から直接金融への流れ(「貯蓄から投資へ」)を一層促進し、多様な投資家の幅広い市場参加を促す観点から、金融機関への証券仲介業務の解禁がなされたところです。
 この施行のため、規定された主な事項は以下の通りです(金融機関の証券業務に関する内閣府令、証券会社等の事務ガイドライン等参照)
 
 ○  証券仲介業務を取り扱おうとする場合の手続
 ○  委託証券会社等の明示義務
 ○  取引の公正性を阻害して不均等な競争条件が生じないような弊害防止措置
 
 ・  非公開融資等情報の融資業務に従事する者と証券仲介業務に従事する者の間における授受の禁止
 ・  有価証券発行に伴う手取金が金融機関への融資返済に用いられる可能性を顧客に告げないで当該金融機関が証券仲介行為を行うことの禁止
 ・  金融機関が信用の供与を条件として、当該金融機関自身と取引等をさせる行為及びそのような取引等を勧誘する行為の禁止(いわゆる「抱き合わせ販売」行為及び当該行為の勧誘の禁止)
 ○  預金との誤認防止措置


 「証券取引法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う関係政令の整備等に関する政令」(平成16年政令第354号)は11月12日、「投資信託及び投資法人に関する法律施行規則の一部を改正する内閣府令」(平成16年内閣府令第90号)「投資者保護基金に関する命令の一部を改正する命令」(平成16年内閣府・財務省令第5号)は11月19日、「企業内容等の開示に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令」(平成16年内閣府令第91号)は11月22日、「金融機関に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令」(平成16年内閣府令第92号)及び「証券会社、投資信託委託業者及び投資法人等並びに証券投資顧問業者等の監督等にあたっての留意事項について −事務ガイドライン−」は11月26日に公布されました。

「コングロマリット室」及び「国際監督室」の設置について

 近年、金融界では、クロスセクション(業際化)、クロスボーダー(国際化)の大きな動きが生じています。クロスセクションの動きとしては、グループ内に銀行、証券など複数の業態の金融機関を有する金融コングロマリットの出現が広く見られるようになり、また、銀行による投資信託や保険商品などの窓口販売や、銀行への証券仲介業の解禁などといった、従来の業態の枠を越えた販売チャネルの多様化が進行している状況にあります。他方、クロスボーダーの動きとしては、国境を越えた金融取引や、金融機関の多国籍化の一層の進展が見られるところです。
 我が国金融監督行政においては、これまで既存の業態ごとの枠組みの中で職員間の連携を図ることなどを通じて、業態横断的な事象への対応や多国籍金融機関の業務・財務の健全性を確保するための適切な監督、海外金融当局との緊密な連携を図るよう努めてきたところですが、上記のような変化に対応するためには、組織的にも、クロスセクション、クロスボーダーの監督に、これまで以上に強力かつ機動的に取り組んでいく仕組みを構築する必要があります。そのような観点から、今般、監督局に金融コングロマリット及び業態横断的な取引等に係る監督事務の企画、立案及び必要な調整を行うことを目的とする「コングロマリット室」、及び、諸外国の監督当局等との事務の連絡調整等を行うことを目的とする「国際監督室」を設置しました。今後は、これらの室を中心として、各課が連携を図り、金融界のコングロマリット化、販売チャネルの多様化、金融取引・金融機関の国際化に対応した実効性のある適切な監督行政の実施に努めてまいります。


 「コングロマリット室」及び「国際監督室」の設置については、金融庁ホームページの「報道発表など」から「「コングロマリット室」及び「国際監督室」の設置について」(平成16年11月8日)にアクセスしてください。

【ピックアップ:中小企業金融】
 
中小企業金融の円滑化に関する意見交換会の開催について

 去る12月6日(月)に、金融機関代表者、関係省庁等を集め、「中小企業金融の円滑化に関する意見交換会」を開催しました。
 本会合では、年末の資金需要期を迎えることを踏まえ、伊藤金融担当大臣から金融機関代表者に対して、健全な中小企業に対する資金供給の円滑化には格別の配慮をするよう要請するとともに中小企業金融の実態認識について意見交換を行いました。
 その際、伊藤金融担当大臣から金融関係団体代表者に対して、担保・保証に過度に依存しない融資について積極的に取り組むことや融資取引に際して顧客に対して十分に説明を行うこと、さらには、自然災害による被害を受けた中小企業者に対しては、今後の復興に当たって、災害の状況、応急資金の需要等を勘案するなど、被災者の便宜を考慮した適切な措置を講ずること、なども要請しました。


意見交換会参加機関等>
 全国銀行協会、社団法人全国地方銀行協会、社団法人信託協会、社団法人第二地方銀行協会、社団法人全国信用金庫協会、社団法人 全国信用組合中央協会、社団法人全国労働金庫協会、農林中央金庫、日本政策投資銀行、国民生活金融公庫、中小企業金融公庫、沖縄振興開発金融公庫、商工組合中央金庫、社団法人全国信用保証協会連合会

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