アクセスFSA 第29号 (2005年4月)
金融経済教育懇談会において挨拶する伊藤大臣(3月3日) 金融庁ホームページを改訂しました!(4月1日)
金融経済教育懇談会において挨拶する伊藤大臣(3月3日) 金融庁ホームページを改訂しました!(4月1日)

目 次
【トピックス】
 ○  偽造キャッシュカード問題に関するスタディグループ中間報告について
 ○  貸金業制度等に関する懇談会の開催について
 ○  保険商品の販売勧誘のあり方に関する検討チームの開催について
 ○  金融経済教育懇談会の設置について
 ○  公認会計士・監査法人に対する懲戒処分等の考え方について

【集中掲載:「事務ガイドライン」及び「監督指針」の改正について】

【特集:平成17年度税制改正における金融庁関連の措置について】

【ピックアップ:中小企業金融】
 ○  「地域密着型金融の機能強化の推進に関するアクションプログラム(平成17〜18年度)」について

【集中連載】
 ○  金融改革プログラム −金融サービス立国への挑戦−(第4回:信頼される金融行政の確立)

【金融ここが聞きたい!】

【金融便利帳】
 ○  今月のキーワード:「TOB(株式公開買付制度)」

【お知らせ】

【3月の主な報道発表等】


【トピックス】
 
偽造キャッシュカード問題に関するスタディグループ中間報告について

 金融庁において開催している「偽造キャッシュカード問題に関するスタディグループ」(座長:岩原 紳作 東京大学大学院法学政治学研究科教授)は、先般(3月31日)、「偽造キャッシュカード問題に関するスタディグループ中間取りまとめ 〜偽造キャッシュカード被害に対する補償を中心として〜 」を取りまとめ、公表しました。


.偽造キャッシュカード被害に関する補償の現状及び問題点
 現行のキャッシュカード約款では、金融機関は、ATMの操作の際に、カードの磁気ストライプ上の情報により、当該カードを銀行が顧客に交付したものであると確認した上で、入力された暗証番号と届出られている暗証番号との一致を確認して預金の払戻しをすれば免責されることとなっています(全国銀行協会カード規定[試案]第10条第2項本文)。
 同時に約款では偽造キャッシュカードによる払戻しについては、金融機関がカード及び暗証の管理について預金者の責に帰すべき事由がなかったことを確認できた場合にはこの限りではないとしています(全国銀行協会カード規定[試案]第10条第2項但書)。しかし、その確認が困難であるため、実際には預金者が補償を受けられないケースが多いのではないかとの批判があるところです。


.我が国における損失負担ルールの考え方
 スタディグループの中間取りまとめでは、原則的な偽造キャッシュカードによる損失補償のあり方として、次のような考え方が示されています。
 
 (1)  偽造キャッシュカードが使用されたことによる損害は、原則として金融機関が負担すること。
 (2)  但し、預金者の責に帰すべき重大な事由がある場合には、預金者が負担すること。
 (3)  預金者の帰責事由については、金融機関に立証責任を負うこと。

 その上で、金融機関による対応に差が出ることを防止するため、具体的にいかなる場合に預金者が損失を負担するのかを、ルール上明示すべきとの考えが示されました。具体的には以下の事例が考えられます。
 
 暗証番号の管理に関して預金者の重過失が認められる場合
 
 i  他人に暗証番号を知らせた場合
 ii  暗証番号をカード上に書き記した場合
・   暗証番号の管理に関して周辺事情を総合的に勘案して、重過失を認定する際の一要素となり得る場合
 
 iii  暗証番号のメモ(又は、暗証番号を推測させる書類等)をカードと一緒に保管或いはあるいは携帯した場合
 iv  預金者自身の生年月日、預金者の自宅や勤務先の電話番号・住所など外部から容易に推察され得る番号を暗証番号として使用していた場合
 v  暗証番号と同じ番号を金融機関以外の第三者との取引で使用していた場合
 …iii、iv、vについては、それぞれの項目に該当したというだけで、直ちに重過失に該当するとは考えられないが、暗証番号管理の必要性等が周知徹底された場合等、周辺事情を総合的に勘案して、預金者の重過失を認定できる場合もあるのではないか、といった意見もあります。
 カードの管理に関して預金者の重過失が問題となる場合
 
 i  預金者自ら、カードの占有を安易に第三者に移転した場合
 ii  カードの占有を第三者に容易に奪われる状況においた場合
   以上の考え方は、偽造キャッシュカードによる払戻しなどは、本来、有効な行為ではないということに加え、カードの所持と暗証番号との二つの認証により成り立っている現在のキャッシュカードシステムにおいて、偽造キャッシュカードが作られる状況は、カードの所持による認証が機能していないことに他ならないことから、現行のキャッシュカードシステム自体に欠陥があると認められるのではないかとの考え方を前提としています。


.損失負担ルールの前提としての環境整備
 損失負担ルールを検討するにあたっては、
 
 (1)  金融機関に、偽造キャッシュカードによる被害を予防する措置を講ずるインセンティブが働くよう配慮すべき
 (2)  他方、暗証番号やカードの管理に関する預金者のモラルハザードを招かない配慮も必要
との考え方も示されています。新たな損失負担ルールのための環境整備として、金融機関は
 
 (1)  補償の悪用(被害の偽装)対策として、例えば、被害者があらかじめ警察に対して申告をしたか調査する
 (2)  異常取引を察知するシステムの導入等、被害を早期に発見するための態勢整備
 (3)  預金者が最低限尽くすべき注意義務等、補償についての説明態勢の整備
等の対応が求められています。


.今後の対応
 金融関係団体等及び各金融機関においては、中間取りまとめを踏まえ、約款の改定を含め、被害者への補償のあり方について、真剣な検討を行っていただきたいと考えています。
 金融庁としては預金被害者への補償のあり方について更なる対策を検討し、実施に移していきたいと考えています。


 同中間取りまとめについて、詳しくは、金融庁ホームページの「報道発表資料」から「「偽造キャッシュカード問題に関するスタディグループ」の中間取りまとめの公表について」(平成17年3月31日)にアクセスしてください。

貸金業制度等に関する懇談会の開催について

 昨年1月に施行された「貸金業の規制等に関する法律及び出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律の一部を改正する法律」(いわゆる「ヤミ金融対策法」)の附則第12条においては、
 1  新貸金業規制法による貸金業制度の在り方については、この法律の施行後三年を目途として、新貸金業規制法の施行の状況、貸金業者の実態等を勘案して検討を加え、必要な見直しを行うものとする。
 2  出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律第五条第二項については、この法律の施行後三年を目途として、資金需給の状況その他の経済・金融情勢、資金需要者の資力又は信用に応じた貸付けの利率の設定の状況その他貸金業者の業務の実態等を勘案して検討を加え、必要な見直しを行うものとする。
と規定されています。

 金融庁では、この見直し条項を踏まえ、貸金業制度等について幅広く勉強するため、金融庁総務企画局長の私的懇談会として、3月30日に「貸金業制度等に関する懇談会」(座長:吉野直行 慶應義塾大学経済学部教授)の第1回会合を開催しました。

 当懇談会のメンバーは、金融審議会金融分科会第二部会の委員・臨時委員が中心となっており、オブザーバーとして、ノンバンクの各業態から6名の参加をいただいています。そのほか、関係省庁等から、貸金業制度等と関係のある警察庁、法務省、経済産業省及び日本銀行の参加をいただいています。

 当懇談会の今後の開催については、基本的に月1回のペースで開催することを考えており、次回からは、当面、消費者団体や業界等の関係者からのヒアリングを行うことにしています。


 「貸金業制度等に関する懇談会」のメンバー、資料、議事要旨をご覧になりたい方は、金融庁ホームページの「審議会・研究会等」から「貸金業制度等に関する懇談会」にアクセスしてください。

保険商品の販売勧誘のあり方に関する検討チームの開催について

 先般(4月1日)、保険商品の販売勧誘のあり方について検討するため、「保険商品の販売勧誘のあり方に関する検討チーム」(座長:野村修也 中央大学法科大学院教授)の第1回検討会を開催しました。

I

 開催の経緯
 保険分野においては、依然、販売勧誘についての苦情等が多いこと、保険商品やその販売方法が多様化していること等を踏まえ、利用者利便の向上及び保険契約者等の保護の観点から、保険商品の販売勧誘のあり方について検討する必要があると考えられます。

 このため金融改革プログラムにおいても、「保険契約における適合性原則の遵守」、「公正な競争を促す適切な比較広告の容認」を施策として挙げたところです。

 今回、保険等の販売・広告等における顧客説明等のあり方に関する、以下のような事項について専門的・実務的な検討を行うため、有識者、サービス利用者、生損保業界の実務者等のメンバー(※)からなる検討チームを監督局長の私的懇談会として監督局内に設けることとしました。

II

 検討事項
 
 ○  明瞭かつ丁寧に説明されるべき重要事項及び顧客への説明態様を更に整理・明確化すること
 ○  適合性原則について、現行規制においては、適合性原則を踏まえた社内規則等の体制整備を義務づけるにとどまっているため、契約者保護の観点から保険契約において留意されるべき適合性原則をより明確化すること
 ○  保険会社等による商品比較は、現状では必ずしも積極的に行われていないが、適正な比較広告は顧客の商品選択に資するものと考えられることから、適切な比較情報が顧客に提供されるようルール等を見直すこと

III

 今後の進め方等
 検討チームにおいて、上記事項等について意見交換を行い、順次、論点整理を取りまとめ、公表していく予定です。また、検討チームを開催するごとに、議事要旨を公表する予定です。


 検討チームのメンバー、議事要旨等については、金融庁ホームページの「審議会・研究会等」から「保険商品の販売勧誘のあり方に関する検討チーム」にアクセスしてください。

金融経済教育懇談会の設置について

 我が国金融を巡る局面は、不良債権問題への緊急対応から、将来の望ましい金融システムを目指す未来志向の局面に転換しつつあります。個人を取り巻く金融環境についても、様々な金融商品が入手可能となるなど、一層複雑化しております。このような中、人生をより豊かなものとするため、お金との付き合い方や金融との関わりを学ぶことは、益々重要となってきています。

 我々行政に当る者にとっても、ライフステージの各段階で金融について学ぶ機会を提供すべく、金融経済教育の充実を図っていくことは、大切な課題であると考えており、「金融改革プログラム」にも、「利用者のライフサイクルに応じ、身近な実例に即した金融経済教育の拡充」を盛り込んだところです。

 ライフステージの各段階において金融について考える機会をどのような形で広げていけば良いのか、その際どのような形で金融経済教育の内容をより充実していけば良いのか、また、金融庁として何ができるのかといった点について、幅広く外部有識者の皆様及び関係各団体の皆様から御意見などを伺えればと考え、金融担当大臣の私的懇談会として「金融経済教育懇談会」を設置し、平成17年3月3日(木)に第一回会合を開催しました。今後も月一回ペースで実施する予定です。

 金融庁と致しましては、本懇談会の場における皆様方の御議論を踏まえ、金融経済教育に取り組む関係各団体との連携等を通じて、「金融経済教育」の一層の推進・充実が図られるよう、積極的に取り組んで参りたいと考えております。


 金融経済教育懇談会の資料等については、金融庁ホームページの「審議会・研究会等」から「金融経済教育懇談会」にアクセスしてください。

公認会計士・監査法人に対する懲戒処分等の考え方について

 公認会計士監査の充実・強化を趣旨とする「公認会計士法の一部を改正する法律」が昨年4月から施行されました。
 旧法での懲戒処分等では、故意・過失による虚偽証明、法令違反、著しく不当な運営の場合、戒告、一年以内の業務停止、設立認可取消・登録抹消が可能でしたが、改正法では、懲戒処分等の適切な実施を図る観点から、業務停止期間の上限を二年としたほか、監督の手段を多様化し、品質管理レビューのモニタリングによる公認会計士・監査審査会の具体的勧告内容を監査法人等の運営に反映させるため、金融庁長官は、法令違反、著しい不当運営の場合、監査法人等の業務改善の指示をすることができることとされました。
 また、行政手続法第12条では、
 (1)  行政庁は不利益処分をするかどうか又はどのような不利益処分とするかについてその法令の定めに従って判断するために必要とされる基準(処分基準)を定め、かつ、これを公にしておくよう努めなければならない
 (2)  処分基準を定めるに当たっては、当該不利益処分の性質に照らしてできるかぎり具体的なものとしなければならない
と不利益処分の具体化・明確化が求められています。
 こうしたことから、公認会計士・監査法人の処分の基準をできるだけ具体化・明確化することにより、処分の透明性・公平性を高め、改正法に基づく公認会計士・監査法人の懲戒処分等の適切な実施を図るため、基本的な考え方を「公認会計士・監査法人に対する懲戒処分等の考え方」として整理し、本年3月31日に公表いたしました。
 「基本的な考え方」として、公認会計士・監査法人に対する懲戒処分等を虚偽証明・不当証明に対する懲戒処分等と法令違反に対する懲戒処分等の2つに分け、「基本となる処分の量定」を定め(個々の事案に係る個別事情・周辺事情等により加重又は軽減)、その上で、公認会計士法第32条の定めるところに従い、公認会計士・監査審査会(同法第41条の2に規定する勧告に基づく場合を除きます。)の意見を聴いて行うこととされています。また、監査の充実・強化のために改正法で新たに導入された業務改善の指示を有効に活用することとされています。


 平成17年3月31日に公表した「公認会計士・監査法人に対する懲戒処分等の考え方」の全文をご覧になりたい方は、金融庁ホームページの「報道発表資料」から、「公認会計士・監査法人に対する懲戒処分等の考え方について」(平成17年3月31日)にアクセスしてください。

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