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「地域密着型金融の機能強化の推進に関するアクションプログラム(平成17年度〜18年度)」について

 金融庁は、去る3月29日、「地域密着型金融の機能強化の推進に関するアクションプログラム(平成17〜18年度)」(以下「新アクションプログラム」という)を策定・公表いたしました。
 以下、新アクションプログラムの内容についてご紹介いたします。


 新アクションプログラムの策定経緯

 昨年12月に公表しました「金融改革プログラム」では、地域金融について、「活力ある地域社会の実現を目指し、競争的環境の下で地域の再生・活性化、地域における起業支援など中小企業金融の円滑化及び中小・地域金融機関の経営力強化を促す観点から、関係省庁との連携及び財務局の機能の活用を図りつつ、地域密着型金融の一層の推進を図る。」こととされました。
 また、このため、平成15年度及び16年度を対象とする「リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラム」(以下「旧アクションプログラム」という。)について実績等の評価を行った上で、これを承継する新たなアクションプログラムを策定することとしたところです。

 これを踏まえ、金融審議会金融分科会第二部会「リレーションシップバンキングのあり方に関するワーキンググループ」において、旧アクションプログラムの実績等の評価等について議論が行われた(2月7日以降6回の会合及び2回の地方懇談会を開催)ところであり、ワーキンググループの議論は、「『リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラム』の実績等の評価等に関する議論の整理(座長メモ)」(別紙参照)として取りまとめられ、3月28日に公表されたところです。

 ワーキンググループにおける議論等を踏まえ、平成17年度及び18年度の2年間の「重点強化期間」を対象とする中小・地域金融機関についての新アクションプログラムを策定・公表しました。


 新アクションプログラムの内容

 
I .基本的考え方
 新アクションプログラムの「基本的考え方」として、以下の4つの事項を提示しています。
 


.地域密着型金融の継続的な推進
.地域密着型金融の本質(※)を踏まえた推進
 
 地域密着型金融の本質:金融機関が、長期的な取引関係により得られた情報を活用し、対面交渉を含む質の高いコミュ二ケーションを通じて融資先企業の経営状況等を的確に把握し、これにより中小企業等への金融仲介機能を強化するとともに、金融機関自身の収益向上を図ること。
.地域の特性や利用者ニーズ等を踏まえた「選択と集中」による推進
「地域密着型金融推進計画」(後述)の策定に当たっては、地域の特性等を踏まえた個性あるものとするよう留意する必要。また、その実施に当たっても、自主的な経営判断により、地域の特性や利用者ニーズ等を踏まえた「選択と集中」を通じてビジネスモデルを鮮明にし、自己責任と健全な競争の下、これを推進することが重要。
.情報開示等の推進とこれによる規律付け
 各金融機関が、自らの経営理念及び自己責任の下で将来像を示し、地域での相応の役割をコミットするために、自主的に、数値的な目標を含む、具体的かつ分かりやすい目標を策定・開示することを通じて利用者の評価を受けることにより、地域密着型金融の機能向上を図る必要。

II

.具体的取組み
 「具体的な取組み」については、以下の「事業再生・中小企業金融の円滑化」、「経営力の強化」、「地域の利用者の利便性向上」の3つの柱に分けて整理し、金融機関の経営判断の下、地域の特性や各金融機関の特性・規模等を踏まえ、「選択と集中」により、その推進を図ることを要請しています。
 また、事業再生への取組み、目利き能力等が依然として不十分との評価に対応し、再生支援実績に関する情報開示の拡充、再生ノウハウ共有化の一層の推進、企業の将来性や技術力を的確に評価するための取組みの強化等、全般的に地域密着型金融の機能強化に向けた個々の取組み事項について深化・拡充を図っています。
 


.事業再生・中小企業金融の円滑化
(1)創業・新事業支援機能等の強化、(2)取引先企業に対する経営相談・支援機能の強化、(3)事業再生に向けた積極的取組み、(4)担保・保証に過度に依存しない融資の推進等、(5)顧客への説明態勢の整備、相談苦情処理機能の強化、(6)人材の育成
.経営力の強化
(1)リスク管理態勢の充実、(2)収益管理態勢の整備と収益力の向上、(3)ガバナンスの強化、(4)法令等遵守(コンプライアンス)態勢の強化、(5)ITの戦略的活用 等
.地域の利用者の利便性向上
(1) 地域貢献等に関する情報開示、(2)地域の利用者の満足度を重視した金融機関経営の確立、(3)地域再生推進のための各種施策との連携等地域と一体となった取組みの推進 等

III

.推進体制
 新アクションプログラムでは、17〜18年度の「重点強化期間」内に、間柄重視の地域密着型金融の機能強化を確実に図るため、各金融機関に対し、17年8月末までに、「地域密着型金融推進計画(計画期間17〜18年度)」を策定し、公表することを要請しています。


 「地域密着型金融の機能強化の推進に関するアクションプログラム(平成17〜18年度)」について、詳しくは金融庁ホームページの「報道発表資料」から、「地域密着型金融の機能強化の推進に関するアクションプログラム(平成17〜18年度)」(平成17年3月29日)にアクセスしてください。


 金融審議会金融分科会第二部会「リレーションシップバンキングのあり方に関するワーキンググループ」の「『リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラム』の実績等の評価等に関する議論の整理(座長メモ)」について、詳しくは金融庁ホームページの「審議会・研究会等」から「金融審議会」の「答申・報告書等」のうち、「平成17年3月28日「金融審議会金融分科会第二部会「リレーションシップバンキングのあり方に関するワーキンググループ」の座長メモの公表について」にアクセスして下さい。

(別紙)

PDF「リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラム」の実績等の評価等に関する議論の整理(座長メモ)(概要(PDF:192KB))

【集中連載】
 
金融改革プログラム −金融サービス立国への挑戦−(第4回:信頼される金融行政の確立)

 1月号から始めました、「金融改革プログラム−金融サービス立国への挑戦−」特集。最終回となる今回は、「プログラム」の最後の柱である「信頼される金融行政の確立」について、問題意識や具体的施策をQ&A方式でご紹介していきます。
 
.「金融改革プログラム」の中で「信頼される金融行政の確立」が柱として盛り込まれた背景を教えてください。

 A .これまでご紹介してきた通り、わが国金融システムを巡る局面は、不良債権問題への緊急対応から脱却し、将来の望ましい金融システムを目指す未来志向の局面へと転換しつつあります。また経済社会全体の情勢も、少子高齢化、グローバル化が更に進展するとともに、インターネット取引の比重が高まる等、大きく変化しています。

 こうした金融システムを巡る局面の転換や外部環境の変化を契機として、今後2年間の金融行政の基本的な姿勢を明らかにする必要があるとの考え方の下、「プログラム」の最後の柱に「信頼される金融行政の確立」を盛り込みました。

 これは、金融機関には出来るだけ自由な競争をして頂くけれども、ルール違反は許すことなく金融商品・サービスの利用者の保護についてはきちんと対応していく、という観点に立って、当局自身に能力の高いアンパイアないしグラウンドキーパーであることを要請するものです。

 今までは、不良債権問題への対応の為に、当局は時として「金融機関のコーチ」としての役割も担ってきました。しかし今後は、わが国金融システムの活力を促す為にもそうしたコーチの役割から身を引き、アンパイアないしグラウンドキーパーとしての役割に集中し、事後チェック型の行政を推進していく必要があります。

「プログラム」策定に際しては、そうした考え方をしっかり示しておくことが、金融庁にとっても金融機関や金融サービスの利用者にとっても有効だと判断したわけです。
 
.「信頼される金融行政の確立」に向けた、具体的な施策について教えてください。

 A
 
.信頼される金融行政の確立に向け、「金融改革プログラム」では、金融行政の透明性・予測可能性を更に向上させ、説明責任を全うするための枠組みを整備する観点から、
 
 行政指導の一層の透明化・ルール化、行政処分等の透明性の確保を含む金融庁の行動規範(code of conduct)の確立、内外無差別原則の確認
 検査結果の金融機関へのフィードバック体制の充実
等を盛り込みました。

 金融庁の行動規範(code of conduct)の確立としては、行政指導の一層の透明化・ルール化、行政処分等の透明性の確保を含めて対応を行っていきます。具体的には、本年6月を目途に、
 
(1)  「検査手続に係る指針(検査実施における行動規範)」の策定・公表、
(2)  監督行政上の行動規範の策定・公表、
(3)  行政処分手続きにおける意見交換制度の導入、
(4)  金融庁職員の行動に関するガイドラインの見直し(4月実施済み)、
  を実施します。
 このうち、意見交換制度は、不利益処分が行われる可能性が高いと認識した金融機関等からの要望に応じて、金融機関等の経営幹部と監督局幹部との間で意見交換の機会を業態横断的に設けるものです。

 内外無差別原則の確認については、行政処分等において、国内金融機関と在日外国金融機関との間で差別的な取扱いがないことを改めて確認するとともに、行政処分の発動等に際し、内外で誤解が生じないよう、海外監督当局及び海外報道機関に対し適切な情報提供を実施していきます。

 検査結果の金融機関へのフィードバック体制の充実としては、金融機関の自己責任原則に基づく内部管理態勢の強化等に資するため、検査の指摘事項のうち、多くの金融機関に共通する事項について定期的に情報提供を行っていきます。その一環として、本年7月を目途に、指摘事例集を作成し公表します。


.信頼される金融行政の確立のためには、行政の電子化等により行政コストの軽減を図り、金融市場の参加者や利用者にとって利便性の高い効率的な金融行政を推進することも必要です。
 そのための施策としては、
 
 電子政府の推進による安全・適切・便利で効率的な行政の実施、金融市場の参加者及び利用者の利便性向上
 「金融庁総点検プロジェクト」に基づく金融庁の組織・体制の総点検及び見直し(調査・研究機能の活用等を含む)
等を考えています。

 電子政府の推進による安全・適切・便利で効率的な行政の実施、金融市場の参加者及び利用者の利便性向上としては、EDINET(有価証券報告書等の電子開示システム)等について、平成17年度末までのできる限り早期に実効性ある業務・システム最適化計画を策定するとともに、当該計画に沿って業務の見直しやシステム開発に取り組み、業務時間の短縮や経費削減を目指します。

 「金融庁総点検プロジェクト」に基づく金融庁の組織・体制の総点検及び見直しについては、昨年8〜9月にかけて全職員に対して実施したアンケート結果等を踏まえ、金融庁の組織体制及び仕
 事の内容・進め方等まで含めた総点検及び見直しを進めているところです。


 以上で「金融改革プログラム」の5つ目の柱である「信頼される金融行政」についてのご紹介を終わります。

  1月より、4回にわたり「金融改革プログラム」の内容を御紹介してきましたが、最後に、「プログラム」中で明記した今後の金融行政の基本的姿勢を確認しておきたいと思います。それは、
 (1)  金融行政は、市場規律を補完する審判の役割に徹すること、
 (2)  そのため、現行規制を総点検し、不要な規制を撤廃するとともに、金融行政の行動規範(code of conduct)を確立すること、
 (3)  その一方で、利用者が不測の損害を被ることのないよう、必要な利用者保護ルールの整備と徹底を図ること、
です。

 金融庁は、先月末、「金融改革プログラム」に盛り込まれた諸施策の具体的な実施スケジュールとして、「工程表」を公表しました。
 「工程表」は、各施策の実施時期を極力明示したこと、各施策の内容も可能な限り明らかにしたこと、「工程表」全体の進捗状況を節目節目でチェックする旨を明示したことが特徴となっています。
 金融庁としては、この「工程表」に沿って各施策を着実に実施することにより、透明性の高い形で国民のための金融行政を実行したいと考えています。今後とも、皆様のご支援の程よろしくお願いします。


 金融改革プログラムについては、金融庁ホームページの「金融庁の政策」から「金融改革プログラム」にもアクセスしてみてください。

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