【集中連載】 |
金融検査に関する基本指針(案)(以下「本基本指針(案)」という。)は、昨年12月24日に公表された「金融改革プログラム」及びこれを受けた「金融改革プログラム工程表」(本年3月29日公表)を踏まえた「金融庁の行動規範(code of conduct)の確立」の一環として、検査等の実施に当たっての基本的な考え方及び検査の具体的な実施手続等を示すものです。検査等に関連して発出される通達等の解釈及び運用に当たっては、今後、本基本指針(案)を基に行うこととなります。 去る4月28日(木)にその案をパブリック・コメントに付し、5月27日(金)まで意見を募集しています。本稿では、その案の策定に当たってのスタンス及び概要について紹介します。 |
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.「本基本指針(案)」策定に当たってのスタンス 検査を取り巻く状況をみると、主要行の不良債権問題が平成17年3月期までの半減目標の達成に向けて、順調に低下している状況下において、「金融改革プログラム」にみられるように、金融行政は転換を迎えつつあります。すなわち、同プログラムでは、「金融システムの安定」を重視した金融行政から、「金融システムの活力」を重視した金融行政へ転換を図り、利用者の満足度が高く、国際的にも高い評価が得られるような金融システムを、「官」の主導ではなく「民」の力によって、実現するよう目指すこととされています。 こうした中で、金融行政の重要な一翼を担う検査が、今後、どのような機能を発揮すべきかは、重要かつ緊急の検討課題です。金融庁検査局は、本基本指針(案)の検討に際し、検査の「原点」をもう一度見直し、そのプロセスを総点検することから、作業を始めました。 |
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その結論は、今後、新たに展開される金融情勢の下において、各金融機関の経営実態を的確に把握し、そのリスクや問題点を適切に指摘するための金融検査が、引き続き、有効かつ効果的に機能するためには、以下の点を重視した運用が求められるということです。 |
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上記のスタンスに基づき、金融庁検査局は、本基本指針(案)を検討・作成したところです。 |
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.「本基本指針(案)」の概要 |
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平成17年4月28日に公表した「金融検査に関する基本指針(案)」の全文をご覧になりたい方は、金融庁ホームページの「報道発表資料」から「金融検査に関する基本指針(案)について」(平成17年4月28日)にアクセスしてください。 |
I | .改正の経緯・背景 「保険業法等の一部を改正する法律」(平成17年法律第38号。以下「改正法」といいます。)は、平成17年3月11日に内閣より第162回通常国会に提出され、原案のとおり、4月11日に衆議院において可決、4月22日に参議院において可決・成立し、5月2日に公布されました。 今回の法改正は、平成16年1月16日に金融審議会金融分科会第二部会において「保険に関する主な検討課題」として「保険契約者保護制度の見直し」及び「無認可共済への対応」が示されたことを受けて、同部会に設置された「保険の基本問題に関するワーキンググループ」における審議、これに基づき同年12月14日に取りまとめられた同部会報告書「根拠法のない共済への対応について」及び「保険契約者保護制度の見直しについて」を踏まえたもの(※ 注1)であり、(a)根拠法のない共済への対応に係る改正(下記II.)及び(b)保険契約者保護制度等の見直しに係る改正(下記III.)の二つを主たる内容としています。 今回の法改正の背景としては、(a)に関しては、特別な法律上の根拠なく任意団体等で共済事業を行うもの(※ 注2)が急増しており、その中には不適切な販売方法をとるものや財務基盤の脆弱なものがある等との指摘がされていること、(b)に関しては、平成10年に現行の保険契約者保護制度が創設されて以降(※ 注3)、生命保険会社・損害保険会社の実際の破綻事例を踏まえた指摘・要望等が行われていたこと、平成15年4月の保険業法改正(※ 注4)による生命保険契約者保護機構の財源に係る時限措置が平成17年度末までとなっていたことなどが挙げられます。 |
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II | .少額短期保険業の創設 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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III | .保険契約者保護制度等の見直し | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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IV | .その他の改正事項 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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V | .施行期日・経過措置・検討規定 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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VI | .終わりに なお、改正法中、政令、内閣府令、内閣府令・財務省令等に委任されている事項については、今後、政令等の案をパブリックコメント手続に付す予定としています。 |
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注1)平成16年12月14日の金融審議会第二部会報告書「保険契約者保護制度の見直しについて」において具体的な方向性が示されなかった事項のうち、生命保険契約者保護制度の見直しに関する一定の事項については、本年2月16日の同部会において更なる審議が行われました。今回の法改正は、同日の同部会において承認された方向性をも併せて踏まえたものとなっています。▲戻る |
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( | 注2)共済事業については、自発的な相互扶助を基礎として、共同して社会生活を営む者が将来の危険に対して共同して生活の安定を図るものであり、基本的には保険業法による規制は不要とされてきました。このため、改正前の保険業法においては、特定の者を相手方として保険の引受けを行う事業については適用がないとされていました。また、農業協同組合(JA)等については、他の法律(農業協同組合法等)の規制を受け、主務官庁の監督を受けて事業を行う制度共済と位置付けられます。▲戻る |
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( | 注3)「金融システム改革のための関係法律の整備等に関する法律」(平成10年法律第107号。同年6月15日公布、本件関連部分は同年12月1日施行。)による保険業法の改正。▲戻る |
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( | 注4)「保険業法の一部を改正する法律」(平成15年法律第39号。同年5月9日公布、同年6月8日施行。)。▲戻る |
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( | 注5)「早期解約控除」とは、保険契約の存続を図り、健全な保険収支のために十分な保険集団の規模を確保することを目的として、保険会社の破綻処理時の契約条件の変更において、破綻後一定期間内に解約(保険集団からの任意脱退)をする保険契約者に支払われる解約返戻金について、保険金等には行われない特別の控除(減額措置)を行うこと(又は当該控除部分)をいいます(改正前の金融機関等の更生手続の特例等に関する法律第445条第2項参照)。▲戻る |
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( | 注6)この改正は、「規制改革・民間開放推進3か年計画(改定)」(平成17年3月25日閣議決定)(以下「平成17年3月規制改革計画」といいます。)の「II 16年度重点事項」の「(分野別各論)」 における項目「保険会社の経営破綻時における特別勘定の保全【第162 回国会に法案提出】」に関係するものです。▲戻る |
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( | 注7)この改正は、内閣府規制改革・民間開放推進室への社団法人日本損害保険協会からの規制改革要望に関係するものです。▲戻る |
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( | 注8)この改正は、「平成17年3月規制改革計画」の「III 措置事項」における項目「複数の保険会社による従属業務子会社等の保有を可能とする収入依存度規制の見直し」に関係するものです。▲戻る |
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( | 注9)この改正は、「平成17年3月規制改革計画」の「III 措置事項」における項目「保険議決権大量保有者の「変更報告書」提出事由の簡素化」に関係するものです。▲戻る |
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( | 注10) 保険会社については平成16年9月期より、銀行持株会社については平成10年9月期より(銀行については昭和57年9月期より)、既に中間業務報告書の作成・提出が義務付けられています(保険会社については、「保険業法の一部を改正する法律」(平成15年法律第39号。同年5月9日公布、同年6月8日施行)附則第4条によります)。▲戻る |
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( | 注11) 近年、船舶の事故等が発生した際に、当該船舶の所有者等だけでなく、当該船舶に係る出資者等に対しても、損害賠償責任等の追及が行われる例が見られるようになっています。▲戻る |