【法令解説】

「金融機関等による顧客等の本人確認等及び預金口座等の不正な利用の防止に関する法律施行規則の一部を改正する命令」について

 金融機関等による顧客等の本人確認等及び預金口座等の不正な利用の防止に関する法律(以下「本人確認法」という。)に規定する金融機関等による本人確認方法として、公的個人認証サービスを利用した方法を追加するため、同法の施行規則を改正し、10月11日より施行しました。


.改正の趣旨
 公的個人認証サービス制度は、都道府県知事が発行する電子証明書を利用して、「電子署名に係る地方公共団体の認証業務に関する法律」(以下「公的個人認証法」という。)に基づく電子認証業務を行うことにより、オンライン申請等に必要な個人認証サービスを提供するものです。当該サービスに利用される電子証明書(以下「公的電子証明書」という。)は、公的個人認証法に基づく電子署名が行われることによる改ざん防止、有効性の確認が行われており、本人確認法における金融機関等による顧客等の本人確認を行う際の本人確認書類と同等の信頼性が確保されています。
 こうした電子証明書を利用して行われる公的個人認証法に基づく電子認証業務は、既に本人確認法上の本人確認方法として認められている「電子署名及び認証業務に関する法律」(以下「電子署名法」という。)に基づく電子認証業務と同等の業務であり、本人確認法上の本人確認方法として追加しても特段の支障がないことから、今般、「金融機関等による顧客等の本人確認等及び預金口座等の不正な利用の防止に関する法律施行規則」(以下「本人確認法施行規則」という。)の一部を改正し、公的個人認証サービスを利用した本人確認方法を追加することとしました。
 

(注

)本件は、IT政策パッケージ2005−世界最先端のIT国家の実現に向けて−(平成17年2月にIT戦略本部で決定)において、行政サービスの推進すべき事項の一つとして「公的個人認証サービス・住民基本台帳ネットワークの利用・活用の推進」が掲げられており、その具体的取組みのひとつとして挙げられている、「特定認証業務を行う金融機関等による口座開設時等の本人確認資料としての公的個人認証サービスによる電子証明書の導入等について2005年度末までのできる限り早期に結論を得る。(総務省、金融庁及び関係府省)」に対応するものです。


.改正の概要
 本人確認法施行規則第3条に規定する金融機関等による顧客等の本人確認を行う方法として、以下の公的個人認証サービスを利用した方法を追加しました。
 

(1)

 顧客等から、(a)都道府県知事が発行した公的電子証明書及び(b)当該電子証明書により確認される電子署名が行われた預貯金契約等の締結等の取引に関する情報の送信を、(c)公的個人認証法第17条第4項に規定する署名検証者である金融機関等が発行する電子証明書の発行申請に関する情報の送信と同時に受ける方法。

 この場合において、金融機関等が公的個人認証法第17条第1項に規定する行政機関等である場合(日本郵政公社、商工組合中央金庫の場合)には、(a)及び(b)の送信を受けることで足ります。
 なお、金融機関等とは、本人確認法第2条に規定する金融機関等をいいます。

(2)

 顧客等から、(a)民間認証事業者が発行し、かつ、当該民間認証事業者が行う特定認証業務の用に供する電子証明書(以下「民間電子証明書」という。)及び(b)当該民間電子証明書により確認される電子署名が行われた預貯金契約等の締結等の取引に関する情報の送信を受ける方法。
 民間認証事業者とは、公的個人認証法第17条第1項の規定により総務大臣が認定した者をいい、顧客等の依頼により(a)の民間電子証明書を発行することが可能です。
 特定認証業務とは、電子署名法第2条第3項に規定する特定認証業務をいいます。
 本人確認法上の本人確認資料として利用できる(a)の民間電子証明書とは、公的電子証明書又は電子署名及び認証業務に関する法律施行規則第5条に規定する方法により発行されたものに限ることとします。

(参考)
 公的個人認証サービス
 http://www.soumu.go.jp/c-gyousei/kojinninshou.htm
 「電子署名に係る地方公共団体の認証業務に関する法律」(公的個人認証法)
 
http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/security/kiso/k05_06.htm
 IT政策パッケージ2005−世界最先端のIT国家の実現に向けて−(平成17年2月にIT戦略本部で決定)
 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kettei/050224/050224pac.html


【金融便利帳】


 このコーナーは、とかく専門的でわかりにくい金融に関する用語や様々な疑問について、わかりやすく解説するものです。
 今月のキーワードは「Tier1」、「Tier2」です。

 自己資本比率規制は、銀行が保有するリスクに見合う最低自己資本を維持することにより、その健全性を確保し、破綻を回避することを通じて、信用秩序を維持し、預金者保護を図るための制度です。
 自己資本比率規制の算式の分子の部分が自己資本であり、金融機関が損失を被った場合に、損失を吸収するためのクッション(リスクバッファー)の役目を果たします。自己資本として質の高いものが基本的項目(Tier1)、それ以外が補完的項目(Tier2)に区分されます。例えば、資本金、法定準備金、剰余金などはTier1に算入されます。劣後ローンや劣後債は、基本的な性格は負債ですが、万一、その債務者が破産した場合などには、他の一般の負債よりも返済が後回しになるなど自己資本的な性格も持っています。そこで、金融機関の自己資本比率の算定上、劣後ローンや劣後債はTier2 に算入されることが認められています。有価証券の含み益もリスクバッファーとなりうるので、その45%をTier2に算入することが認められています(国際基準行のみ算入可)。ただし、Tier2 については、Tier1 と同額までしか算入できません。
 一方、分母については、資産の種類に応じたリスク・ウエイトを掛けた額の合計とすることとされています。リスク・ウエイトは、たとえば現金や国債は0%、金融機関向け債権は20%、抵当権付住宅ローンは50%、通常の事業法人向け債権は100%などとなっています。
 自己資本比率規制は、上に述べたようにして算出される分子と分母から割り算で導き出される自己資本比率が、海外に営業拠点を持って国際的に業務展開をしている金融機関については国際統一基準として8%以上、海外営業拠点を持たない国内金融機関については国内基準として4%以上を維持することを求めるものです。
 なお、金融庁では現在、昨年6月末にバーゼル銀行監督委員会から公表された新しい自己資本比率規制(バーゼルII)にもとづき、自己資本比率告示の見直し作業を行っているところです。

 自己資本比率規制の計算式

(国際統一基準:海外営業拠点を有する金融機関)

自己資本比率規制の計算式


【金融ここが聞きたい!】


 このコーナーは、記者会見における質疑・応答(Q&A)などの中から、金融を巡る時々の旬な情報をセレクトしてお届けするものです。もっと沢山ご覧になりたい方は、是非、金融庁ホームページの「記者会見概要」のコーナーにアクセスしてください。
 
Q:「金融再生プログラム」時代から話題になっていた案件である大手行を対象にした繰延税金資産の算入上限のルールが発表されましたが、改めてお考えをお伺いしたい。また、かつては劇薬という言われ方もしたが、今回の導入にあたっては割と各行の経営体力に注意を払ったような感じを受けるが、その辺りの変化についてお考えをお聞かせください。


:「金融再生プログラム」の残された重要な課題として、この繰延税金資産の算入の適正化の問題があったと思います。それを踏まえて「金融改革プログラム」においても、この取組みについて「工程表」にも盛込ませていただきました。今お話があったように「金融再生プログラム」策定当時からこの点について大変議論になったところです。金融システムの健全性を実現していくための三つの大きな柱の一つとして、資本の充実という観点の中で、この問題について様々な角度から議論をし、金融審議会においても議論が続けられて、そして報告書が提出されました。
 私共としては「金融再生プログラム」の不良債権比率の半減目標が達成されたことを受けて、報告書の趣旨を踏まえて十分な検討を行い、今般「主要行の自己資本比率規制における繰延税金資産の算入の適正化に関わる告示案」をパブリックコメントに付させていただきました。私共としては今般の措置が自己資本の質の向上を通じて、我が国の金融システムの更なる安定に資するものになると考えています。
平成17年9月27日(火) 閣議後記者会見 抜粋

 
Q:損害保険会社の不払い問題について、調査を要請したとのことですがその概要と報告結果はどのような形で公表される予定ですか。また、生命保険の場合は過去5年に遡っていましたが、損害保険の場合は区切りはあるのですか。


:今般、損害保険会社において臨時費用保険金等を中心とする付随的な保険金等について、追加的な支払いを要する事案が多数判明したことは、誠に遺憾なことだと考えています。このような事態を踏まえ、金融庁としては、本日全ての損害保険会社に対し、追加的な支払いを要するものの件数、及びその対応状況、並びに追加的な支払いを要するに至った発生原因分析及び再発防止策について、報告徴求を行うことといたしました。
 本件については、まずは損害保険会社各社において自ら適切な保険金等の支払い管理態勢等の構築に努めることが重要であり、そのための自主的な検証がされてきたところですが、金融庁としてはこの問題についての、統一的・包括的な取組みを確実にするために、このような一斉報告徴求を行うこととしました。
 報告については、10月14日までにいただきたいと思っています。各社において自主的に点検検証がされていますし、一部公表されているところですので、10月14日までに報告をしてもらい、その報告を受けて内容をよく精査した上で、何らかの形で公表する方向で検討したいと思っています。
 区切りとしては、3年という期限を考えています。今の商法の規定ですと請求権が確か2年ですから、契約者保護の観点から十全を期すために3年という期間の中で、各損害保険会社において検証していただきたいと思っています。
平成17年9月30日(金) 閣議後記者会見 抜粋

 

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