アクセスFSA 第49号(2006年12月)
関 金融審議会公認会計士制度部会長より部会報告を受け取る山本大臣(12月22日) 中小企業金融の円滑化に関する意見交換会にて挨拶する山本大臣(12月11日)
関 金融審議会公認会計士制度部会長より部会報告を受け取る山本大臣 中小企業金融の円滑化に関する意見交換会にて挨拶する山本大臣
(12月22日) (12月11日)
目 次
【トピックス】
 ○ ソルベンシー・マージン比率の算出基準等に関する検討チームの開催について
 ○ 主要行の平成18年度中間決算について
 ○ 企業会計審議会内部統制部会の公開草案の公表について
 ○ 企業会計審議会監査部会の公開草案の公表について
 ○ 金融検査評定結果の分布状況について
 ○ 特定保険業者に係る監督上の対応について
【金融便利帳】
 ○ 少額短期保険業
【法令解説】
 ○ 証券取引法等の一部を改正する法律の施行に伴う証券取引法施行令等の改正について
【金融ここが聞きたい!】
【お知らせ】
 ○ 大臣・副大臣・政務官への質問募集中
 ○ 新着情報メール配信サービスへのご登録のご案内
 ○ 本人確認法施行令等の改正について
【11月の主な報道発表等】


【トピックス】
 
ソルベンシー・マージン比率の算出基準等に関する検討チームの開催について

 先般(11月20日)、ソルベンシー・マージン比率の算出基準等について検討するため、「ソルベンシー・マージン比率の算出基準等に関する検討チーム」(座長:米山高生 一橋大学大学院商学研究科教授)第1回検討会を開催しました。


.ソルベンシー・マージン比率とは

 保険会社は、一定程度の支払いの増加や金利の低下による収入減など「通常予測できる範囲のリスク」については、保険金を支払うために予め見込んで、「責任準備金」を積み立てています。
 一方、大規模災害による保険金支払いの急激な増加や運用環境の悪化などの「通常の予測を超えて発生するリスク」に対しては、「自己資本」、「準備金」等で対応することとなります。
 この「通常の予測を超えて発生するリスク」に対して、保険会社がどの程度「自己資本」、「準備金」等の支払余力を有するかを示す指標がソルベンシー・マージン比率です。
 ソルベンシー・マージン比率は、保険会社の財務の健全性を示す指標の一つで、比率が200%を下回った場合、金融庁から保険会社に対して、是正措置命令が発動されることとなります。
 

.検討チーム開催の経緯
 現行のソルベンシー・マージン比率は、平成8年の保険業法改正時に導入され、これまでも適時必要な見直しを行ってきたところですが、保険会社の財務体質の強化やリスク管理の高度化を図る観点から、現下の金融市場実勢と乖離したものとなっていないか改めて精査する必要があります。
 このため、金融改革プログラムにおいても、「保険会社のソルベンシー・マージン比率の見直し」を施策として挙げたところです。
 見直しに当たっては、「近年の保険商品の多様化」、「資産運用技術の発展」、「リスク管理手法の高度化」などの実態を踏まえること、現在議論されている国際会計基準等における保険負債の時価評価をめぐる動向を見極めることといった専門的かつ技術的な検討が必要となることから、学者、アナリスト、ファイナンシャルプランナー、公認会計士、生損保業界の実務者のメンバーからなる検討チームを監督局内に設けることとしました。


.今後の進め方等

 検討チームにおいて、ソルベンシー・マージン比率の算出基準等に関する現行の問題点及び今後のあり方についての意見聴取を行い、平成19年3月を目途に、議事内容を取りまとめた報告書を作成し、その後、関係規則等の整備を行う予定です。
 また、検討チームを開催するごとに提出資料及び議事要旨を原則、金融庁ホームページに公表する予定です。
 


 詳しくは、金融庁ホームページの「審議会・研究会等」から「ソルベンシー・マージン比率の算出基準等に関する検討チーム」にアクセスしてください。
 

制度の導入の際に参考とした米国の制度において、同様に1/2を乗じていたもの。ソルベンシー・マージン比率が200%の場合にリスクと支払余力が一致することとなる。

主要行の平成18年度中間決算について

 主要行の平成18年度中間決算発表を受けて、金融庁では、各行の発表した計数等を集計し、11月22日(水)に公表しました。
 以下、主要行の平成18年度中間決算の概要について説明します。


.主要行の中間決算

 当期純利益は1.6兆円となり、前年同期と比べほぼ同水準となりました。これは貸出金からの収入である資金利益の減少傾向にある中で、投資信託や保険商品の販売に係る役務取引等利益が増加したものの、国債等債券関係損益が損に転じたことなどにより、本業のもうけを表す実質業務純益は減少。一方、前期に引き続き貸倒引当金に戻り益が生じていることに加え、退職給付会計に係る年金資産の運用改善や繰延税金資産の見積り期間変更などの特殊要因が寄与し、昨年と同水準になったものと考えられます。
 また、自己資本比率は、12.3%と平成18年3月期に比べ0.1%ポイントの小幅上昇となりました。


.主要行の不良債権の状況

 不良債権(金融再生法開示債権)残高は、全体で3.9兆円となり、平成18年3月期と比べて15.7%減少しました。破綻懸念先以下については、前年同期に比べ15.1%減の2.0兆円となり、要管理債権については、前年同期に比べ16.5%減の1.9兆円となりました。
 不良債権比率は、平成17年3月期の2.9%から1.4%ポイント低下し、1.5%となりました。これは、主要行の不良債権比率の半減目標が達成された平成17年3月期決算以降も、各行の資産の健全化が進んでいるものと考えられます。
 
 (注) 平成14年10月に策定・公表された「金融再生プログラム」における「平成16年度には、主要行の不良債権比率を平成14年3月期(8.4%)の半分程度に低下させ、不良債権問題の正常化を図る」という目標。


 詳しくは、金融庁ホームページの「報道発表資料」から「主要行の平成18年度中間決算について≪速報ベース≫」(平成18年11月22日)にアクセスしてください。

企業会計審議会内部統制部会の公開草案の公表について

 平成18年6月7日に成立した金融商品取引法により、上場会社を対象に、財務報告に係る内部統制の有効性に関する経営者による評価と監査人による監査を義務づける内部統制報告制度が、平成20年4月1日以後開始する事業年度から導入されることが決定しています。
 内部統制報告制度における経営者による評価及び監査人による監査を実施するための基準については、平成17年12月に企業会計審議会内部統制部会(部会長:八田進二青山学院大学教授)が基準案をとりまとめ公表しました。その際、基準を実務に適用していくための実務上の指針(以下「実施基準」といいます。)の整備を求める意見が多く出されたことから、内部統制部会の下に作業部会(座長:橋本尚青山学院大学教授)を設置し、会計実務家等の参加を得て実施基準案の検討を行い、平成18年11月21日に実施基準を公開草案として公表し、広く意見を募集することといたしました(意見募集期間は、平成18年12月20日まで)。
 今後、公開草案に対する御意見も踏まえ、更に検討を行い、基準及び実施基準として確定させることを予定しています。
 実施基準は、各企業にとって求められる内部統制は、企業を取り巻く環境や特性に応じて異なることから、各企業において工夫して整備されるべきものであるとの考え方を前提としつつも、実務上の対応の観点から、一定の標準となるべきものを示したものです。また、先行して制度が導入された米国での運用状況も検証し、米国では非常に保守的な対応が行われた結果、過大なコスト負担がかかっていたのではないかとの指摘がなされていることを踏まえ、我が国の実施基準案においては、制度の実効性を確保しながらも過剰な対応とならずに、効率的・効果的に内部統制の構築・評価・監査が行えるよう、できるだけ具体的な指針となるよう配慮がなされています。
 
実施基準案は、基準案と同様に、内部統制の構築・評価・監査の3部構成になっています。
それぞれのポイントとしては、
 
(1) 「 I 内部統制の基本的枠組み」においては、財務報告に係る内部統制を組織において構築していく際の構築プロセスについて記述
(2) 「 II 財務報告に係る内部統制の評価及び報告」においては、評価・報告に係る基準を整備
 
 ・  全社的な内部統制に係る評価項目を例示
 ・  評価範囲のいわゆる絞り込み方法を詳細に記述
 ・  開示対象となる「重要な欠陥」に係る判断方法、判断基準を明示
(3) 「 III 財務報告に係る内部統制の監査」においては、内部統制監査に係る基準を整備
 
 ・  評価範囲に係る経営者と監査人の協議プロセスを明示
 ・  監査計画は財務諸表監査と一体に策定、監査証拠は相互利用可能であることを明示
 ・  内部統制の運用状況の検証に係るサンプリングの信頼度を明示
  等が挙げられます。


 詳しくは、金融庁ホームページの「報道発表資料」から「企業会計審議会内部統制部会の公開草案の公表について」(平成18年11月21日)にアクセスしてください。

企業会計審議会監査部会の公開草案の公表について

 平成18年11月21日に、企業会計審議会監査部会から、「四半期レビュー基準の設定について(公開草案)」が公表され、12月20日まで広く一般から意見を募集したところです。
 本基準(公開草案)が作成され、公表された経緯は以下のとおりです。

 近年、企業を取り巻く経営環境の変化は激しく、これに伴い、企業業績等も短期間のうちに大きく変化することがみられるようになってきています。こうした状況の下では、投資者に対し、企業業績等に係る情報をより適時かつ迅速に開示することが求められるとともに、企業内においても、より適時に企業業績等に係る情報を把握し、的確な経営管理を行っていくことが期待されます。
 こうしたことから、証券取引法上の制度として四半期報告制度の導入が検討され、平成18年6月に成立した金融商品取引法では、平成20年4月1日以後開始する事業年度から、上場会社等に対して四半期報告書の提出が義務づけられ、当該報告書に掲載される四半期財務諸表については公認会計士又は監査法人の監査証明を受けることとされています。
 公認会計士又は監査法人が四半期財務諸表に対して行う監査証明について、企業会計審議会では、平成17年1月の総会において、四半期レビュー基準の策定を行うことを決定し、同年9月から審議を進めてきました。四半期報告書は適時性・迅速性が要求されるものであり、四半期会計期間末から45日以内の政令で定める日までに提出していただく必要があります。そのため、一部簡便的な会計処理の適用が認められ、監査は質問及び分析的手続を中心とした四半期レビュー手続を導入することとしています。
 このように、四半期報告書の適時性・迅速性が要請される一方で、いかに監査の信頼性を確保するかが課題となっています。四半期レビューは年度の財務諸表の監査を前提として実施されるものであり、年度の財務諸表監査と適切に組み合わせることで、監査の実効性がより向上することが期待されています。具体的には、年度の財務諸表の監査において得た、内部統制を含む、企業及び企業環境の理解及びそれに基づく重要な虚偽表示のリスクの評価を考慮して、四半期レビュー計画の策定を行う必要があり、年度の財務諸表の監査における重要な着眼点等については、四半期レビューの中でも必要な検討を行い、四半期レビューの結果を年度の監査計画にも適切に反映させていくことが求められています。
 今後、寄せられた意見を踏まえて最終的な基準の取りまとめに向け、同部会で審議が行われる予定です。


 詳しくは、金融庁ホームページの「報道発表資料」から「企業会計審議会監査部会の公開草案の公表について」(平成18年11月21日)にアクセスしてください。

金融検査評定結果の分布状況について

 金融庁では、「金融検査評定制度」に関して、「金融検査評定結果の分布状況」をとりまとめ、11月15日に公表しました。


.金融検査評定制度については、平成17年7月に制度を制定した後、12月までの試行準備期間を経て、平成18年1月より試行を開始しました。
.金融検査評定制度の趣旨は、金融検査の結果について、段階評価 を示すことで、金融機関自身の経営改善に向けての動機付けとするとともに、より効率的かつ実効的な検査等につなげるものです。
.こうした制度の趣旨に照らせば、評定結果は、被検査金融機関のみが認識していることで十分であり、これを個別に対外公表することは、風評等のリスクもあることから適当ではないと考えられます。
.しかしながら、各業態(金融機関)から「自分の位置を知りたいので、評定の分布状況を公開してほしい」との要望が多数寄せられて来たところです。
.こうした要望に応え、平成18年1月以降予告(無予告の場合は立ち入り開始)し、同年6月までに検査立入を終了した評定検査結果通知先(137先)の金融機関を対象とした評定結果について、業態ごと及び評定項目ごとにC評価以下となった項目数の割合等を公表したものです。
.「金融検査評定結果の分布状況」は今後もデータの蓄積を行い、ある程度のデータの蓄積がされた段階で公表を行うことを考えています。
 


 詳しくは、金融庁ホームページの「報道発表資料」から、「金融検査評定結果の分布状況について」(平成18年11月15日)にアクセスしてください。
 

A 評価:強固な管理態勢が経営陣により構築
B  評価:十分な管理態勢が経営陣により構築
C 評価:管理態勢の構築が不十分で、改善の必要
D 評価:管理態勢に欠陥または重大な欠陥     
※ 総合評定は、行わない。

特定保険業者に係る監督上の対応について


.保険業法の改正

 平成18年4月に改正保険業法が施行されるまで、特定の者を相手方として法律の根拠に基づかず保険を引受けている者(いわゆる無認可共済)は、保険業法の対象外とされてきました。これは、いわゆる無認可共済は自発的な共助を基礎とするものであり、その契約者を保護するための規制は基本的に必要ないと考えられたからです。
 一方で、近年、いわゆる無認可共済が会員向け限定と称して販売する保険に関し、不適切な販売方法や財務基盤の脆弱なこと等によりトラブルが増加していました。そこで、保険契約者等の保護を図るため、保険業法を改正し、これらの者を保険業法の規制の対象としました。
 平成18年4月以降、これらの者は、原則として、特定保険業者として当局の監督の対象となりました。


.特定保険業者の監督について

 特定保険業者が法令等を遵守した健全な業務運営を行うことにより、保険契約者が安心して保険商品を利用できるようにするため、当局は特定保険業者の監督を行う必要があります。
 まず、特定保険業者は、平成18年9月末までに、当局に特定保険業を行っていることなどを届出なければならないこととされており、平成18年9月末までに389団体の届出がなされています。
 特定保険業者には、契約者保護の観点から、保険募集、業務運営に関する措置、特定関係者との取引などの規制が課されています。
 これらの規制を実効あるものとするためには、適切な監督を行う必要があります。このため、金融庁は、特定保険業者の監督事務を委任している各財務局に対し、「保険会社向けの総合的な監督指針(別冊)(少額短期保険業者向けの監督指針)」に基づき適切な対応を取るように改めて以下の内容の指示を行いました。
 

(1

)特定保険業者の届出をしない者への対応

 苦情や情報提供、捜査当局からの照会又は新聞等の広告から届出なく保険業を行っている疑いのある者等を把握した場合は、警察や消費者センター等への問い合わせや、直接、当該業者に電話で確認をする(捜査当局に支障が出る場合は除く)等により、業務内容を調査するなど、積極的にその実態把握に努める。
 調査した結果、無届けで保険業を行っていることが判明した場合には、文書により警告を行うとともに、直接、電話や面談等で接触し是正を求める。また、捜査当局等関係当局との連携に努める。

(2

)特定保険業者の実態把握等

届出書等の内容を確認し、法の規定に基づく対応状況(業務運営に関する措置、募集行為に関する禁止行為、個人情報管理及び業務委託)について問題がないか検証するとともに、保険契約者等の保護等の観点から財務状況及び保険契約の内容について確認するなど、業務内容に問題がないか等を検証する。
 届出内容の検証の後も、必要に応じて、特定保険業者に対しヒアリングを行うなど業務運営等に関する実態把握に努める。
 上記の実態把握に基づき、問題があると認められる場合には、必要に応じて保険業法に基づき報告を求め、重大な問題があると認められる場合には、監督上の対応を検討する。

(3

)特定保険業者の円滑な移行への配慮
 特定保険業者は、平成20年3月末までに少額短期保険業者(金融便利帳参照)になる等の対応を行わなければならない。この移行期間終了までに、適切な移行ができるよう、各特定保険業者の実態に即して、相談等に応じる。
 


 詳しくは金融庁ホームページの「報道発表資料」から「特定保険業者に係る監督上の対応について」(平成18年11月8日)にアクセスしてください。

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