中学・高校生向け副教材「わたしたちの生活と金融の働き」の改訂について

金融庁では、平成19年3月26日に、中学・高校生向け副教材「わたしたちの生活と金融の働き」を改訂・公表するとともに、全国の中学校・高等学校に配布しました。

今回の改訂では、中学生向けと高校生向けに分け、中学生向けは図説パンフレットを、高校生向けはパソコンソフトを作成しました。また、前回改訂(平成16年11月)以降の金融経済情勢の変化や金融制度の改正を踏まえて内容の見直しを行っており、特に多重債務問題の深刻化を踏まえ、生活設計に関する記述を拡充しています。さらに、授業の展開例等を記した教師用指導マニュアルを作成しました。

(副教材の内容)

1.中学生向け図説パンフレット

第1章では、おこづかい帳の記入を通じてお金がどのように流れていくかを調べることからはじまり、「家計」「企業」「政府」の3つの経済主体の役割について学んでいきます。

第2章では身近な家族が働いている企業の役割について学びます。お金の流れを通じて株式会社について学び、株式市場のしくみの理解に発展させていきます。

第3章では預金通帳を確認することを通じて、金融とはお金に余裕のある者からお金を必要としている者に融通することであることを学びます。

第4章では生活設計と金融の役割について理解し、多重債務に陥らないための注意点を学びます。また、お金をめぐるトラブルにあった場合の対応策の一環として、クーリング・オフ制度について学びます。

教師用指導マニュアルでは、「収入と支出のバランス」、「会社をつくる」、「金融の役割」、「多重債務問題」、「お金をめぐるトラブル」の5つのテーマについて授業の展開例を示しています。

2.高校生向けパソコンソフト

第1章「社会経済の発展を支える企業」、第2章「企業の活力に不可欠な金融」、第3章「暮らしと金融」の3章からなっています。

第1章では企業の役割、会社の種類、企業の社会的責任について学びます。第2章では金融の仕組み、株式や社債、証券市場、金融機関と金利、日本銀行の役割について学びます。第3章では生活設計、金融商品、多重債務などの金融をめぐるトラブルについて学びます。

今回の教材の特徴として、各章各節の終わりにまとめのページを設けプリントアウトできるようにしました。また、各節の終わりに、初級、中級、上級の3段階のクイズを準備し、生徒に興味を持たせ知識の定着を図るよう工夫しました。特に多重債務問題に関しては、上記のクイズとは別に、基本的事項についての○×クイズを設けました。簡単な質問を次々に解いていくことで、社会に出てから困らない最低限の知識を身に付けることができるよう工夫しています。さらに高度な知識を身に付けたい方には、クリック操作により発展学習が可能なつくりとしています。

教師用指導マニュアルでは、各章各節ごとに授業の展開例を示しています。

本教材は中学校・高等学校の学習指導要領に対応しています。金融庁ホームページの「おしえて金融庁、中学生・高校生のみなさんへ」に掲載していますので、ダウンロードしてお使いいただくことができます。また、中学生向け図説パンフレットについては、本年度において増刷を予定しており、5月31日までFAXにて追加要望を受け付けています。

金融庁としては、今後とも、学校における金融経済教育の一層の推進に努めていく所存です。全国の中学校・高等学校におかれましては、是非ご活用いただき、生徒の金融経済に関する知識の向上に役立てていただければと考えております。


「利用者満足度アンケート」の取りまとめ結果の公表について

1.はじめに

金融庁では、「金融商品・サービスの利用者の満足度の高い金融システム」の実現に向け、平成16年12月に策定した「金融改革プログラム」等に基づき、様々な施策に取り組んでいます。

これを受け、金融庁では、利用者の金融商品・サービスに対するこの1年間の満足度の変化を業態ごとに把握し、今後の金融行政の参考とするため「利用者満足度アンケート」を調査会社に委託の上で実施し、その結果を公表しました(17年度に引き続き今回が2回目)。

(参考) 金融庁が平成16年12月末に策定・公表した「金融改革プログラム」に、「国民の金融商品・サービスに対する満足度が向上しているか等をモニターする」と記載されており、また、17年3月に公表した「工程表」には、「利用者満足度調査を実施し、その結果を公表」する旨が盛り込まれています。

2.概要

  • (1)調査実施の概要

    • 調査機関:(株)日経リサーチに調査委託

      • 17年度は、金融庁自らが金融庁・財務局のホームページを通じて実施

    • 調査方法:ネットモニターに対して調査委託会社ホームページ上にて実施

    • 回答者数:4,371人(17年度は574人)

  • (2)調査結果の概要

    • 現在の総合的な満足度

      預金取扱金融機関の「満足」の比率は23.7%、証券会社等は18.1%、保険会社は13.4%、貸金業者は1.6%でした。

      一方、「不満」の比率は、預金取扱金融機関は30.9%、証券会社等は10.1%、保険会社は21.6%、貸金業者は11.3%でした。

      また、「どちらとも言えない」の比率は、預金取扱金融機関は43.7%、証券会社等は30.2%、保険会社は45.2%、貸金業者は16.6%でした。

        「満足」の比率 「不満」の比率 「どちらとも言えない」
      の比率
      預金取扱金融機関 23.7% 30.9% 43.7%
      証券会社等 18.1% 10.1% 30.2%
      保険会社 13.4% 21.6% 45.2%
      貸金業者 1.6% 11.3% 16.6%

      (注)「満足」には、「どちらかと言えば満足」を含み、「不満」には、「どちらかと言えば不満」を含む。

    • 1年前と比較した総合的な満足度の変化

      預金取扱金融機関の満足度が「向上した」比率は、17.0%、証券会社等は14.3%、保険会社は9.6%、貸金業者は2.5%でした。

      一方、「低下した」比率は、預金取扱金融機関は18.6%、証券会社等は6.9%、保険会社は15.0%、貸金業者は8.2%でした。

      なお、「どちらとも言えない」比率は、預金取扱金融機関は62.7%、証券会社等は36.9%、保険会社は55.3%、貸金業者は18.5%であり、「利用しないので分からない」比率は、預金取扱金融機関は1.6%、証券会社等は41.8%、保険会社は20.1%、貸金業者は70.9%でした。

        「向上した」
      の比率
      「低下した」
      の比率
      「どちらとも言えない」の回答 「利用しないので分からない」の回答
      預金取扱金融機関 17.0% 18.6% 62.7% 1.6%
      証券会社等 14.3% 6.9% 36.9% 41.8%
      保険会社 9.6% 15.0% 55.3% 20.1%
      貸金業者 2.5% 8.2% 18.5% 70.9%

      (注)「向上した」とは、「かなり向上した」と「どちらかと言えば向上した」の合計であり、「低下した」とは、「どちらかと言えば低下した」と「かなり低下した」の合計である。

3.今後の対応

金融庁としては、今回の調査によって、国民の皆様から金融商品・サービスに対する貴重なご意見を伺えたと認識しており、こうしたご意見も参考にしながら、利用者の満足度の向上に向けて、引き続き真摯に取り組んでまいります。

※ 詳しくは、金融庁ホームページの「報道発表資料」から、「利用者満足度アンケート」の取りまとめ結果の公表について(平成19年3月22日)にアクセスしてください。


ヘッジファンド調査(2006)の結果の公表について

金融庁では、平成17年に初めてヘッジファンドの実態調査を行い、平成17年3月末時点の国内金融機関によるヘッジファンドへの投資状況、過去5年間に亘る設定及び販売状況を調査し、その報告書を「ヘッジファンド調査の概要とヘッジファンドをめぐる論点」として平成17年12月13日に公表しました。

その後、ヘッジファンドに対する国内外の規制当局者や業界関係者からの反応が引き続き高いことなどから、今般、前回の報告書をアップデートする目的で、平成18年3月末を基準に実態調査を実施し、平成19年3月15日に公表しております。

  • 1.  今回の調査時におけるヘッジファンドの定義は、前回と同様に、○レバレッジの活用、○成功報酬の徴収、○ヘッジファンド戦略の三要素を有するファンドとし、当庁所管の金融機関1,252社に対して、任意で回答を求めました。

  • 2.  その結果、投資については、平成18年3月末現在、国内の348の金融機関が約7.4兆円のヘッジファンドを保有し、前年末実績の約6.1兆円からは約22%の増加となっております。その傾向としては、引き続き幅広い金融機関がヘッジファンドに投資し、業態別の投資残高割合でみると、保険会社が26%、信託銀行が15%、都市銀行等24%、地方銀行15%、その他(系統金融機関を含む。)が20%となっています。

  • 3.  販売については、国内の101の金融機関が、調査対象期間中(平成17年4月1日~平成18年3月31日)、金融法人、事業法人、個人等に対し、約3.0兆円のヘッジファンドを販売しており、前年度の2.1兆円からは、約40%の伸びとなっています。その傾向としては、個人に対する販売額が拡大し、その割合は2割に達しております。また、引き続き、国内で販売される5割強のヘッジファンドは、ケイマン諸島を中心とする外国籍のファンドとなっています。

  • 4.  今回の調査結果の取りまとめでは、我が国のヘッジファンドへの対応についても言及しております。金融庁としては、ヘッジファンドのみに特化した規制・監督を行っておりませんが、○投資家保護、○市場の公正性・透明性の確保、○システミック・リスクの回避、といった観点から、その動向を注視しています。また、海外当局との継続的な情報交換や意見交換を積極的かつ継続的に行っているほか、IOSCO(証券監督者国際機構)などの国際会議の場における議論にも参加しています。

※ 詳しくは、金融庁ホームページの「報道発表資料」から「ヘッジファンド調査(2006)の結果の公表について」(平成19年3月15日)にアクセスしてください。


金融検査マニュアルの改訂について

1.はじめに

金融庁は、平成19年2月16日、「預金等受入金融機関に係る検査マニュアル」(以下「金融検査マニュアル」という)を改訂し、検査局長通達として発出しました(平成19年2月16日金検第79号)

金融検査マニュアルの改訂は、平成11年7月1日の策定以降、数回にわたって行われてきたところですが、今回の改訂は、全体構成の再編、項目の新設を含めた全面的なものとなっています。今回の改訂の主な特色としては、バーゼルIIへの対応に加え、金融機関の態勢面について、経営陣の主体的関与による内部管理態勢の構築の重視、顧客保護等管理態勢の新設が挙げられます。

以下、本コーナーにおいては、改訂金融検査マニュアルの概要等について説明します。なお、今回の改訂に関する皆様の理解の向上に資することを目的として、PDF『「改訂金融検査マニュアルに関するよくあるご質問(FAQ)」について』を本年4月6日に公表していますので、本コーナーの概要説明と合わせてご活用ください。

2.金融検査マニュアル改訂の経緯

金融検査マニュアルについては、平成19年3月期から実施されるバーゼルIIへの対応が必要であったことに加え、策定後7年が経過し、その間の様々な環境変化に応じた対応が必要と考えられていました。そこで、平成18年10月30日から、民間の実務家や学者を含めた検討会を金融庁検査局内に設置し、8回にわたる議論を行い(詳細については、検討会議事要旨をご参照ください。)、また、同時に、金融検査評定制度の一部改正(P18参照)についても検討を進めました。同検討会での議論を踏まえ、バーゼルII対応部分については、平成18年11月16日に、残りの部分についても同年12月26日に改訂案を公表し、広く意見を募集しました。そして、平成19年2月16日、寄せられたご意見を踏まえ、改訂金融検査マニュアルを公表し、検査局長通達として発出しました。

なお、本通達は、平成19年4月1日から施行し、同日以降を検査実施日とする検査について適用することとしています(ただし、資産査定、償却・引当等、決算処理を伴う項目については、平成19年3月期の決算処理から適用します)。

3.共通フォーマット

今回の改訂が大幅なものとなった理由の一つとして、各態勢共通のフォーマットを作り、旧マニュアルに記載されている内容もこれに従って整理したことが挙げられます。

金融検査評定制度の評定段階が「経営陣による態勢構築」により定義されていることにも現れているように、内部管理態勢の構築に当たっては経営陣の役割・責任が肝要であることから、共通のフォーマットでは「経営管理(ガバナンス)態勢」以外について、基本的に「I.経営陣による態勢整備・確立状況」「II.管理者による態勢整備・確立状況」「III.個別の問題点」の三部から構成することにより、経営陣が果たすべき役割・責任を明確にしました。

さらに、管理方針や組織体制・規程を整備するにとどまらず、既存の態勢を常に改善していく動的プロセスとしての内部管理態勢を重視しています。

具体的にいうと、経営陣が○方針の策定(Plan)、○規程・組織体制の整備(Do)、○評価(Check)・改善(Action)をそれぞれ適切に行っているか、言い換えれば、いわゆるPDCAサイクルが有効に機能しているかという観点から、検証項目を整理しています。

そして、「II」「III」の検証において問題点の発生が認められた場合には、このPDCAサイクルのどの部分が有効に機能していなかったために問題点の発生につながったかを漏れなく検証することとしているほか、検査官が検査を通じて認識した弱点・問題点を経営陣が認識していないということであれば、特に、態勢が有効に機能していない可能性を含めた検証を行うこととしています。

なお、「金融検査評定制度」の改訂では、評価(Check)・改善(Action)が有効に機能し、好循環が見られる場合には、評定を行う上でのプラス要素として勘案することとしています。

4.規模・特性、リスク・プロファイルに見合ったリスク管理態勢

金融検査マニュアル全体にわたることですが、マニュアルの冒頭の「留意事項」において、適用に当たっては、「金融機関の規模や特性を十分踏まえ、機械的・画一的な運用に陥らないよう配慮する必要がある」「字義どおりの対応が金融機関においてなされていない場合であっても、金融機関の業務の健全性及び適切性の確保の観点からみて、金融機関の行っている対応が合理的なものであり、さらに、チェック項目に記述されているものと同様の効果がある、あるいは金融機関の規模や特性に応じた十分なものである、と認められるのであれば、不適切とするものではない」としています。たとえば、各態勢のチェックリストでは、「管理部門」についての記述が多くなされていますが、これらが設置されていない場合、当該金融機関の規模・特性を踏まえ、管理部門として必要な機能を十分に発揮することができ、相互牽制が機能するような組織体制となっているかを検証することとなります。

また、各リスク管理態勢の検証ポイントにおいては、各金融機関の戦略目標、業務の規模・特性及びリスク・プロファイルに見合ったリスク管理態勢の整備ということを強調しています。特に、自らの業務等に合わない複雑・高度なリスク計測・分析手法は不必要であるというにとどまらず、不適切ですらありうることに留意すべきことが記載されています。

5.各態勢の確認検査用チェックリストの内容

今般の改訂により検証項目が再編・整理され7項目から10項目となりましたが(<図表>改訂金融検査マニュアルの項目をご参照ください。)、各管理態勢については、次のような主なチェック項目を検証することとしています。

(1) 経営管理(ガバナンス)態勢-基本的要素-の確認検査用チェックリスト

  •  ○代表取締役、取締役及び取締役会による経営管理(ガバナンス)態勢、○内部監査態勢、○監査役による監査態勢、○外部監査態勢、の基本的要素が適切に発揮され、当該金融機関の経営管理(ガバナンス)が全体として有効に機能しているか。

(2) 法令等遵守態勢の確認検査用チェックリスト

  •  金融機関の業務の全般にわたり法令等遵守態勢が有効に機能しているか。
  •  本人確認業務、疑わしい取引、反社会的勢力、法令等違反行為等に対応するための態勢が有効に機能しているか。

(3) 顧客保護等管理態勢の確認検査用チェックリスト

  •  顧客に対する説明が適切かつ十分に行われること、
     顧客からの相談・苦情等への対処が適切に処理されること、
     顧客の情報が漏洩防止の観点から適切に管理されること、
     業務の外部委託時の業務遂行の的確性及び顧客情報の適切な管理、
    等を確保するための態勢が有効に機能しているか。
  •  個人情報保護、銀行代理業者の監督、プライベート・バンキングにおける利益相反回避等の態勢が有効に機能しているか。

(4) 統合的リスク管理態勢の確認検査用チェックリスト

  •  金融機関の業務の規模・特性及びリスク・プロファイルに見合った適切な統合的リスク管理態勢が有効に機能しているか。
  •  金融機関の直面するリスクを統合的に特定・評価・モニタリング・コントロールするリスク管理プロセスが有効に機能しているか。
  •  各リスクを統一的な尺度で定量的に計測する「統合リスク計測手法」を採用している場合には、計測態勢が適切に運営されているか。

(5) 自己資本管理態勢の確認検査用チェックリスト

  •  自己資本比率の算定が正確に行われる態勢が有効に機能しているか。
  •  自己資本充実度の評価が適切に行われる態勢が有効に機能しているか。

(6) 信用リスク管理態勢の確認検査用チェックリスト

  •  与信審査、与信管理、問題債権管理等の機能が適切に発揮される態勢が有効に機能しているか。
  •  信用リスク量を統一的な尺度で定量的に計測する「信用リスク計測手法」を採用している場合には、計測態勢が適切に運営されているか。

(7) 資産査定管理態勢の確認検査用チェックリスト

  •  自己査定が正確に行われる態勢が有効に機能しているか。
  •  償却・引当が適切に行われる態勢が有効に機能しているか。

(8) 市場リスク管理態勢の確認検査用チェックリスト

  •  バンキング、トレーディング勘定双方について、金融機関の規模・特性及びリスク・プロファイルに見合った適切な市場リスク計測・分析手法を用い、市場リスクが適切に計測・分析される態勢が有効に機能しているか。
  •  市場リスク量を統一的な尺度で定量的に計測する「市場リスク計測手法」を採用している場合には、計測態勢が適切に運営されているか。

(9) 流動性リスク管理態勢の確認検査用チェックリスト

  •  資金繰りリスクと市場流動性リスクの双方の流動性リスクについて管理する態勢が有効に機能しているか。

(10) オペレーショナル・リスク管理態勢の確認検査用チェックリスト

  •  オペレーショナル・リスクを金融機関全体として総合的に管理する態勢が有効に機能しているか。
  •  各種オペレーショナル・リスクを統一的な尺度で定量的に計測している場合には、計測態勢が適切に運営されているか。
  •  「事務リスク」「システムリスク」「その他オペリスク」それぞれの管理態勢が有効に機能しているか。

6.終わりに

金融検査マニュアルは、あくまでも検査官が金融機関を検査する際に用いる手引書として位置づけられるものであり、各金融機関においては、自己責任原則のもと、金融検査マニュアルを踏まえ、創意・工夫を十分に生かし、それぞれの規模・特性に応じた対応がなされることが期待されます。

また、金融検査マニュアルの各検証項目やこれを踏まえた問題意識を金融機関と共有することによって、金融行政の透明性の向上に資するとともに、検査における金融機関と検査官の双方向の議論が充実し、より効率的かつ実効的な検査となることで、金融機関の内部管理態勢がより一層充実した適切なものとなっていくことが期待されます。

<図表>改訂金融検査マニュアルの項目


「金融検査評定制度」の一部改正及び
「金融検査評定制度に関するQ&A」について

金融庁では、「金融検査マニュアル」の改訂に伴い、「金融検査評定制度」の一部改正(案)に対するパブリックコメントの結果について」(2月16日)及び「金融検査評定制度に関するQ&A」(3月30日)を公表しましたので、以下にその概要を説明致します。

  • 1.  金融検査評定制度(以下「評定制度」という。)については、平成17年7月に制度を導入した後、12月までの試行準備期間を経て、平成18年1月より試行を開始しました。

  • 2.  評定制度は、金融検査マニュアル(以下「検査マニュアル」という。)に則った検査を行った上で、その結果に対して段階評価を行うものです。そのため、今回検査マニュアルが改訂(平成19年2月16日)されたことに伴い、評定制度も一部改正を行い、平成19年4月1日から施行することとしました。

  • 3.  主な改正点は、以下のとおりです。

    検査マニュアルの項目が10項目となることに伴い、評定項目もそれに合わせて9項目から10項目としました。また、今回改訂された検査マニュアルにおいては、経営陣等が方針の策定、規程・組織体制の整備にとどまらず、自らの態勢の弱点・問題点について評価・改善活動を適切に行っているかといったいわゆる“PDCAサイクル”の観点から、内部管理態勢が有効に機能しているかどうかを検証することが明確化されたところです。評定制度においても、こうした趣旨にかんがみ、評定に当たっては、経営陣による管理態勢の整備・確立状況、管理者による管理態勢の整備・確立状況について、方針の策定(Plan)、内部規程・組織体制の整備(Do)、評価(Check)・改善活動(Action)といった一連のプロセスのどこに問題があったのかを意識して評価を行うことを、評定における【基本的留意点】の中で明確化しました。

  • 4.  改正前の「評定段階及び着眼点(例)」については、できるだけ検査マニュアルに融合させることにより再整理して「評定段階及び留意点等」とし、各評定項目ごとの「評定における留意点等」においては、各項目に共通する基本的留意点を冒頭に記載し、プラス要素、マイナス要素、その他留意点の順で記載しています。

  • 5.  平成19年4月1日以降は「評定段階及び留意点等」に基づき評定制度を運営していくこととなりますが、これまでの評定目線と基本的に変わるわけでありません。

  • 6.  試行期間中の検査等での議論において、評定段階の基準や規模・特性の考え方などについて、もっと具体的に示してほしいといった意見や、検査マニュアルの改訂や評定制度の一部改正を踏まえてどのように検証し評定を行うのかといった疑問点等が検査官・金融機関の双方より寄せられていたこと等を踏まえ、より具体的な内容を盛り込むことで当該制度に対する金融機関を含む関係者の理解の一層の向上に資すること等を目的として、「金融検査評定制度に関するQ&A」を作成しました。

  • 7.  今後も、評定制度の趣旨を踏まえ、金融検査マニュアルに基づく検査とその結果としての評定が適切に実施されるよう、引き続き研修等を通じ、財務局を含む検査部局職員への徹底を図っていきたいと考えています。


第1回監査監督機関国際フォーラム(東京会合)について

去る3月22日から23日に、第1回監査監督機関国際フォーラム(IFIAR, International Forum of Independent Audit Regulators)が我が国の主催で東京において開催されました。以下、IFIARの概要について紹介します。

1.設立の経緯

平成13年以降、欧米市場における巨額の会計事件を契機として、監査監督体制の強化を通じて、市場の信頼性を高めようという国際的な流れから、主要国で監査監督機関が相次いで設立されました。そのような動きの中で、金融安定化フォーラム(FSF)が設立間もない各国の監査監督機関に機関間の情報交換を目的とした国際会議の開催を呼びかけ、平成16年9月にワシントンで行われたのが、IFIARの前身ともいうべき監査人監督機関代表者会議(Meeting of Heads of Auditor Oversight)です。当初参加したのは我が国をはじめとする9カ国の監査監督機関及び3国際機関であり、主として各国における現状等について情報・意見交換を行いました。

第2回目以降は、監査監督機関円卓会議(Roundtable of Independent Audit Regulators)と名称を変え、半年に1度開催されてきています。その間、高品質な監査の重要性に鑑み、監査監督機関相互の協力体制を強化するための国際フォーラム設立の必要性が高まりました。そして、平成18年9月のパリ会議で、IFIARの設立が正式に承認されました。

2.IFIAR東京会合の概要

IFIAR設立後、初の会合となった東京会合には、日、米、加、豪及び欧の主要国等をはじめとする22カ国の監査専門職から独立している監査監督機関がメンバーとして、また6国際機関がオブザーバーとして参加し、平成16年に上記の前身の会議が発足して以来過去最大規模のものとなりました。

今回の東京会合では、各国における活動状況についての報告に加え、監査の品質を促進する要素、監査規制機関間における情報交換、監査サービス市場が集中化している場合における高品質監査の利用可能性等、各国監査監督機関に共通する様々なテーマに基づき活発な意見交換が行われました。また、かねてから主要テーマの1つとなっている監査検査の手法及び経験に関する共有については、本年5月末にオランダでワークショップが開かれることとなりました。

今回の東京会合では、今後のIFIARの活動に向けた基盤固めがなされました。各国の監査監督機関の組織及び権限などは様々ですが、IFIARを通じ、監査監督に係る経験の共有及び意見交換等を行うことで、今後監督機関間の協力関係の構築・強化が図られ、国際的に監査の品質向上に資することが期待されています。

※ 詳しくは、金融庁ホームページ内・公認会計士・監査審査会の「その他の情報」から、「第1回監査監督機関国際フォーラム(東京会議)について」(平成19年3月29日)新しいウィンドウで開きますにアクセスしてください。


中小規模監査事務所の監査の品質管理の公表について

公認会計士・監査審査会新しいウィンドウで開きます(以下「審査会」という。)は、中小規模監査法人及び個人事務所においては、限られた人的資源の中で、適切な業務管理体制を構築・運用することが喫緊の課題であり、中小規模監査事務所に早急な体制整備を促すことが必要であると考えたことから、審査会がこれまでに実施した審査・検査事例を取りまとめたものを、「中小規模監査事務所の監査の品質管理について」新しいウィンドウで開きますとして、平成19年3月16日、公表いたしました。

1.報告書の対象事務所

今回公表した報告書では、平成16年4月の審査会発足以来平成19年2月末までに審査・検査を実施した、4大監査法人を除く、中小規模監査事務所(17中規模監査法人、88小規模監査法人、128個人事務所(公認会計士))を対象とし、それらの審査・検査事例を取りまとめております。

(注) 中規模監査法人とは、4大監査法人に次ぐ規模の20監査法人、小規模監査法人とはそれら以外の監査法人を指す。(平成17年3月末現在)

2.中小規模監査事務所に共通する問題点

本報告書では、中小規模監査事務所の問題点を幅広く記載していますが、共通する問題点として、以下のものを記載しています。

  • (1)中小規模監査法人の監査の品質管理

    • 業務管理体制

      本部組織の整備の遅れなど業務管理上の問題がみられており、法人の最高経営責任者等のリーダーシップの下に、適切な業務管理体制を構築・運用していくことが喫緊の課題となっています。

    • 監査体制及び審査体制

      法人に所属する公認会計士が少数のため、大規模会社に対する組織的な監査体制及び審査体制を構築することが困難な状況であり、また、監査業務の審査の実施に不十分である点が認められました。

    • 監査の品質管理に対する意識

      法人の最高経営責任者や個々の監査業務を行う監査実施者において監査の品質管理に対する意識が薄い者がみられました。

  • (2)個人事務所の監査の品質管理

    個人事務所の業務内容をみると、監査業務を主体とするものが3割に満たず、税務業務等を主体とするものが多くなっています。監査体制及び審査体制については、中小規模監査法人以上に、それらの体制の構築・運用が困難になっている状況等がみられました。また、監査業務以外の業務が主体であるために、監査の品質管理の改善に取り組む意識が薄いと思われる事務所もみられました。

  • (3)被監査会社側の問題点

    被監査会社側の問題としては、小規模監査法人及び個人事務所が大規模会社の監査を実施する場合に、監査人に対し不適切な対応を行っていることが認められており、財務諸表等の作成者としての責務を改めて認識する必要があります。

    (注) 本報告書に記載する問題点は、検査において検査官が検証した範囲及び検査時点で認められたものであり、すべての中小規模監査事務所の業務管理体制に不備があるとするわけではないこと、各監査事務所の行う監査意見の表明そのものが直ちに不適切であるとするものではないこと、また、指摘していない事項はすべて適切であることを意味するものではないことに留意する必要があります。

3.おわりに

審査会としましては、これまでに審査・検査の対象とならなかった監査事務所においても、今回の報告書の内容を踏まえて、監査の品質管理の向上に一層努められることを期待しています。

また、今後審査会においても、審査及び検査を通じて、監査事務所による監査業務の品質管理の整備・改善状況等を検証し、また、日本公認会計士協会が行う品質管理レビューの機能の一層の向上を図るため、品質管理レビューの実施状況等について検証し、必要に応じて提言を行い、我が国の監査業務全体の質の確保・向上に努めていきたいと思います。

※ なお、詳細につきましては、金融庁ホームページ内・公認会計士・監査審査会の「品質管理レビューの審査・検査」から、「「中小規模監査事務所の監査の品質管理について」の公表について」(平成19年3月16日)新しいウィンドウで開きますにアクセスして下さい。


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