【特集】

金融商品取引法制の完全実施を図るための政令案・内閣府令案等について、本年4月14日~5月21日(38日間)にパブリックコメントを募集し、その後、309の団体・個人から寄せられた延べ約4,000項目程度のコメントをふまえ、原案について所要の変更を行うとともに、コメント全体を合計約3,500項目に整理し、各項目について考え方を取りまとめ、7月31日に「証券取引法等の一部を改正する法律および証券取引法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律の施行に伴う関係政令の整備等に関する政令」が閣議決定され、同日に整備政令および関係内閣府令等を公表するとともに、提出されたコメントの概要およびそれに対する考え方を公表しました。

今回の【特集】では、パブリックコメントをふまえて行った政令・内閣府令等のおもな変更点について、2回にわたり解説します。

また、改正にあわせて、各種監督指針の改正も行っており、その内容についても解説します。

「金融商品取引法制に関する政令案・内閣府令案等」
に対するパブリックコメントの結果等について【第1回】

1.はじめに

平成19年7月31日に、金融商品取引法制の完全な実施を図るための政令である「証券取引法等の一部を改正する法律及び証券取引法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律の施行に伴う関係政令の整備等に関する政令」(以下「整備政令」)が閣議決定されました。金融庁はこれに併せて、同日、金融商品取引法制の実施を図るための内閣府令等を公表しました

※ 今回の整備政令および内閣府令等の施行日については、平成19年7月31日に別途「証券取引法等の一部を改正する法律の施行期日を定める政令」が閣議決定され、平成19年9月30日を施行期日とすることとしております。

2.対象商品・取引の拡大

  • (1)概観

    金商法では、金融商品・取引に関する包括的法制を構築する観点から、集団投資スキーム(ファンド)持分の包括的定義の新設(同法2条2項5号・6号)、デリバティブ取引の幅広い定義の新設(同条20項~25項)、信託受益権一般の対象化(同条2項1号・2号)や包括的な政令指定規定の整備(同項7号)等が行われております。

  • (2)集団投資スキームからの除外

    政令・内閣府令では、まず、集団投資スキーム持分の包括的定義から除外するものを定めております。

    第1に、出資者全員が出資対象事業に関与する場合が除外されております(金商法2条2項5号イ、金商法施行令1条の3の2)

    具体的には、以下のいずれにも該当する場合とされている。なお、当該要件への該当性の判断に当たっては、単に形式的に組合契約等に定めを置くのみでは足りず、実質的に満たされるべきである点に、留意が必要と考えられます。

    • 出資対象事業に係る業務執行が全出資者の同意を得て行われるものであること(全出資者の同意を要しない旨の合意がされている場合には、業務執行の決定について全出資者が同意をするか否かの意思表示をしてその執行が行われるものであることを含む。)。

    • 全出資者が、出資対象事業に常時従事すること、または特に専門的な能力であって出資対象事業の継続の上で欠くことができないものを発揮して出資対象事業に従事すること。

      第2に、他の法律に基づく規制を受けていること等により、当該権利を有価証券とみなさなくても公益・出資者保護に支障を生ずることがないと認められるものとして、○保険・共済契約に係る権利、○有限責任中間法人を除く各種法人への出資等に係る権利、○分収林契約に基づく権利、○公認会計士・弁護士(外国法事務弁護士)・司法書士・土地家屋調査士・行政書士・税理士・不動産鑑定士・社会保険労務士・弁理士のみを当事者としてもっぱら当該業務を出資対象事業とする組合契約等に基づく権利、○従業員持株会・拡大従業員持株会・取引先持株会に基づく権利を除外しております(金商法施行令1条の3の3、定義府令6条・7条)

  • (3)デリバティブ取引における追加と除外

    デリバティブ取引については、参照指標である「金融指標」への追加により、地震デリバティブ取引等の地象・地動等の観測成果数値を参照指標とするデリバティブ取引、GDPデリバティブ取引、統計法の指定統計調査・届出統計調査等に係る統計を参照指標とするデリバティブ取引を追加しております(金商法2条25項3号、金商法施行令1条の18)

    また、クレジット・デリバティブ取引の支払事由(クレジット・イベント)を追加しております(金商法2条21項5号・22項6号、金商法施行令1条の13・1条の14、定義府令20条・21条)

    一方、店頭デリバティブ取引から、預貯金等に組み込まれた通貨オプション取引、保険・共済契約、債務保証契約や貸付けの損害担保契約を除外しております(金商法2条22項、金商法施行令1条の15)

  • (4)学校債の追加

    政令・内閣府令では、「一項有価証券」として、学校証券・証書を追加しております(金商法2条1項21号、金商法施行令1条2号、定義府令4条)。また、「二項有価証券」として、学校債(学校法人等に対する貸付けに係る債権)のうち、一定のものを追加しております(金商法2条2項7号、金商法施行令1条の3の4、定義府令8条)

対象商品・取引の拡大

3.金融商品取引業

  • (1)金融商品取引業からの除外に係る考え方

    金商法では、現行の縦割り業法を見直して業の概念を「金融商品取引業」に統合し、参入規制を原則として登録制に統一しております。ある業務が「金融商品取引業」の定義(金商法2条8項)に該当する場合には、原則として登録業者である「金融商品取引業者等」(同法34条)でなければ当該業務を行うことができないこととなります(同法29条、33条の2)。特に、「第一種金融商品取引業」(同法28条1項)に該当する場合には、相対的に厳格な登録拒否要件が定められております(同法29条の4第1項5号・6号)

    政令・内閣府令においては、形式的には「金融商品取引業」の定義に該当するものの、実質的には投資者保護のため支障を生ずることがないと認められる行為(特に、第一種金融商品取引業に該当する行為)について、「金融商品取引業」の定義から除外しております(同法2条8項柱書、金商法施行令1条の8の3、定義府令15条・16条)

    具体的には、以下の行為が金融商品取引業から除外されております。

    • 国・地方公共団体・日本銀行・外国政府等の行為(金商法施行令1条の8の3第1項1号)

    • 金融商品取引業者等、適格機関投資家や資本金10億円以上の株式会社等のプロ顧客を相手方とする店頭デリバティブ取引等(有価証券関連店頭デリバティブ取引等を除く)(金商法施行令1条の8の3第1項2号、定義府令15条)

    • 商品ファンドスキームにおける一の法人への全部出資に係る投資運用行為(金商法施行令1条の8の3第1項3号)

    • 勧誘をすることなく金融商品取引業者等の代理・媒介により行う信託受益権の販売(業務委託契約書等において勧誘の全部を委託する旨が明らかにされているものに限る)。(金商法施行令1条の8の3第1項4号、定義府令16条1項1号)

    • 投資運用行登録業者がグループ外国投資運用業者(「関係外国運用業者」)の委託を受けて行う取引所取引の委託の媒介・取次ぎ・代理(定義府令16条1項2号・2項)

    • 物品の売買等を業とする者がその取引に付随して事業者の為替リスクをヘッジする目的で当該事業者を相手方として行う店頭通貨デリバティブ取引(先渡取引・オプション取引)(定義府令16条1項3号)

    • 内部統制報告書の提出義務を負う上場会社等がその子会社の為替リスクをヘッジする目的で子会社を相手方としてまたは子会社のために行う店頭通貨デリバティブ取引(先渡取引・オプション取引)またはその媒介・取次ぎ・代理(定義府令16条1項4号)

    • 金融商品取引業者(資本金等5,000万円以上の第二種金融商品取引業を行う法人に限る)がリース事業を行う完全子会社(株式会社)から匿名組合契約に基づく権利を引き受ける行為(定義府令16条1項5号)

    • 金融商品取引業者(第二種金融商品取引業を行う法人に限る)がいわゆる不動産私募ファンド(いわゆる親ファンドに相当)に取得させることを目的として、引き受ける行為(定義府令16条1項6号)

    • 運用型信託会社等が自ら受託した信託に係る信託受益権の募集・私募に際して当該信託受益権を引き受ける行為(定義府令16条1項7号)

    • グループ外国会社(「関係外国金融商品取引業者」)のために行う投資一任契約に係る行為(いわゆるオフショア・ブッキング)(定義府令16条1項8号・3項)

    • 商品投資顧問業者等が商品投資に付随して為替リスクをヘッジする目的で行う「通貨デリバティブ取引」への投資運用を行う投資一任契約に係る行為(定義府令16条1項9号・4項)

    • 集団投資スキームのうち投資一任契約により運用権限の全部を投資運用行登録業者に委託して所要の届出等をしている場合における自己運用行為(定義府令16条1項10号)

    • 集団投資スキームのうち、いわゆる二層構造不動産ファンド(子ファンド)で親ファンド運営者(匿名組合営業者であって投資運用業登録業者、特例業務届出者または改正法附則48条1項の特例投資運用業務を行う者が所要の届出等をしている場合における自己運用行為(定義府令16条1項11号)

    • 競走用場ファンドスキームにおける自己運用行為(定義府令16条1項12号)

    • 外国集団投資スキームのうち、出資者(直接出資者、間接出資者)が合計10名未満の適格機関投資家および特例業務届出者に限られ、かつこれらの者の出資額が当該外国集団スキームの総出資額の3分の1以下である場合における自己運用行為(定義府令16条1項13号)

    • 金融商品取引業者(資本金等5,000万円以上の第二種金融商品取引業を行う法人に限る)が信託受益権・集団投資スキーム持分に係る募集・私募の取扱いに関して顧客から金銭の預託を受ける行為であって、当該金銭について分別管理をしているもの(定義府令16条1項14号)

    • 外国口座管理機関が行う社債等の振替(定義府令16条1項14号)

  • (2)集団投資スキームに係る業務

    • プロ向けファンド業務の範囲

      金商法では、集団投資スキームの業規制における柔軟化を図る観点から、いわゆるプロ向けファンド業務(「適格機関投資家等特例業務」)については、「特例業務届出者」としての届出制とされております(同法63条1項~3項)

      届出制の対象となるプロ向けファンドの範囲として、出資者に適格機関投資家が1名以上いることに加えて、「適格機関投資家以外の者」が49名以下であるとされております(金商法63条1項1号、金商法施行令17条の12第1項・2項)。なお、適格機関投資家は必ず1名以上いなければならず、たとえば民法組合の業務執行組合等のファンドの実質的運営者以外の出資者の内に適格機関投資家がいなければならないと解されております。また、49名以下の人数については、取得勧誘の相手方の数ではなく、取得勧誘に応じることにより有価証券を所有することとなる人数であると解されております(金商法2条3項3号参照)

    • ファンド・オブ・ファンズ(FOF)の取扱い

      金商法では、ファンド・オブ・ファンズ(FOF)の子ファンドについて、その親ファンド(子ファンドに出資している集団投資スキーム)が、一般投資家(適格機関投資家以外の者)がその資産対応証券を取得している特定目的会社および一般投資家が匿名組合員となっている匿名組合の営業者である場合には、「適格機関投資家等」に含めず、届出制を許容しておりません(同法63条1項1号イ・ロ)

      今回の府令では、一般投資家が投資している特定目的会社や民法組合等が親ファンドである子ファンドについて届出制を許容しない一方、○親ファンドが投資事業有限責任組合(LPS)または有限責任事業組合(LLP)である場合、または○親ファンド・子ファンドの運営者が同一である場合(匿名組合を除く)であって、親ファンドと子ファンドの出資者を合わせて適格機関投資家および49名以下の一般投資家であれば、親ファンドの出資者に一般投資家がいる場合であっても、子ファンド運営者について、登録義務を適用除外し、届出制を許容しております(金商法63条1項1号ハ、金商業等府令235条)

  • (3)その他金融商品取引業の取扱い

    外国証券業者が行う有価証券関連業に関する特例として、勧誘をすることなく、国内の顧客の注文を受け、または有価証券関連業を行う金融商品取引業者(第一種金融商品取引業を行う者)の代理・媒介により、国内の顧客を相手方として有価証券の売買および外国市場デリバティブ取引を行う場合には、金融商品取引業の登録は不要とされております(金商法58条の2ただし書、同法施行令17条の3第2号)。一方、有価証券関連店頭デリバティブ取引については、顧客が金融商品取引業者等、適格機関投資家や資本金10億円以上の株式会社等である場合に限り、登録が不要とされております。

    一方、金融商品取引業に追加される行為として、○商品ファンド(信託型)の信託の受益権の自己募集(金商法2条8項7号ト、同法施行令1条の9の2)、および○投資信託・外国投資信託の受益証券を自己募集する場合における転売を目的としない買取り(金商法2条8項18号、同法施行令1条の12)が定められております。

  • (4)金融商品取引業の登録に係る経過措置

    金商法の施行日の際に金商法により新たに規制対象とされている有価証券(「新有価証券」)につき金融商品取引業を行っている者の登録に係る六月間の経過措置が設けられているが(改正法附則17条)、これに加えて、施行日の際に、○新有価証券につき金融商品取引業を行っている者の変更登録、○金商法により新たに規制対象となるデリバティブ取引につき金融商品取引業として行っている者(みなし登録業者を除く。)の登録、○証取法の規制対象とされている有価証券(「旧有価証券」)につき自己募集行為および自己運用行為を行っている者(みなし登録業者を除く。)の登録に係る6月間の経過措置が設けられております(改正法附則219条1項、整備政令12条~14条)

  • (5)登録拒否要件のうちの人的構成要件の審査基準

    金融商品取引業の参入規制として、不適切な資質の役員・使用人を持つ者等の参入を拒むことができるようにする観点から、登録拒否要件の一つである人的構成要件(金商法29条の4第1項1号ニ)の審査基準を設けております(金商業等府令13条)

4.金融商品取引業者の業務範囲の拡大

金融商品取引業者(第一種金融商品取引業または投資運用業を行う者)の業務の自由度を高める観点から、届出業務を拡大しております。

第一に、商品等デリバティブ取引(金商法35条2項2号)について、現物決済取引も可能としております(金商業等府令67条1号)

第ニに、信託兼営金融機関が行う遺言執行および遺産整理に係る契約締結の媒介を追加しております(金商法35条2項7号、金商業等府令68条12号)

第三に、○排出権の現物取引やその媒介・取次ぎ・代理、および○排出権のデリバティブ取引やその媒介・取次ぎ・代理を追加しております(金商業等府令68条16号・17号)。なお、○排出権に関するコンサルティング業務は、金融商品取引業者の付随業務に含まれるものと解されております(金商法35条1項柱書)

第四に、有価証券・デリバティブ取引に係る権利以外の資産に対する投資として、他人のため金銭等の財産の運用を行う業務を追加しております(金商業等府令68条19号)。金商法35条2項6号の届出業務があくまでも「運用財産」(同条1項15号、42条1項)の運用業務であるのに対し、当該業務は「運用財産」に限定されないことから、有価証券・デリバティブ取引以外の資産に主として投資運用すること(たとえば、主として金銭債権に投資運用するファンド運用等)が可能となっております。

第五に、以上のほか、不動産の管理業務(金商業等府令68条14号)、投資法人・特別目的会社から委託を受けてその機関運営事務を行う業務(同条18号)、債務保証・債務引受けとその媒介等(同条20号)、顧客に対する他の事業者のあっせん・紹介業務(同条21号)および他の事業者の業務に関する広告・宣伝を行う業務(同条22号)を、届出業務に追加しております。

5.投資性の強い預金等の範囲

金商法制では、同じ経済的性質を有する金融商品・取引には同じ販売・勧誘ルールを適用するという基本的考え方の下、投資性の強い預金・保険・信託等については、金商法の行為規制が準用され、横断的な投資者保護法制が構築されております(銀行法13条の4、同法施行規則14条の11の4、保険業法300条の2、同法施行規則234条の2、信託業法24条の2、同法施行規則30条の2)

対象業務の横断化・業務内容に応じた参入規制の柔軟化

6.金融商品取引業者等の行為規制

  • (1)広告等規制

    • 広告類似行為

      金商法では、利用者保護ルールの徹底を図る観点から、同じ経済的性質を有する金融商品・取引には、その行為規制(販売・勧誘ルール)を業態を問わず横断的に適用しております。

      今回の政令・府令では、まず、広告等規制(金商法37条)について、対象となる広告類似行為の具体的な範囲として、郵便、信書便、ファクシミリ、電子メールまたはビラ・パンフレット配布等の「多数の者に対して同様の内容で行う情報の提供」と規定している(金商業等府令72条)

      「多数の者に対して同様の内容で行う情報の提供」である限り、たとえば販売用資料等も広告等規制の対象となります。

    • 表示事項

      広告等の表示事項については、手数料等、元本損失または元本超過損が生ずるおそれがある旨、その原因となる指標およびその理由、重要事項について顧客の不利益となる事実、金融商品取引業協会に加入している場合にはその名称等を定めております(金商法施行令16条、金商業等府令76条)

    • 表示方法

      広告等の表示方法についても、明瞭かつ正確な表示を義務づけるとともに、特にリスク情報については、広告のスペースは千差万別であること等を勘案して(契約締結前交付書面とは異なり)特定の大きさ以上の文字・数字による表示までは義務づけないものの、もっとも大きな文字・数字と著しく異ならない大きさで表示することを義務づけております(金商業等府令73条)

    • 誇大広告

      いわゆる誇大広告(「著しく事実に相違する表示」または「著しく人を誤認させるような表示」)をしてはならない事項として、契約解除、損失負担・利益保証、違約金等、業者の資力・信用・実績や手数料等に関する事項を規定しております(金商業等府令78条)

次号では、「契約締結前交付書面の交付義務」等について、解説いたします。

  • 1平成18年6月7日に第164回国会において、「証券取引法等の一部を改正する法律」(平成18年法律第65号)および「証券取引法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」(平成18年法律第66号)が可決成立し、同年6月14日に公布されました。

  • 2本稿では、以下の略称を用います。「金融商品取引法制」は「金商法制」、「金融商品取引法」は「金商法」、「金融商品の販売等に関する法律」は「金販法」、「金融商品取引法施行令」は「金商法施行令」、「金融商品の販売等に関する法律施行令」は「金販法施行令」、「金融商品取引法第二条に規定する定義に関する内閣府令」は「定義府令」、「金融商品取引業等に関する内閣府令」は「金商業等府令」、「金融商品取引業協会等に関する内閣府令」は「協会等府令」、「金融商品取引所等に関する内閣府令」は「取引所等府令」。

  • 3広告類似行為の範囲から、○法令等に基づき作成された書類(例えば目論見書や運用報告書等)を配布する方法、○アナリスト・レポート(個別の企業の分析・評価に関する資料で契約締結の勧誘に使用しないもの)を除外しています(金商業等府令72条1号・2号)。

  • 4テレビ・ラジオCM等の放送媒体による広告については、その特性から、紙媒体の広告において表示すべき事項のすべてを視聴者等にわかりやすく表示することが実際上は困難であること等を勘案して、「元本損失・元本超過損が生ずるおそれがある旨」および「契約締結前交付書面等の書面の内容を十分に読むべき旨」を表示事項としております(金商法施行令16条2項、金商業等府令77条2項)。有線テレビ・ラジオ放送、インターネットにおけるテレビ放送等と同内容のものの動画や屋外広告等についても、同様です(同府令77条1項)。なお、広告等規制の対象である広告類似行為のうち、例えばメモ帳、ボールペンや貯金箱等のいわゆるノベルティ・グッズについても概ね同様です(同府令72条3号)。


金融コングロマリット監督指針の一部改正の公表について

金融庁は、平成19年7月31日、「金融コングロマリット監督指針」について、所要の改正を行い、金融商品取引法の施行日(本年9月30日)からこれを適用することとしましたので、その概要について説明いたします。

1.改正の経緯

金融商品取引法(以下、「新法」という。)の施行に伴い、同法の立脚する考え方に基づいて、金融コングロマリットの定義に一部改正を行ったほか、所要の字句の修正を行いました。

2.改正の内容

これまでの「金融コングロマリット」の定義は、○銀行業を営む者、○保険業を行う者及び○証券業等を営む者のうち、いずれか二以上の者を含む企業集団としていました。さらに、このうち、○証券業等を営む者については、証券業、投資信託委託業又は投資顧問業を営む者としていました。今般の新法施行に伴い、「証券業等を営む者」を構成する業種の定義に変更が生じたことから、これに合わせて、金融コングロマリットの定義についても以下のような改正を行うこととしました。

まず、従来の証券業を営む者については、これを「第一種金融商品取引業者のうち有価証券関連業を行う者」として定義しました。また、新法において、従来の投資信託委託業者及び投資顧問業者のうち投資一任契約に係る業務を行う者に加えて、ファンド運用業者が新たに金融庁の監督対象となることと平仄を合わせ、これらを「投資運用業者」として定義しました。なお、従来の投資助言業者については、新法においては「投資助言・代理業」として定義され、投資一任契約に係る業務を行う者とは区別されますが、改正前の定義における金融コングロマリットを構成していた投資助言業者の殆どが、投資信託委託業等を兼営していたこと等から、今回の改正では、金融コングロマリットの定義から除外しています。

新法施行後は、前二者から成る一群と、銀行業を営む者、保険業を行う者のうち、いずれか二以上の者を含む企業集団が、金融コングロマリットとして定義されることとなります。

※ 詳しくは、金融庁ホームページの「報道発表資料」から、「金融コングロマリット監督指針の一部改正(案)に対するパブリックコメントの結果について」(平成19年7月31日)にアクセスしてください。


金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針について

監督指針は、金融庁・各財務局等の監督当局の対応の統一性の確保、行政対応の透明性や業者の予見可能性の向上等を目的として策定・公表しているものです。本年9月30日から横断的な利用者保護ルールの徹底と金融イノベーションの促進を目的とした金融商品取引法制が施行されますが、これに伴い、金融庁では、従来の法体系の下で業態ごとに策定していた監督指針や事務ガイドラインの内容を体系的に整理し、また、同法で新たに規定された業規制、行為規制等に基づき、金融商品取引業者等に対する横断的かつ包括的な監督の考え方、着眼点、および監督手法を整備しました。本監督指針は平成19年4月よりパブリックコメントの手続きに付し、7月31日に決定・公表いたしました。概要は以下のとおりです。

1.監督指針の整理・統合

現在、監督当局は、証券会社、登録金融機関、金融先物取引業者、投資信託委託業者、および投資顧問業者等に対し、各業法と、基本的にはそれぞれ「証券会社向けの総合的な監督指針」「金融先物取引業者向けの総合的な監督指針」、および「事務ガイドライン(投資信託委託業者及び投資法人等並びに証券投資顧問業者等の監督等にあたっての留意事項について)」に基づく行政対応を行っています。金融商品取引法が施行されると、これらの業者は「金融商品取引業者等」として整理され、原則として統一的な業規制、行為規制の対象となります。それに伴い、監督指針についても体系的に整理することとしました。

まず、これら業者に対する監督上の着眼点・監督手法等を「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」(以下「新監督指針」という)に整理・統合し、また、ファンドの取扱業者など同法で新たに監督対象となる業者、信託受益権販売業者や商品ファンド業者など、現在は別の業法・監督指針に基づき監督されている業者についての着眼点等も盛り込むことで、横断的かつ包括的な指針にまとめることとしました。

2.基本的考え方

我が国経済が持続的に発展するためには、間接金融に偏重しているわが国の金融の流れが直接金融や市場型間接金融にシフトする、いわゆる「貯蓄から投資へ」の動きを加速することが重要な課題です。これは、主に以下の四つの効果を通じ、わが国金融システムの安定と内外の市場参加者にとって魅力ある市場の実現、企業の成長、および経済発展に資すると考えられます。

  • 多数の市場参加者がその能力に応じてリスクを広く負担する構造へと変化することにより、強靭で高度なリスクシェアリング能力を有する金融システムを実現すること(間接金融にリスクが集中することによって生じる金融システムの脆弱性の回避)

  • リスクマネーの円滑な供給を実現し、企業のイノベーションを促進すること

  • 貯蓄金融から投資金融への資金のシフトによる、経営者を監視する厚みのある市場の実現により、資本の効率性を高め、わが国企業の収益性の向上を図ること

  • 少子高齢化社会において、投資者に多様な運用手段を提供することで、多彩で豊かな社会を実現すること

こうした流れを実現するためには、仲介者たる金融商品取引業者等が国民からの信頼を得ることに加え、金融行政として、適切な制度設計とあわせて、金融商品取引業者等が投資者保護や適切なリスク管理などを意識したガバナンスを強化するよう適切に動機付けていくことが必要です。

3.監督に係る事務処理上の留意点

  • (1)事務年度当初の監督方針とヒアリング

    事務年度の当初に、その年度の監督上の重点事項を明確化するため、事務年度当初に当該事務年度の監督方針を策定・公表することとします。また、決算ヒアリングや総合的なヒアリングなどの定期的なヒアリング、および随時のヒアリングを実施することとします。

  • (2)ファンドへのモニタリング調査を実施

    現在証券会社等に行っている自己資本規制比率関連情報のモニタリング調査を引き続き行うことに加え、投資運用業を行う者に対し、○ファンド名、○ファンドの類型、○運用財産総額の三点について同様の調査を実施します。本調査は、届出業者となる運用業者に対しても行います。(その旨は「 IX  監督上の評価項目と諸手続(適格機関投資家等特例業務)」に記載しています)。

    こうしたモニタリング調査の目的は、わが国において運用されているファンドの実態把握を行うことです。ファンド運用業を行う者のなかには、金融イノベーションの促進や世界的な監督の趨勢といった観点から必ずしも直接的かつ厳格な監督の対象としてなじまないものもあると考えられますが、一方で、こうした業者も含めて、わが国で運用されているファンドの大まかな類型と運用規模を把握し、場合によってはこれによって集めたデータをきっかけとして対話の促進につなげていくことは、監督行政上有意義なことであると考えています。

  • (3)無登録業者に対する警告

    近年、無登録証券業者による未公開株の勧誘により投資者に被害が発生する事例が多発しています。投資者からの苦情や捜査当局からの照会等によりこれら無登録業者等の実態が把握された場合には、当該業者に文書で警告を行うとともに、警察や地域の消費者センター等とも連携を図り、必要な対応を行います。

  • (4)行政処分を行う際の留意点

    金融商品取引業者等の不適切な行為に対し業務改善命令、業務停止命令、登録・認可の取消し等の行政処分を検討する際、○当該行為の重大性・悪質性、○当該行為の背景となった経営管理態勢および業務運営態勢の適切性、○軽減事由を勘案して、

    • 改善を金融商品取引業者等の自主性に委ねることが適当か

    • 一定期間業務改善に専念・集中させる必要があるか

    • 業務を継続させることが適当か

    等の点について検討を行い、最終的な行政処分の内容を決定します。

4.監督上の評価項目と諸手続(共通編)

  • (1)広告規制についての着眼点を明示

    「経営管理態勢」「法令等遵守態勢」については、従来証券会社等に求めてきた適切な態勢整備に関する着眼点を盛り込んでいます。

    「勧誘・説明態勢」については、特にこれまで証券取引法では規定のなかった広告規制について詳細に着眼点を示しています。まず広告の範囲としては、勧誘資料やインターネットのホームページ、郵便、信書便、ファクシミリ、電子メール、ビラ、パンフレット等のさまざまなものが該当することを確認的に示しています。

    その上で、広告内容等に関し、○重要事項(手数料、元本欠損のおそれ、元本超過損のおそれ)を適切に明示しているか、○元本欠損のおそれまたは元本超過損のおそれは広告上の文字・数字のなかで最も大きなものと著しく異ならない大きさで表示するなど、明瞭かつ正確な表示が行われているか、○断定的判断による投資意欲の不当な刺激や、利回り・損失保証と誤解させる表示など、誇大広告を不当に行っていないか、○適正な広告等審査体制が構築されているか、といった点について留意することとしています。

    「本人確認、疑わしい取引の届出義務」については、望ましい態勢整備に関する事項を詳細に規定しています。

  • (2)役職員の適格性に関する着眼点を明記

    金融商品取引業者の役職員の適格性(いわゆる「フィット・アンド・プロパー原則」)については、まず金融商品取引法において「金融商品取引業を的確に遂行するに足りる人的構成を有しない」ことという登録拒否要件があり、その審査基準として、内閣府令において「○業務に関する十分な知識・経験を有する役員・使用人の確保の状況及び組織体制に照らし、当該業務を適正に遂行することができないと認められること、又は○役員・使用人のうちに、経歴、暴力団または暴力団員との関係その他の事情に照らして業務運営に不適切な資質を有する者があることにより、金融商品取引業の信用を失墜させるおそれがあると認められること」という事項が規定されています。これらは、投資助言・代理業を除く金融商品取引業者に適用されます。

    こうした規定を受け、新監督指針では、監督実務上どういった着眼点・手法で臨むべきかを明記しています。

    まず金融商品取引業者の役職員について、経営管理やコンプライアンス等について十分な知識経験を有しているかといった点に着目するとともに、役職員が暴力団員でないこと(過去に暴力団員であった場合を含む)、暴力団と密接な関係を有していないこと、金融商品取引法等の金融関連法令に違反し、罰金の刑に処せられたことがないこと、禁固以上の刑に処せられたことがないこと(とくに詐欺罪等に問われたことがないか)について留意する旨規定しています。

    監督当局としては、これらの着眼点を金融商品取引業者の登録時点において確認することはもとより、すでに登録し業務を行っている業者であっても、事後的にこうした事実が発生または発覚していないかを確認し、必要に応じて行政対応を行うこととしています。

5.業態別評価項目と諸手続

  • (1)第一種金融商品取引業

    「財務の健全性等」では、自己資本規制比率に関する留意点を記載しています。

    「業務の適切性」では、有価証券関連業と店頭デリバティブ取引業について別々に記載しています。基本的には、有価証券関連業については証券会社向けの監督指針に記載されていた事項、店頭デリバティブ取引業については、金融先物取引業者向けの監督指針に記載されていた事項に、最近の監督上問題となった新たな着眼点を若干追加しています。

    「市場仲介機能等の適切な発揮」では、昨年監督局において開催した「証券会社の市場仲介機能等に関する懇談会」での議論、その「論点整理」、および論点整理をふまえた日本証券業協会等の自主規制機関における取組みに基づき、○市場仲介者としてのオペレーションの信頼性の向上、○発行体に対するチェック機能の発揮、○投資者に対するチェック機能の発揮、○市場プレーヤーとしての自己規律の維持、といった四つのテーマごとに監督上の着眼点を整理しています。

  • (2)第二種金融商品取引業

    第二種金融商品取引業については、特に金融商品取引法で包括的に定義されている集団投資スキーム(ファンド)の権利の販売・勧誘または募集もしくは私募を行う者について規定を設けています。これらの者の中には、同法施行以前には当局の監督対象となっていなかった者、透明性・流動性が低く、投資者にとってその実態把握や評価がきわめて困難なファンドを取り扱う者があると考えられます。

    そうしたことを踏まえ、金融商品取引業者がこれら権利を取り扱う際には、組合契約等の概要や、当該ファンドが現に行っている事業の概要、当該契約に基づく権利のリスクに関する説明が、出資者に対して十分になされているかについて留意することとしています。

    特に、業務の実態がマルチ商法のようなものである場合やいわゆる「ねずみ講」(無限連鎖講)に該当する場合等には、警察庁等関係機関と連携を図り、必要な対応を行うこととしています。

  • (3)投資運用業

    投資運用業については、投資一任業、投資信託委託業およびファンド運用業に係る留意事項を記載しています。それぞれ、業務執行体制には運用財産の運用・管理について、勧誘・説明態勢には誇大広告の禁止について、「共通編」に追加すべき留意点を記載しています。

    また、不動産関連ファンド運用業者に関する特に留意すべき事項として、不動産の取得および売却の際のデューディリジェンス態勢と、利益相反防止態勢という大きな二つのテーマについての評価項目を記載しています。不動産関連ファンド運用業者には、匿名組合やREITなどさまざまな形態のものが含まれますが、不動産という特定の財に投資する際の、共通の留意事項を示したものです。

  • (4)投資助言・代理業

    投資助言・代理業については、追加的な誇大広告に関する規定等を記載しています。

※ 詳しくは、金融庁ホームページの「報道発表資料」から「「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針(案)」に対するパブリックコメントの結果等について」(平成19年7月31日)にアクセスして下さい。


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