アクセスFSA 第66号(2008年5月)
「中小企業者等との意見交換会」(鳥取市開催)で
基調講演を行う 渡辺 金融担当大臣(5月19日)
【フォトギャラリー】
※ このコーナーは、大臣、副大臣、大臣政務官、金融庁幹部が出席した会議等をはじめ、金融庁で行われた行事等についての写真を掲載し、皆さんに情報をお届けするものです。
金融審議会金融分科会第二部会 決済に関するワーキング・グループ(第1回)において、挨拶する 山本 副大臣 (5月16日) | 多重債務者対策本部有識者会議(第7回)において挨拶する 戸井田 大臣政務官 (5月13日) |
【談話・講演等】
※ このコーナーは、大臣、副大臣、大臣政務官、金融庁幹部が行った談話・講演等についての情報をお届けするものです。
金融庁と財務省中国財務局では、地域の皆さんからご意見をお伺いし、今後の行政に反映させるため、渡辺喜美金融担当大臣と地域の企業経営者や金融機関の方々との意見交換会を、5月19日(月)、鳥取県鳥取市で開催しました。
今回の意見交換会は、政治や行政のあり方のすべてを見直し、真に消費者や生活者の視点にたった行政に発想を転換すべきとの総理の指示に基づき、現場感覚を金融行政に反映させるべく、地域における金融サービスの受け手・担い手の双方と対話を行うことを目的として、以下のプログラムにより開催しました。
基調講演の模様についてはこちらを、講演資料につきましてはこちらをご覧ください。
なお、金融庁は同様の意見交換会を、関東財務局と共同で本年1月16日に新潟県三条市で開催しています(「渡辺金融担当大臣と中小企業者等との意見交換会」(新潟開催)の概要)。
≪プログラム≫ 1.渡辺金融担当大臣による基調講演 2.参加者との意見交換 |
1.渡辺金融担当大臣による基調講演の概要
I 最近の金融・経済情勢
GDPの推移を見ると、日本は4.4兆ドルでアメリカは日本の3倍ぐらいです。中国がものすごい勢いで伸びていて、今は大地震で大変ですが、これを乗り越え今後も同様の成長をすれば、おそらく5年もしないうちに日中は逆転するでしょう。
我が国1人当たりの名目GDPは、OECD諸国の中で、1993年には第2位でしたが、今は18位になってしまいました。世界の金融資産は、1990年から2006年の間に4倍ぐらいに膨れ上がっていますが、日本は残念ながらこの間2倍弱です。
世界の金融資産が膨れ上がった最大の要因は、株式の貨幣化と言われるものです。ベルリンの壁崩壊後、世界経済が一体化し、その中で株というものがお金代わりの役割を果たして、世界の金融資産が大変な勢いで膨らみました。その膨れ上がった金融資産を背景に、食糧と資源の争奪合戦の様相を呈しています。
これにはサブプライム・ローン問題という、もう一つ別の背景があります。サブプライム・ローン問題が起きたのは、ムーディーズがサブプライム関連証券の格下げを行った昨年7月頃からです。8月にはパリバショックというのが起きて、株価が大きく下落します。ちょうどその頃から商品価格が、例えば大豆や小麦などが、上がり始めます。最近は値を下げていますが、まだかなり高い水準にあります。
日本の証券市場は、売り買いの6~7割が外国人ですので、ドルベースで物を見る人たちが非常に多くいます。ドルベースで日経平均とニューヨークダウを比べてみると、ほとんど同じ動き方をしています。現地通貨ベースだと日本の値下がりが一番激しいのではないかと言われていますが、ドルベースで見ると下落率はほぼ同じです。
日本では家計の金融資産は現金・預金が多く、全体で1,500兆円の資産のうち、半分の750兆円が預貯金という構成になっています。そういった国はほかにありません。
その裏側にある、法人の負債を見ると、日本は資本が小さく、負債が大きいという構造です。先進資本主義国の法人で、このように資本の方が小さい国は見当たりません。こういうバランスシートは、インフレに強いがデフレには弱い。ベルリンの壁崩壊以降、日本から海外にお金が逃げ出し、そのたびに株価や地価が下がり資産デフレに見舞われましたが、その脆弱さの背景にはこういう構造問題があったわけです。
歴史的に見れば、1931年(昭和6年)の産業資金調達は、9割近くが株式と社債で、直接金融が主体でした。中央集権体制ができ上がった1941年でもまだ直接金融の比率が高い。それが戦時体制を経て、1951年には何と9割近くが間接金融になっていました。
II 金融商品取引法関連
今、国会では金融商品取引法の審議を行っています。この金商法は昨年の9月30日に施行されましたが、新しい制度がスタートしますと、金融機関も慣れないことがたくさんあり、投資信託の販売などで過剰に自己規制してしまうところがありました。そういった誤解がなくなるようPR(広報)をいろいろとやっているところです。
我々としては、今回の金商法改正で、ETF(上場投資信託)の多様化、プロ向け市場の創設、銀行・証券・保険間のファイアーウォール(業務隔壁)規制の見直し、イスラム金融、排出権取引や企業再生で金融機関が保有する株式の制限についての規制緩和などをやっていこうと考えています。
III 地域経済の現状
地域経済ですが、農業、観光業、建設、小売などの地場産業が大変疲弊をしています。なぜ日本の地方は延々とデフレが続いているのかというと、やはり国際的な大競争の中で、需要と供給のミスマッチから脱却できていないからです。供給過剰だからデフレが止まらない、したがって、いかにこのミスマッチ解消を行っていくかということが地域活性化の鍵になるわけです。
いろんな成功事例があります。北海道の倶知安町では、パウダースノーを求めてたくさんのオーストラリア人や中国人がやってきています。国際社会と直接結びつかなくとも、滋賀県長浜市は、黒壁をモデルに景観運動を始め、お土産としてステンドグラスを作ったところ、これが爆発的に売れるようになった。今や年間200万人を超える観光客が集まっています。離島にも成功事例が少しずつ出始めています。島根県の海士町では、地元の建設会社が農地を借りてファームを始めた。海士牛というおいしい牛肉ができる。人口も増え始めています。大分県豊後高田の「昭和の町」の取組みも始まっています。
冒頭申し上げました鳥取などの例(鳥取県の砂丘やラッキョウ、梨など)は、まさにいろんなお宝をどうやって発掘するかという良い例です。本当に私は1次産業の世界はお宝の山だと思います。
地域金融機関においてもいろんな取組みが行われています。その中には大変ユニークな成功事例もたくさんあります。金融庁では、そういった成功事例集も公表しています。お手元の資料にも、御当地、米子信用金庫の旅館に対する経営支援や、皆生温泉の観光宣伝隊の成功事例なども入れていますが、こういったいろいろな取り組みの中で、地域金融機関には大いに活躍してもらいたいと思います。
動産担保融資、牛なんか担保にならないと言われていたのが、もう立派に牛を担保にお金が借りられる時代になっています。また、ちょっとしたつなぎ資金に金利が10%を超えてもいい場合だってある。日本の金融は、そういった中リスク中リターンの金融が非常に手薄だったわけです。やはり金利というのはリスクに見合ったプレミアムの世界であって、きちんとマーケットメカニズムが働けば、真ん中の部分の金融が大いに行われていくはずだと思います。
銀行や協同組織が取り組む金融の中に、資本を提供する金融があっていいと思います。長期のお金で、これは資本として認められてしかるべきものは、金融検査マニュアルでも資本カウントするように改定しています。
地域が再生するためには、やはり面的な再生、例えば建設産業再生とか、あるいは地域でお客さんを呼び込む観光産業などのように、一つ一つではなくて地域全体を活性化をしていく、そういうコンセプトが必要です。国会でも、地域力再生機構法案というのが今、審議をされています。
また、日本には1,500兆円という個人金融資産のお宝があります。まさに内需主導型経済への転換というのであれば、これを活かすしかないというのが我々の基本です。
2.参加者との意見交換
引き続き行われた質疑応答の中で、会場からは例えば以下のような意見がありました。
【企業経営者】
金融機関の査定が厳しく、中小企業の資金調達ができない場合がある。
事業を再生しようとしても相談するところがない。
中小企業に対し、金融のマネジメントをするところが必要。
【金融機関関係者】
民営化される政府系金融機関と民間金融機関はどのようにつきあっていけば良いのか。
※ 詳しくは、金融庁ウェブサイトの「大臣談話・講演等」から渡辺金融担当大臣講演「今後の地域産業の発展と地域金融機関の役割」(平成20 年5月19 日(水)場所:鳥取市)及び「記者会見」から「渡辺金融担当大臣と地域の企業経営者等との意見交換会」後の大臣記者会見の概要(平成20年5月19日)にアクセスしてください。