アクセスFSA 第76号(2009年3月)

アクセスFSA 第76号(2009年3月)

入庁式の模様(4月1日)写真1 入庁式の模様(4月1日)写真2

入庁式の模様(4月1日)

目次


【談話・講演等】

※ このコーナーは、大臣、副大臣、大臣政務官、金融庁幹部が行った談話・講演等についての情報をお届けするものです。


【特集】

地域銀行3行に対する国の資本参加の決定について

3月13日、「金融機能の強化のための特別措置に関する法律」(以下「金融機能強化法」といいます。)1に基づき、地域銀行3行(北洋銀行、福邦銀行及び南日本銀行)に対する国の資本参加が決定されました。以下、今般の資本参加の概要について説明します。

我が国の景気が急速な悪化を続ける中、中小企業をはじめとする借り手企業の業況や資金繰りは厳しさを増しており、金融機関が適切かつ積極的な金融仲介機能を発揮していくことが、これまで以上に重要となっています。一方、金融市場の急激な変動や実体経済の急速な悪化は、金融機関の経営環境にも影響を及ぼしており、健全な金融機関といえども積極的なリスクテイクが必ずしも容易ではなくなってきています。地域の経済情勢がどのような状況にあっても、金融仲介機能を安定的かつ持続的に発揮し、中小企業等に対して円滑に資金供給を行うことは、金融機関の本源的な役割の一つです。金融機能強化法は、金融機関に対して国が資本参加を行うことにより、安心して金融仲介機能の発揮に専念できる環境を整備し、厳しい状況に直面する地域経済、中小企業を支援することを目的としています。

金融機能強化法の改正法は、昨年12月に国会で成立した後、関係政令及び内閣府令等とあわせて、一気呵成(いっきかせい)に施行されました。金融庁では、施行後速やかに、全国の財務局等において金融機関向けの説明会を開催するなど、本制度の趣旨・内容について周知・徹底を図るとともに、本制度の活用の検討について積極的に呼びかけを行ってきたところです。こうした中、1月中旬から2月上旬にかけて、北洋銀行、福邦銀行及び南日本銀行の地域銀行3行が、同法に基づく国の資本参加の検討に着手する旨を相次いで公表しました。

金融機能強化法では、金融機関が国の資本参加の申込みを行う際に、経営改善の目標や、中小企業等に対する信用供与の円滑化計画を盛り込んだ「経営強化計画」を提出することとされています。地域銀行3行からそれぞれ提出された「経営強化計画」については、金融庁において法令及び監督指針に基づき審査が行われ、金融機能強化審査会の意見も聴いた上で、3月13日に資本参加の決定が行われました。3行の「経営強化計画」の概要は、別紙のとおりです。これら3行は、平成21年3月期決算で有価証券の積極的な減損処理を行い、将来の有価証券価格の下落リスクを極力排除する等の取組みを行うこととしており、国の資本参加を受けて財務基盤の安定をより確実なものとし、今後、各地域において安定的かつ積極的な金融仲介機能の発揮に努めていくこととしています。各行においては、今後、同計画に盛り込まれた各種方策の確実な履行を通じて、地域の中小企業等に対する円滑な資金供給等に努めていただきたいと考えています。金融庁としても、各行の中小企業向け貸出の取組み状況等について半期毎(9月末、3月末)に報告を受けるなど、法令等に基づき「経営強化計画」の履行状況を定期的にフォローアップしていくこととしています。

なお、「経営強化計画」で掲げられた経営改善の目標のうち、業務の効率性の指標である「業務粗利益経費率」(いわゆる「OHR: overhead ratio」)については、監督指針において、「経営強化計画」の終期における実績が始期の水準を下回っていることが求められていますが、当該指針が機械的に適用された場合、本制度が使いにくいものになるとの声も聞かれるところです。このため、3月10日に公表した「金融円滑化のための新たな対応について」では、「経営強化計画」の「業務粗利益経費率」に関する監督上の措置について、計画終期の実績が計画始期の水準を上回った場合であっても、機械的に監督上の措置を講じることはない旨を、監督指針に明記することとされ、改正後の監督指針が3月27日に公表されました。

今回の資本参加に当たっては、各銀行が、普通株式への転換権が付された優先株式(以下「優先株式」といいます。)を国に対して発行することになっています(3行の優先株式の商品性の概要は別紙を参照してください。)。金融機関が市場で資本調達を行う環境は、国際的な金融市場の混乱の影響もあって、非常に厳しいものとなっています。こうした情勢を踏まえ、各銀行が発行する優先株式の商品性の審査に当たっては、金融機関の積極的な制度利用を促すため、個々の金融機関の実情に即して判断するとともに、本制度の趣旨を踏まえて、配当率等の条件が、長期的に見た金融機関の本来の調達能力に応じたものとなるよう、平時の水準とすることを基本的な考え方としました。

また、金融仲介機能が回復した後には公的資本の返済を速やかに行えるよう、発行後10年経過後から15年目(普通株式への一斉転換日)までの間において、株価の状況により、優先株式の価値が当初の払込金額に相当する額を下回っている場合(いわゆる「含み損」の場合)には、当初の払込金額に相当する額の金銭を国に支払って優先株式を買い入れることにより、国民負担を回避しつつ任意返済ができる仕組み2も設けられています。これは、各銀行の希望に応じ、定款において所要の手当てをした上で設定されているものです。金融機能強化法の昨年の改正では、新たな制度の積極的な利用を促し、中小企業等に対する金融の円滑化を図るとの制度趣旨に鑑み、旧法に比べて大幅に使い勝手の改善が図られています。これとあわせて、優先株式の商品設計を先述のようなものとすることで、金融機関がより申請を行いやすい環境を整えています。

金融庁としては、今般、資本参加が決定された地域銀行3行以外の金融機関においても、資本増強という経営判断をする際には、金融機能強化法の活用についても積極的に検討していただきたいと考えており、引き続き、同法の活用や、将来における優先株式の発行に備えた定款変更について、積極的な検討を呼びかけていく予定です。

※ 詳しくは、金融庁ウェブサイトの「報道発表資料」から、地域銀行3行に対する資本参加の決定について(平成21年3月13日)にアクセスしてください。

1. 本制度の概要については、「改正金融機能強化法及び関係政令・内閣府令・監督指針の改正について」(「アクセスFSA」第73号掲載)をご参照ください。

2. これは、「金銭を対価とする取得条項」または「コール・オプション」と呼ばれるもので、より正確には、各銀行の普通株式の時価に相当する額が、あらかじめ定めた取得価額の下限を下回っている場合において、優先株式1株当たりの払込金額相当額に経過優先配当金相当額を加えた額の金銭を対価として支払うことにより、優先株式の全部または一部を取得することができるとされています。

〔別紙〕金融機能強化法に基づく国の資本参加の概要

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