アクセスFSA 第78号(2009年5月)

【国際関連】

日EU金融ハイレベル協議の開催について

4月22日、ブリュッセルにおいて日EU金融ハイレベル協議が開催されました。この協議は日EU双方がお互いの金融規制に関する情報を共有し、必要があれば双方の立場を調整する場として機能しています。本年は、金融庁からは丸山総務企画局審議官(国際担当)等が、欧州委員会からは域内市場総局ヨルゲン・ホルムキスト総局長等がそれぞれ出席しました。

まず、金融庁と欧州委員会の出席者は、金融危機が金融システムへ与えた影響について議論しました。そして、金融庁からは、市場強化プランの進捗や、金融機能強化法の実施について説明しました。また、欧州委員会からは、金融サービスの規制・監督強化のための取組みについて説明がありました。特に、欧州委員会の最近の立法措置やド・ラロジエール報告書のフォローアップ、EUの今後の規制上の課題について説明及び意見交換がなされました。

信用格付会社の規制についても意見交換を行い、欧州委員会からは、新しい法案の最新の動向について説明があり、金融庁は日本における改正案を説明しました。また、保険関連についても議論され、金融庁からは、日本における保険分野の最近の法改正について説明し、欧州委員会からは、ソルベンシーII指令の動向や実施に向けた今後の予定について説明がありました。

また、会計・監査も重要な議題であり、欧州委員会は、日本の監査法人に対して、監督体制の相互依拠を確立するまでの暫定期間として2010 年7月までの期間を付与することを確認しました。また、欧州委員会は、監査調書等へのアクセスや転送に関しての第三国監督当局の適切性に関する決定の可能性についての現状を説明しました。金融庁からは、外国監査法人に対する公的監視体制の最近の動向について説明しました。

欧州委員会は、日本の会計基準と国際会計基準との同等性を認めた2008年12月12日の決定を報告し、日本の「我が国における国際会計基準の取扱いについて(中間報告)(案)」を歓迎しました。欧州委員会と金融庁は、国際会計基準委員会財団(IASCF)のガバナンス強化の必要性について合意しました。

※ 次回の協議は、東京で開催される予定です(時期未定)。

※ 詳しくは、金融庁ウェブサイトの「国際関連情報」から「日EU金融ハイレベル協議の開催について」(平成21年5月1日)にアクセスしてください。


IOSCO SC3(市場仲介者常設委員会)東京会合開催について

証券監督者国際機構(IOSCO:International Organization of Securities Commissions)の第3常設委員会(SC3)東京会合が5月12日及び13日の両日、当庁において開催されました。

第3常設委員会は、クロスボーダーの環境下にある市場仲介者に関する規制監督上の諸課題について検討を行っています。なお、メンバーは欧米アジア16か国・地域の規制当局から構成され、議長は当庁の森田証券課長が務めています。

(参考1) IOSCOは、100以上の国・地域の証券監督当局、証券取引所等から構成される国際的な機関であり、加盟機関の総数は、普通会員(Ordinary Member:証券規制当局)、準会員(Associate Member:その他当局)及び協力会員(Affiliate Member:自主規制機関等)あわせて191 機関(2008年11月末現在)となっています。IOSCOの本部事務局は、マドリード(スペイン)に置かれています。

現在の金融市場の混乱の解決へ向けて国際的なフォーラムであるIOSCOの果たすべき役割は大きいと考えられます。IOSCOは金融危機の発生に対し、いち早くサブプライム・タスクフォースを立ち上げて危機の原因の分析及び具体的な対応策についての提言を行ったほか、昨年には3つのタスクフォース(非規制金融市場、非規制金融商品、空売り)を新設し、信用格付け機関タスクフォースや会計関係も併せてG20の作業に貢献しています。

IOSCO機構図

平成20年11月現在

IOSCO機構図

(参考2) サブプライム・タスクフォースについては以下をご参照ください:
http://www.fsa.go.jp/inter/ios/20080609-2.html

(参考3) IOSCOが昨年設置した3つのタスクフォースについては以下をご参照ください:
http://www.fsa.go.jp/inter/ios/20081201.html

このような背景の下、SC3は上述のタスクフォース等と連携しながら証券会社等の市場仲介者に関する規制監督上の諸課題について作業を進めています。SC3東京会合においては、投資信託等をはじめとする集団投資スキームの販売時の開示に関する問題やサブプライム・タスクフォースの提言に基づく市場仲介者の流動性リスク管理・内部管理上の諸課題等について活発に議論しました。また、複雑な金融商品を販売する際の適合性の問題や証券会社破綻時の顧客資産の保護に関する問題についてもその作業の必要性について検討を開始しております。本会合の成果については、本年6月にイスラエルで開催されるIOSCOの専門委員会において報告される予定であり、その結果を踏まえ、次回会合で更なる議論を進めていく予定です。


第5回監査監督機関国際フォーラム(バーゼル会合)について

4月27日~29日に、PDF第5回監査監督機関国際フォーラム(IFIAR:International Forum of Independent Audit Regulators)新しいウィンドウで開きますがスイス・バーゼルにて開催され、公認会計士・監査審査会(以下「審査会」といいます。)から金子会長等が参加しました。

IFIARは、監査の質の向上に向け、各国の活動経験等の共有や協力関係の促進などを目的として設立された監査監督機関の集まりで、現在、米・英等の主要国を含む31か国・地域(メンバー)及び8国際機関(オブザーバー)が参加しています。

本会合では、新議長にスティーブン・マイヨール現副議長を2年の任期で、またポール・ボイル現IFIAR議長を2009年9月に開催される次期本会合までの任期で副議長に選出すると共に、IFIARの組織運営上必要な業務の財源としてメンバーによる分担拠出金を2010年より創設することに原則合意しました。

また、外国監査法人等の登録・届出等といった監査監督機関の活動や、監査の品質やグローバル監査法人に対する監督について意見交換が行われたほか、オスロ会合(昨年4月)やケープタウン会合(昨年9月)に続き、いわゆる6大国際監査ネットワークの代表者を招聘し、最近の経済危機に対する監査人による対応及び監査監督機関による対応について意見交換を行いました。

さらに、IFIARの主要なテーマである監査検査の技術及び経験の交換を目的とした検査ワークショップ(年1回開催)について、第4回会合を平成22年2月にパリにおいて開催することを決定しました。

審査会としては、今後ともIFIAR会合等に参加し、各国の監査監督機関との協力・連携関係の構築・強化を通じ、我が国の監査の一層の信頼性確保・向上を図っていきたいと考えています。

※ 詳しくは、公認会計士・監査審査会ウェブサイトから「第5回監査監督機関国際フォーラム(バーゼル会合)について」(平成21年5月11日)新しいウィンドウで開きますにアクセスしてください。


【法令解説】

保険会社向けの総合的な監督指針等の一部改正について

金融庁では、「保険会社向けの総合的な監督指針」及び「少額短期保険業者向けの監督指針」の一部改正(案)について、平成21年2月26日から3月30日にかけて広く意見の募集を行い、4月28日にパブリックコメント結果を公表し、監督指針の一部改正を行いました。改正された監督指針は、同日から適用を行っています。

改正の概要は、以下のとおりです。

  • 1.保険法関係

    平成20年6月に商法上の保険契約に関する規定の見直しが行われ、単行法としての保険法が公布されました。保険法においては、表記の現代語化のほか、保険契約者保護のための規定の整備等が行われており、当該保険法の規定内容等を踏まえて、監督指針について以下の改正を行いました。

    • (1)告知制度【II-3-3-2(10)・II-3-3-6(14)、IV-1-17(2)マル1

      • 保険契約者等に求める告知事項は、保険契約者等が告知すべき具体的内容を明確に理解し告知できるものとなっているか。例えば、「その他、健康状態や病歴など告知すべき事項はないか。」といったような告知すべき具体的内容を保険契約者等の判断に委ねるようなものとなっていないか。
      • 告知書の様式は、保険契約者等に分かりやすく、必要事項を明確にしたものとなっているか。
      • 保険媒介者による告知妨害又は不告知教唆があった場合は、保険会社は保険契約を解除できないことを約款に明確に規定しているか。  など
    • (2)保険給付の履行期【IV-1-17【2】マル2

      • 損害調査手続等の保険給付手続等に必要となる合理的な期間を踏まえて、一定の期限内に支払うとする基本的な履行期を約款に定めているか。なお、その際、現行約款に規定している基本的な履行期(例えば、生命保険契約5日、損害保険契約及び傷害疾病定額保険契約30日)を不当に遅滞するものとなっていないか。
      • 基本的な履行期の例外とする期限を定めるときは、保険類型ごとに必要となる確認事項(医療機関への確認等)が明確に定められているとともに、その期限が客観的にみて合理的な日数をもって定められているか。  など
    • (3)重大事由解除【IV-1-17(2)マル3

      重大事由による解除の規定においては、解除権が濫用されることのないよう、保険契約者等の故意による保険給付事由の発生及び保険金受取人等の保険給付請求の詐欺以外の事項を定めようとする場合は、当該内容に比肩するような重大な事由であることが明確にされているか。  など

  • 2.その他

    保険会社の業務継続体制の構築、四半期開示等における開示の充実、保険会社の業務範囲の明確化、少額短期保険業関係等について、所要の改正を行いました。

※ 詳しくは、金融庁ウェブサイトの「報道発表資料」から「保険会社向けの総合的な監督指針等の一部改正(案)に対するパブリックコメントの結果等について」(平成21年4月28日)にアクセスしてください。


【金融ここが聞きたい!】

このコーナーは、大臣の記者会見における質疑応答などの中から、時々の旬な情報をセレクトしてお届けするものです。

もっとたくさんご覧になりたい方は、金融庁ウェブサイトの「記者会見」のコーナーにアクセスしてください。

Q:  日本時間の今朝早くにアメリカの金融機関に対するストレス・テストの結果が出まして、10行が計7.3兆円の資本不足と指摘されました。FRB(米連邦準備制度理事会)のバーナンキ議長は投資家らにかなりの安心を与える内容だと指摘していまして、市場関係者の受け止めも、予想よりもよい内容と前向きに評価する向きが多いようですが、今回のストレス・テストの結果についての大臣の受け止めと、アメリカの金融システム不安が解消の方向に向かうとご覧になっているかどうか、ご見解をお願いします。

  • A:このストレス・テストは多分、アメリカ政府が誠心誠意やられたもので、その結果、資本不足がこの額にとどまったということは、既存の予算措置の中で埋めることも出来るので、日本としては、考えていた状況よりははるかに金融システム全体の状況がいい、というところで、一安心したところでございます。

    また、同時に資本注入が全く必要のない銀行も多数あるわけでして、そういう点では、資本不足のところは、既存の予算措置を通じて資本注入が始まれば、さらに金融システムの安定化に貢献するであろうと思っております。

Q:  日本の株式市場について伺いたいんですが、昨日、日経平均が年初来の高値を付けているんですけれども、景気の先行きに多少明るい見方も出てきているようなんですが、現在の株価水準と景気の現状について大臣のご認識を改めて伺いたいんですけれども・・・。

  • A:株価は経済の先行指標ですから、そういう点では9,400円前後のところにまいりましたのは大変喜ばしいことだと思っております。これで銀行も生損保も、資産内容は相当改善されたと思います。さらに株価が安定するということを望んでやまないということでございます。

平成21年5月8日(金)閣議後記者会見

Q:  今日銀行の決算が相次いで発表されます。以前も聞きましたが、今回の銀行決算についてのご感想と、それに関連して大手行が普通株式の発行による資本増強を相次いで打ち出す見通しです。それについてのご見解もお聞かせください。

  • A:こういう不況ですから設備投資等に貸しているお金も劣化しているでしょうし、また時価評価の対象となる金融機関が持っている株式の評価も下がっているでしょうから、赤字になってもやむを得ないし、むしろこういう際にはきれいさっぱりと積むべき引当金は積む、あるいは償却すべきものは償却するということで、すっきりした態勢になられたらいいと思います。

    それから銀行の資本のレベルについては、我々かねがね心配しておりましたし、現に地銀の一部では公的資金を取り入れて資本増強をやろうということですが、大きなところは自らの力で資本を調達されるということですから、これほどお祝いすべきことはないと思っております。

Q:  大手行については金融機能強化法による公的資金の活用というものも大臣も官邸で促されたことがあったかと思うんですが、メガバンク3行共自力による資本増強という方向に行くことについてのご意見はございますか。

  • A:メガバンクは民間銀行ですから、資本が必要であれば資本を自分達の手で市中から調達したいという思いになるのは当然と言えば当然なので、その当然のことが今の市場で可能かどうかという問題を心配していたわけですが、どうやらそれぞれ市場から調達出来るという目処が立ったというのは慶賀の至りであって、政府の用意したお金を無理やり使っていただく必要はない。これはいざという時のお金ですから、市場から調達出来ればこれに勝るものはないと思っています。

平成21年5月15日(金)閣議後記者会見

Q:  金融についてお伺いしますが、今日大手行の銀行の決算が出そろいます。この前もお聞きしたんですが、銀行決算に関するご感想と、あと地方銀行が非常に厳しい状況が続いています。地方銀行の状況についてもお伺い出来ればと思います。

  • A:銀行の欠損が生じたのは業務純益が減ったということのほかに、持っている株等の資産の評価損があります。その他の損失もあるでしょう。銀行が損をした部分はきちんと引当を積んだり償却をしたり、あるいは自己資本を充実したりということをやっておりますし、実は以前大手銀行が自らの力で増資を試みた時に比べますと、非常に増資に対して応募する方が多くて、金融機関の増資というのは意外に円滑に迅速に進んでいると思っておりますので、今年損をきちんと立てたと、それから必要な増資をする、そういう意味では健全経営を目指している今の銀行の姿は経営としては正しいと思っております。また地方銀行は、やはり実体経済の影響を非常に受けております。しかしながら、見る限り立ち行かなくなる金融機関というのは1行もないということは判然としていますので、そういう点では日本の金融システム全体としては高い健全性を保っていると考えております

平成21年5月19日(火)閣議後記者会見


次のページ

サイトマップ

ページの先頭に戻る