アクセスFSA 第3号(2010年3月)

【法令解説等】

平成21年金融商品取引法等の一部改正に係る政令案・内閣府令案等に対するパブリックコメントの結果等及び
平成21年金融商品取引法等の一部改正等に係る企業内容等の開示制度における内閣府令案等に対するパブリックコメントの結果について

  • 1.はじめに

    信頼と活力ある金融・資本市場の構築のために必要な制度整備を盛り込んだ「金融商品取引法等の一部を改正する法律」(平成21年法律第58号)が、平成21年6月17日に成立し、6月24日に公布されました。これを受け、改正法の施行に必要な「金融商品取引法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備等に関する政令」が平成21年12月22日(火)に閣議決定され、平成21年12月28日(月)に公布されました。

    また、改正法の施行日については、原則、「金融商品取引法等の一部を改正する法律(平成21年法律第58号)の公布の日(平成21年6月24日)から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日」とされており、具体的には、平成22年4月1日(木)とされました(当該施行日を定める政令も平成21年12月22日(火)に閣議決定されており、平成21年12月28日(月)に公布されました。)。

    改正法に係る政令・内閣府令等についても、原則、平成22年4月1日(木)から施行されます。

    ただし、

    • 信用格付業者に対する公的規制の導入のうち無登録業者による格付を利用した勧誘の制限に係る規定及び金融ADR制度の創設のうち金融機関による指定紛争解決機関の利用に係る規定については、平成22年10月1日、

    • 金融商品取引所と商品取引所の相互乗入れに関する規定のうち取引所の相互乗入れ自体に関する規定については、原則となる施行日(平成22年4月1日)と改正商品取引所法の当該規定に係る施行日(平成22年7月1日)のいずれか遅い日(平成22年7月1日)、

    • 金融商品取引所と商品取引所の相互乗入れに関する規定のうち清算機関の相互乗入れのための規定については、改正商品取引所法の施行日である、改正商品取引所法の公布の日(平成21年7月10日)から1年半以内(平成23年1月9日まで)

    に施行することとなっています。

  • 今般整備した政令・内閣府令に係る主な改正は以下のとおりです。

  • 2.信用格付業者に対する規制の導入

    改正法では、信用格付業を公正かつ的確に遂行するための体制が整備された格付会社について、内閣総理大臣の登録を受けることができるとの登録制の下、登録を受けた格付会社(信用格付業者)に対する規制・監督の枠組みを整備しています。

    今般整備した政令・内閣府令では、

    • (1)信用格付業者による体制整備の要件として、

      • 格付プロセスの品質管理、独立性・公正性の確保(専門的知識・技能を有する人員の確保、格付委員会による格付決定と委員のローテーション等)

      • 利益相反防止、法令等遵守、苦情対応、監督委員会の設置

      等を規定する

    • (2)信用格付業者の禁止行為の細目として、担当の格付アナリストが格付対象商品の発行者等から金銭・物品を受けることの禁止等を規定する

    • (3)情報開示の対象となる格付方針等の要件・説明書類の記載事項を規定する

    • (4)無登録業者の格付を提供する際の金融商品取引業者等の説明義務として、

      • 格付付与に用いられた方針・方法の概要

      • 格付の前提・意義・限界

      等を規定する

    • 等の措置を講じています。

    図1

  • 3.金融分野における裁判外紛争解決制度(金融ADR制度)の創設

    改正法では、金融商品・サービスに係るトラブルについて、裁判外の簡易・迅速な解決手段を提供する金融ADRの法的枠組みを新たに整備しています。具体的には、苦情処理・紛争解決を行う法人・団体(紛争解決機関)を主務大臣が指定し、紛争解決の中立性・公正性を確保しつつ、金融商品取引業者等に対し手続応諾や結果尊重等の義務を課し、紛争解決の実効性を確保することとしています。

    今般整備した政令・内閣府令では、紛争解決機関の指定に当たり、説明会により業務規程に係る意見聴取を実施し、業務規程に異議を有する金融機関の割合が1/3以下であることを要件として規定する等の措置を講じています。

    図2

  • 4.特定投資家(プロ)と一般投資家(アマ)の移行手続きの見直し

    改正法では、プロとアマの移行手続について、

    • (1)プロからアマへの移行の効果は、顧客の申出があるまで有効にすることとする

    • (2)アマからプロへの移行については、引き続き1年とするが、それ以前でも申出によりアマに戻ることを可能にする

    等の措置を行っています。

    今般整備した政令・内閣府令では、顧客の意思確認を適切なタイミングで行う必要があることから、アマからプロへ移行した者が、プロの更新を申し出ることができる期間を期限日の1か月前以降にする等の措置を講じています。

    図3

  • 5.有価証券店頭デリバティブ取引への分別管理義務の導入

    改正法では、個人顧客を相手とする証券CFD取引等の増加を踏まえ、有価証券店頭デリバティブについて、金融機関間の取引など投資家保護に支障がないと認められるものを除き、顧客からの証拠金に係る分別管理義務の対象としています。

    今般整備した政令・内閣府令では、分別管理義務の対象外となる取引として、第一種金融商品取引業者・登録金融機関(銀行等)・適格機関投資家(有価証券残高10億円以上の法人等)・資本金10億以上の株式会社等を相手方とする取引を規定する等の措置を講じています。また、これに関連して、個人を相手方とする有価証券店頭デリバティブ取引について、証拠金規制を導入しています。

    図4

    «図5

  • 6.金融商品取引所と商品取引所の相互乗入れ

    改正法では、公正で利便性の高い市場基盤を整備するため、金融商品取引所による商品市場の開設や、商品取引所による金融商品市場の開設を可能とするための枠組みを整備しています。

    今般整備した政令・内閣府令では、金融商品取引所の議決権保有の制限について、金融商品取引所又は商品取引所が株主となる場合の扱いを同等とする規定を整備する等の措置を講じています。

    図6

  • 7.開示規制の見直し

    改正法では、「有価証券の売出し」に係る開示規制の見直しを行う観点から、「有価証券の売出し」の定義から、「均一の条件」を削除するとともに、既発行有価証券の売付け勧誘等について、販売形態(プライマリー的な販売勧誘かセカンダリー的な販売勧誘)、有価証券の性質(主要国の国債等、主要海外取引所の上場有価証券、その他の有価証券)及び投資者の属性(適格機関投資家のみ、少人数又は多数の一般投資者等)に応じ、法定開示、簡易な情報提供、開示免除とする開示規制を整備しています。また、社債等の発行登録制度を見直し、発行登録書の記載事項として、「発行予定額」に代えて「発行残高の上限」の記載を容認することとしました。

    今般整備した政令・内閣府令では、「有価証券の売出し」に係る開示規制の見直しとして、

    • 通常の法定開示が不要となる外国証券売出し(対象は、外国国債、外国上場株券等)の要件として、インターネット等により容易に価格・発行者情報が取得できること等を規定する

    • その際、提供・公表される外国証券情報の提供につき、その内容(発行者情報等)・提供方法(インターネット等)を規定する

    等の措置を講じています。

    さらに、目論見書制度の見直しとして、

    • (1)投資信託受益証券の交付目論見書について、交付目論見書の記載内容を極めて重要な投資情報に限定し、大幅に簡素化することにより、投資家にとって読みやすく、利用しやすいものとする

    • (2)すべての有価証券に係る目論見書について、目論見書を電子交付により交付することについての投資者の同意を得る方法として、書面及び電磁的方法に電話その他の方法を追加する

    等の措置を講じています。

    図7

    図8

    図9

    図10


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