アクセスFSA 第111号(2012年9月)

【フォトギャラリー】

去る8月8日(水)、9日(木)の2日間、子ども見学デー「金融庁へGO!」を開催し、広報室での厳正な抽選の結果、8日は15名の小学生と13名の保護者・引率者、9日は20名の小学生と17名の保護者・引率者に参加していただきました。

当日はまず、広報室長からオリエンテーションを行い、引き続き「金融ってなぁ~に?」及び「金融庁ってこんなところ」と題して、政策課課長補佐や広報室課長補佐が講師となって、暮らしや経済に関わりの深いお金の流れについての勉強や、1億円の札束・金塊等のレプリカを用いての実体験も行いました。

続いて、「大臣室をのぞいてみよう」と題して、大臣室を見学し、大臣の椅子に座って記念撮影を行うなど、子どもたちや保護者・引率者から大変好評でした。

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【トピックス】

資本性借入金の活用状況について

金融庁では、「資本性借入金」の積極的活用を推進するため、平成23年11月に「『資本性借入金』の積極的活用について」を公表し、金融検査マニュアルの運用の明確化を行うとともに、金融機関の方々等に対して、活用の検討を行っていただくよう、その周知や要請に努めているところですが、この「資本性借入金」の活用状況について、全国の地域金融機関(地域銀行、信用金庫、信用組合)に対してアンケート調査(平成24年7月実施)を行い、その結果をとりまとめ、8月10日に公表しました。

この結果を見ると、「資本性借入金」の活用件数は、平成24年度においては、今後の予定も含め、平成22年度に比べて6.7倍となる409件の活用が見込まれており、「資本性借入金」の活用水準の底上げが着実に図られていると考えています。

資本性借入金の活用状況について
(クリックすると拡大されます)

金融庁においては、中小企業金融円滑化法の期限が平成25年3月末に到来することを踏まえ、中小企業の真の意味での経営改善につながる支援を強力に推し進めていくための環境整備を行うこととしています。その一環として、今後とも、資本不足に直面している企業のバランスシートの改善を図り、経営改善につながるよう、「資本性借入金」の積極的活用の推進に努めていきたいと考えています。

※ 詳しくは、金融庁ウェブサイトの「広報報道」の中の「報道発表資料」から「資本性借入金の活用状況について」(平成24年8月10日)にアクセスして下さい。


「金融検査結果事例集」の公表について

金融庁は、8月10日に、「金融検査結果事例集(平成23検査事務年度後期版)」を公表しました。

金融庁は、平成17年より、金融行政の透明性・予測可能性を更に向上させるなどの観点から、指摘の内容・頻度を勘案して、金融機関が適切な管理態勢を構築する上で参考となる事例を取りまとめ、公表してきています。

また、情報発信の充実・強化を推進する観点から、タイムリーに金融検査結果事例集を公表することが重要と考えており、平成23事務年度の前期版に引き続き、後期版を公表することとしました(注1)。

(注1)預金等受入金融機関については、平成24年1月~平成24年6月までの間に通知された検査結果を、それ以外の金融機関については、平成23年7月~平成24年6月までの間に通知された検査結果を中心に掲載しています。

後期版は、預金等受入金融機関をはじめ、信託兼営金融機関、保険会社及び貸金業者の事例を掲載しています。

今回の事例集の主な特徴は、以下のとおりです。

  • 1.検査基本方針における「検査重点事項」に関連する事例を多く掲載

    平成23事務年度の検査基本方針においては、金融仲介機能の発揮、法令等遵守、顧客保護等の徹底及び各種リスクの的確な管理を行うためには、適切な経営管理のもとでの、経営陣の主導性とコミットメントが決定的に重要であるとの認識を示しています。

    このため、金融検査の際には、平成22事務年度に引き続き、各金融機関の戦略目標の合理性や持続可能性をはじめ、「経営管理(ガバナンス)態勢」の整備について重点的に検証してきており、本事例集においては、これらに関する事例を多く掲載しています。

    また、同方針の「検査重点事項」において、新たな検証項目として追加された、震災等を踏まえた業務継続体制や、リスク性商品の説明態勢・フォローアップ態勢の整備(注2)等に係る事例も掲載しています。

    (注2)平成23検査事務年度検査基本方針IV.1.(3)「業務継続体制」及びIV.4.(1)「顧客に対する適切な説明」参照。

  • 2.評価事例を多く掲載

    金融検査においては、従来より、金融機関における管理態勢上の問題点を指摘するだけにとどまらず、評価すべき点があれば、それを明示し、そうした取組みを督励しています。

    これまでは、「金融円滑化編」において、コンサルティング機能の発揮に係る評価事例を中心に掲載してきたところですが、今回は、「金融円滑化編」以外においても、評価事例を相当数掲載しています。

※ 詳しくは、金融庁ウェブサイトの「広報報道」の中の「報道発表資料」から「金融検査結果事例集」の公表について(平成24年8月10日)にアクセスして下さい。

また、過去の事例集については、平成16検査事務年度版(平成17年7月27日)、平成17検査事務年度版(平成18年7月5日)、平成18検査事務年度版(平成19年7月5日)、平成19検査事務年度版(平成20年7月4日)、平成20検査事務年度版(平成21年7月3日)、「金融円滑化に係る金融検査指摘事例集」(平成21年12月17日)、平成21検査事務年度版(平成22年7月21日)、平成22検査事務年度前期版(平成23年2月10日)、平成22検査事務年度後期版(平成23年7月1日)、平成23検査事務年度前期版(平成24年2月23日)の「報道発表資料」をご覧ください。


多重債務者相談強化キャンペーン2012の実施について

内閣に設けられた「多重債務者対策本部」新しいウィンドウで開きますにおいては、深刻な社会問題である多重債務問題を抜本的に解決するため、平成19年4月20日にPDF「多重債務問題改善プログラム」新しいウィンドウで開きますを決定し、相談窓口の整備などの「借り手対策」をとりまとめました。これに基づき、多重債務者対策本部では、日本弁護士連合会、日本司法書士会連合会、日本司法支援センター(法テラス)との共催で、全国の地方公共団体等における相談体制の強化についてのキャンペーンを毎年度実施しています。

平成22年6月18日には、貸し手の規制を通じて、新たな多重債務者の発生を抑制するため、改正貸金業法が完全施行されました。完全施行後の状況を踏まえると、制度につき直ちに見直す状況にはありませんが、一方で、多重債務者は一定数存在し、継続的に多重債務者対策を講じていく必要があるため、本年度も「多重債務者相談強化キャンペーン2012」を実施するものです。


(キャンペーン周知のためのポスター)

本キャンペーンでは、期間中に都道府県、当該都道府県の弁護士会、司法書士会、中小企業団体(全国の商工会議所、商工会、都道府県中小企業団体中央会)が共同で、消費者及び事業者向けの無料相談会の開催等の取組みを実施します。このほか、各地方財務局においても、無料相談会の開催等を行います。

各地の相談窓口、キャンペーン期間中に各地で開催される無料相談会へは、下記の電話番号にてご案内します。また、金融庁ウェブサイトの「多重債務者相談強化キャンペーン2012における相談会の開催予定等について」でも、随時、開催情報を提供しています。

法テラスコールセンター 電話番号0570-078374(おなやみなし)※受付時間平日/9時~21時、土曜/9時~17時(日曜祝祭日、年末年始休業)

なお、ヤミ金業者からは絶対にお金を借りないで下さい。高い金利で借金が膨らみ、厳しい取り立てで精神的に追い込まれてしまいます。また、クレジットカードのショッピング枠の現金化は、実質的には、カード規約に違反する利用方法により、借金をする行為であることから、絶対に行わないで下さい。

※ 詳しくは、金融庁ウェブサイトの「広報報道」の中の「報道発表資料」から「多重債務者相談強化キャンペーン2012の実施について」(平成24年8月23日)にアクセスして下さい。


平成24事務年度主要行等向け監督方針について
平成24事務年度中小・地域金融機関向け監督方針について
平成24事務年度保険会社等向け監督方針について
平成24事務年度金融商品取引業者等向け監督方針について
平成24検査事務年度検査基本方針について

  • 1.はじめに

    金融庁においては、毎年、事務年度(検査事務年度)当初に、

    • ア.金融機関の監督上の重点事項を明確化するため、業態別に監督方針を、

    • イ.金融機関に対する検査運営の基本的枠組みや重点検証項目を明確するため、検査基本方針をそれぞれ策定・公表しており、8月28日に公表しました。

  • 2.監督方針について

    • (1)策定の背景と基本的取組姿勢

      今回の監督方針の策定に当たっては、金融システムを取り巻く環境を俯瞰し、ア.我が国経済が依然として厳しい状況にあること、イ.欧州政府債務問題を巡る不確実性が依然として高いこと、ウ.こうした世界経済の状況が金融資本市場を通じて与える影響等が、我が国の景気を下押しするリスクとなっていること等に着目しました。

      特に、今日のようにグローバル化が進展する中では、世界経済に関するリスクが発現し、危機が起きた場合でも、自国への影響を軽微なものに留めるよう、経済・金融システムの強靱性を高めておくことが重要です。そこで、金融機関が、被災地の復旧・復興をはじめ、我が国の再生・発展に貢献していくためにも、海外経済・金融資本市場の動向等に注視しながら、リスク管理をはじめとした財務の健全性を確保することが必要と考えました。

      これを踏まえ、監督当局としては、引き続きベター・レギュレーションの一層の定着・深化を基本に、リスク感応度の高い行政、国民の目線・利用者の立場に立った行政、将来を見据えた行政、金融機関の自主的な経営改善・経営判断に資する行政に努めることとしました。以下では、各業態別に、監督上の重点分野を御紹介いたします。

    • (2)主要行等向け監督方針の特徴

      主要行等向けの監督方針は、監督上の重点分野に、ア.円滑な金融仲介機能の発揮、イ.リスク管理と金融システムの安定、ウ.顧客保護と利用者利便の向上を位置付けました。具体的に、本事務年度の主な特徴は次の3点に集約されます。

      第一に、中小企業金融円滑化法の最終延長の一年であることを踏まえ、中小企業の真の意味での経営改善につながる支援を強力に推し進める観点から記述を充実させました。特に、主要行向けには、ABL等の多様な金融手法の活用、創業・起業等に対する支援等を促進していく旨を記述しています。

      第二に、リスク管理について、各行において収益力強化の取組みが見られる中で、欧州の政府債務問題、米中等の経済・金融動向や各種リスクを注視するなど、マクロ・プルーデンスの視点に基づく監督について強調しています。特に各行においては、想定され得る最も厳しいシナリオを前提にストレス・テストを行っているか等について確認していくこととしています。

      第三に、顧客保護と利用者利便の向上については、公共性が高く信頼のある金融機関として、顧客の期待に応えていくことが重要です。特に、預金を取り扱う銀行においては、元本の安全性を重視する顧客を抱えている点を十分踏まえて対応することが必要です。さらに、インサイダー取引問題や年金基金、LIBOR問題など、昨今の金融業界をめぐる問題に適切に対応しているかも確認していきます。

    • (3)中小・地域金融機関向け監督方針の特徴

      中小・地域金融機関向け監督方針は、主要行等向け監督方針との共通事項のほか、主に次のような点を明記しています。

      第一に、各財務局等と、これまで以上に各金融機関の経営課題等に関する認識を共有し合い、一体となった監督行政に努めるなど、引き続き、監督力の強化に努めます。

      第二に、円滑な金融仲介機能の発揮の観点からは、震災復興支援に関し、東日本大震災事業者再生支援機構、産業復興機構及び個人版私的整理ガイドラインの活用等を通じた二重ローン問題への対応や、金融機能強化法の活用の積極的な検討を促していくこととしています。また、地域密着型金融について、経営陣の強力なリーダーシップの下、これまでの取組み実績を通じて把握された新たな課題等も踏まえ、自らのビジネスモデルとして、その取組みを深化させていくことが重要です。さらに、中小企業金融円滑化法の最終年度であることを踏まえ、「中小企業の経営支援のための政策パッケージ」の具体化を進めていくこととしています。

      第三に、リスク管理と地域における金融システムの安定の観点からは、国債等の金利上昇リスク管理や大口与信先等の信用リスク管理をはじめとするリスク管理態勢の整備状況を検証するとともに、将来を見据えた資本基盤の充実・強化に向けた取組みを促していくこととしています。さらに、中長期的な視点に立った収益基盤の充実のための取組み(地域銀行自身の海外展開を含むアジア進出支援等)についても検証することとしています。

      また、協同組織金融機関については、その基本的性格等を踏まえた金融仲介機能の最大限の発揮に向けた取組みを注視していきます。

    • (4)金融商品取引業者等向け監督方針の特徴

      金融商品取引業者等向け監督方針は、監督上の重点分野に、主要行等にも共通した取組みのほか、ア.市場仲介機能の適切な発揮、イ.リスク管理と金融システムの安定、ウ.顧客保護と利用者利便の向上を位置づけました。それぞれの具体的な内容は以下のとおりです。

      第一に、金融商品取引業者等が、市場の担い手として市場仲介機能を適切に発揮することにより、我が国市場に対する信認を高め、ひいては我が国の経済・金融システムの安定に寄与していくことが求められており、そのためには、金融商品取引業者等が投資者など市場関係者の信認を確保することが不可欠です。こうした観点から、公募増資に関連したインサイダー取引の問題を踏まえ、法人関係情報の厳格な管理が徹底されているかを検証していくことなど、金融商品取引業者等が、金融仲介機能を適切に発揮できるよう、投資者等の信認の確保に向けた内部管理態勢の構築を促していくことを盛り込みました。

      第二に、金融資本市場を取り巻く環境の不安定性・不確実性は高いままであり、金融商品取引業者等が質の高いリスク管理を徹底することが、我が国における信用秩序の維持においてますます重要となっています。そこで、大規模証券会社グループ等については、日本銀行や海外当局とも密接に連携しつつ、外貨も含めた流動性リスク管理に万全を期すことを求めていきます。さらに、このようなリスク管理が適切に受け止められるよう、積極的な対外メッセージの発信を求めていくことを慫慂していきます。また、中小証券会社等について、財務基盤、資金繰り等を検証するとともに、経営状況の悪化に乗じて反社会的勢力等が資金の提供者等として経営に関与することがないよう注視していくことなどを盛り込みました。

      第三に、金融商品取引業者等における顧客保護・利用者利便については、AIJ問題や増資インサイダー問題等を踏まえ、顧客保護に全力を挙げていくこととし、再発防止策に則った適切な対応が取られているか重点的に検証することとしました。金融商品取引業者等は、形式的な法令遵守に留まらず、法令の趣旨・目的を十分に踏まえ、顧客等の求める水準を認識し、その期待に応えていくことが重要であり、こうした観点が実際の業務運営に根付いているかを注視していくこととします。

    • (5)保険会社等向け監督方針の特徴

      保険会社等向け監督方針では、保険業が国民生活や経済活動の安定のために果たしている役割や、東日本大震災等の度重なる巨大災害にかかる集積リスクについて管理の向上を図ることの重要性に言及した上で、以下の事項を中心に記載しています。

      第一に、保険金が適切に支払われるよう、支払管理態勢や請求案内態勢等の機能発揮状況を引き続き検証することに加え、反社会的勢力等による不当請求に対する審査態勢を新たに検証対象に挙げています。また、保険会社グループについて海外進出に応じたリスク管理態勢を検証することとしました。このほか、新規参入会社、募集休止会社、外国保険会社などについての記述を設け、保険会社等の属性に応じて適切に監督していくこととしています。

      第二に、リスク管理の高度化を推進する観点から、リスクの把握や削減への取組み状況、販売チャネル等の特性に応じた販売進捗管理等のリスク管理態勢などを検証します。経済価値ベースのソルベンシー規制については、専門組織と連携し、国際的な動向を踏まえつつ引き続き検討を進めます。

      第三に、募集形態の多様化や大型化が進展する代理店について、募集態勢の検証や実態把握を進めると共に、保険募集資料に分かり易く適正な表示が確保されているか検証します。また、商品審査における事前の意見交換や、保険契約の特性等にも配慮しつつ反社会的勢力にかかる態勢整備等を強化するよう促す旨の記述を設けました。

  • 3.検査基本方針について

    平成24検査事務年度検査基本方針においては、「基本的な取組姿勢」として、一層深度ある検査の実施に努めるとともに、ベター・レギュレーションの一層の進化等を図る観点から、

    • 金融機関の直面するリスクが多様化・複雑化していること等を踏まえ、当局における検証能力の更なる向上を図るために「検査の質的向上」、
    • 当局と金融機関の「監査役・監査委員や外部監査人との連携強化」、

    等に取り組むこととしております。

    また、以下では、「検査重点事項」について、本検査事務年度において、内外の経済状況等を踏まえ、新しく追加した主な事項を中心に御紹介いたします。

    • (1)経営管理態勢の整備

      • ア.金融持株会社等のグループ経営管理・リスク管理

        近年、金融持株会社により、銀行・保険会社等の金融グループを統括する形態が増加しつつあることを踏まえ、金融持株会社の子会社等に対するグループ経営管理機能が十分に発揮されているか、等について、重点的に検証することとしています。

        また、多くの大手金融グループにおいて、アジアをはじめとする海外店舗網の拡大等を活発化させている状況を踏まえ、グループ全体を通じたグローバルな経営管理態勢・リスク管理態勢が整備されているか、等について、金融グループの海外における規模・特性等を踏まえつつ、重点的に検証することとしています。

      • イ.業務継続体制

        近年、金融機関が抱えるリスクが多様化・複雑化している中、大規模な自然災害やシステム障害等、従来の想定の範囲に必ずしも収まらない事象が発生しています。

        こうした状況を踏まえ、経営陣の責任において、危機発生時に、金融機関として必要最低限の業務の継続が確保できるような業務継続体制が整備されているか、等について、重点的に検証することとしています。

    • (2)中小企業金融円滑化法の最終延長を踏まえた取組み

      中小企業金融円滑化法の期限が、平成25年3月末まで1年間に限り再延長された中、平成24年4月には「中小企業の経営支援のための政策パッケージ」が取りまとめられる等、「出口戦略」が推し進められております。

      こうした中、金融機関においては、中小企業の経営改善や事業再生等を最大限支援していくことが、従来以上に求められております。

      このため、

      • 中小企業に対して、経営改善や事業再生等の可能性を適切に見極め、最大限の支援を適切に行うための態勢が整備されているか、
      • 中小企業の経営改善や事業再生等に当たり、外部専門家、企業再生支援機構や中小企業再生支援協議会等との円滑かつ適切な連携を行う態勢が整備されているか、
      • 「資本性借入金」や「ABL(動産・売掛債権担保融資)」等の多様な金融手法を積極的に活用して、顧客ニーズに応える態勢が整備されているか、

      等について、金融機関の規模・特性等を踏まえつつ、重点的に検証することとしています。

    • (3)法令等遵守態勢の整備

      • ア.反社会的勢力への対応、マネー・ローンダリング及びテロ資金供与の防止

        昨今、国・地方公共団体レベルで暴力団排除活動の充実・強化が図られつつあります。

        こうした中、金融機関が国民の信頼を維持し、業務の適切性・健全性を確保するためには、断固たる態度で反社会的勢力との関係を遮断・排除する必要があり、そのための実効性のある態勢が整備されているか、等について、それぞれの営業地域における状況等も踏まえつつ、重点的に検証することとしています。

        また、金融機関においては、マネー・ローンダリングやテロ資金供与に利用されることを未然に防止することの重要性が一層増してきていることを踏まえ、平成25年4月に施行予定の改正犯収法に対応するための態勢が整備されているか、等について、重点的に検証することとしています。

        更に、反社会的勢力への対応、マネー・ローンダリング及びテロ資金供与の防止に対して、金融機関が組織的に取り組むため、関係部門間での横断的な協力態勢や、情報を共有する態勢が整備されているか、等についても、重点的に検証することとしています。

      • イ.金融市場における不公正取引等の防止に向けた対応

        昨今、金融市場における不公正取引等が相次いで発生しています。金融機関の役職員によるインサイダー取引や、LIBORの不正操作問題をはじめとする不公正取引等は、金融機関への国民の信頼や市場の透明性・公平性を傷つけかねない重大な問題です。

        このため、不公正取引等の防止に向けて、適切な情報管理や業務の適切性の確保に係る内部管理態勢やコンプライアンス態勢が整備されているか、等について、重点的に検証することとしています。

      • ウ.ホールセール業務に係るリーガルリスク管理等

        ホールセール業務は、リテール業務と比べ、1件当たりの取扱金額が多額に上るほか、顧客のニーズに個別に対応し、定型化されていない複雑な商品・サービスを組成する場合も多いため、リーガルリスクの管理等が極めて重要です。

        こうした状況を踏まえ、顧客との取引等を行う前に、必要に応じ、適切にリーガル・チェック等を行う態勢が整備されているか、等について、重点的に検証することとしています。

    • (4)顧客保護・利用者利便の向上

      金融機関における顧客保護・利用者利便の向上は、国民経済の健全な発展に資するだけでなく、金融機関に対する国民の信頼性の向上を通じて、我が国金融システムの安定に資する重要な取組みです。

      このため、金融機関において、顧客情報に係る管理の徹底、適正かつ安全な金融取引の確保、金融ADR制度への対応を含めた相談・苦情等への積極的な対応、顧客に対する適切な説明に係る態勢が整備されているか、等について、重点的に検証することとしています。

    • (5)リスク管理態勢の整備

      • ア.統合的リスク等管理

        金融技術が発展し、金融機関間の取引が高度に複雑化する中で、金融機関においては、従来のリスクカテゴリーの観点だけでは捉えられないリスクを、確実に捕捉し、管理することが求められております。また、欧州債務問題が長期化し、世界的に景気の下振れリスクが高まる中、金融・資本市場等におけるストレス事象に伴い、リスクが連鎖的に増幅・伝播することを念頭に置いて、統合的なリスク管理態勢の整備を図る必要があります。

        このため、

        • 金融機関の規模・特性及びリスク・プロファイルに応じた統合的リスク管理態勢が整備されているか、
        • 厳格なストレステスト(例えば、急激な金利上昇、円高、株安等の複数事象が同時に発生するケース)等を実施し、ストレステスト等の結果等が経営の中で活用されているか、

        等について、重点的に検証することとしています。

        なお、本検査基本方針では、信用リスク、市場リスクや流動性リスクに関しても、検査重点事項を記載しております。

      • イ.システムリスク管理

        昨年に実施したシステムリスクに関する総点検の結果を踏まえて、平成24年6月に金融検査マニュアルを改定し、適切なシステムリスク管理態勢の整備に向けた検査上の着眼点を掲げております。

        当該着眼点に基づき、

        • 経営陣は、システム障害の未然防止や障害発生時の迅速な復旧対応を含むシステムリスク管理を重視しているか、
        • 外部環境の変化を踏まえつつ、システムの処理能力等に関するリスクが認識・評価され、システムの十分性が確保されているか、
        • システム障害の発生に備え、最悪のシナリオを想定した上で、必要な対応を行う態勢が整備されているか、

        等について、重点的に検証することとしています。

        なお、本検査基本方針では、業務の拡大やシステムの更改・統合等への対応、システムの外部委託等に係る管理に関しても、検査重点事項を記載しております。

      • ウ.信託業務に係るリスク管理等

        昨今の年金基金からの受託を巡る問題事例の発生を受け、年金基金等の委託者から資産の管理・運用を受託する信託銀行の果たすべき役割等について、様々な課題が提起されているところです。

        こうした状況も踏まえ、年金基金等の委託者からの資産の管理・運用においては、委託者と締結した信託契約や、信託財産運用に関する運用ガイドラインの遵守をはじめ、善管注意義務や忠実義務等の履行を確保し、信託財産を適切に管理・運用する態勢が整備されているか、等について、重点的に検証することとしています。

        また、信託業務については、その根幹に関わる業務を含め、多くの業務が外部委託されている事例が見られます。

        こうした状況を踏まえ、

        • 業務の外部委託を行うに際し、外部委託に伴い生じるオペレーショナル・リスク等について、当該業務の特性や重要度等を踏まえつつ、適切に評価・管理する態勢が整備されているか、
        • 外部委託先が委託業務を実際に適切に遂行しているかについて、定期的に又は必要に応じて随時にモニタリングする態勢が整備されているか、

        等について、重点的に検証することとしています。

      • エ.保険業務に係るリスク管理

        欧州債務問題をはじめとする世界経済の変調や、国内外における大規模な自然災害の発生など、取り巻くリスクが多様化・複雑化してきていること等を踏まえ、

        • 統合的リスク管理態勢の整備・確立に向けた取組みが進められているか、
        • 海外拠点を含めた集積リスクの管理等、保険引受リスクが適切に管理されているか、
        • 資産運用業務に当たり、適切なリスク管理態勢が整備されているか、

        等について、保険会社の規模・特性等を踏まえつつ、重点的に検証することとしています。

  • 4.最後に

    以上が本事務年度(検査事務年度)の監督方針及び検査基本方針の主な内容です。当局としては、本事務年度も、この監督方針、監督指針や検査基本方針等に基づきながら、金融機関の皆様との対話に努め、利用者や国民の視点に立った適切かつ実効性ある検査・監督に努めていきたいと考えています。

※ 詳しくは、金融庁ウェブサイトの「広報報道」の中の「報道発表資料」から「平成24事務年度監督方針及び検査基本方針等について」(平成24年8月28日)にアクセスして下さい。


「オフサイト検査モニターの集計結果」の公表について

  • 1.概要

    • 金融庁では、「金融検査に関する基本指針」の適切な運用を確保し、検査マニュアルの機械的・画一的な運用を防止する等の観点から、検査モニターを実施しています。

    • 検査モニターには、検査局や財務局の各幹部が検査先の金融機関へ赴き、検査の実施状況などについて直接ご意見を伺う「オンサイト検査モニター」と、それを補完するものとして、アンケート方式によりご意見を受け付ける「オフサイト検査モニター」とがあります。

      いずれの検査モニターも、金融機関から金融検査に対する忌憚のないご意見を伺うことのできる有用な機会であると考えています。

    • 今般、平成23検査事務年度に実施した検査に関する「オフサイト検査モニター」のアンケート結果を取りまとめ、8月31日に公表いたしました。

  • 2.アンケート要領

    • アンケートは、以下の2種類について、「1(妥当)」「2(概ね妥当)」「3(あまり妥当ではない)」及び「4(妥当ではない)」の4肢択一方式で回答していただくものです。

      • <アンケート(1)>検査執行状況等に関する事項

      • <アンケート(2)>検査結果通知に関する事項

    • 対象先、回収率

      • <アンケート(1)>

        対象先:227先(23年7月以降24年5月末日までの間に立入検査を終了した先)

        回収率:93.4%(212先)

      • 対象先:252先(23年7月以降24年5月末日までの間に検査結果を通知した先)

        回収率:90.1%(227先)

  • 3.アンケート(1)結果(総括)

    アンケート結果(別紙参照)は、項目全体として、「1(妥当)」とする割合が65.0%(昨年71.7%)、「2(概ね妥当)」とする割合が33.3%(同26.6%)となり、「1(妥当)」とする割合は、昨年に比べやや減少しました。

    ただし、「1(妥当)」と「2(概ね妥当)」を合わせた割合は98.3%(昨年98.3%)と、昨年と同じ水準であり、また、98%を超えていることを勘案すると、金融検査はほぼ適切に実施されたものと考えています。

  • 4.アンケート(1)結果(項目ごとの状況)

    アンケート結果を項目別にみると、全29項目のうち27項目で、「1(妥当)」と「2(概ね妥当)」を合わせた割合が97%を超えています。

    一方で、「3(あまり妥当ではない)」と「4(妥当ではない)」を合わせた割合が比較的高い項目も認められます。「3」と「4」を合わせた割合が3%を超えている項目について、付記された意見の内容と併せて、金融庁としての考え方や対応をご紹介します。

    • 「検査の時期」・・・「3」と「4」を合わせた割合8.5%

      金融機関から、検査の時期が決算期末や年末・年始などの繁忙期と重なり負担感を感じたとの意見がありました。

      「3」と「4」を合わせた割合(8.5%)は、昨年(10.6%)より減少してはいますが、今後とも、決算期末、株主総会(総代会)や年末・年始の時期などに検査を実施する場合には、金融機関の負担にできるだけ配慮するよう、本庁検査官や各財務局に指示してまいります。

    • 「執務時間の考慮」・・・「3」と「4」を合わせた割合3.3%

      金融機関から、検査官の退出時刻が遅いという意見がありました。

      「3」と「4」を合わせた割合(3.3%)は、昨年(3.1%)とほぼ同様の水準ですが、今後とも、金融機関の負担にできるだけ配慮するよう、本庁検査官や各財務局に指示してまいります。

  • 5.自由記載欄における意見について

    • 自由記載欄における意見については、以下のような意見が寄せられています。

      • 金融検査評定制度は、各リスクカテゴリーにおける客観的な評価を示すもので、自社態勢の強化すべき点、求められるレベル感を把握する上で有益なものと認識。
      • 主任検査官と役員、担当検査官と各部門、階層に応じたコミュニケーションを通じて双方向の議論が図れた。
      • 金融円滑化管理態勢の検証に際しては、円滑化への取組事例を評価いただき今後の励みにもなった。今後ともこういった取組みをお願いしたい。
      • 「金融検査マニュアルに関するよくある質問(FAQ)」や「金融検査指摘事例集」は、内部管理態勢の強化等を図るために有効であることから、今後も更なる充実をお願いする。
  • 6.アンケート(2)結果(検査結果通知書について)

    アンケート結果は、項目全体として、「1(理解しやすい)」とする割合が68.5%(昨年83.8%)、「2(概ね理解しやすい)」とする割合が29.3%(同14.9%)となり、「1(理解しやすい)」とする割合は、昨年より相当程度減少しました。これは、昨年は、中小企業金融円滑化法の実施状況等に絞った検査に係る通知が多く、理解しやすいとする回答が多かったことなども影響したものと考えています。

    ただし、「1(理解しやすい)」と「2(概ね理解しやすい)」を合わせた割合は97.8%(同98.7%)と、昨年とほぼ同様の水準であり、また、97%を超えていることを勘案すると、検査結果通知については、全体としてはほぼ適切に行われたものと考えています。

  • 7.終わりに

    検査局では、検査モニターにおいて寄せられた種々のご意見を踏まえ、一層適切な検査の実施に努めてまいります。

    各金融機関におかれましては、今後とも検査モニターについてのご理解とご協力をお願いいたします。

※ 詳しくは、金融庁ウェブサイトの「広報報道」の中の「報道発表資料」から「「オフサイト検査モニターの集計結果の公表」について」(平成24年8月31日)にアクセスして下さい。


金融庁の平成25年度税制改正要望について

金融庁では、平成24年9月7日に「平成25年度 税制改正要望項目」を取りまとめて公表するとともに、要望書を財務省・総務省に提出しました。要望の概要は以下のとおりです。

  • 1.まず、金融証券税制については、国民の資産形成の自助努力を支援する観点から見直しを行いたいと考えています。具体的には、以下の2項目を要望しました。

    • (1)日本版ISAの恒久化等

      約1,500兆円ある我が国家計金融資産について、自助努力に基づく資産形成を支援・促進し、家計からの成長マネーの供給拡大を図るため、日本版ISAの活用が期待されています。

      ただし、現在導入が予定されている制度は、平成26年からの3年間に行われる投資だけを対象とする時限措置となっています。

      そこで、幅広い家計に国内外の資産への長期・分散投資による資産形成を行う機会を提供する観点から、日本版ISAの恒久化等を要望しました。

    • (2)金融所得課税の一体化

      現状、株式等と債券等では、異なった課税方式が採られており、金融商品間の損益通算についても、上場株式・公募株式投資信託においてのみ認められているなど、投資家が多様な金融商品に投資しにくい状況にあります。

      また、株式等と商品先物等のデリバティブ取引の間で損益通算ができるようになれば、今般、金融商品取引法の改正に盛り込まれた「総合的な取引所」の実現に向けた推進力となりうると考えられます。

      このため、株式等と債券等で課税方式を統一するとともに、広く金融商品間での損益通算を認める金融所得課税の一体化を要望しました。

  • 2.2点目は、中小企業金融円滑化法の最終延長を踏まえた、中小企業の再生を支援するための要望です。金融庁では、これまでも中小企業の経営支援に向けた取り組みを進めてまいりましたが、特に今般、税制面からも「借り手」の支援を行う必要があると考え、以下の2項目を要望しました。

    • (1)いわゆる「企業再生税制」の要件等の拡充

      再生企業が金融機関等から債権放棄を受ける場合には、再生企業の「債務免除益」に対する課税が再生を妨げることのないよう「企業再生税制」が措置されています。具体的には、「債務免除益」が生じた場合に、一定の要件の下、ア.保有資産の時価が簿価を下回っている場合の時価と簿価の差額である評価損、又はイ.所得との相殺が通常認められる期限が切れた欠損金と、特別に相殺することを認め、課税が起こらないようにする措置です。

      しかし、同措置の適用は、「2以上の金融機関による債権放棄が行われている」場合等に限定されています。

      また、現状、企業再生税制が適用される場合であっても、評価損の金額が少額(1,000万円未満(有利子負債10億円未満の企業は100万円未満))の資産については、評価損の損金算入が認められていません。

      そこで、再生の円滑化を図るため、企業再生税制の適用を受けられる債権放棄の対象や認められる評価損の範囲の拡充を要望しました。


      (クリックすると拡大されます)
    • (2)合理的な再生計画に基づき、経営者が私財提供を行おうとする場合の譲渡所得の非課税措置

      通常、資産を譲渡する場合、当該資産の取得価額と譲渡価額との差額である譲渡益が課税されますが、再生企業の保証人となっている経営者が、保証債務の履行として金融機関に私財を提供する場合には、当該私財に係る譲渡益は、非課税とされています。

      一方、再生企業の保証人となっている経営者が、再生企業に直接私財提供を行う場合には、「合理的な再生計画」の一環として行う場合であっても非課税とならないことから、中小企業の再生を支援する観点から、こうした場合の譲渡益を非課税とする要望を行いました。

以上の他、日本再生戦略等に盛り込まれた事項等を含む項目を23件要望しています。

※ 詳しくは、金融庁ウェブサイトの「広報報道」の中の「報道発表資料」から「金融庁の平成25年税制度改正要望について」(平成24年9月7日)にアクセスして下さい。


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