アクセスFSA 第147号(2015年9月)
(1)「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」について
昨年2月にスチュワードシップ・コードが策定・公表され、本年6月にはコーポレートガバナンス・コードが適用開始されたところですが、これはゴールではなくスタートです。「『日本再興戦略』改訂2015」においては、両コードが車の両輪となって、会社側と投資家側の双方から企業の持続的な成長が促されるよう、積極的にその普及・定着を図る必要があるとされています。
その際には、更に「形式」から「実質の充実」へと次元を高める必要があり、また、このような取組を、経済の好循環確立につなげていく必要があります。このため、金融庁と東京証券取引所を共同事務局とする「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」を設置しました。
この会議では、企業経営者、内外投資家、研究者等の有識者による議論・提言や、ベストプラクティスを情報発信しながら、上場会社全体のコーポレートガバナンスの更なる充実を促していきます。
第1回会合は9月24日(木)に開催し、当面、月1回程度の頻度で開催することを予定しております。また今後の会合において議論・検証されるべきと考えられる事項、その他コーポレートガバナンスの更なる充実等に関して、広く意見を募集しております。
※ 詳しくは、金融庁ウェブサイトの「審議会・研究会等」から「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」にアクセスしてください。
(2)金融庁の平成28年度税制改正要望について
金融庁では、平成27年8月31日に「平成28年度税制改正要望項目」をとりまとめて公表するとともに、要望書を財務省・総務省に提出しました。
今回の税制改正要望においては、金融行政における諸課題を踏まえ、
1.家計の資産形成の支援と成長資金の供給拡大
2.地域経済の活性化に資する中小企業の事業再生支援
3.「国際金融センター」としての利便性向上と活性化
の3つの柱を中心として、要望項目のとりまとめを行いました。
主な項目の内容は、以下のとおりです。
1.家計の資産形成の支援と成長資金の供給拡大
(1)NISAの更なる利用拡大に向けた利便性向上
NISAは、個人投資家のすそ野を拡大し、家計の中長期的な資産形成の支援と日本経済のための成長資金の供給拡大を図ることを目的として、平成26年1月に導入された制度です。
NISAについては、平成27年6月末時点で約921万件の口座開設があり、買付額は約5.2兆円にのぼるなど国民の高い関心が寄せられていますが、口座開設者の大半は60歳代以上の投資経験者であり、20代、30代の若年層は約1割にとどまっています。
制度の目的である投資家のすそ野の拡大に向けて、若年層や投資未経験者層への普及が課題となっていますが、そのためには、制度の拡充もさることながら、制度の利便性向上を図ることが重要です。
以上のことから、平成28年度税制改正要望において、NISA口座開設時の手続きの見直しを要望しています。
(2)マイナンバーの導入に伴う手続の簡素化
「マイナンバー制度」は、行政運営の効率化、公正な給付と負担の確保及び国民の利便性向上を図ることを目的として、平成28年1月より導入されます。
マイナンバー制度を活用し、各種税務手続の簡素化を図ることは制度の基本理念に適うものであり、金融庁としても、今回の税制改正要望において、マイナンバーを用いた口座開設手続の簡素化等を要望しています。
(3)金融所得課税の一体化(金融商品に係る損益通算範囲の拡大)
個人投資家の市場参加を促すためには、多様な金融商品に投資しやすい環境を整備することが重要です。このため、金融庁では、金融商品に係る損益通算範囲の拡大を要望しています。
具体的には、平成25年度税制改正において、損益通算の範囲が特定公社債等にまで拡大されたところですが、平成28年度税制改正要望では、昨年に引き続き、損益通算範囲をデリバティブ取引や預貯金等についても拡大することを要望しています。
2.地域経済の活性化に資する中小企業の事業再生支援
(1)事業再生ファンドに係る企業再生税制の特例の延長
中小企業の事業再生を支援する観点から、平成28年3月末までの間、内閣総理大臣等が指定する事業再生ファンドにより債権放棄が行われた場合について企業再生税制(評価損の損金参入が可能等)の適用を認める特例が措置されています。
引き続き、中小企業の事業再生を支援する必要があることから、事業再生ファンドによる債権放棄が行われた場合の特例措置の適用期限を3年間延長することを要望しています。
(2)経営者の私財提供に係る譲渡所得の非課税措置の延長
中小企業の事業再生を支援する観点から、再生企業の保証人となっている経営者が、「合理的な再生計画」に基づき、当該再生企業に対して事業用資産の私財提供を行った場合には、平成28年3月末までの間、譲渡益を非課税とする特例が措置されています。
引き続き、中小企業の再生を支援する必要があることから、再生企業の保証人となっている経営者が私財提供を行う場合の特例措置の適用期限を3年間延長することを要望しています。
3.「国際金融センター」としての利便性向上と活性化
(1)債券現先取引(レポ取引)に係る非課税措置(レポ特例)の適用拡大
クロスボーダーのレポ取引に関し、外国金融機関等が我が国の金融機関等から受取るレポ差額は非課税とされています。
しかし、現行制度では、レポ特例の対象が国内金融機関等と外国金融機関等との取引に限定されているため、国内金融機関等が海外のファンドと直接行うレポ取引はレポ特例の対象とはなりません。
そこで、クロスボーダーのレポ取引の利便性を向上させ、我が国の市場を活性化させるためにも、海外のファンドにもレポ特例の適用が拡大されるよう、要望しています。
(2)日本版スクークに係る非課税措置の恒久化
スクーク(イスラム債)とは、利子を生じさせる社債を取り扱うことができないイスラムの投資家や発行体でも取り扱うことができる、イスラム法を遵守した金融商品です。
日本版スクークとは日本の法制に従って組成されるイスラム債のことですが、金融庁では、イスラム・マネーを呼び込み、それにより国際金融センターとしての地位確立・向上を目指す我が国の金融・資本市場の魅力を高めるため、平成28年度税制改正要望において、日本版スクークに係る非課税措置のうち、未だ恒久化されていない措置の恒久化を要望しています。
以上を含め、国税・地方税合わせて32項目の要望を行っています。
※ 詳しくは、金融庁ウェブサイトの「広報報道」の中の「報道発表資料」から「金融庁の平成28年度税制改正要望について」(平成27年8月31日)にアクセスしてください。
(3)多重債務者相談強化キャンペーン2015の実施について
内閣に設けられた「多重債務者対策本部」においては、深刻な社会問題である多重債務問題を抜本的に解決するため、平成19年4月20日に「多重債務問題改善プログラム」を決定し、相談窓口の整備などの「借り手対策」をとりまとめました。これに基づき、全国の地方公共団体における相談体制の整備・強化が進められております。
平成22年6月の改正貸金業法完全施行後、多重債務問題は一時と比べ落ち着きをみせているところですが、多額の借入残高を有する層は現在も相当数存在し、継続的に多重債務者対策を講じていく必要があるところです。
このため、潜在的な相談者の掘り起こし及び常設の相談窓口の認知度向上等を目的として、本年9月1日~12月31日までの4ヶ月間、「多重債務者相談強化キャンペーン2015」を多重債務者対策本部と日本弁護士連合会、日本司法書士会連合会及び日本司法支援センター(法テラス)との共催で、実施するものです。(なお、これまでにも同様の趣旨により、平成19年度の「全国一斉多重債務者相談ウィーク」(平成19年12月10日~16日実施)、平成20年度~平成26年度の「多重債務者相談強化キャンペーン」(平成20~26年の9月1日~12月31日実施)を実施しているところです。)
(キャンペーン周知のためのポスター)
キャンペーンでは、期間中に都道府県、当該都道府県の弁護士会、司法書士会、中小企業団体(全国の商工会議所、商工会、都道府県中小企業団体中央会)が共同で、消費者及び事業者向けの無料相談会等の取組み(電話による相談の受付けを含む)を行います。併せて、各地方財務局においても、無料相談会の開催等を行います。このほか、ヤミ金融の利用防止について、周知・広報を行うこととしています。
各地の相談窓口、キャンペーン期間中に各地で開催される無料相談会等については、下記の電話番号にてご案内します。また、金融庁ウェブサイトの「多重債務者相談強化キャンペーン2015における相談会の開催予定等について」でも、随時、関連情報を提供しています。
《法テラスコールセンター》
0570-
※受付時間 平日/9:00~21:00
土曜/9:00~17:00
(日曜祝祭日、年末年始休業)
※ 詳しくは、金融庁ウェブサイトの「広報報道」の中の「報道発表資料」から「多重債務者相談強化キャンペーン2015の実施について」(平成27年8月27日)にアクセスしてください。
(4)地域金融機関の地域密着型金融の取組み等に対する利用者等の評価に関するアンケート調査結果等の概要
1.調査目的等
金融庁では、「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」に基づき、地域金融機関における地域密着型金融の取組みに関する利用者等の評価を把握するため、平成27年4月から6月にかけ、全国の財務局等において、各地域の利用者等を対象に、聴き取りによるアンケート調査を実施し、その結果を以下のとおり取りまとめました。
利用者等: 中小企業者478名、商工会議所・商工会の経営相談員等451名、 消費生活センター職員等95名の計1,024名 2.地域密着型金融の取組み等に対する評価に関するアンケート調査結果(地域金融機関の取組みに対する評価)
地域密着型金融の取組み姿勢(全体評価)については、積極的評価とやや積極的評価を合わせると約6割で、消極的評価とやや消極的評価を合わせると1割弱となっています。
個別項目では、「顧客企業への訪問等の姿勢」に対する積極的評価が2割を超えており、その他の項目についても概ね改善傾向にあるものの、「目利き能力」や「ソリューションの提案力」、「地域や利用者に向けた情報発信の内容」等に対する積極的評価は、依然として1割以下と低い割合となっています。
(参考)アンケート調査結果の概要
積極的 | やや積極的 | やや消極的 | 消極的 | ||
---|---|---|---|---|---|
地域密着型金融の取組み姿勢(全体評価) | 18.5 | 39.5 | 9.0 | 4.3 | |
顧客企業への訪問等の姿勢 | 22.5 | 32.9 | 8.1 | 4.8 | |
十分 | 概ね十分 | やや不十分 | 不十分 | ||
目利き能力(顧客企業の事業価値を見極め経営課題を発見・把握する能力) | 5.2 | 27.1 | 15.3 | 10.9 | |
ソリューションの提案力 | 4.7 | 22.8 | 17.5 | 8.6 | |
積極的 | やや積極的 | やや消極的 | 消極的 | ||
顧客企業のライフステージに応じた取組み姿勢 | 創業・新規事業開拓支援 | 12.7 | 29.5 | 10.5 | 5.4 |
成長段階にある取引先支援 | 13.6 | 35.4 | 7.0 | 4.0 | |
経営改善支援 | 10.4 | 29.4 | 11.8 | 6.3 | |
事業再生・業種転換支援 | 8.3 | 16.2 | 13.0 | 6.8 | |
事業承継支援 | 6.9 | 19.3 | 7.9 | 5.4 | |
積極的 | やや積極的 | やや消極的 | 消極的 | ||
ソリューション実行後モニタリング姿勢 | 7.6 | 19.5 | 11.0 | 4.4 | |
外部専門家・外部機関等との連携姿勢 | 11.3 | 28.1 | 9.7 | 7.2 | |
地方創生や地域経済活性化に向けた取組みへの参画 | 14.3 | 32.4 | 9.9 | 5.8 | |
地域や利用者に対する情報発信の姿勢 | 10.1 | 32.8 | 12.0 | 6.2 | |
理解しやすい | 概ね理解 しやすい |
あまり理解 できない |
理解できない | ||
情報発信の内容 | 7.2 | 36.4 | 10.2 | 1.9 |
※上記評価のほか、「どちらでもない」「わからない」との評価もある。
※ 詳しくは、金融庁ウェブサイトの「広報報道」の中の「報道発表資料」から「地域金融機関の地域密着型金融の取組み等に対する利用者等の評価に関するアンケート調査結果等の概要について」(平成27年8月21 日)にアクセスしてください。