五味金融庁長官記者会見の概要

(平成18年5月29日(月)17時01分~17時15分 場所:金融庁会見室)

【質疑応答】

問)

ジャスダック上場のペイントハウスの関係で、金融庁を訴えるという発表を先週ペイントハウスがやっていますが、それについての対応について教えて下さい。

答)

ペイントハウスに関しましては、御承知と思いますが証券取引等監視委員会において必要な検査などが行われまして、本日証券取引等監視委員会からペイントハウス社の提出した平成17年8月期の有価証券報告書のうち重要な事項について虚偽の記載があると認められたということで、この報告書の訂正報告書の提出命令を求める勧告がなされております。これは、証券市場に対する投資家の信頼性を確保するためには企業財務情報などの適正な開示が行われることが、極めて重要であるという観点から、必要な検査が行われ勧告に至ったものと理解をしております。

今お話のありました訴訟というのがペイントハウスから提起されていることは承知をしておりますけれども、一方で証券取引等監視委員会からはその検査などを通じまして詳細な事実関係の認定などが行われた上で、今般の勧告がなされたというふうに受け止めております。従いまして、お尋ねのありました今後の対応ということにつきましては、訴訟については今後訴状など分析した上で、法務省とも十分連携をして適切に対応してまいりますとともに、訂正報告書の提出命令といった行政上の対応は行政上の対応として、今般の勧告を踏まえて法令に則り、厳正に対処してまいります。

問)

損害保険ジャパンに対して、先週業務停止命令を含む行政処分を下されたと思うのですが、改めて御所見と、それから今度会長になられると御自分が仰っておりました平野社長ですが、処分の後の記者会見でも最終的にはそれも含めて検討するというふうな言い方を仰っていたようですが、なかなかその責任を認めているのかいないのか定かじゃないようなやりとりが続いたようですが、その辺も含めて感想をお聞かせいただければと。

答)

損保ジャパンにおきましては、当庁検査の結果と保険業法に基づく報告徴求の結果、法令等遵守体制、経営管理体制、そして内部管理態勢、これらに重大な欠陥があるということで、これらを要因として、ひとつは付随的な保険金などの更なる支払い漏れ、そして受託する生命保険の募集行為における法令違反。また、顧客の名前の印鑑を不正使用した法令違反。更には、海外拠点における保険証券発行の不正行為といった問題が判明をしております。保険会社の本来の機能ということから考えまして、極めて遺憾な事態であるというふうに考えております。

社長の人事の関係のお尋ねがございましたが、人事については会社の経営判断によって今回の人事は行われたものと承知しておりますので、これについて当局はコメントをする立場にはございません。

なお、今回の行政上の命令の中には業務改善命令において、役職員の責任の明確化というものを求めております。今後については、この命令を受けた責任ある対応というものが当社において取られるということを、我々は期待を致しております。

問)

先週、金曜日に山口県の西京銀行で不祥事隠しともとれる不祥事がありまして、頭取が辞任することになったわけですけれども、同じ日に信金の方でもやはり財務局への不祥事の報告漏れというのがあったのですが、こういった地域金融機関の内部管理態勢についての課題等について長官はどのようにお考えでしょうか。

答)

金融を巡る状況全体が、不良債権問題への、一種緊急的な対応という局面を脱しまして、将来の望ましい金融の仕組みを構築すると、こういうところへ移ってきているわけでございます。各金融機関においても多かれ少なかれ状況は同じでございまして、そうした健全性の維持ということに最大限注力するというような状況から、どうやってこれから地域金融機関であれば、地域に貢献しつつ自分の業務を運営し、収益力を高めていくかと、こういう局面に転換してきているわけでございます。そういった中では行政の重点というものも当然のことでございますけれども、健全性の維持のために必要なチェックということからその重点が利用者、消費者をどう守るかと、こういうところに転換してきているわけでございまして、こうした視点からの当局の検査・監督というものは、今後より多くのリソースが投入されていくことになるという状況にございます。その意味で地域金融機関に限らずどの金融機関におかれても、健全性の維持という必要最低限の経営上の課題というものは当然のこととしてこれをクリアしていただきながら、今後は利用者、消費者というものに対してどう対していくのか、この人達をどう自分の営業の中で守り、且つその人達を自分の収益源として大事にしていくのか、こういう点により重点を置いていただかなければならないという局面になっていると思います。そういう意味である種その過渡期というような時期に今あるのではないかと思いまして、こうした時期において今幾つか例に挙がりましたような事柄が明らかになってきているというのは大変残念なことでありますが、私共としてはそここそがこれから金融行政がよくよく注意をしていかなければいけないところだということでございますので、金融機関の皆様方にもコンプライアンス、或いは企業の経営管理全般ということについてより重点をおいた経営をしていただきたい。我々もその点をより重点をおいて検証していきたいと、そのような気持ちでおります。

問)

先週、大手行をはじめ決算が出揃いまして、地域金融においても一段落着いたかと思うのですが、改めてどういった決算であったと受け止めておられるかお聞かせください。

答)

地域銀行の話でしょうか。

問)

大手行も含めてどう受け止めておられますか。

答)

地域銀行については、先週の金曜日までで決算発表は全てなされたということで、112行でございますけれどもそういう状況でございます。詳細な分析は今後集計作業を行いまして、その結果としてまた公表、説明ができればと思っております。現時点での印象を申し上げますと、当期純利益は全体として増益というところが多かった。また、健全性指標であります自己資本比率、或いは不良債権比率、こういったものについても全体としては改善の方向にあると認識しております。例えば当期利益で言いますと、112行のうち106行が黒字であったというような状況でございました。ここを取りまとめ次第、決算の概要を公表させていただきたいと考えておりますが、全体としては収益、健全性ともに改善の傾向にあるという認識でおります。

次に大手行でありますけれども、この大手行の決算は既に詳細に皆様は分析をしておられますけれども、全体としては収益面を見ますと、過年度の不良債権処理に伴う貸倒引当金、これに関して経済環境の好転を背景とした取引先企業の業況改善ということがありまして、戻り益が発生しているといった特殊要因がございまして、この特殊要因が当期純利益の黒字幅の拡大ということに寄与いたしまして、全体として大幅な増益になったという理解でおります。健全性に関しましては不良債権比率は平均で1.8%というところまできておりまして、これはいわゆる不良債権の比率の半減目標が達成されました平成17年3月期決算の後も、各行それぞれ資産の健全化が引続き進んでいると、こういう状況であると思います。自己資本比率につきましては12.2%ということですから、昨年9月期からは0.6%ポイントという微増ということでございましたが、これはもちろん上昇の要因としては当期利益の増加、或いはその他有価証券の評価差益の拡大といったTier1、Tier2の自己資本増加という要因がありました。一方で運用資産の増加に伴うリスクアセットの増加ということがあったと、低下要因としてこれが効いたために微増ということになりましたが、全体として見ますと、リスクアセットが増加をしていくという拡大基調の中での自己資本比率の改善ということでございますから、これはこれとしてまた一つの方向性が出てきているのではないかと思っています。

全体としてはそのような印象でございますけれども、実質業務純益自体は16年3月期以降、緩やかに減少ということでございまして、その内容を見ますと貸出金等の資金利益、これが減少していると、また一方で投信や保険の販売といった役務取引利益の増加傾向があると、差引で緩やかな減少ということで、実質業務純益の緩やかな減少傾向があるという、これはこれからの主要行の経営の一つの課題でありましょうし、それを上昇傾向にもっていく過程で収益源というものをどのように構成していくのかというのが、各銀行のそれぞれの特性を生かした経営戦略ということで、これから注目しなければいけない。我々としてはそのためのリスク管理の高度化という言葉、つまりリスクプロファイルがどうしてもおそらく変わっていくことになるでしょうから、それに伴うリスク管理の高度化ということがどこまで徹底できるかということが我々の最大関心事項にこれからなっていくと思います。いずれにしても顧客サービスの向上ということがこれから大きな課題になってまいりますから、そうした点を経営の中に織り込んだ手法というものをとっていっていただきたいと、そのように思います。

(以上)

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