佐藤金融庁長官記者会見の概要

(平成19年8月27日(月)17時01分~17時20分 場所:金融庁会見室)

【長官より発言】

しばらく間があきましてすみませんでした。宜しくお願いします。

特にこちらからは、ございません。

【質疑応答】

問)

先ほど発表になりました内閣改造について、渡辺喜美さんが新たな大臣ということで、行革担当相と兼務されるということですが、率直な感想をお聞きできればと思います。

答)

渡辺大臣とは、一番近いところでは副大臣としてご指導をいただきましたし、また、それ以前も党の金融関係の部会等でご指導をいただいているということで、私どもにとっては大変心強いというふうに思っております。金融行政の大きな目標というのは、金融システムの安定、利用者の保護、利用者利便の向上、そして、公正・透明な市場の確立といったことで、こういう大きな目標というのは、不変ですけれども、渡辺新大臣の下で、ご指導賜りながら引き続き、目標に沿って仕事に取り組んでいきたいというふうに思っております。

前任の山本大臣には、特に「我が国の金融資本市場の国際的な競争力の強化」という点で、大変力強いご指導をいただき、この資本市場の「国際競争力強化プラン」というものを年末までにまとめるという宿題をいただいているところでございますので、こういった優先課題等についても渡辺新大臣のご指導を賜りながら、良い仕事の成果が上がるように、事務方としても一丸となって頑張っていきたいという風に思っております。

問)

次に、サブプライムローンの問題についてお聞きしたいと思います。先週、先々週と金融資本市場が大きく乱高下したわけですけれども、この間、金融庁としても金融業界に対するヒアリング等を行っており、改めて、今回のサブプライムローンの問題が日本の金融機関に及ぼす影響と、それから金融資本市場に及ぼす影響について、ヒアリングの結果等も踏まえまして、お聞きできればと思います。

答)

ここ2週間ぐらいの間に、サブプライムローンの問題の影響というのが、サブプライムローンを組み込んだ商品、証券化商品だけではなく、それ以外の市場、クレジット市場であるとか、株式市場であるとか、或いは為替市場であるとかに波及したということがあります。現在、このグローバルなマーケットで起きている現象というものを見る時に、3つぐらい特徴があるかという風に思っております。1つ目は、証券化、或いは信用デリバティブズという金融技術が一般化することによって原資産のリスクが広く薄く分散すると、こういう効果を持ったわけであります。このことには、プラス面とマイナス面と両方があろうかと思います。2つ目には、サブプライムローンを組み込んだ金融商品を対象とする投資活動の中で、長期運用、短期調達という、資産・負債のマチュリティのミスマッチという現象がかなり起きていたということでございます。その結果として、いわば流動性リスクが一部において表面化した。3つ目は、今のこの流動性リスクの話と密接に関わりますけれども、証券化商品に対するマーケットにおける価格づけの機能の信頼性が一時的に低下した。こういった3つぐらいの特徴が見てとれるのではないかと思いますし、一言で申しあげますと、信用リスクと市場リスクと流動性リスクが、複合した形で、大きくなったという状況かと思います。現在の状況というのは、それぞれの特徴、或いは問題点、リスクについて、それぞれの関係する当事者を中心に、個々の金融機関がリスク管理を実行するとか、或いはプライシング機能を再生させる、回復させるであるとか、或いは流動性不足への対応、手当てを行う、といった取組みがなされている状況であると思います。

翻って我が国の状況を見てみますと、現時点においては、今、申し上げました特徴について、欧米の状況に比べると、相対的に深刻度は低いというふうに言えようかと思いますけれども、日本国内のマーケットと海外のマーケットは密接に関連しておりますし、また、さっき申し上げた色々な機能を回復させるための調整過程というのには、ある程度、時間のかかる部分、分野もあるかもしれません。いずれにせよ、国内における当局間の連携、また、海外の監督当局等との連携を密にしながら、状況をしっかりと注視していくということが大事だろうと思います。こういうことで、我が国につきましても、今後の推移を注意深く見ていく必要がありますので、今後の見通しについて、断定的なことを申しあげるべきではないというふうに思っております。ただ、現時点におきましては、我が国の金融システムが深刻な悪影響を蒙るような状況にあるとは承知をいたしておりません。ご案内のとおり、我が国金融システムは不良債権比率の低下に見られるように、全体として見れば、健全性がかなり向上している。また、日本の金融機関のサブプライム関連商品につきましても、全体としてみれば、これらが投資をしている規模は、相対的に限定をされているといったようなことが言えようかと思います。いずれにいたしましても、金融庁としては、サブプライムローンに限らず、各金融機関等が適切にリスク管理等に取り組む、リスク管理をきちんと実行していくということが極めて重要だと思っておりまして、こういった観点から日常的に金融機関等とヒアリングや情報交換を進めているということであります。

問)

今、サブプライムローンの関係で3つの特徴を挙げていただいておりますが、先週、今事務年度の検査、監督方針を示されたところですけれでも、このリスク管理が非常に難しくなっていることを踏まえて、長官として今後、金融機関の検査・監督に注視していきたいという点があれば教えていただけますか。

答)

多様な金融商品が一般化する、またその背景として先ほど申しあげましたように証券化とか信用デリバティブズの普及といったようなことも背景にあると思いますけれども、いずれにいたしましても、こういう状況の下で、個々の金融機関が的確なリスク管理をきちんと行うということが、ますます重要になってきていると、こういう状況であろうかと思います。そういう状況認識も踏まえまして、たまたま、検査局と監督局で今事務年度の検査基本方針、或いは監督方針というものを8月の10日、或いは24日に公表したところでございます。この中では、今の話に関連いたしまして、このリスク管理の高度化ということを大きなテーマとして、両方で位置づけているということでございます。例えば監督方針のほうでは、リスク管理態勢について、ファンド向け投融資や証券化商品への投資等を念頭に、リスク特性に応じた管理が行われているかどうかを重点的に見ていくことが盛り込まれておりますし、また、検査基本方針のほうにおきましても、重点事項として貸出運用形態の複雑化多様化を踏まえて、個々の金融商品取引の実態やリスク特性を十分に分析・把握した上で、的確な態勢の整備・構築をしているかということを重要な検証事項として掲げているということであります。

それに関連する話といたしまして、ファンドでございますけれども、ファンドについては、金融商品取引法の全面施行によってファンドについての行政上の権限が明示的に位置づけられるということになっておりますけれども、ご案内のとおり、ファンドについては規模が大きい、或いは非常に動きが速いといった特色もありますので、それが与える市場へのインパクトは、十分に注視をする必要があると思います。他方でファンドは、これは以前から申し上げておりますとおり、その多様性の適切な発揮において、厚みのある市場の形成、或いは金融イノベーションの促進、さらには、我が国の金融資本市場の国際化への貢献といったことも考えられる、期待されるというところでございます。先ほど申しあげました19事務年度の監督方針のうち、金融商品取引業者等向け監督方針の中で、こういった問題意識をベースとして、監督方針で定めたモニタリング調査等を通じて、ファンドに関する全体的な動向を把握するということを、まずやっていきたいと思っていますし、これを契機として業者との対話を進めて、実態を把握する、調査、分析する、その中から将来リスクの顕在化が見込まれるような要素を早めに見つけだしていくと、こういった対応に努めていきたいというふうに思います。

問)

個別の金融機関のことですが、昨年の6月に不払い問題で行政処分を受けました三井住友海上の件ですが、先週、前会長と前社長が7月に顧問として復帰しているということが明らかになりましたけれども、不祥事の責任を明確化することで引責辞任した首脳が、また1年で復帰しているということで、行政処分というのは一体何なんだということが、業界内からも聞こえてくるわけですけれども、これについて、長官はどのように見ておられますでしょうか。

答)

今、ご指摘いただいた報道があったことは承知をいたしておりますけども、個別会社の人事に関する事柄でございますので、コメントは差し控えたいと思います。いずれにいたしましても、大事なことは保険金の不払い等の問題について、各保険会社が不払い等の再発防止に向けた不断の取組を行っていただいて、業界に対する信頼をできるだけ速やかに回復するということであろうかと思います。金融庁といたしましては、保険金の不払い問題にかかる各社の対応を引き続き適切にフォローアップしていくということでございまして、このことが、とても大事だと思っておりますし、今後、各社が利用者保護、利用者利便の向上に向けた取組みにおいて、創意工夫を凝らして、ベストプラクティスで競いあっていただきたいというふうに思っているところであります。

問)

新大臣なんですけれども、先ほど、11ヶ月ほどでしょうか携われておられまして、これまでの山本前大臣との路線の重なり具合とか含めまして、もう少し何か新大臣のご印象があれば、教えていただきたいのですが、如何でしょうか。

答)

これから、渡辺新大臣とも直接お目にかかって新大臣のご方針なり何なりというものを伺うという、これからの局面もございますので、まずは、ある程度気心は知れておりますし、そう意味では心強いという面はございますが、まずはそういった新大臣との直接のご指導をいただく機会を経てから、ということになろうかと思います。

(以上)

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