佐藤金融庁長官記者会見の概要

(平成19年9月19日(水)17時02分~17時27分 場所:金融庁会見室)

【長官より発言】

私の方からは特にございません。

【質疑応答】

問)

三菱UFJフィナンシャルグループ傘下のユニオン・バンク・オブ・カリフォルニアが先日、米司法省等から制裁金や課徴金の支払いを命じられました。三菱UFJフィナンシャルグループは過去にも規制当局から、改善命令を受けていますが、日本の大手銀行グループがこうした処分を受けたことをどう受け止めていらっしゃるでしょうか。また、金融庁としてはこの問題にどのように対応していくのでしょうか。

答)

三菱東京UFJ銀行の米国銀行子会社であるユニオン・バンク・オブ・カリフォルニアがマネロン防止対応に関して、米国通貨監督庁等、および米国司法省より業務改善命令や課徴金などの処分を受けたということは、極めて遺憾でございます。三菱東京UFJ銀行におかれては、国際的に業務展開を行う我が国の主要な金融機関として、その米国拠点に対する米国当局の指示を真摯に受け止め、業務改善が行われるよう当該米国拠点の管理・監督を適切に行っていただく必要があるというふうに思っております。なお、一般論として申し上げれば、邦銀の海外拠点の業務について、外国当局の行政上の処分等がおこなわれた場合には、本店の海外拠点に対する管理、監督に問題がなかったかどうか、母国当局として確認をしていくことになります。

問)

今日、大臣の私的懇談会のチームができまして、初会合がありましたけれども、今日座長の会見で、サブプライムローン問題で、日本に対する影響というのは限定的であるという見解を述べていらっしゃいましたが、今のところ、長官はどのように日本に対する影響があるとお考えでしょうか。

答)

この問題については、これまでも議論されていますけれども、現時点において、我が国の金融システムに深刻な影響を及ぼすような状況にあるとは考えておりません。ただ、この問題は非常に大きな広がりを持っておりますので、今後とも、事態の推移については、注意深く見ていく必要があるというふうに思っております。

問)

これぐらい影響があるのではないかという数字を億円単位で出している金融機関もありますけれども、全体的に見る金融庁としては、金額面で言うと色々な数字が飛び交っていると思うのですが、規模的にはどれくらいのものが想定されるのでしょうか。

答)

おそらく、各金融機関におけるディスクロージャーというのは、それぞれの金融機関において、適切なタイミングで公表をしていくという流れが、今後あるだろうと思います。典型的には、欧米等でもそうですけれども、決算発表というような機会があろうかと思います。日本の金融機関トータルで捉えたときに、いわゆるサブプライム関連の金融商品、ABSであるとか、CDOに対するエクスポージャーがどのくらいかということについては、これは以前もお答えをしておりますけれども、我が国の金融システム、この全体の業務の規模に照らしたときに相対的に小さいものであるということで、そのこともあって、これまでも我が国の金融システムに深刻な影響を及ぼすような状況にはない、というようなことを申し上げているということであります。

問)

額については、当局からは言及は特にはしないという方針でしょうか。

答)

(はい。)

問)

以前もお話しがあった格付機関への対応ですけれども、IOSCOの会議で海外の監督当局と連携した話し合いがあったと思うのですけど、報告を受けている範囲内で、どういう話し合いがあって今後どうなるかということをお聞かせいただけますか。

答)

このIOSCOにおける議論とか、国際的連携を保った上での調査ですとか、そういう話は、進行中、あるいはこれからの話でありますので、その中身について、現時点で私から具体的なことを申し上げるのは困難であるということかと思います。先般もお答えいたしましたけれども、格付機関との日常的なやりとり、情報交換の中で、格付業務についての情報収集をできるだけ行っているということであります。

問)

各社が生命保険の不払い調査を現在やっておりますけれども、(期限とされる)30日が日曜日であるということと、調査をしても終わらないケースもでてくると思うのですけれども、そういう回答が含まれる場合はどういう対応をされるのでしょうか。

答)

ご質問の生命保険会社のいわゆる保険金の支払い漏れについての調査ですけれども、現時点では、各社が自ら設定した調査完了時期に向けて鋭意調査を継続しているという状況でございますので、現時点でその調査の進捗状況などについて、当局としてのコメントは差し控えたいと思っております。各社においては、責任を持って一刻も早く調査を完了し、実態を解明し、かつ適切な顧客対応を急いでいただきたいと思っておりますし、それに加えて十分な原因分析を行っていただいて、実効性のある再発防止策を講じるということも重要だと思っています。金融庁としては、各社からの報告があればその報告内容を精査、分析し全体としての実態を把握していくというふうに思っております。

この関連で、金融庁が統一的な調査対象範囲、あるいは連絡の取れない顧客に対して何回連絡を試みればよしとするとかいった実施上の細部の基準について示すべきではないか、といったような議論も一時期あったかと思いますけれども、この点については、つまり調査の対象範囲とか契約者への保険金等請求要請等については、画一的にやり方を揃えるということではなくて、大事なことは、各社が保険金等を適切に支払うための実効性のある取組が行われるということだと思います。大事なことはそういうことであって、常識的に考えて、各保険会社で、いわばベストエフォートとして一定の確認のための努力を行ったということであれば、そういった実態については、「ベター・レギュレーション」の中で「ルールベースとプリンシプルベースの最適の組合せ」ということを申し上げていますけれども、そういった大きなプリンシプルに照らして判断をしていくということだと思います。詳細な具体的な実施方法について、どこかの部分で他の社に比べてちょっと簡素であったということだけをもって、何か金融庁が目くじらを立てるというような性格のものではない、というふうに思っております。大事なことは、各社が保険契約者の保護、また支払い漏れを防止する、こういった観点に立って、できるだけきちんとした実態把握を行うということでございますので、そういう一番大きな目的に照らして各社が十分な努力をやっていただいているかが重要なのだろうと思っております。

問)

9月末までというふうに各社が設定している場合は、30日が日曜日なのですけれども、10月の週明けと言うのはよろしくないということなのでしょうか。

答)

その辺は、常識で判断していくのだろうと思います。

問)

保険の窓販の関係ですけれども、昨日金融審議会で議論がありましたけれども、これまで検討されてきた圧力販売などの弊害防止措置ということについては、これまでも議論をされてきたし、報告もあったかと思うのですけれども、保険の不払い問題を背景にして例えば、銀行と保険会社の責任分担とかを考えるべきではないか、という意見が一部出されていますけれども、こういった不払い問題を背景にしてまたいろいろ考えねばならないとするのか、あるいは、そういう問題はあまり関係ないので、あくまでその弊害防止措置というふうに限って検討を進めて最終判断されるのか、この辺りはどういうふうに考えていらっしゃるのでしょうか。

答)

若干、復習も含めて申し上げますと、本年12月22日からのいわゆる銀行における保険の窓販の全面解禁の実施に向けて、先行解禁を行った平成17年12月以降、銀行等による保険募集の実施状況と弊害防止措置の実効性等を検証することを目的として、モニタリングを行ってきたわけです。昨日、審議会第二部会に報告したモニタリング結果は、ご案内のとおり、例えば「一部の銀行員による事務疎漏を除いて、概ね銀行等において、遵守するための体制整備が行われたと考えられる。また、問題事例の発生状況に鑑みると、弊害防止措置は有効に機能していたものと考えられる」ということでございます。また、「当局検査における指摘事例や、不祥事の届出によって、一定程度の問題事例が発生していたということは認められるが、いずれもその後銀行等においても改善が図られている」ということでございます。また、「銀行等の保険募集に関して、行政処分を行った事例はなく、関連した訴訟提起も極めて少ない」ということでございます。したがいまして、モニタリング結果に照らせば、基本的には内閣府令で定めている全面解禁期日の見直しの要件とされております「保険契約者等の保護のために必要な場合」、こういうケースには該当しないというふうに考えられるわけであります。昨日の金融審議会でご指摘のような意見が出たのは事実でございますけれども、金融庁としては、今後、関係者等からの意見も十分に聞くとともに、モニタリング結果等について関係者に十分丁寧に説明し、各方面の理解が得られるように努めていきたい、これが現在の私どもの立場でございます。

問)

サブプライム問題に戻ってお話を伺いたいのですが、イギリスの方では中堅銀行の取付け騒ぎが起き、政府が預金全額保護を行ったということで、この問題が金融システムの中で顕在化してきたということなのですが、先程おっしゃられたように、日本の金融システムには深刻な影響を及ぼさないということは、地域金融機関も含めてそのような認識でいらっしゃる、という理解でよろしいでしょうか。

答)

地域金融も含めた日本の金融システム、という意味でお話をしております。イギリスのノーザン・ロックのケースですけれども、英国の当局が、資金調達が困難となっていたノーザン・ロックに対して、流動性支援のための緊急融資、あるいは、預金の全額保護をするといったことが発表された、ということかと思います。

このケースを見てみますと、何故、こういう流動性の問題が顕在化したのか、ということについての理由ですけれども、公表資料等で見てみる限りは、二つの大きな理由があると思っております。

一つは、この銀行は、貸出サイドといいますか、資産サイドでいいますと、住宅ローン業務に特化していて、このための資金調達を預金よりはむしろ短期の市場性資金に大きく依存していたという、特徴のあるビジネスモデルであった、ということが一つ。そしてもう一つは、サブプライム問題を契機として、アメリカもそうですけれども、ヨーロッパの短期金融市場が非常にタイトになってきていると、(期間の)長い資金の出し手がなかなかいないと、こういう状況にあったと。

この二つの要素が組み合わさることによって出てきた問題であるかなというふうに思っております。こういう認識に立った上で、我が国の状況を見てみますと、我が国の場合は、預金取扱金融機関は融資業務において住宅ローン以外の融資にも幅広く取り組んでおりますし、また、流動性の高い有価証券の保有もそこそこの高い水準にある、というケースが多い。これは資産サイドですけども、負債サイド、調達サイドに関して言えば、資金調達の多くを預金により賄っている。預かった預金の全てを貸出に回しきれないぐらいの預金が集まっている、というケースが多いということですね。それからもう一つは、マーケットの状況ですけれども、米国、あるいはヨーロッパのマーケットと異なりまして、我が国の円の短期金融市場は、概ね、安定的に推移をしているということでありまして、これら二つの原因に則して考えて、日本の状況は明らかに大きく異なる、ということが言えようかと思います。こういうことで、ノーザン・ロックで顕在化したような問題が、我が国の金融システムで生じる可能性は、現時点では極めて低いというふうに認識をしております。サブプライム問題に起因して、我が国の金融システムが深刻な影響を受けるような状況にはない、という認識には変わりがないということでございます。いずれにせよ、この問題は、今後とも推移を注意深く見守っていく必要がある、という点にも変わりがないということでございます。

問)

日本の金融システムの中で、サブプライム関連のものは相対的に小さいということだったかと思うのですが、昨日辺りからアメリカの大手証券会社の決算が始まり、実際にこういった資産を、どのように評価するかという問題が生じていると認識しているのですが、いずれ、日本の金融機関も情報開示をする時になった段階で、ある種の統一的な物差しになるようなものが必要とお考えになっているでしょうか。もし、お考えになっている場合には、当局としてどのような働きかけをしていくつもりがあるのか、この辺について教えていただけますでしょうか。

答)

個々の金融商品のプライシングというのは、市場で取引されているものは市場で価格が決定され、相対で取引されているものについては取引当事者間で値段が決まってくる、ということだと思います。その際に、当然のことながら、既存の会計ルール、会計基準等々に則って、コンプライアンスを維持しながらプライシングを行っていく、ということは当然であろうかと思います。現在の状況というのは、サブプライムローンを原資産として含むような証券化商品について、そのプライシングの信頼性が失われている、という状況でございます。この状況を打開していくことは必要不可欠ですが、これを打開していくには、さまざまな局面、つまり、住宅ローンを融資するオリジネーションの段階、そして、オリジネーションの段階で確認されたさまざまな情報、例えば、その段階で確認された信用リスク、等々が証券化商品を組成する時にきちんと織り込まれているのかどうか、また、そういった証券化商品について格付を取得する際に、格付機関との間で十分な情報交換が行われるのかどうか、格付機関においてそういう情報を聴取した上で、しっかりとした格付を行えるような枠組みを作っているのかどうか。また、最終的には、そういった証券化商品を購入する投資家、あるいは金融機関が投資家になっているケースもありますけれども、そういった投資家が、例えば格付だけに過度に依存するのではなく、証券化商品の中身までよく見た上でリスクを評価し、購入をしているのかどうか。それぞれの局面における取引当事者において、きちんとしたデュー・プロセスがとられる、ということが大変大事だろうと思います。そういった中で、プライシングの信頼性というものが回復していく、ということではないかと思っております。

問)

ノーザン・ロックの件なのですけれど、そもそもペイオフの規制等があるかと思うのですが、今回、緊急的ということで全額保護することになりましたけれど、監督当局として、今回のイギリス監督当局がとった措置をどう見てらっしゃるでしょうか。また、日本においても同じようなルールがありますけれど、同様の危機があった場合に、同じような対応をとるということがありえるのでしょうか。

答)

外国で起きた個別金融機関の問題であり、かつ、そのことに対応する外国当局の対応でございますので、私の立場から、何らかの意見を申し上げるということは差し控えたいと思います。ただ、英国の当局自身が、ノーザン・ロックはソルベンシーの問題ではなくて、流動性、リクィディティーの問題であると言っているということ。ここが、一つのポイントになるかなというふうに思っております。

(以上)

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