佐藤金融庁長官記者会見の概要

(平成19年10月11日(木)17時01分~17時24分 場所:金融庁会見室)

【長官より発言】

こんにちは。私の方からは特にありません。

【質疑応答】

問)

先週末に生命保険会社が保険金不払いの調査結果を発表いたしまして、4月時点の調査に比べて、全体の不払い件数は約120万件、金額も約910億円に上ったということですが、この件数や規模についてどう受け止めていらっしゃるでしょうか。また、調査結果を踏まえて、今後、金融庁としてどのようなスタンス、あるいはスケジュール管理で、この問題に取り組んでいきますでしょうか。

答)

生命保険会社における保険金等の支払い漏れ調査ですが、先般、10月5日に全38社のうち19社が9月末で調査を完了したということで、当局に報告書が提出されたということです。この結果として、4月13日、当初の報告期限において既に調査を完了していた4社と合わせますと、合計23社が調査を完了したことになります。各社の公表をベースにいたしますと、なお、調査継続中の会社15社がありますけれども、これも含めて全38社ベースの現時点での支払い漏れの件数・金額は、今、ご質問にもありましたように、約120万件、総額で約910億円の規模になっております。この38社ベースで見たときに、4月の時点に比べて、件数で約76万件、金額では約551億円増加しているということであります。今回の報告で件数・金額が増加した主な要因としては、三大疾病特約を含む保険金等の請求案内漏れといった要因、それから、失効返戻金等に関しての各社の調査が進捗した要因が大きいのではないかと承知をいたしております。

いずれにいたしましても、相当に膨大な件数及び金額になっているということで、このことは、この問題の広がりを示すものでありまして、こういうことがどういう時期に起きたのかということは別といたしまして、このこと自体は大変遺憾なことだと思っております。他方で、現在の状況というのを全体として見ると、生命保険各社においては、これまでの不払いや支払い漏れの問題に対する一連の対応、これは、金融庁からの様々な行政対応もありましたし、それを受けて、あるいはそれを受けない段階での自助努力というものもありますけれども、生命保険会社各社における取組みの中で、支払い管理態勢等についての業務改善は相当に進んできているというふうに考えております。そういった業務改善を進める中で、徹底的な調査が行われた結果として、今回、件数・金額が増加したという側面も否定はできないのではないかと思っております。

金融庁としては、今後、まずは、各社からの報告内容をしっかりと精査・分析を行うということが必要、重要だと思っております。この精査・分析に当たっては、単に支払い漏れの件数や金額が多いか少ないかということだけではなくて、例えば、業務執行態勢の改善の結果として厳しい調査が行われて把握されたというような性格を持っているのか、あるいは業務執行態勢の改善が未だ行われずに、改めてこういった問題が生じ続けているという実態なのか、こういった点も含めて実態把握をしていきたいというふうに思っています。先ほどもちょっと申しましたけれども、今般の調査に関しては、現時点では調査が完了していない保険会社もありますから、金融庁としては全社の調査結果を踏まえて、これまで同様、出来るだけ速やかに、今申し上げましたような行政上の対応をしていきたいと思っております。

問)

12月22日に予定されている銀行窓口への生保の窓口全面解禁の予定日が、予定日まで、あと2ヶ月余りとなっておりまして、現在、金融審議会の場等で議論、調整が行われておられますが、金融庁としては、この問題の結論といいますか、どのような形で決着させるお考えでしょうか。さらに、これまでの金融審議会や与党の部会などを踏まえて、現在の金融庁のスタンスはどのようなものでしょうか。

答)

保険商品の銀行窓販の全面解禁ということについては、銀行等、あるいは保険会社における準備期間というものがある程度必要ですから、その点を考慮いたしますと、できるだけ早く最終的な決断をする必要があるというふうに思っております。金融庁としては、12月の全面解禁に支障はないという現状認識に変わりはありません。いずれにいたしましても、今後とも関係者等からの意見を十分に伺うとともに、当庁のモニタリング結果等を丁寧に説明して、各方面の理解が得られるように努力してまいりたいということであります。

問)

生保の不払いですが、各社の会見でも、例えば不適正な契約、名義貸し的なことも見つかって、個別的には財務局等に報告しているというような話もあったのですが、こういったこの不適正な契約の取扱いについての問題は、深刻度というのは、このあたりはどのように見ていらっしゃいますか。また、こういった点について、改めて整理したり、調べたりするというような必要性をどのように見ていますでしょうか。

答)

先ほども申しましたように、不払い・支払い漏れの件数・金額だけではなくて、その背景にある実態、あるいはそういった不払い・支払い漏れが大規模に生じた原因というのを含めて、これから実態を検証していくことが必要だと思います。その検証の結果として、様々な原因というものが、一般論としてはいろいろと考えられるわけですけれども、現時点では、これから調査をしていく、これから横串を通しつつ各社の実態を見ていく、ということですから、この点に関して予断を与えるようなコメントは差し控えさせていただきたいと思います。

問)

先ほどの行政対応のご検討の件ですが、3月の(行政処分の)基準もございますが、先ほどの長官のお話からですと、規模は相当大きなものであるというご認識があったのですが、事案の重大性だけではなく、改善がしっかりなされていれば、場合によっては、処分基準に該当しないという総合的な判断になることも、これはあり得るのでしょうか。

答)

将来における行政対応の話ですから、それについて予断を与えるようなコメントは差し控えさせていただきたいと思います。この問題から離れて、全くの一般論で申し上げれば、ご案内のとおり、行政対応の考え方を公表しているわけで、その中では、ご案内のとおり、まずは、生じた事案、生じた事柄の重大性、悪質性というものが、どの程度であったのかということをよく検証するということも必要でしょうし、他社の事例、あるいは過去の事例との比較をするということも大事だと思います。その際には、当然のことながら顧客が被った被害の大きさ、あるいはそのことが、金融機関の側で意図的に行われていたのかどうか、それとも、たまたま現場の個別の営業担当の方が不適切な対応をしただけであって、組織性はなかったという場合なのか、それとも会社ぐるみでかなり組織的に行われているのかということ、等々の要因にブレイクダウンをして、その悪質性、重大性というものも見ていくということです。さらに加えれば、そういう悪質な事例が長期間にわたって放置されていた、長期間続いていたのかどうかということも大事な点です。いずれにせよ、こういった要素を勘案して、重大性、悪質性というものを整理するということが一つの大きな柱です。それからはもう一つは、これも今ご指摘いただきましたように、そういう事態を認識した会社自身が、その問題に対して原因究明をきちんと行い、その原因究明に即した再発防止策をきちんと講じている、あるいは被害を被った顧客に積極的に、原状回復等を含めて行っているかどうか、こういった点も非常に重要な点であります。つまり、金融行政の一環として行われる行政処分というのは、最終的には、問題がある金融機関において抱えている問題を早く改善をしていただいて、業務執行態勢、コンプライアンスの態勢、全体としてのガバナンス、これを改善していただくということが最終目的ですから、当然のこととして、そういう取組が自主的に、かつ、抜本的に行われているかどうかという点も併せて、重要な考慮要素であるということであります。全くの一般論として申し上げました。

問)

4月の時点に比べて、失効返戻金の進捗状況が進んだということを挙げておられましたけれども、今後、横串を通していく作業の中で、各社の対応が分かれている失効返戻金の扱いについて統一していくというお考えなのでしょうか。

答)

今後の作業についてあまり細かいことを現時点で申し上げるべきではないと思いますが、金融庁として調査を要請した基準というのは、失効返戻金に限らず、全ての保険金、種別について追加的な支払いを要するものであるのかどうかという基準なのです。追加的な支払いを要するものの件数、金額の報告を求めているということです。追加的な支払いを要するものであるかどうかの重要な判断要素の一つは、これまで会社の方から契約者、顧客に対して十分な請求案内を行ってきたかどうかということが一つのメルクマール(判断基準)になるのだろうと思います。そのようなことを含めて各社からの報告内容をしっかり精査・分析していくということになろうかと思います。

問)

証券優遇税制の件なのですけれども、二つお伺いしたいのですが、一つが、国会でも議論がありますが、この証券優遇税制による年間の減税額の効果というのをどれくらいと見ていらっしゃるかという数字があれば教えていただきたいのと、もう一点が株価の対策として元々は導入されたものだという議論になることがあるのですが、この点について、金融庁として、今回、恒久化ないし延長を要望される中で、市場活性化の意味合いというか、これを止めてしまうと株価が落ちるのではないかという論点をご主張されるおつもりがあるのかを伺いたいと思います。

答)

税収そのものへの影響については、税務当局がおっしゃっていらっしゃる、あるいは税務当局において試算がなされるものと理解をしておりますので、現時点で私から具体的、定量的なことを申し上げる材料は持ち合わせていないということでございます。それから、株価への影響ということを重視するかどうかということなのですけれども、株価というのは、様々な要因が影響して形成されるわけですから、単純な因果関係を決め付けるということは、金融庁としては避けた方が良いだろうと思っています。

我々がこの証券税制に非常に高い優先順位を付けているのは、日本の金融システム全体の中で、一言で言えば「貯蓄から投資へ」という流れが、かなり進んできているという面もありますけれども、まだまだ道半ばという現状でありますので、これをきちんと進めていくことによって、広く国民の各層が投資家としてリスクテイクを行い、そのリスクテイクの報酬として経済成長の果実にあずかる、こういう金融仲介システムというのがあって良いのではないかという基本認識からです。経済成長が全体として継続する中で、成長の果実を広く国民が享受するためには、1,500兆円を超える個人金融資産があるわけですけれども、その個人金融資産の大宗が極めて低利の預金に偏っているという状況では、成長の果実を享受し難いという面があるのは事実だと思います。リスクテイクを伴う―もちろんリスクテイクに当たっては、しっかりとした投資判断が必要でしょうし、公正、透明なマーケットが大前提でありますし、一人ひとりの投資家の自己責任ということも必要となるわけですけれども、そのようなことを前提として、―リスクテイクが行われることによって、いわば成長の果実が報酬として返ってくるわけです。例えば、企業、株式会社からの配当率を見ても、預金金利よりは相当高いということもあるわけですし、そういう企業活動、あるいは国全体の経済活動全体の中の成長の果実を何らかの形で広く国民が享受する、そういう目的のためにも「貯蓄から投資へ」という流れはさらに進めていくことが有意義であろうと思っています。さらに申し上げれば、今、国全体としての政策課題のうち、かなり高い優先順位が置かれている、我が国の金融・資本市場の国際競争力強化と、我が国の市場をさらに透明、公正で活力のあるものにしていくという政策課題に照らしても、「貯蓄から投資へ」という流れは、さらに進めていく必要があるということであろうかと思いますし、これが進むことによって、我が国の金融セクターが更なる成長を遂げて、その結果として付加価値が生まれるという側面もあるのではないかと思います。

問)

今日、イオン銀行への免許がありました。会社によると、8年越しの悲願達成とおっしゃっていらっしゃいましたが、期待される役割、監督上の点でお考えがあれば教えていただきたいと思います。

答)

本日、イオン銀行に対して銀行業の免許を交付したということであります。

一般論で申しますと、多様なチャネルができて、消費者ニーズに合った多様な金融サービスが提供されるということは、全体として我が国金融の活性化、あるいは利用者利便の向上ということに繋がるということであります。イオン銀行におかれても、質の高い経営管理、質の高いリスク管理やコンプライアンス態勢を確立していただく中で、多様性を持った質の高いサービスを顧客に対して提供していっていただきたいと思っています。多様性という意味では、いわゆる大手小売店におけるインストアブランチといったものを本格的に展開されるということで、そういう意味では、一つの新しいビジネスモデルであるのかなという気はいたしております。そういった点を含めて顧客、利用者の側にとって信頼がおけて、かつ利便性の高いサービスが提供されることを期待したいと思っております。

(以上)

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