佐藤金融庁長官記者会見の概要

(平成19年11月19日(月)17時02分~17時23分 場所:金融庁会見室)

【長官より発言】

私の方からは特にありません。

【質疑応答】

問)

金融専門人材に関する研究会の第1回会合が今日から始まりました。今回の話合いを始めるにあたって、日本の金融分野においての人材確保の現状をどのようにお考えかということが一点。大臣の持論という側面があるかと思いますが、この時期に検討を始める背景を、また、具体的にどのような方法で、どういった金融のプロを育てるのかと、弁護士とか公認会計士とはまた別の人たちになるのでしょうか。また、資格についてもお聞かせください。

答)

ご案内のとおり、金融が高度化、複雑化しているという状況でございます。特に、グローバルな市場間の競争が激化しているということでございまして、こういう中で、我が国の市場が国際的な地位を向上させるためには、金融に関する高度な専門知識やスキルを有する人材の厚みを増すということが不可欠な状況にあると考えております。現状が十分であるという認識は、全く持っておりません。こうした論点につきましては、渡辺大臣から提示された問題意識ももちろんございますけれども、これに加えまして、経済財政諮問会議のワーキンググループ、更には金融審議会のスタディグループの報告等でも指摘されているということでございます。折しも、本年末までに「金融・資本市場競争力強化プラン(仮称)」、これを金融庁において年内に策定するということが「骨太の方針2007」で明記されているところでございまして、金融専門人材の育成についても、この競争力強化に資するということで、今般、研究会を開催することとしたところでございます。お尋ねの、どのような方法で、どのような資質を有する人材を育てるか、あるいは弁護士や公認会計士との関係をどう考えるか、更には、資格制度等の具体的な内容をどうするのか、これらの点については、今後研究会において議論が行われることになると考えております。

問)

現時点では、その点のイメージというのは、まだ、はっきりしていないのでしょうか。

答)

まさに、これから研究会の場でご議論をいただくテーマであると思いますので、私どもの方で何か予断を持つということは避けた方がよいかと思います。

問)

足利銀行の受皿選定についてですが、今週木曜日、22日に候補グループから金額の提示があるかと思いますが、現時点で今回の中間決算の業績等を見ますと、足利銀行の経営の現状はどのように改善されているのか。また、今後提案の中身次第だと思いますが、年内に一つの受皿候補の選定がスケジュール的に可能な状況なのか、また、来年の4月の新体制スタートというのができる状況にあるのか、このあたりの見通しをお聞かせください。

答)

まず、現状評価ですが、足利銀行の経営の状況については、同行は平成15年11月に破綻した後、新しい経営陣の下で、平成16年度から18年度までの3ヵ年を対象とする「経営に関する計画」というものを策定し、この計画に沿って、抜本的な経営改革の推進、中小企業等の再生に向けた取組など、様々な施策を進めてきたということであります。

平成19年3月期の決算によって、この「経営に関する計画」の3年間の実績が出たことになりますが、計画については、目標を上回る実績を上げております。収益基盤の再構築、資産の健全化等に向けた各種施策についても、着実にその成果がでてきていると評価をしております。足利銀行におきましては、来年の3月期、平成20年3月期の業務純益についても、引き続き400億円を超える水準を見込んでいる旨公表をされているところであります。金融庁としては、引き続き、この同行の取組について適切にフォローアップしていきたいと思っております。

それから、スケジュール感のほうですが、受皿選定作業に関する今後の見通しはご案内のとおり、11月22日を期限として、受皿候補から譲受条件等の提出を受け、第三段階の具体的な審査を行っていくことになります。したがって、現段階で最終的な受皿の決定時期や受皿への譲渡時期について、確たることを申し上げられないことをご理解いただきたいと思います。

いずれにいたしましても、金融庁としては、第三段階においても、引き続き三つの基本的な審査基準、すなわち、金融機関としての持続可能性、栃木県を中心とする地域における金融仲介機能の発揮、そして、公的負担の極小化、これらに則り、厳正かつ公正な審査を行うということが大事だと思っております。

問)

証券優遇税制についてですが、今週の20日、明日、政府税調で基本的に廃止の方向が盛り込まれるかと思いますが、一方では、自民党、その他の議論は、また違う状況が見込まれていると思います。こうした、証券税制の今後のあり方、今回の衆参のねじれということも踏まえて、具体的にどのような議論を進めていくのか、着地点をどうすべきなのかということの見通しと、損益通算の拡大ということが盛り込まれていますが、この準備について、金融庁並びに業界の現状の準備状況についてもお聞かせください。

答)

政府税制調査会において、平成20年度税制改正に向けた最終的なご議論が行われているというように承知しております。金融庁としては、証券税制にかかる要望を最重点要望としているところでありまして、引き続き、この実現に向けて、各般の関係者のご理解が得られるように努めてまいりたいと思います。それから、金融商品の間の損益通算の範囲の拡大に向けましては、システムの対応を含め、業界においても検討が行われていると承知しておりますけれども、最終的には、この証券税制を巡る平成20年度税制改正の議論の帰趨が明らかになることが必要であるというふうに考えております。

いずれにいたしましても、私どもで要望している証券税制というのは、株式投資あるいは株式投資信託への投資というものが広く国民が参加する形で構築されることによって、我が国における経済成長の成果を国民一人一人が広く享受できるように持っていくということでございまして、このような投資は我が国における金融仲介のチャネルとしても非常に重要ですし、また、国民一人一人が経済成長の果実を享受しうる枠組みとしても重要なものと思っております。

問)

確認ですが、損益通算の件ですが、業界において検討が進んでいるということですけれども、これは特定口座という枠組みを使ってやるのか、個別で申告をするような形になるのか、そのあたりのイメージはどうなっているのでしょうか。

答)

特定口座がある程度定着をしてきて、これを有効に活用するということが一つの重要なポイントになるとは思いますけれども、いずれにいたしましても、全体の税制の議論の帰趨が明らかになることが大事であると思っております。その明らかになったところで、全体のシステムの検討というものを進めることができるようになるのではないかと思います。

問)

足利なのですが、今週の木曜日に向けて、具体的なスケジュールは申し上げられないというお話でしたが、当局として目指す時期、例えば年内には終わらせたい、年度内には最終的には終わらせたいなど、目指すべきものはあるのでしょうか。

答)

一般論として、できるだけ早く結論を出すということは大事なことであろうと思います。他方で、出てきた譲受条件等の内容を厳正かつ公正にしっかりと見ていく必要があるということでございまして、この点について妥協をすることは許されないと思います。必要なプロセスをきちんとこなしていくために必要となる時間というものは、いわば結果として出てくるものでありますので、今この時点で、ご質問のようなスケジュール感について何か申し上げるのは難しいところでございます。

問)

銀行の決算がいろいろ出てきていますけれども、公的資金注入行について、銀行セクターの株が下がっている関係もあって、含み損が増えているところも出てきています。取りはぐれているのではないかという批判も一部あるようですが、改めて現状についてと、公的資金がまだ残っていて、返済を求めている関係について求められることをお願いいたします。

答)

昨今の株式市場の動向と公的資金注入行からの公的資金の回収の関係でありますけれども、基本的には各注入行において、それぞれの財務状況や自社株式の市場での評価等を踏まえて、自らの資本政策に基づいて返済方法やタイミングについて検討をなさっているのではないかと承知をいたしております。

他方、返済を受ける当局の側としては、普段から申し上げている三原則、預金保険機構のいわゆる三原則に沿って判断するということでございます。すなわち、返済後においても金融機関の財務の健全性がきちんと維持されること、そして国民負担が回避されること、国民負担を最小化すること、市場への返済に伴って市場への悪影響を回避すること、の三点でございます。この三点に沿ってこれまでもやってまいりましたし、今後もこういった考え方、原則に沿って判断をしていくということであります。

いずれにいたしましても、金融庁といたしましては、各銀行が今後、収益力の向上や企業価値の増大にしっかり取り組んでいただくことが何より重要だと考えております。

問)

サブプライム関連なのですが、常々、金融システムには大きな影響はないとおっしゃっていらっしゃいましたが、銀行の決算で一部サブプライムの評価損であるとか、赤字等が影響で出ているということがあると思いますが、現状の認識としてサブプライムの影響、今後の見通しをどうお考えでしょうか。

答)

この問題につきましては、これまでも何度かお答えしているところですが、先週以来、平成19年の9月期の中間決算の発表の中で、このサブプライム・ローンに関連した情報開示がなされているという点がいわば新しい材料であろうかと思います。いくつかの決算発表の中で、サブプライム・ローンに関連した損失をこの9月期に計上するという金融機関がございましたし、また来年の3月期、通期の業績予想において、この後半の時期において、損失が拡大する見通しを示している金融機関もあるということでございます。

これらを踏まえた上での現状認識ということでございますけれども、これまでも申し上げてきていることですけれども、サブプライム・ローンの問題が、サブプライム・ローンに直結したマーケットだけではなく、他のより広いクレジット市場に波及して、あるいは為替市場や株式市場も影響を受けているということで、日本の金融システムへの影響ということも、それに応じて出てきているわけでございまして、いずれにせよ、今後の市場動向等を注意深く見守る必要があるという点も従来と同じでございます。けれども、改めて申し上げますと、将来に向かっての話ですから断定的な言い方は差し控えたいと思いますけれども、現時点において日本の金融システムに深刻な影響を与えるような状況にあるとは承知をいたしておりません。この点について変更はありません。その理由でございますけれども、一つには、日本の金融システムは不良債権比率の低下に見られるように、全体としてその健全性が高まっていること、二つ目には日本の金融機関のサブプライム関連商品に直接関連するリスクというのは、全体として、その金融機関の業務の規模あるいは期間利益の規模、さらには自己資本の厚みなどに照らして相対的に限定をされているということでございます。

いずれにいたしましても、金融庁としては、サブプライム・ローンに限らず、金融機関が適切なリスク管理等に取り組むことが重要だと考えております。このような観点から日常的に金融機関からのヒアリングを行っているところであります。今後とも、こうした取組を通じて幅広い観点から金融機関のリスク管理状況をモニターしていくと同時に、金融市場、マーケットの動向についても注意深く見ていきたいと思っております。

(以上)

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