佐藤金融庁長官記者会見の概要

(平成19年12月10日(月)17時00分~17時21分 場所:金融庁会見室)

【長官より発言】

私の方からは特にございません。

【質疑応答】

問)

今、差し迫っている課題の証券税制ですが、与党の大綱が出るのにあと数日と、いよいよ大詰めですけれども、先週、金融庁として案を提出されていると思いますが、特に譲渡益について言うと、3,000万円以下については10%、それを超えるものについては申告をして20%になるという案でしたが、この3,000万円というのは何から出てきた数字なのでしょうか。また、今後、財務省と協議する中で、当然、この金額を下げていくという方向にいくと思いますが、その際に何を基準にどういう考え方を基に、決めていくことになるのでしょうか。

答)

証券税制については、「貯蓄から投資へ」の流れをより確実なものにしていくということで金融庁としては臨んでいるところであります。ご質問の譲渡益課税につきましては、大口投資家ではない一般投資家について、10%の税負担を基本的に維持しつつ、かつ、簡素で一般投資家に実質的な事務負担、実務面の負担のかからない納税の仕組みというのを構築することが重要だと思っております。こういった観点から、金融庁としての案を提示させていただいたというところでございます。まさに、今、与党の税制調査会等を中心として、関係者の間で議論が大詰めを向かえている段階でございますので、具体的な各論についてコメントを申しあげることは差し控えたほうがいいかと思っております。ただ、この大口投資家ではない一般投資家の立場にたった税制の構築と、こういう基本的方向性については、関係者とある程度共有することが可能であるのではないかと思っておりまして、こういった点も踏まえながら、金融庁としては引き続き、関係者のご理解が得られるように全力を尽くしてまいりたいと思っております。

問)

3,000万円という数字は、大口に当たるのか、例えば、2,800万円とか2,500万円だと一般と言えるのか、3,000万円というとかなり多くの金額、株券を持っていなければいけないと思いますが、または、相当値上がりする人達もいるかもしれません。基本的にはかなりの母数を持っていないといけないということになりますが、この3,000万円は大口なのでしょうか。それとも小口の分岐点と言えるのでしょうか。

答)

具体的な金額水準をどこに設定するかということについては、それぞれのお立場からご議論があるかと思います。ただ、私どもとしては、この大口投資家については、それなりに大きな譲渡益を得られた場合に、自ら申告をして、そういった実務面での負担がかかるということでもやむを得ないというふうに考えたわけであります。他方で小口の投資家については、支払調書等のことも含めて、自らどれくらいの譲渡益があったのかという作業を行ったうえで、申告を行うというようなことを義務付けられれば、それは実務的に相当に大きな負担となりますので、そこは特定口座を活用した仕組みといったようなことでお願いをしてきているということでございます。

問)

一方、違う視点から質問しますと、大口、いわゆる機関投資家も上場株式ですから入ってきたり、外国人ですと一部あるかと思いますが、大口の投資家に対して元に戻す、今よりも上げることになった時の影響というのは何が考えられるでしょうか。

答)

当然のことながら、税率が上昇すれば、その分、税負担が大きくなるということになるかと思います。ご質問の主旨は、おそらく株式市場等への影響がどうであるかということなのかと推察をいたしますけれども、株式市場は様々な見方、現状認識、将来の見通しを有している様々な投資家が市場に参加することによって、また、様々な経済指標の動きを捉えて行動をとる投資家の行動によって、結果として決まってくるものでございますので、このことによって直ちに決定的な変化が起きると断定的に申し上げるべきではないとは思いますが、ただ、私どもとしては、この我が国の金融資本市場というものを、全体として魅力のあるマーケットにしていく、そういう我が国の金融資本市場を国際競争力の強いものにしていくという大きな行政課題を負っておりますので、そういった観点から今後の動きをいずれにせよ注意深く見ていくということが必要であろうかと思っております。

問)

本日から多重債務者の一斉相談ウィークが、一部では前もって始まっておりますが、これまで、法案が成立してから1年経っていますが、この間の多重債務者の救済という面では、どのような進展があったのかという点についてお聞かせください。また、今回の相談ウィークの目標がありましたら併せてお聞かせください。

答)

ご指摘のとおり、本日から全国一斉多重債務者相談ウィークが始まったということでございます。この1週間の間に、全国延べ450箇所で多重債務者向けの無料相談会が行われることになります。まず、相談ウィークの目標でございますが、大きく申し上げまして二点ございます。第一点は、一人で悩みがちな多重債務者の方が相談窓口を訪れるきっかけとなるということ。もう一つは地方自治体における多重債務者向け相談窓口の整備を促進するということ。例えば、地方自治体の職員が弁護士・司法書士といった専門家の方々と共同で相談にあたることで、相談のノウハウを実地に修得し、この後の相談業務の充実に役立てていただくといった効果も期待できるのではないかと思っております。多重債務に悩んでいらっしゃる方々には、この機会にぜひ相談会場に足を運んでいただきたいと思っております。また、今般の相談ウィークの実施が、今後の地方自治体における相談窓口の整備強化の一助となることを強く期待しております。

それから、多重債務者の救済についてのお尋ねでございますが、データといたしましては、全国信用情報センター連合会の集計データがございまして、これによりますと、5件以上の借入れがある利用者という捉え方をした時に、その数は減少傾向にあると承知をいたしております。具体的には、本年2月末で176万8,000人であったのに対して、本年10月末においては、これが138万6,000人となっているということでございます。この減少の要因については、貸し手の側の与信管理の厳格化による新規借り入れの抑制といった要素もあるでしょうし、あるいは、過払金返還請求による債務の圧縮といった要因も考えられるわけですが、多重債務者の救済が非常に速やかに進んでいるかどうかについては、一概に判断をすることについては、まだ慎重であったほうがよいのではないかと思っております。いずれにいたしましても、今後ともこの多重債務問題の解決に向けて、債務整理や生活の再建を支援する相談窓口の整備・強化等にしっかりと取り組んでいくことが重要だと考えております。

問)

先週末時点で、生命保険の不払いの報告が出揃ったと思います。139万件、964億円という数字が出ておりますけれども、まず出揃った件数・金額をどのように捉えていらっしゃいますでしょうか。

答)

生命保険会社における保険金等の支払い漏れの調査を継続しておりました13社が、11月末までに調査を完了して、先日12月7日に当局へ報告が提出されました。この結果、生命保険全38社が調査を完了したことになります。各社公表の数字をベースに申し上げますと、全38社のベースでの過去5年間(平成13年度から17年度)の支払い漏れの件数、金額は約131万件、総額約964億円という数字になるものと承知をいたしております。生命保険会社各社において、このような多数の支払い漏れが発生していたことは、保険金等の支払いが保険会社の基本的かつ最も重要な任務の一つであるということにかんがみれば、極めて遺憾であると思っております。

問)

9月末時点で大手を中心に既に明らかになっている報告がありますけれども、これについてのヒアリング、検討などが進んでいるかと思いますが、現時点での進捗状況と、例えば今後の改善方策などが報告されているかと思いますが、この実態をどう評価されるか、また利用者保護という面で十分な報告が各社から出ているのかどうかお聞かせ下さい。

答)

今般、生命保険会社全社の調査結果が出揃いましたので、まず金融庁としては、各社からの報告内容の精査・分析という作業を進めて行くということです。既に9月に提出済みのところについては、その作業に取り掛かっていますけれども、今般全社揃いましたので、改めて調査・分析の作業を、全体をカバーした形で進めて行くということであろうかと思います。当然のことながら、その際には、単に支払い漏れの件数・金額の多寡だけに着目するのではなくて、業務執行態勢の改善の度合いといったことにも当然注意を向けるということであろうかと思います。既に報告のあった社についての精査・分析の進捗状況等については、全体をきちんと統一的な共通の目線で各社を評価していくということが大事だと思いますので、現時点で先行している分についてだけコメントをするということは差し控えたいと思っております。いずれにせよ金融庁としては、こうした精査・分析を通じて、まずは各社の実態、及び事実関係をきちんと把握していくことが大事であろうかと思います。

それから、このような現実があったわけでありますので、生命保険会社各社にとって改めて保険契約者・顧客の信頼を再確立することが急務であるわけです。そのような観点で見たときに、全体の状況を見てみると、これまで一連の対応が取られてきたという側面も見逃せないわけであります。これは、当庁の行政処分や業務改善命令といった行政上の対応を受けて行われたものもあるでしょうし、そういったことも参考にしながら自主的な取組みを行ったという面もあろうかと思いますけれども、いずれにせよ、この一連の対応の中で、保険金の支払管理態勢等についての業務改善がある程度進んできているということも事実であろうかと思います。各保険会社においては、こうした支払管理態勢がきちんとしたものになってきた、なったということを現実の日々の業務遂行の中で明確にお示しいただいて、改めて消費者・保険契約者の皆さんの信頼というものを確かなものにしていっていただきたいと思っております。

問)

証券税制についてお伺いします。金融庁の見直し案では、配当についてのところは恒久化という従来通りの主張をしているかと思います。それに対して与党の方で様々な反応があったかと思います。配当については、例えば、財務省は金額が少額配当については10%を継続、少額以外は20%という話もありますけれども、依然として金融庁としては、恒久化というところはスタンスとしては守るべきところというお考えなのでしょうか。

答)

先ほども申し上げましたように、先週お示しをいたしました金融庁の案というのは、「貯蓄から投資へ」の流れを確実なものにしていくという観点で策定したものでございます。具体的な個々の項目について、現時点、この場で具体的なコメントを申し上げることは、今まさにこの全体についての議論が大詰めを迎えている段階でございますので、差し控えさせていただきたいと思います。

問)

損益通算についてはあまり意見の違いはないとお考えでしょうか。具体的な話はできないということですけれども、これについて一般論としてお話しいただくとどうでしょうか。

答)

これは個別の問題になっていくので、具体的なコメントは差し控えさせていただきますけれども、大きく申し上げると、譲渡益に対する課税、配当に対する課税、そして損益通算という課題。これら三つが主要なテーマであるわけであります。テーマごとにそれぞれの模様があるということであろうかと思います。

(以上)

サイトマップ

ページの先頭に戻る