佐藤金融庁長官記者会見の概要

(平成19年12月17日(月)17時01分~17時20分 場所:金融庁会見室)

【長官より発言】

私の方からは特にございません。

【質疑応答】

問)

二つお伺いいたします。一つ目が先週決着いたしました与党の税制改正大綱での証券優遇税制の件ですけれども、これによりますと、譲渡益、配当それぞれどのくらいの方が従来どおり10%の軽減税率の適用を受けることができるかという試算がありましたら教えていただけますか。それから、一部で額の申告等が必要になる面もあると思うのですけれども、現実的な税制なのかという、使い勝手の面についてご見解を教えて下さい。

答)

証券税制につきましては、金融庁として夏以来、広く国民がリスク性の金融商品に投資をし、結果として経済成長の果実を享受できるようなチャネルを確立したい、また、小口投資家、一般投資家にとって負担感の少ない税制-これは手続き面も含めてですけれども、-そういう税制を目指したい、という精神で税制改正要望をし、関係者の皆様に理解をいただくよう努めてきたということであります。その結果として、与党でのご調整を経て、平成21年、22年の2年間について500万円以下の譲渡益、および100万円以下の配当について軽減税率10%を適用し、そして平成21年より上場株式等の譲渡損失と配当との間の損益通算の仕組みを導入するといった決定がなされたということでございます。この譲渡損と配当の間の損益通算というのは、限度額なしで認められておりますので、これは一つの方向感として、私どもの要望していた趣旨にも適うポイントであろうかと思います。また、10%の軽減税率について、株式譲渡益で500万円、配当で100万円の適用上限額が付されました。これによって、一部の投資家において、上限額を管理していただくことが必要になるのは事実であります。他方、多くの一般の投資家の皆さんについては、これまでとおり源泉徴収のみで課税関係が終了するのではないかと考えております。どの程度の投資家が税率10%の適用を受けるかということを正確に予測するのは困難でございますが、例えば株式譲渡益については、証券会社からのヒアリング等を参考にいたしますと、大多数、あるいは相当数の一般投資家が10%の税率の適用を受けることになるのではないかと承知をしております。また、配当につきましても、株式あるいは株式投資信託等の保有状況というのを勘案いたしますと、それに配当としてのリターンの率をあわせて考えますと、これも大多数の一般投資家は、10%の税率の適用を受けることになるのではないかというふうに思っております。

いずれにいたしましても、金融庁としてはこの証券税制が引き続き「貯蓄から投資へ」の流れを持続させるものとなるように祈っているところでございますし、「金融・資本市場競争力強化プラン」の策定も大詰めにきていますが、その他の市場強化策とも相俟って、所期の狙いを実現できるようなそういう仕組み、枠組みになることを期待しているところでございます。

問)

もう一点お願いします。政府系ファンドの関係ですけれども、政府系ファンドが世界的に力を増しているようですが、日本のマーケットや企業に及ぼす影響について、現状、金融庁としてどれだけ把握されているのか教えていただけますか。日本にも設立を検討する動きがありますけれども、こういった動きをどのようにお考えですか。

答)

政府系ファンド(ソブリン・ウエルス・ファンド)に対しては、内外の当局においても関心が高まっているところであります。我が国からは財務大臣がご出席になった先のG7において、これに関連した共同声明が出されているわけであります。かいつまんで要点だけ抜き出しますと、一つ目には政府系ファンドによる投資資金というものが世界経済の成長に大きな役割を果たしているという認識。二つ目として、政府系ファンドの組織構造、リスク管理、透明性や説明責任といった分野でベストプラクティスを策定するといったことに意義があるということ。三つ目には、IMF、世銀、OECDに対して、こうした問題を検討することを要請するというような内容が盛り込まれていたわけであります。

政府系ファンドは様々な形態でグローバルな投資活動を行っていると考えられます。その国際的な投資活動、就中、日本での活動の全貌について詳細を承知しているわけではございません。ただお尋ねの、日本のマーケットや企業に対する政府系ファンドの関わりについては、一部報道等もなされているところでございまして、複数の海外の政府系ファンドが既に日本企業への投資を行っていると聞いております。

この政府系ファンドの影響についてですけれども、先ほど申し上げましたように、世界経済の成長に大きな役割を果たしているという認識が一方でございます。他方で、規模が大きい、あるいはディスクロージャーも必ずしも十分ではないといったことで、マーケットの不透明性が高まるのではないか、あるいは政府系による他国の企業の買収が国際摩擦を惹起させる可能性があるのではないかといった見方もあると承知しております。いずれにいたしましても、金融庁としても、この政府系ファンドの動向や、マーケットの影響について注視してまいりたいと思っておりますし、そのためにまずは、このテーマについて調査・分析を進めていく必要があるというふうに思っております。

最後に我が国における政府系ファンドの立上げについては、様々な議論が出てきていると承知しておりますが、金融庁は外貨準備などの公的資産の運用を所管する立場にはございませんので、直接的なコメントは差し控えたいというふうに思います。議論の動向には注意を払っていきたいと思っております。

問)

(金融・資本市場)競争力強化プランですけれども、先週の経済財政諮問会議で大臣が概要を説明しました。明日、金融審議会の報告書が発表される予定になっていますけれども、今後、プランの取りまとめに向けた段取り、見通しについて教えていただきたいのですが。

答)

ご指摘いただきましたように、先日の経済財政諮問会議において、渡辺大臣からプランの基本的な考え方やアウトラインについてご紹介いただいたというところでございます。

プランでは、大きく4つの柱、分野を掲げてございまして、一つ目に、「金融・資本市場の信頼と活力」、いわば金融取引が行われる場の整備です。二つ目に、「金融サービス業の活力と競争を促すビジネス環境」、いわば取引の場で実際にビジネスを行うプレーヤーにとっての環境の整備ということでございます。三つ目に「より良い規制環境(ベター・レギュレーション)」ということで、取引を行うプレーヤーや取引が行われる場であるマーケットに対する規制のあり方についても、より良い、活力を引き出すような透明・公正で、かつ活力のある仕組みになるような努力をしていくということでございます。そして四つ目に、「それ以外の市場を巡る様々な周辺環境の整備」ということでございまして、これらの具体的な方策を包括的なパッケージとして盛り込むべく、大詰めの検討を進めているところでございます。

プランの具体的な内容については、まだ策定作業中でございます。タイミングについて、現時点では申し上げられませんが、いずれにいたしましても年内の策定・公表ということに向けて鋭意取り組んでまいりたいと思っております。

問)

改正貸金業法が19日から本格施行になるかと思いますけれども、19日からどのように消費者あるいは業界に対して変わっていくのでしょうか。現状の認識や直近の業界事情も併せて、19日という節目で何が変わるのかというご認識を教えていただきたいと思います。

答)

ご案内の通り改正貸金業法は、何段階かに分けて実施されていくという構造になっております。今度の改正というのは、一つの大きなステップであろうかと思いますが、例えば新しい法律に基づく貸金業協会、自主規制機関としての協会がスタートするということで、自主規制の枠組みがスタートするというところが一つのポイントであろうかと思います。全体の詳細なステップ・バイ・ステップの施策については手元にございませんけれども、いずれにいたしましても、段階を踏んで改正貸金業法の最終的な狙いである利用者の保護、的確な手続きを踏んだ上でのビジネスの進め方の定着、そして多重債務者に対する様々な取組みといったものが総合的に進んでいくことによって、望ましい姿を目指していくということであろうかと思いますし、今度の19日というのは、そのステップとして一つの節目になるものだろうと思っております。

問)

22日に銀行窓販が全面解禁になります。これまでいろいろな議論を経て全面解禁になるのですが、銀行の窓口で生命保険商品、損害保険商品などあらゆる保険が買える仕組みができるわけですが、このようなことに対して、長官として期待すること、競争力強化や新商品の開発促進などいろいろな議論されてきたわけですけれども、改めて長官のご認識をお聞きできますでしょうか。

答)

銀行窓販の全面解禁というのは、金融庁としてこれまで進めてきている販売チャネルの多様化の最終局面の一つの項目であろうかと思います。製造者レベルでの競争、そして販売チャネル間の競争、また同じ販売チャネルの中でもそれぞれ異なる業者がいて、それぞれの中で競争が行われるということを通じて、一つには、競争を通じたベストプラクティスが行われることによって、利用者にとって金融サービスを受ける受け方、そのサービスを受けるチャネルが多様化するということで、前提としての利用者保護を超えて、さらに利用者利便を高めるという金融庁としての大きな行政目的に適う制度変更であろうかと思います。ここから先は、新しい制度枠組みの下で、それぞれの業者、それは製造段階の保険会社、販売段階の保険会社も含めた銀行等他の金融機関などの間で競争が行われることによって、利用者保護を貫徹しつつ利用者利便が向上していくということにつながることを期待していきたいと思っております。

それから、利用者利便の向上というものを実現していくに当たっては、当然のことながら大前提として優越的地位の濫用といったことが起きないような利用者保護の枠組みがきちんと機能するということも大事だろうと思っておりまして、このような点も含めて今後の展開を注意深く見ていきたい、あるいは期待を持って見ていきたいと思っております。

(以上)

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