佐藤金融庁長官記者会見の概要

(平成20年2月18日(月)17時04分~17時30分 場所:金融庁会見室)

【長官より発言】

お待たせしました。

冒頭、私から一点ご報告がございまして、訓令室の設置ということでございます。本日18日付で、総務企画局政策課に訓令室として、「市場分析室」を設けることといたしました。市場分析室長は、監督局の小原監督企画官が兼務をいたします。室員は13名いますが、全員兼務の形です。

趣旨でございますけれども、昨今サブプライム問題に象徴されるように金融行政を行っていく上で、様々なマーケットのグローバルな動き、またそれらの連関を把握しておくということが不可欠になってきています。また、ベター・レギュレーション(金融規制の質的向上)の柱の一つである優先課題への効果的対応、ないしリスクフォーカスト・フォワードルッキングな行政ということを進めていく上でも、当庁の情報収集・分析能力をさらに強化することが重要でございまして、こういう趣旨もございまして、同室を設置することとしたものでございます。

今後、同室において、グローバルな株式、債券、クレジット、為替、コモディティ等の各市場の状況、機関投資家やファンドの動向、マクロ経済の情勢等について、金融システム、金融・資本市場の観点から、情報の集積・調査・分析を行っていくこととなります。

私からは以上でございます。

【質疑応答】

問)

二点質問をお願いします。一点目は、先週、渡辺金融担当大臣の会見で、金融庁の方でも中小企業対策を考慮するとおっしゃっていましたが、金融庁としてどのような対策を考えていらっしゃるかお願いします。二点目ですが、今日、ノーザン・ロック銀行の国有化のニュースがありましたが、これが短期的、あるいは長期的に、市場、または金融システムに対してどのような影響を与えるのかということをお願いします。

答)

一つ目の中小企業対策でございますけれども、ご案内のとおり、中小企業向け貸出の現状、また地域経済や中小企業を巡る環境というのは厳しくなっていると認識をいたしております。国内銀行の中小企業向け貸出の残高ですけれども、日本銀行の統計によりますと、昨年の9月以降、前年同月比マイナスで推移しているということがございます。また、さらに原材料価格の上昇や、建築着工件数の落込み等があって、これらの影響を受ける中小企業等において、収益の圧迫や資金繰りの厳しさということが増大しているということで、地域経済・中小企業を巡る環境は厳しくなっているというふうに認識をしております。こうした中で、年度末の中小企業対策について、総理から大臣にご指示をいただいたところでありまして、まずは年度末の資金需要期を迎えるにあたって、我が国の経済の基盤を支える中小企業に対する金融円滑化に向けて、実態を十分に踏まえ、対策について検討を行っているところであります。

また、こうした年度末の対策にとどまらず、より構造的な問題にも対応していくことが重要だと思っております。例えば、政府において、地域力再生機構の法案を国会に提出するとともに、政府系金融機関においても、中小企業に対して資本性の資金を供与するための劣後ローンの供給を試みるといった動きがございまして、地域の面的再生や企業再生に向けた取組みが行われているところでございます。

金融庁としては、そもそも中小企業に対する円滑な金融というのは、銀行等の預金取扱金融機関の最も重要な役割であると認識しておりまして、金融機関が自らの責任と判断で適切にリスクを取って、金融仲介機能を発揮していただくことが重要だと思っております。こういった観点から、政府の各般の取組みに呼応して、地域を熟知した金融機関がリーダーシップを発揮し、中小企業の企業情報、あるいは地域の経済情報、社会情報等を活かしながら、中小企業金融の円滑化、地域における面的再生等に積極的に取り組んでいただくことを期待しております。

それから、ノーザン・ロック銀行の国有化の話でございます。昨日、17日に英国の財務省が、ノーザン・ロック銀行を一時的に国有化する法案を18日に議会に提出する予定であるとの発表を行ったと承知いたしております。このニュースにつきましては、英国の政府当局が、英国内における金融システムの安定ということに対してコミットをしている、また、その中でできるだけよい手法を取ることによって金融システムの安定を確保したい、という意向の表われであろうかと思っております。

そして、マーケット等への波及ということですけれども、これはノーザン・ロック銀行が経営困難に陥って、取付け騒ぎが起きた直後にも申し上げたところでございますけれども、この銀行のビジネスモデルの特殊性というところに問題が起因しているということだと思います。そのビジネスモデルというのは、一方の資産サイドでは住宅ローンというものにかなりの程度特化している。そして、他方で負債サイド、その貸付のための財源の調達に関して市場性の資金に大きく依存をしている。預金の割合が小さくて、市場からの資金調達が非常に大きいと、こういうやや特異なビジネスモデルが前提にあって、そういう中で昨年夏以降のサブプライム問題を原因とする市場の混乱、その中で短期金融市場が極端にタイトになるといった要素との組合せの中で問題が顕在化したということであります。こういった分析に基づいて、翻って我が国の金融機関について眺めて見ると、こういった特殊なビジネスモデルを有している金融機関というのはほとんど見当たらないということでございますので、少なくとも、このことが直ちに我が国の金融システムに、類似の問題を引き起こすというようなことにはならないのではないかと思っております。

問)

先ほどの中小企業対策についてですけれども、金融庁として、例えば資金供給の重要性などを地域金融機関などに何らかの形で通達をするとか、金融庁として何らかのアクションを起こすことはあるのでしょうか。

答)

まさにそういった類の具体的なアクションについては、現在、鋭意検討を進めているところでございます。対策の具体的な内容につきましては、今後、官房長官を中心に関係閣僚で協力してとりまとめると、そういう予定になっておりますので、現段階での具体的なコメントは差し控えさせていただきたいと思います。

問)

実現されるかどうかはともかくとして、こういう状況の中で、金融庁にできることとして何が必要なのか、という点はいかがでしょうか。

答)

先ほども申し上げましたように、この間接金融という金融仲介チャネルを担っている銀行等の預金取扱金融機関にとっては、自らマーケットから資金調達をすることが困難である、あるいは非常に大きなコストがかかる、そういう立場に置かれている中小企業(零細企業も含めてですけれども)、そういったところに対する必要な資金供給、金融仲介を行うということは、最も重要な任務と申しましょうか、それがなくてはビジネスモデルが成り立たないと言うぐらいの位置付けであろうかというふうに思っておりますので、各地域金融機関においては、借入れニーズを有している債務者企業・中小企業の経営状況や財務の実態を丁寧に見ることを通じて、資金需要にできるだけ応えていっていただく、その際には当然のことながらリスクの評価ということをやっていただく必要があるわけですけれども、そのリスク評価と、それに基づいた的確なリスク・テイクの方もやっていただく、ということが基本であろうかと思います。そういった呼びかけと申しましょうか、金融庁からのメッセージというのは、例年、例えば年末とか年度末にメッセージをお出しする、というようなこともやらせていただいているわけでありまして、そういったメッセージを常時発信していくということは、金融庁としての大事な一つの取組みであろうかと思います。

問)

現在、(金融監督に係る)プリンシプルを検討中だと思うのですけれども、ルールとのベストミックスというのを考えていく中で、今ある法律やルールにあるプリンシプル的な部分をどう整理したり、簡素化していったりしようと考えていらっしゃるでしょうか。

答)

今、取り組んでいるのは、このプリンシプルというのは、規制をする側と、規制を受ける業界あるいは個々の金融機関の側との間で、共通の価値と申しましょうか、規範と申しましょうか、そういったものを持つことによって、規制を受ける側にもメリットがあり、規制をする側にとってもメリットがあると、そういうものとしてどんなものを共有できるかということで、まさに業界の皆さんと議論を進めている最中でございます。明定されている法令の中には、ご指摘のとおり、大きな金融行政の目的とか、あるいは大きな規範に属するようなものもあれば、非常に具体的な行為規制にかかわるようなルールというものもある、というのは事実であろうかと思います。ただ、現在ある法体系を考えたときに、それぞれの法律には、まず目的規定があり、その法律の目指す大きな狙いというものが書いてあるのは当然でありまして、ただ他方で、その目的規定だけに基づいて、何らかこの不利益処分が発せられるというようなことはないわけでありまして、そういう意味では、そういうプリンシプルというカテゴリーに分類できるような要素も入っている、ということであろうかと思います。したがって、そういうプリンシプルを何らか明示的な形で業界の皆さんと金融庁との間で共有できたとしても、それが直ちに、既存法令の基本的な構造に影響を及ぼすというものではないのではないか、というふうに思っております。

大事なことは、例えば、個々の金融サービス提供者が自ら、さまざまな努力をする際に、どういう方向で努力するのがよいかという、方向感と申しましょうか、努力すべきベクトルと申しましょうか、そういったものをしっかりと抱いていただくと、その方向に沿った対応というのは、当然のことながら当局と共有されているものですから、そういう方向での努力というのは、当局からも評価をされるし、個々の金融機関にとっても望ましいものであるはずなので、両方がメリットを受ける。つまり、監督当局があれこれひとつずつ、行政処分を含めたさまざまな行政対応をしなくても、全体がいわば分権的な形で、良い方向に向かっていくと、こういう効果を持てるのではないかというふうに思っております。

問)

一点お願いしたいのですが、金融行政に密着する問題ではないのですが、東南アジア諸国及びインドの東部で、いわゆる新型インフルエンザのヒト-ヒト感染、あるいは大規模感染が限定的とはいえ拡大しているようですけれども、二年ほど前にそういった観点で、金融機能維持の指針をまとめたと思うのですが、その後、指針の現状と、仮に大規模感染が起きた場合にどのような対策をとり得るのか。また、保険会社に対してどのようなアドバイスができるのか、お考えをお聞かせ下さい。

答)

一般論として、非常に深刻な伝染病が流行した場合に、国全体としての重要な金融機能をきちんと維持をしていくということが重要であることは論を待たないわけでありまして、そういった目的意識からBCP(ビジネス・コンティニュイティ・プラン、業務継続計画)というものを、個々の金融機関においても有していただき、かつ、その全体の集合体としての金融システムにおいても、そういった危機対応の枠組みが出来ているということが重要であります。そういった問題意識から、これまでもご質問のような取組みをある程度行ってきているということでございます。

この問題についての具体的なアップデートについてのお尋ねですけれども、その具体的なアップデートについて、まさにアップデートされた情報を私は今、手元に持っておりませんので、またの機会に必要があればお答えをさせていただきたいと思いますし、あるいは担当部署にお尋ねをいただくということもあろうかと思います。

問)

経営不振の新銀行東京についてなのですけれども、先週の石原都知事の会見でも、近く議会に方針をまとめて提示するという話だったと思います。追加出資をする方向だというのが報道されているかと思うのですが、その会見の中でも、銀行の在り方ということを、石原都知事ご自身も批判していまして、半年もつような会社には貸せとか、営業成績を揃えるためにそういうことをやってきたですとか、途中の動向が粉飾されていただとか、そういう発言がありました。個別の銀行についてはなかなかおっしゃりにくいのでしょうけれども、こういうコンプライアンス態勢といいますか、銀行の態勢、並びにビジネスモデルについて、お考えをお聞かせ願えればと思います。

答)

新銀行東京について、ご指摘のような報道があることは承知をいたしておりますけれども、個別銀行の経営に関する事柄でありますし、また、報道はいろいろ出ていますけれども、現段階で、この新銀行東京への対応、新銀行東京自身の今後の業務の進め方等についての具体的な内容が公表されているものではない状況でございます。そういったことも踏まえまして、現時点で特段のコメントは差し控えるべきであろうかと思います。いずれにいたしましても、今後ともこの銀行が経営改善を進めていっていただくということが重要でございまして、金融庁としてもその努力を注視してまいりたいというふうに思っております。

(以上)

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