佐藤金融庁長官記者会見の概要

(平成20年3月24日(月)17時02分~17時21分 場所:金融庁会見室)

【長官より発言】

こんにちは。私の方からは特にございません。

【質疑応答】

問)

経営難の新銀行東京ですけれども、東京都による400億円の追加出資の議論が今週都議会で大詰めを迎えるわけですけれども、先週末に民主党も金融庁からいろいろヒアリングをしたと承知しております。その中で金融庁の行政上の責任を指摘する声もあったと聞いているのですが、これまでの新銀行東京に対する行政上の対応について改めて問題がなかったのかどうかという認識についてと、今後の新銀行東京に対する監督上の対応でどのような点に留意されていくのかという点をお願いします。

答)

金融機関の監督に関する一般論でございますけれども、自己責任原則と市場規律を基本とした監督の枠組みの中で対応しているということでございます。一方で各銀行の経営判断に属するような事項について当局が過剰介入をする、あるいは箸の上げ下ろしまで指図をするといった対応は避けつつ、他方で金融システムの安定、預金者の保護等のために各金融機関がきちんとしたリスク管理を行い、財務の健全性を維持していただくという、自助努力を促していくという対応をしていくのが基本でございます。新銀行東京に対しましても、こういう基本的な心構えで対応してきているということでございます。個別銀行への対応でございますので、詳細は差し控えたいと思いますけれども、従来から当局として認識し得た課題等を適時に示し、改善に向けた取組みを促してきたというところでございます。

今後に向けての留意すべき点としては、既に申し上げたとおりでございますけれども、この自助努力による経営改善のための取組みを注視しながら、その努力の実が上がるように促していきたいと思っております。

問)

先週、日本ファースト証券の破綻の申請を金融庁長官としてされましたが、こういう対応というのは極めて異例なのではと思いますが、改めてその破綻に至った経緯のご説明をお願いしたいのと、あとFX(外国為替証拠金取引)業者の全般的な経営状況についてどのように認識されているかという点と、今後の監督上の留意点についてお願いします。

答)

日本ファースト証券株式会社に対しましては、昨年の12月に区分管理違反と自己資本規制比率が100%を下回る状況というのが確認されましたので、6ヶ月間の業務停止命令と顧客分別金の預託不足の解消、更には自己資本規制比率の改善等を内容とする業務改善命令を発出したところでございました。その後、同社は財務内容の改善を図るため増資交渉等を行ってきましたけれども、交渉が不成立となりまして、外為証拠金取引に係る顧客分別金不足を解消することが困難な状況となっているということでございますし、また各種経費の支払いも遅滞しているというようなことがございまして、支払不能となるおそれが大きい状況となっていたわけであります。これらの点を踏まえて、金融庁としては顧客資産の保全の観点から、破産手続きの開始等の申立てを行うということが投資家保護上最善の方策であると判断いたしまして、3月14日にこの申立てを行ったということ、そして更に3月19日に同社の金融商品取引業の登録を取り消したというところでございます。

外国為替証拠金取引全般については、金融庁ではかねてから株式市場や為替市場等の動向を注視しつつ、その時々のリスクの所在を考慮した上で、金融商品取引業者に対するモニタリングを実施してきているところであります。この日本ファースト証券の事例を含めまして、昨年末から外為証拠金取引業者の破産が発生しておりますが、金融庁としてはこうした事例を踏まえつつ、引き続き外為証拠金取引業者の財務の健全性や、顧客資産の管理態勢について注視をしていきたいと思っております。

問)

先週金曜日の民主党との新銀行東京に関するヒアリングで、金融庁の責任を問うという声の一つの根拠として、なぜ立入り検査に入らなかったのかという声が非常に多かったのですが、改めてヒアリングの場でも検査に入るべきだという民主党議員の声が非常に多くありました。この点につきまして、今後の検査日程等どういうスケジュール感をお持ちなのか、検査に入るのか入らないのかも含めまして改めて長官のご見解を伺えればと思います。

答)

まさに改めてということになりますが、個別の金融機関に対する検査の実施時期等についてお答えをすることは差し控えさせていただいているところであります。一般論として、金融検査の実施にあたっては、当局の組織・人員に制約がある中で検査業務全体を効率的・効果的に行う観点から、各金融機関の経営状況や各金融機関自身が自主的に取り組んでいる業務改善の実施状況等の様々な要因を総合的に勘案した上で、検査の実施及び実施時期を決定しているというところでございます。

冒頭に申し上げた検査・監督、あるいは金融機関の監督の基本的な枠組みの話ともある程度重複いたしますけれども、金融検査についても「補強性の原則」というものが存在をしているわけであります。これは、自己責任原則に基づく金融機関自身の内部管理、そして会計監査人等による厳正な外部監査を前提にしつつ、市場による規律等を補強するものとして検査を実施していくという考え方でございます。金融機関の自主的な内部管理、あるいは内部管理態勢の改善に向けた取組みが行われている最中であるような場合において、まずそのような自助努力を尊重するということも総合的な判断の一つの選択肢としてはあり得るのではないかというふうに思っております。これは、あくまでも一般論でございます。

問)

無認可共済最大手のエキスパートアライアンス株式会社という会社がありますが、そちらがマルチ商法で、今回保険会社の免許を取るにあたって止めるというふうな方針を決めたのですが、無認可共済のこれから3月末以降等含めて、そこについて長官としてどういったご感想といいますか、ご認識をお持ちか再度宜しくお願いします。

答)

ご質問の業者と申しましょうか、いわゆる無認可共済の大手の件につきまして、ご質問のような報道があったことは承知をいたしております。ただ、個別会社に関する事柄でございますので直接のコメントは差し控えさせていただきたいと思います。

一般論として申し上げますと、保険会社への免許の申請がございました場合には、当然のことながら、当局としては法令等に則って厳正に審査をするということでございます。保険業法上の免許審査基準には、申請者の業務遂行能力という項目が入っておりまして、申請者の保険募集の態勢ということも審査の際の重要な判断要素の一つとなろうかと思います。仮に申請者の保険募集の方法が、保険業法違反となるような不適切な行為を前提とするようなもの、あるいは不適切な行為を誘発するようなものである場合には、それがいわゆるマルチ商法であるか否かに関わらず、申請者の業務遂行能力上の問題点となりうるということかと思います。

問)

今の点でもう一点追加ですが、その会社は既存契約については従来のマルチ的な部分を残すというふうな方針のようですが、今、長官がおっしゃったように自主的に保険会社になればマルチ商法をできなくなるわけですけれども、既存の契約が残るといったことについては、その点についてはいかがでしょうか。

答)

まさに個別会社の個別のビジネスモデルの話でございますので、直接お答えをしにくいわけでございますけれども、いずれにせよ、法令に則って見ていくということであろうかと思います。

問)

上場企業の第三者割当増資と大幅な発行済株数の希薄が生じるエクイティ・ファイナンスについて、東京証券取引所が何らかの開示強化の方針を今後検討していくようですが、金融庁としては、それは上場ルールなり、その取引所のルールの中で何か整備をしていけばいいというお考えなのでしょうか。それとも、何か法的な手当てなり、アメリカの場合ですと20%以上の希薄化の場合は総会マターにしなければいけないとかルールがあるそうですが、日本についてはどのようにするべきだとお考えでしょうか。

答)

今ご質問いただいた点に関しましては、東京証券取引所からは、市場の質の改善や信頼性の向上について、「上場制度整備懇談会」というものを作って、そこで議論が行われているということでございますが、まだ、具体策の内容やその取りまとめ時期等については、現時点では未定であるというふうに聞いております。

一般論で申し上げますと、我が国市場の競争力を高める、魅力を高めていく、市場の公正性・透明性を向上させていく、といった観点から、証券取引所が自主規制機関として市場に対する信頼を確保する役割を適切に果たしていっていただくということは大変重要なことだと思っておりますので、そういった役割を十全に果たしていただくことについて強く期待しているというところでございます。

(以上)

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