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佐藤金融庁長官記者会見の概要

(平成20年5月26日(月)17時04分~17時26分 場所:金融庁会見室)

【長官より発言】

こんにちは。私の方からは特にございません。

【質疑応答】

問)

幹事から三点質問させていただきます。まずは銀行決算についてですけれども、先週大手銀行の決算が出揃いました。20日に金融庁の方で単体ベースの決算集計をされたところですけれども、業務純益が昨年度より下回っているということと、またサブプライムの影響などで利益も減少しています。この収益改善が進まない銀行の現状について改めてご認識をお聞きしたいということと、またこの傾向を当分続くというふうに見ていらっしゃるのか、お聞きしたいのですが。

答)

まず、主要行等の平成20年3月期の決算、単体の合計ベースですけれども、本業の利益を示す実質業務純益は前期比微減になったということでございます。この要因は様々あるでしょうけれども、主だったものを申し上げますと、一つは利ざやの改善、貸出残高の増加ということが見られたわけですけれども、ともに限定的であったということ、二つ目に市況の悪化等によって投信販売などの手数料収入が減少したということ、そして三つ目に、将来を睨んだ前向きな支出を含むものですけれども、経費が増加したということが要因として挙げられます。

また、最終的な利益、当期純利益につきましては、前期比で大幅に減少ということでございます。これも主だった要因を申し上げますと、一つにはノンバンク関連の損失が前年比で減少した一方で、二つ目にサブプライム・ローン関係を含む証券化商品などに関する損失が発生したこと、そして三つ目に株式の減損が増加した、あるいは与信関係費用が増加したということが挙げられようかと思います。また、これは直接損益計算書に反映されるものではないですけれども、グローバルな市場の混乱を受けた株価の下落によりまして、株式の含み益が相当大きく減少しているというふうに承知をしております。

こういったことで、サブプライム・ローンの問題を契機とするグローバルな市場の混乱は我が国の金融機関の決算にも相当程度の影響を及ぼしております。ただ、他方で、ご案内のとおり1社の損失が3兆円から4兆円にも上っている欧米のLCFI(巨大複合金融機関)と比べますと損失の規模は相当限定されているということです。また、全体としてこの損失が実質業務純益の範囲内に留まって、年度で見て、かつ、そのグループ単位で見ますとグループとしての黒字を計上しているといったことなどから、現時点において、サブプライム・ローン問題が我が国の金融システムに直接深刻な影響を与える状況にはないという認識は変わっておりません。

次にこの主要行等の収益の状況でございますけれども、収益改善が進まない背景の一つとして、預貸ビジネス、手数料ビジネスといった本業における収益力が伸び悩んでいるということが挙げられようかと思います。収益を改善し健全な財務基盤を中長期的に持続的に確保するという観点から、利用者のニーズを的確に把握し、創意工夫を行って、より多様で中身の濃い金融サービスを内外で提供するということが極めて重要であるというふうに思っております。

またそれに加えまして、今回のサブプライム問題の影響は欧米と比較しますと相対的に限定されていますけれども、この機会に改めて、収益改善の観点からも、自己だけの経験ではなくて内外の金融機関の損失の事例といったことも参考にしていただいて、引き続きリスク管理の高度化を図ることが重要であると考えております。信頼性の高いリスク管理は適切なリスクテイクの大前提となるものであるとも思っております。

こうした努力を行う中で、中小企業の業況に厳しさが見られるわけであります。適切なリスク管理を行いつつ、中小企業への円滑な資金供給に努めていただくということも重要な課題であると思っております。

問)

次に、これも先週ですけれども損保会社の決算が発表されまして、その中で、金融庁の方で2006年12月に点検を指示しました保険料の取り過ぎ額が全体で約133万件、約298億円になるという見通しが発表されました。この数字に関して、長官の評価と今後の行政の対応についてお聞きしたいと思います。

答)

この数字につきましては、平成18年の12月に金融庁から火災保険を取り扱う損害保険会社30社に対して、火災保険の適正な募集態勢を確保するという観点から点検を要請し、またその結果に基づく顧客への適切な対応ということを要請したわけであります。数字についてはこういった作業の結果として出てきたものというふうに受け止めております。ご案内のとおり各損害保険会社において、金融庁の要請を受けて、火災保険契約の適正性に関する調査を行うとともに、これに加えまして損保協会の決定に基づいて、火災保険以外の保険商品全般についても同様の調査を行うという決定がなされておりまして、現在各社は自ら策定した調査方法・調査計画に基づいて調査を進めているというふうに承知をいたしております。先ほどの数字は火災保険以外の契約も含めたところでございます。大手6社が19年度の決算発表時にこの数字の最終見込み額及び件数として、約298億円、約133万件という数字になっているということでございます。

金融庁としては、各社において、件数、金額の調査だけではなくて、なぜこのような事態が発生したかについて十分な原因分析を行った上で、その背後にある募集態勢まで踏み込んだ検証を行っていただく、また、そのような検証に基づいて実効性のある再発防止策を策定していただくというのが重要だと思います。またこれと併せて、当然のことながら、迅速な顧客対応、何らかの影響を被られた顧客に対する原状回復といったことが行われることが重要であろうかと思います。こういった各社の取組み状況というものをフォローアップしていくというのが金融庁の基本スタンスでございます。

問)

生保に関してなのですが、今週末に生保各社の決算が発表される予定となっています。去年は(保険金)不払いの対応に追われて新規契約が減少するという傾向もありました。また、昨年12月には銀行の(保険商品の)窓販(窓口販売)もスタートし、その他、一部生保については逆ザヤを解消したという指摘もあります。今週末の生保決算について長官として注目している点があればお聞きしたいと思います。

答)

主要生命保険会社の平成20年3月期決算の発表につきましては、今週予定されていると承知しておりますが、決算発表前の段階で事前のコメントをすることは差し控えさせていただきたいと思います。

この年度上半期、前半、つまり平成19年4月から9月の半期決算の業績について振り返ってみますと、例えば保有契約高は、死亡保障ニーズから生存給付ニーズへシフトが見られるという中で、引き続き減少、前年同期比で約5%減っているわけです。それから、保険本業の利益である基礎利益につきましては、資産運用は改善したものの保険金等の支払金も増加したということで、全体としては減少、これも対前年同期比で4%くらいの減少ということであったわけです。

金融庁としては、20年3月期決算につきましても、契約高の動向、利益の水準、逆ザヤの状況等を含む三利源の状況、また全体としての各社の財務の健全性といった点に注目していきたいと思っております。一般論として申し上げれば、先ほどご指摘のありました逆ザヤの解消を含めまして、財務の健全性を高めるための各社における取組みというものは保険契約者保護の観点からも重要でありまして、引き続き各社における経営努力というものに期待をしていきたいと思っております。

問)

「消費者庁」を巡る問題なのですが、先日、政府の会議で最終報告の素案がまとまりました。まだ概要は全体的には見えてきていないのですが、その中で金融庁が所管する法律等の移管等も議論の俎上(そじょう)にこれから上がってくるやに思うのですが、今回の「消費者庁」への法律移管に対する金融庁としてのお考えなりをお聞かせ願えますでしょうか。

答)

「消費者庁」の議論に関しましては、これまでも何度か申し上げておりますけれども、国民のための行政というのが全ての物事の基本であろうかと思います。もともと、国民のための行政というものに携わっているのが行政府であります。そのようなことで、政府全体として実効性ある利用者保護を、できるだけ少ないコスト、つまりできるだけ高い効率性を確保しながら進めていくということが物事の一番の基本であろうかと思っております。したがいまして、金融庁としてもこのような大きな心構え、座標軸を持ってこの議論に臨んでいくということであろうかと思います。

これも何度か申し上げていることでございますけれども、金融庁はもともと、「利用者保護」というのを金融行政の最も主要な行政目的として中心的な柱に位置づけているわけであります。「金融システムの安定」という行政目的、また「透明・公正な市場を確立する」という行政目的と並んで三大行政目的の一つと位置づけて、各般の施策に取り組んできているということでございます。一部具体例を申し上げれば、先ほども話題となりました保険金の不払いや支払漏れの問題、悪徳な商法を含む外為証拠金取引業者への対応、無認可共済の問題への対応、さらには貸金業法の改正といった制度面を含む業者対応等々を行ってきているわけでありまして、その中で検査・監督と制度設計の両方を通じた一貫した整合性のある利用者保護の枠組みの整備と、その枠組みの実効性を確保するための検査・監督ということを行ってきているということでございます。また更に、金融サービス利用者相談室を設置して、利用者の声・消費者の声を行政に活用するという努力、さらには金融知識の普及・啓発を目的とした対外情報発信ということにも努めてきているわけです。

金融庁としては、「消費者庁」が、政府の様々な部局が担っている消費者行政の司令塔として、真に有効に機能していくということを期待しております。そうした大きな心構えの下で議論に参画していきたいと思っております。

問)

金の先物取引で福岡の仲介業者が警察当局の強制捜査を受けました。金融庁として把握されている事実関係と今後の対応についてお願いします。

答)

どのような事案でしたでしょうか。

問)

ロコ・ロンドン金取引という金の先物取引のようです。

答)

個別具体の事案について直接コメントをすることは差し控えさせていただきたいと思いますけれども、改正後の金融商品取引法の下で法令違反に該当する可能性があるようなケースがございましたら、まずは事実関係をきちんと確認した上で、法令に則って的確かつ厳正な対応をしていくというのが一般論、金融庁の基本的なスタンスでございます。

問)

確認ですが、先ほどの「消費者庁」の関連で、「検査・監督と制度設計を通じて一貫性、実効性のある枠組みを整備」ということなのですが、これは、金融庁が所管する法律、いろいろ消費者関連のものもありますけれども、それを「消費者庁」に移管するということには応じられない、というお考えだという理解でよろしいでしょうか。

答)

個別の法律の所管がどうあるべきかという各論について言及したものではございません。これまで金融庁が取り組んできている三つの行政目的のうちの一つとしての「利用者保護」という取組みについて、これまでの金融庁としての行政上の取組みを述べたものでございます。

(以上)

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