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佐藤金融庁長官記者会見の概要

(平成20年6月16日(月)17時02分~17時25分 場所:金融庁会見室)

【長官より発言】

私の方からは特にございません。どうぞ。

【質疑応答】

問)

土曜日(14日)に発生した岩手・宮城内陸地震に関してなのですが、金融機関への指示・要請など金融庁の対応についてお聞きしたいと思います。また、銀行ATMの被害や金融システムに与える影響などについても把握していることがあればお聞きしたいと思います。

答)

今般の地震につきましては、まず被災された方々に心よりお見舞いを申し上げたいと思います。

お尋ねの金融機関の関係でございますけれども、本日は定時から岩手県内及び宮城県内の金融機関は支障なく営業が行われていると承知いたしております。金融庁におきましては、土曜日の地震発生直後から金融機関の状況について東北財務局と協力して情報収集を行い、その把握に努めてきたところでございますが、金融機関の一部のATMにおいて地震直後、一時停止ということがございましたが、昨日から全て復旧済みであると報告を受けております。

それから、この関係での金融庁及び東北財務局の対応として、14日の16時過ぎに東北財務局と日本銀行の連名で関係金融機関に金融上の措置についての要請をいたしました。対象となった金融機関は銀行、信用金庫、信用組合、証券会社、保険会社等でございます。文書のタイトルは「『平成20年岩手・宮城内陸地震』にかかる災害に対する金融上の措置について」ということでございまして、主だった内容を申し上げますと、一つには、「預金証書、通帳等を紛失した場合でも預金者であることを確認して払戻しに応じること」、二つ目に、「事情によっては定期預金、定期積金等の期限前払戻しに応じること、またこれを担保とする貸付にも応じること」、三つ目に、「災害の状況、応急資金の需要等を勘案して、融資相談所の開設、審査手続きの簡便化、貸出の迅速化、貸出金の返済猶予など、被災者の方々の便宜を考慮した適時的確な措置を講じること」という内容でございます。

金融庁としては、引き続き財務局をはじめとした関係機関と緊密な連携を取りながら適切な対応を行ってまいりたいと思っております。

問)

金融・資本市場の動向、見方についてお聞きしたいと思います。週末のG8財務相会合では基本的な認識として、「過去数ヶ月間、金融市場の状況はいくぶん改善してきた」という認識を示しつつ、「なお緊張が続いている」という声明を発表しました。また、金融担当大臣もクアラルンプールの講演で、「本質的な解決には至っていない」という趣旨の話をされたと聞いております。今日の株価は380円高ということで、市場の動向は一時に比べてかなり落ち着いてきたのかとは思うのですが、長官のご認識を改めてお伺いしたいと思います。

答)

お尋ねのグローバルな金融市場の動向についてでございますけれども、全体として見ると、これまでにも申し上げたことがあるかと思いますけれども、マーケットでは、混乱収捨に向けたポジティブな動きと、なお先行き不透明感を示すようなネガティブな要因の両方が存在していると思います。両方見られるということで、サブプライム・ローン問題を契機とするグローバルな金融市場の混乱の影響というのは、なお続いていると認識しております。

ご案内のとおり、ポジティブな動きとしては、欧米の大手金融機関が証券化商品等に係る損失を四半期ごとの決算、あるいは半期ごとの決算で認識をし、認識された財務内容について公表をし、自己資本不足に陥っているという場合には資本増強に取り組む、ということが一つのサイクルとして定着してきている。その資本増強に応じる資本の出し手もソブリン・ウェルス・ファンドをはじめ存在している。こういう動きがかなり一般化している。これはポジティブな動きであろうかと思います。また、システミック・リスクの顕在化を阻止するということで、強い意志を持って関係する中央銀行等が行動を起こしているといったこと、これらはポジティブな要素でありまして、これらのことを前提にすると、深刻なグローバルなシステミック・リスクが顕在化するという蓋然性は低くなってきているということが言えるのではないかと思います。

他方でネガティブな要素もなおいくつかあるということでございます。一つには、米国の住宅市場の低迷でございまして、住宅価格が低下を続けている、あるいは住宅ローンの貸倒れが引き続き高い水準にあるといったこと、G8財務大臣会合でも触れられておりますけれども、グローバルなマーケットの中で、クレジットマーケット、証券化商品市場における流動性が回復をせず緊張感が引き続き残っているということ。この背景には、このような複雑な証券化商品に対するバリュエーション(価格評価)の難しさというのが背景にあり、マーク・トゥー・マーケットのプラクティス(持っている資産を市場価格に評価し直す習慣)というものが十分な信頼を得ていないというか信頼を失っているということでございまして、ここについてはまだ出口が見えていないといいうことだと思います。

さらに加えますと、先ほどの自己資本不足の認識ということも背景にあると思いますけれども、特に米国において銀行の貸出姿勢が慎重化しているといったことが実体経済に及ぼす影響もあり得るということ。さらに、原油、穀物といった一次産品の価格高騰もあり、これらも含めてインフレ懸念も指摘されている。このような要素があるわけであります。

こういったことでございますので、金融庁としては引き続き、株式、為替、様々なマーケットの動向を注意深くモニターすると同時に、マーケットの動きが金融市場に与える影響等について引き続き注意深くフォローしていきたいと思っております。

問)

先週、金融担当大臣の私的懇談会で示された第二次報告書に関してですけれども、政府系ファンドを含めて対日投資促進ということを強く提言される内容となっています。対日投資促進の考え方について長官のご認識についてお聞きしたいということと、一方で金融界で株主総会を前に日本興亜損保の筆頭株主である米系ファンドが同社の経営陣の刷新と再編など抜本的な改革を求めて同社の経営陣と対立しているという状況があるわけですけれども、対日投資促進とそれに伴って生じる摩擦について長官はどのようにお考えなのかお聞きしたいと思います。

答)

まず第一の点でございますけれども、先週発表された「金融市場戦略チーム」の第二次報告書でも指摘されておりますように、対日投資というのは、我が国において少子高齢化が進展する中で、経済全体の活性化であるとか、雇用機会の拡大といったことを通じて我が国経済の持続的な成長にも貢献しうるものであると思っております。市場を見ている金融庁の立場からいたしましても、市場全体の透明性・公正性ということが、投資家保護の観点から保たれるということが大前提でございますけれども、その前提の上に立って多様な市場参加者、多様な投資主体が日本の市場に参加をし、もちろん今のようなルール遵守が前提でございますけれども、そういった多様な投資家の参加によって市場が厚みを持って活発に取引が行われるということは歓迎すべきことだと思っております。市場に対する必要な規制に関しましては当然のことながら、金融庁は従来より、内外無差別という大前提にたっているわけでありますし、規制そのものの透明性や予見可能性ということも重要であると思っておりますし、どうしても必要な規制がある場合にはそのことの意味や内容について十分な説明責任を果たしていくということも重要であろうと思います。ソブリン・ウェルス・ファンドについての特殊性といったようなこともあろうかと思いますけれども、その点についても、当局として透明性・予測可能性の高い規制を設け、十分な説明責任を果たすことによって、我が国の市場があたかも閉ざされた市場であるかのような印象を与えないということが重要であろうかと思っております。

それから、日本興亜損保の件につきましては個別の会社のことに関することでございますので直接のコメントは差し控えさせていただきたいと思います。投資家サイドに着目した場合には、先ほども申し上げた内外無差別の原則で我々は対応しているわけでありまして、国内の投資家であるか国外の投資家であるかに関わらず、市場の透明性・公正性の確保の観点から、市場参加者として守るべきルールは投資ファンドにおいても当然に遵守される必要があるというふうに考えておりますが、その上で投資ファンドとして株主としての主張をなさるというのはごく自然なことだと思っております。これに対して、投資を受けている上場会社の経営サイドに着目すれば、その会社をどのような経営方針で経営するかというのは、各会社の経営判断であるわけですけれども、経営者の方々においては投資家や顧客の期待に応えることができるような経営を行っていくことが重要でしょうし、その経営方針、経営哲学を株主をはじめとするステイクホルダーに対して、タイムリーに、かつ、明確に説明責任を果たしていくということが特に重要でありましょう。また、そういった中で、株主である投資ファンド等との間の意味のある対話を進めていただき、そのことが株主一般に対する情報提供にも資するということであろうかと思っております。

問)

クアラルンプールを訪問されていた金融担当大臣の件で、新聞報道によれば様々な発言が伝えられておりますが、一つは欧米の巨大金融機関に対して、健全性の観点から、自己資本が不足している、欧米の当局には公的資金を含めて早期の対応を促したい、という主旨のお考えを示されたと聞いておりますが、これにつきまして、長官として同じようなご見解を持っていらっしゃるのかどうか、お考えを伺いたいのと、日本の当局としてこれに資金協力していくというお考えも併せて大臣は示されたように聞いておりますが、これにつきましては、仕組みの上で可能なのかどうかも含めましてご見解を伺えればと思います。

答)

今のお尋ねの中でご紹介いただきました渡辺大臣のご発言につきましては、詳細について私は確認しておりませんので一般的なお答えになるかと思いますけれども、先ほども申し上げましたように、欧米の金融機関、特に大手金融機関の場合には、高い頻度で決算ごとに巨額の損失が認識され、公表され、資本不足と認識された場合には資本増強が行われるという流れになってきているわけであります。そういった中で、自己資本不足が完全に解消されたのかどうかについては、先ほども申し上げましたように、証券化商品等についてのバリュエーションなどの問題もあり、完全にすべてが手当て済みという状況ではないという認識は私も持っているところでございます。ただ、こういうサイクルと申しましょうか、メカニズムがある程度定着をしてきておりますので、突然、LCFI(巨大複合金融機関)がおかしなことになって、グローバルなシステミック・リスクの顕在化につながるという蓋然性は相当下がってきています。そのことの一つの重要な要素は、それぞれの金融機関が自ら損失を認識し、自らディスクロージャーをし、自らの努力で資本調達に動くということでございまして、そういう民間のイニシアティブ、当事者のイニシアティブによって、進んでいるというのが現在の状況であろうかと思います。

他方で、欧米の大手金融機関の状況と我が国の金融機関を比べてみますと、これまでも繰り返し申し上げておりますように、我が国の金融機関の場合には相対的に問題となっている証券化商品やハイリスクの商品に対するエクスポージャーが相対的に小さいということで、今年の3月期の一連の決算の発表を経た現在、そういった認識がある程度マーケットにも広がっているのではないかという気もするわけであります。そういった中で、相対的には有利な立場にあるということも言えようかとも思いますので、我が国の金融機関が国際的なビジネス、あるいはグローバルなマーケットでその力を発揮してより質の高いサービスを提供し、しっかりとした金融仲介機能を果たしていくことによって存在感を高めていくという意味では一つのチャンスであると思います。

(以上)

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