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佐藤金融庁長官記者会見の概要

(平成20年7月7日(月)17時02分~17時50分 場所:金融庁会見室)

【長官より発言】

よろしくお願いします。

【質疑応答】

問)

先週、金融庁は野村證券と日本生命など生保10社に対しまして業務改善命令を発出しました。その狙いと当該会社に求めることを改めて伺えますでしょうか。

答)

まず、野村證券の元職員のインサイダー取引に関してですが、同社における法人関係情報に係る不公正取引の未然防止態勢は業務の多様化・国際化の流れに即した内部管理態勢のあり方という観点から十分ではないと認められましたので、同社に対し先週の3日、木曜日に、金融商品取引法第51条に基づく業務改善命令を発出したところであります。

野村證券においては、自ら再発防止策の策定・公表、あるいは責任の所在の明確化等を図っているところであります。他方で、今も申し上げましたように同社の業務の多様化、国際化という点に着目した場合、これに即した適切な情報管理態勢、業務運営態勢という観点からは問題点がなかったとはいえないということ、また今後の業務の更なる多様化・国際化や、あるいは環境の変化といったものが生じたときに、これに応じて新たに必要となる追加的な措置を自ら特定し遅滞なく実施に移すための態勢、そういったいわばダイナミックな対応といった一段高い水準の内部管理態勢を構築していただくことが望ましいと、こういった点を踏まえまして、公益、または投資者保護の観点から同社に対して業務改善命令を発出したところでございまして、同社において今後、再発防止策の実効性をともなった着実な実施、あるいは今も申し上げた市場環境の変化に即応できる内部管理態勢の構築といったものを求めていくものであります。時間の経過、状況の変化があっても会社として自律的、自発的な対応力というものを構築し、それをしっかりと根付かせていただくということが大事だと思います。

それから、生命保険会社の支払い漏れ等の問題に関しましては、多数、多額の支払い漏れ等が発生し、経営管理態勢、及び業務運営態勢に一層の改善の必要性が認められた10社に対しまして、これも先週の3日、木曜日に、保険業法第132条第1項又は第204条第1項に基づいて業務改善命令を発出したところであります。

生保10社につきましては、支払い漏れ等の再発防止策に着手する等一定の業務改善は認められていたところでございます。しかしながら、再発防止策等についての内部監査部門等による実効性の検証を終えていないといったことなど、未だ業務改善は途上にあると判断されたところでございます。こういったことで、当該10社に対して、契約者保護等の観点から業務改善命令を発出し、内部監査態勢の改善強化、再発防止策の見直し・改善など業務改善プロセスの定着を求めていくこととしたものでございます。

この野村證券のケースにせよ、生保10社のケースにせよ、いずれも自ら再発防止策を策定する等、それぞれ一定の業務改善は認められたところでございまして、これらも当然、行政処分の内容を考える際の軽減事由として考慮はしているわけですけれども、今回の処分はこれらの社に対して、今後のより一層の業務改善を促しそれを後押ししていくという趣旨も併せ持ったものでございます。これは金融機関の自助努力をサポートしていく、あるいはフォワード・ルッキングな対応をしていくといったベター・レギュレーション(金融規制の質的向上)の基本的考え方も踏まえたものであるということでございまして、金融庁としては、このような業務改善命令を受けた各社においてその趣旨を十分にお汲み取りいただいて、実効性のある適正な管理態勢の構築に努め、今後、利用者利便の向上、利用者保護の見地にたった一層の業務改善に取り組んでいただけることを期待しているところでございます。

問)

金融庁の幹部人事につきまして伺います。ペンディングだった人事も先日かたまりまして、新体制が4日から始動しました。改めまして、長官から新しい幹部の皆様に求めることは何でしょうか。また、今回の人事の特徴の一つとしまして、金融庁の幹部の方が一人も退任されなかったということが挙げられますが、行政組織の新陳代謝という観点からこのことをどのように考えていらっしゃるかお聞かせ下さい。

答)

まず、第一の点ですけれども、金融庁に課せられた任務には三つの大きな行政目的、すなわち、「金融システムの安定」、「利用者の保護・利用者利便の向上」、そして「公正・透明で活発な市場確立」、こういった三つの行政目的があって、これらは不変のものであると思っておりますが、それぞれの分野において、時代時代、あるいは局面局面で要請される内容というのは変遷していくものだと思っております。三つの行政目的をしっかりと踏まえつつ、時代の要請に応えられるような金融行政を目指して、私も含めてでございますけれども、幹部が力を合わせて頑張っていきたいと思っております。引き続きよろしくお願い申し上げます。

今後1年間の課題というのは、おそらく新しい課題もこれから出てくるだろうと思いますが、継続的な課題としては、これは先般も申し上げましたけれども、この過去1年間非常に大きなテーマでございました三つの課題というのが引き続きその重要性を持っていると思っております。すなわち、「サブプライム・ローン問題への対応」、二つ目に「我が国金融・資本市場の競争力の強化」、三つ目に「金融規制の質的向上(ベター・レギュレーション)」ということでございます。

サブプライム問題につきましては、我が国の金融行政当局としてそれなりに適切な対応を取ってきていると考えてきておりますが、情報発信の点など先進的な取組みを含めて対応してきているわけですが、引き続き国際的な当局間の連携なども含めて的確な対応を行うことが求められております。グローバルに見たときにまだまだ課題はたくさん残っているということだと思っております。このためには、グローバルなマーケットに対する感覚(センス)を金融庁全体として結集して、効果的な行政に努めていく必要があると思っております。

二つ目の「我が国金融・資本市場の競争力強化」につきましては、制度枠組みの整備の面で先の国会における金融商品取引法の改正が成立したといった点を含めましてかなり進捗をしてきているわけでありますけれども、今後もなお政令・府令の整備を含めて制度枠組みの整備は続きますけれども、今後は制度枠組みの整備から、その新しくできた整備された枠組みに則って、いわば施策が実際に現実のビジネスの面で活用されていく局面、その中で具体的な成果を出していく局面に入っていくのだろうと思っております。

ベター・レギュレーションにつきましても、その趣旨・目的等につきまして理解を広めていく浸透させていくという局面から、これはおそらく時間がかかる話ですのでなお引き続き努力を続けていく必要がありますけれども、今後官の側、民の側双方においてこのベター・レギュレーションの心構え(スピリット)というものをしっかりと定着をさせていく、更にはこれまでに得られた成果を活用していくという局面に入っていくのだろうと思っております。先般、金融業における基本的な規範と申しましょうか、14項目のプリンシプルを業界の皆さんと金融庁とで共有することができたわけですけれども、今後はこういったプリンシプルをいかに活用していっていただくかということも非常に大きなテーマになってくると思います。

こういった継続的な課題を含めまして、国内、国外ともに課題が山積しておりますので、金融庁全体として、各局間の交流も含め一体感を高めて各部局が連携・協力を図りつつ、実効性があって、できるだけ効率的で、かつ、時代の要請にも応えうるような、質の高い金融行政を目指していくということが重要だと思っております。

二点目の組織の新陳代謝につきましては、今般の人事も今申し上げたような大きな狙いをこめて行われた人事ということでございます。新陳代謝ということも、一般論として言えば人事を行う際に考慮される一つの要素ではあろうかと思いますけれども、全体を総合的に考え行政目的に沿って適材適所の人事を行ったのが今回の人事でございます。

問)

株価について伺います。今日の日経平均は13日ぶりに反発いたしましたが、それまで10日以上にわたって連続して下げ続けておりまして、米国につきましてもピーク比で20%も下がっているという非常に低い水準にまで達しています。共通している背景といたしまして、米国の金融不安がなおくすぶっているのではないかという解説がされています。米国政府は巨大な投資銀行の破綻に備えて法整備の議論が進んでいるということですが、現在の世界的な株価低迷、米国の金融不安についての現状認識を伺えますでしょうか。

答)

まず、株式市場の動向につきましてはいつも申し上げていることではありますが、様々な市場参加主体がそれぞれの判断に基づいて投資行動を行った結果として、市場価格が決定されるというものでございますので、その背景等について当局として断定的なコメントを申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。

ご質問の中でご指摘いただきましたように、先週の4日、金曜日まで日経平均株価で見ると我が国の株式市場は12日続落したということでしょうか。この点につきましては、これも当局として何らか確定的なことを申し上げるべき立場にないと思いますが、例えば、市場関係者の中には以下のような要因を指摘する方々もいらっしゃるということで引用させていただきます。一つは原油、穀物価格等の上昇、更には米国のサブプライム・ローン問題の影響がなお続いているといったことから、グローバルな金融市場、あるいは世界経済全体について先行きの不透明感が消えないという中で、我が国の株式市場では売買が低調に推移し、小幅安の日が多かったと思いますけれども、こういったことが一つの要因であるとするものです。もう一つ典型的に語られる話としては、我が国の株式市場で売買シェアの6割を占める外国人投資家の中には、本国での株価下落によるリスク許容度の低下等によって、この春以降、相対的に諸外国の市場と比べると相対的に底堅かった日本株を売って利益を確定しようという動きもあったと言われているかと思います。

いずれにいたしましても、金融庁としては今後とも引き続き市場の動向あるいは金融機関の健全性を注意深くフォローしていきたいと思っておりますし、また、そういうディフェンス面の対応だけではなくて、やや攻めに転じると申しましょうか、そういう趣旨からも、先ほども申し上げました市場強化プランが前に着実に進んでおりますので、我が国の魅力的な市場の構築に向けて政府一体となってこの課題にも取り組んでいきたいと思っております。

後段でサブプライム・ローン問題の現状と申しましょうか、米国における投資銀行への対応に関する制度整備が話題になっているという点を含めてお尋ねがございました。米政府高官がそういった趣旨の発言をされているということは承知いたしておりますけれども、これに直接コメントするということは差し控えさせていただきたいと思いますけれども、いわゆるLCFI(巨大複合金融機関)と呼ばれているような大手の、かつ、グローバルなマーケットで活躍する金融機関の場合には、極めて多様なビジネスが行われていて、多様かつ大規模なリスク・テイクが行われています。結果的にそのような金融機関が業務を停止するというようなことになりますと、カウンターパーティー・リスク等が一気に顕在化するといったようなことで非常に困難な状況をもたらすおそれがあるといった問題意識を米国の当局者の方々も抱いていらっしゃるということであろうと想像はするわけでございますが、現在のグローバルな金融市場の動向は、以前にも申し上げましたけれども、ポジティブな方の動きとネガティブな方の動きの両方が混在しているという状況であると思います。

ポジティブな状況としては、今も申し上げました欧米の大手金融機関が四半期の決算ごと、あるいは半期の決算ごとに証券化商品等に関する損失を迅速に認識し、それを公表し、かつ、自己資本不足という認識を持った場合には資本増強、資本調達に動きます。この資本調達の動きに対して資本を提供する側もソブリン・ウェルス・ファンドなどを中心に存在をしていて、いわばこういったメカニズムが民間のイニシアティブを中心として動いているということ、これは一つのポジティブな側面であろうかと思います。また、欧米の中央銀行や監督当局による、グローバルなシステミック・リスクの顕在化を防ぐために断固たる措置をとるという明確なメッセージが出ており、またそのような対応が実際にも取られているといったことで、いわば深刻な世界レベルでのシステミック・リスクが具体化するという蓋然性は低下してきているということであろうかと思います。

他方、ネガティブな方の要素としては、一つには米国の住宅市場の低迷ということがあろうかと思います。米国における住宅価格の下落、あるいは住宅ローンの貸し倒れの水準の高さといったことが確認をされておりますし、また今回のグローバルな金融市場の混乱の最も特徴的な話の一つでございます、証券化商品の市場の流動性が回復しない、取引が成立しにくい、原資産が必ずしも明確でない、そういった証券化商品についてのバリュエーション(価格評価)というものの信頼、これは格付けへの信頼の問題もありますけれども、それが揺らいでいて、市場の流動性が回復するための条件整備が必ずしも整っていないといったこと。更には先ほどのような巨額の損失を認識するといった大手金融機関において自己資本不足が認識されていることの結果でもありますけれども、銀行の貸出姿勢が、特に米国において慎重なものになってきているということで、このことが米国の実体経済にネガティブな影響を及ぼす可能性があるといったこと、更に加えまして原油や一次産品、穀物等の価格高騰によるインフレ懸念ということもあって、マクロ経済政策、金融政策の制約要因にもなっていると、こういったことが挙げられようかと思います。

我が国の金融システムの影響ということにつきましてはこれまでも繰り返し申し上げておりますし、また集計ベースで我が国金融機関のサブプライム関連、あるいは広く証券化商品等に関するエクスポージャーや関連の損失額を金融庁において集計し公表させていただいていますけれども、エクスポージャー、あるいは損失額を見たときに、欧米の巨大複合金融機関が1社で3兆円、4兆円、5兆円という損失を掲げているのに対して相対的に限定されているといったこと、あるいは損失額が期間利益の範囲内であって全体として見ると当期利益が確保されているといったことで、この問題が直接我が国の金融システムに深刻な影響を与える状況にあるとは考えていないという認識は変わっていないということでございます。

ただ、グローバルな金融市場の混乱というのはなお続いていると考えるべきでしょうし、金融庁としては引き続き警戒水準を維持しながら、市場の様々な動向、あるいはそのことが我が国の金融機関の健全性に与える影響等について、内外の関係当局とも連携しながら、注意深くフォローしていく必要があると思っております。

問)

保険の問題では、損保の保険料の取過ぎ問題も金曜日(4日)に業界が自主的なとりまとめを公表しているのですが、これについてのご意見はございますか。

答)

意見というか現状認識でございますけれども、先週金曜日、4日に損害保険各社が火災保険料等の保険料の取過ぎにかかる点検について、取過ぎ見込額などについて公表したわけであります。公表した26社の合計では、取過ぎ見込件数が約153万件、取過ぎ見込額が約371億円という数字になっていると承知しています。火災保険などの保険料の取過ぎ問題につきましては、現在、各社において自ら設定した調査方法や計画に基づいて自主的な点検が進められている状況でございます。

今回の公表は、現時点での点検の結果等について行われたものでございまして、各社は今後も継続して必要な点検を進めていくと承知いたしております。かなり多数の件数で、かつ1件当たりの金額は相対的に小さいとしても、金額ベースで見て全て合計しますとそこそこの金額になるということで、このような実態があったということについては、早急にきちんと現状を分析し、原因を特定して再発防止に努めていただく必要があるでしょうし、保険料を取られ過ぎた顧客への原状回復、払戻しといった顧客対応も迅速に行う必要があると思っております。

金融庁としては、まずは各社が自主的な点検及び改善をしっかりと実施し、今も申し上げた迅速な顧客対応、あるいは再発防止のための態勢整備といったことを進めていただくことが重要であると考えておりまして、各社の取組み状況を適切にフォローしていきたいと思っています。

問)

生保も損保もなのですが、問題が発覚してから3年半以上経ち、とても迅速な対応とは思えないのですけれども、長官はこれまでの経緯を見て、迅速(な対応)だったかどうか、金融庁の対応として、業界の自主ルールに任せて本当に消費者の信頼を金融庁として勝ち得てきたのか、そのあたりの視点ではいかがでしょうか。

答)

調査に時間がかかっているという点に関しては、件数が膨大であるということがまずはあると思います。今回の場合ですと、全ての損害保険会社がそれぞれ調査をして、既往分あるいは現にある契約にまたがって調査を行ったということでございますので、当然のことながら件数自体が相当膨大になる、母集団が極めて大きいということでございます。今回の保険料の取過ぎというのは、契約全てが対象になるわけです。保険金の不払いと比べますと、保険金の不払いというのは、保険金支払い事由、保険事故が発生したにも関わらず適切な支払いが行われていないというケースですから、件数的にも限られてくるということがあろうかと思います。それに比べると、全ての契約が対象になるということで、件数が膨大であるということが一つはあろうかと思います。なおかつ、損害保険の場合には、基本的なビジネスのパターンとして、代理店を通じた契約が一般的であるということで、多数の代理店を通じて実態調査をするということもあり、取組みにある程度時間を要するということも一つの要素になっているという気がいたします。

それから、3、4年前から、生命保険、損害保険の業界における不適切な不払いあるいは支払漏れ、そして今般の保険料の取過ぎといった問題に金融庁としては順次取り組んできたわけでございますが、検査を通じて確認された事実を掘り下げていった結果、確認された事実というのもございます。あるいは金融庁に寄せられた様々な保険契約者、顧客からの声を材料にした事実解明を行ったケースもございます。様々なケースがあったわけですけれども、金融庁としては、その時その時において確認された事実関係に基づいて、できるだけ正確な事実確認を行った上で、起きた事柄の重大性、悪質性等を十分に吟味しながら、かつ、事柄の対処すべき優先度も勘案しながら、行政資源を最も効果的に配分するということで対応をしてきたという意識を持ってはおります。そういう意味では、先ほど申し上げた、保険事故が現実に発生しているにも関わらず、四の五の屁理屈をこねて支払うべき保険金を支払わなかったというケースが最も悪質であるわけで、このようなケースについて一番早い段階で最も厳格な対応をしてきたということであります。その次に、支払漏れというのは、必ずしも意図的な不払いという要素はそれ程多くないのかもしれませんけれども、事務の疎漏であるとか十分な手続きを踏まなかったであるなど、顧客本位の業務執行態勢が不十分であったということに起因していたということもあったのだろうと思います。こうした、いわゆる支払漏れの問題についてもその後、対応してきたということでございます。

このような対応をしてきた中で、各保険会社における業務執行態勢というのも、顧客の方を向いた、保険契約者へのサービスの向上、あるいは契約をきちんと履行することに焦点を当てた業務執行態勢に段々と近づいてきているということだろうと思いますし、経営者の皆さんの意識、そしてそれを具体化する会社全体の業務の進め方、マニュアル等も含めた進め方についてかなりの進捗が見て取れるとも思えるわけですけれども、一番大事なことは、それぞれの保険会社が保険契約者へのサービスの水準をきちんと維持して、顧客の信頼をしっかりと確かなものにして信頼されるビジネスを展開していくことだろうと思っています。そのような狙いと申しましょうか心構えと申しましょうか、そのような精神で金融庁としては引き続き保険業界への監督をやっていきたいと思っています。

問)

公的年金の運用のあり方について議論が広がっているようです。先週末、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が2007年度の運用成績を発表し、年間で損失が出たということでした。これに先立って、自民党の検討チームでも、公的年金でSWF(ソブリン・ウェルス・ファンド)を作るべきとの提言が出ています。金融庁としても、大臣の「金融市場戦略チーム」でGPIFのあり方、公的年金のあり方、運用のあり方について言及しているのですが、改めて公的年金の運用はこのままで良いのかという点と、運用の改善についてどのようにお考えになっているかという点についてお聞かせいただきたいのですが。

答)

いわゆる日本版ソブリン・ウェルス・ファンドの議論や公的年金積立金の運用の改善といったことが昨今課題として取り上げられていることは承知いたしております。ただ、金融庁はご案内のとおり公的資産の運用を所管する役所ではございませんので、ファンドの創設を含めて、公的資産の運用のあり方について直接的なコメントはこれまで同様差し控えさせていただきたいと思います。

その上で、あえて一般論として申し上げれば、政府として、あるいは公的な主体として、それぞれ責任を有している資産について、その資産の趣旨あるいは用途、使い道を踏まえながら運用を最大限効率化していく、より高いパフォーマンスのところへ持っていく努力が、国民全体の利益の増進に資することであるということは、一般論として思っております。

問)

野村(證券)と生保10社の件に戻るのですが、野村にしろ、生保10社にしろ、犯したこと、やったことはやったことで悪いことだったということで、その後、再発防止策などを出してきました。契約者、利用者という観点もありますけれども、金融当局がどういうアクションを起こすのかということも含めて考えて出してきたものだとも思います。それがあまり評価されずに前向きな業務改善命令だと言われても、受けた方としては、行政処分は行政処分ですから、若干がっくりくる部分もあるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

答)

業務改善命令をお受けになった各社においては、先ほども申し上げましたように、金融庁としての狙いと申しましょうか、いわば各社における自助努力をサポートしていく、応援していく、それから将来に向けてより良い経営に移行していただくための方向付けを狙っている、という趣旨を是非読み取っていただきたいと思っております。

先般14項目のプリンシプルを業界の皆さんと合意したときに、プリンシプルの趣旨に沿って自主的な努力が行われている場合には、業務改善命令等を行う際の軽減事由として考慮することを監督局の指針の中で明記したわけであります。先ほども申し上げましたけれども、今般の野村證券、生保10社においても、そのような実態をつまびらかに検証しながら業務改善命令の内容を慎重に検討したということでございます。中身を見ていただきますと分かりますように、今般の業務改善命令の中には、業務停止であるとか、責任の明確化という項目は入っていないわけであります。かつ、各社における自主的な努力を認めた上で、将来に向けてよりしっかりと定着させていく、更にサービスの質を高めていただく、また、先ほど野村證券のところでも申し上げましたけれども、今後、将来の更なる状況の変化や業務内容の多様化・国際化が更に大きく起きた、新しい事態が出現した場合にも、それに柔軟かつ迅速に対応できるような力を各社において定着させていただきたいという思いでございまして、業務改善命令ということではございますけれども、その中身及びその狙いを各社においても受け止めていただければありがたいと思っております。

問)

損保の(保険料)取過ぎの件で、長官の認識として「かなりの件数で金額もそこそこ」という見解を示されましたけれども、今と同じように何かしらの処分の対象になり得るものなのでしょうか。

答)

先ほども申し上げましたように、本件につきましてはそれぞれの保険会社における自主的な努力が進んでいるところでございますので、金融庁としては、その中身をきめ細かくフォローしていくことがまずは重要だと思っております。将来における行政対応のあり方等については言及しないというのが原則でございます。

(以上)

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