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佐藤金融庁長官記者会見の概要

(平成20年7月14日(月)17時02分~17時23分 場所:金融庁会見室)

【長官より発言】

こんにちは。お待たせいたしました。どうぞ。

【質疑応答】

問)

先週、アメリカの住宅ローンを専門としている地銀がFDIC(米連邦預金保険公社)から業務停止という命令を受けました。事実的に破綻したということですが、FDICが業務停止を命令した規模としては過去2番目と聞いております。大型破綻ということですが、今回のアメリカの地銀の経営破綻に関連いたしまして、アメリカの金融システムにどのような影響が及ぶのかという見解と、今後、アメリカの地銀の経営破綻、アメリカの銀行の経営破綻が続くのかどうかという2点について見解をお伺いいたします。

答)

7月11日に米国の地方銀行であるインディマック銀行が閉鎖をされ、アメリカのFDICの管理下に入った旨がFDICから公表されたと承知をしております。

今回の経営破綻が米国の金融システムに与える影響、あるいは米国の地域銀行の動向等について予断を持って見解を申しあげることは差し控えたいと思います。一般論で申し上げますと、市場では米国の住宅セクターの低迷・不調の影響が顕在化するなど、サブプライム・ローン問題を契機とする金融市場の混乱の影響というのは続いているものと認識をしております。米国住宅市場の低迷というのは、ご案内のとおり住宅価格が低下をする、これが続く、あるいは住宅ローンの貸倒れの水準の高さといったことが続いている。また、住宅ローンを原資産とする証券化商品市場において流動性が回復しない、あるいはバリュエーション(価格評価)への信頼の欠如といった状態が続いているというようなことであります。こういったことが、今回の破綻の背景にもあるのではないかと思っております。そういう意味で、この悪影響が続いているという認識は持っているところでございます。

問)

13日にアメリカのポールソン財務長官が緊急記者会見をいたしまして、住宅ローン専門の政府系金融機関、2つありますが、ファニーメイ(米連邦住宅抵当公社)とフレディマック(米連邦住宅貸付抵当公社)というこの2つの機関に対しまして、必要に応じて資金の貸出額を拡大するといったことや、2つの金融機関の株式を政府が直接買い取るという支援策を表明いたしました。折から、この2つの金融機関は財務悪化懸念から株価が急落していた、信用不安の懸念が生じていたところであります。一方、この政府支援機関の発行するエージェンシー債券の残高が2兆ドル規模に達すると言われておりまして、日本ではメガバンク等が数兆円単位で保有していると言われております。今回の米政府の対応と、並びに日本の金融機関への影響に関する見解を伺えればと思います。

答)

これは昨日、7月13日でございますけれども、米国の財務省とFRB(連邦準備制度理事会)から発表がなされたということでございます。財務省からはこのGSE(政府支援機関)の救済策として、第一に財務省のGSEに対する信用供与枠を一時的に拡大する、第二に必要に応じて政府による株式の取得を含めた資本増強を行う、第三にFRBに監督者としての役割を与える等このGSEに対する規制の改革法案の枠組みを強化する、という内容でございます。また、同日FRBからはやはりGSE救済策として、第一にプライマリークレジット金利、公定歩合、現行2.25%ですけれども、これによる融資を行う。第二にその際の担保は米国債及び政府機関債とする。第三に財務省の現行の融資権限を補足するものとしてこのスキームを位置付ける。このような内容でございました。こういったことが公表されたということでございます。

サブプライム・ローン問題に端を発するグローバルな市場の混乱につきましては、これまでも、ポジティブな要素とネガティブな要素がそれぞれあって、全体としては緊張が続いているという認識を申し上げてきたところでございます。ポジティブな要素としては大手の金融機関が損失を早期に認識をし、それを公表し、自己資本不足という認識の場合には速やかに資本調達を行う、また、その資本調達に対して資本を供与する投資家も存在している、このメカニズムがサイクルとして動いているといったこと。そして、ベア・スターンズの処理や中央銀行による大量の流動性の供給といったことで、当局がこの問題に端を発した深刻なグローバルなシステミック・リスクを起こさないように対処するという強いコミットメント(決意)が示されているといったことを挙げたわけであります。そういう中でネガティブな要因としては、先ほど来申し上げている住宅市場の動向であるとか、証券化市場における混乱、あるいは短期金融市場における緊張といったことがあったわけですけれども、今回の米国当局における発表は、先ほど申し上げましたポジティブな要素のうち、米国の当局として市場の大混乱、システミック・リスクを回避させるという強いコミットメントを改めて明確な形で表明されたものであろうかと思います。先の洞爺湖サミットの首脳宣言においても、例えば以下のようなくだりがあるわけです。「我々は我々の経済及び世界経済の安定と成長を確保するため、個別に、あるいは共同して、引き続き適切な行動をとる決意である」といった一文が入っているわけであります。米国におきまして、今回の公表内容につきまして、関係者の間で速やかな合意が形成され、かつ、それが迅速に実施に移されるということを強く期待しているところでございます。

今回の発表につきましては、市場ではさまざまな見方が交錯しているところでもございまして、今回のこの米国当局による対策が我が国の金融システムにどのような影響を及ぼすかということにつきましては、現段階で断定的な見解を申し上げることは差し控えたいと思っております。ただ、これは昨年の秋以来申し上げているところでございますけれども、我が国の場合には、サブプライム・ローン問題に関連した証券化商品等に対するエクスポージャーが欧米に比べますと相対的に限定をされていて、このことが直接我が国の金融システムに深刻な悪影響を及ぼすような状況にはないと申し上げてきているところでございまして、その認識を大きく変更しなくてはいけないといった要素にはならないのでないかと思っております。

ちなみに、サミットでも言われておりますが、金融安定化フォーラム(FSF)の報告書において、このサブプライム関連、あるいはさまざまなリスクについて、それを抱えている金融機関が先進的なやり方でしっかりとした開示、エクスポージャーを含めてしっかりとした開示を行うということが極めて重要であるということ、またFSFの提言をしっかりと実行することが重要であるということ、これがサミットの宣言でも謳われているわけですけれども、こういったことにも沿った形で、我が国の大手金融機関の場合には今年の3月期決算の公表、あるいはそれをベースとしたIR(投資家向け広報)資料等で、今申し上げたFSFの言う先進的な開示事例といったものを踏まえた大変充実したディスクロージャー(開示)を実施しているということでございまして、こういったディスクロージャーを経て、マーケットにおいても我が国の金融機関に対する一定の信認というものは形成されているのではないかと思っております。

問)

渡辺大臣が月例経済報告の閣僚会議の中で、世界の金融・資本市場に対する現状認識について「非常に金融危機に近い状態だ」など非常に厳しい認識を示されたという発言を大田(経済財政政策)担当大臣がブリーフの中で説明し、「日本から資本を引き上げる動きが加速する可能性もある」とまで言及されていたようなのですけれども、認識の部分で先ほどの長官のご発言と重なる部分もあるのですが、若干、度合い・レベルに温度差を感じるのですが、そこはいかがでしょうか。

答)

グローバルな金融市場の状況については、先ほど来申し上げておりますように、ポジティブな要素に加えてネガティブな要素も多く存在しているということだと思います。今回の米国の地域銀行の破綻というのも、先ほど申し上げた米国における住宅市場の不調ということが背景にあるわけで、その影響というのは、それが顕在化しているというか、影響が続いているという意味で、楽観できる状況ではないという点については同じ認識であろうかと思っております。そうしたグローバルな状況の中で、比較において、我が国の金融市場、金融システムは相対的に安定しているということも事実であろうかと思います。

ただ、グローバルな市場の混乱が続くという場合には、時間の経過とともに、その悪影響が我が国にも及ぶ可能性というのはございますので、金融庁としては、引き続き警戒水準を維持しながらグローバルに様々な市場の動向をウォッチし、そのことが我が国の金融システム、金融市場に与える影響というものも勉強をし、さらにはその過程で海外の当局との情報交換、連携等にも努めていく必要があることは変わっておりません。

問)

ファニーメイとフレディマックが発行した債券を日本の金融機関がどれくらい持っているのか、ということを改めて調べる、点検するというご意向はないのでしょうか。

答)

今年3月末の数字で、我が金融庁は、世界でも最も先進的な取組みとして、サブプライム関連の証券化商品、あるいはこの3月期については、その対象を広げてサブプライム関連以外の証券化商品、すなわちサブプライム以外のCLO(合成ローン担保証券)、CDO(合成債務担保証券)、あるいはサブプライム以外のRMBS(住宅モーゲージ担保証券)、さらにはCMBS(商業用不動産担保証券)、そしてレバレッジド・ローンというカテゴリーに分けて、我が国の預金取扱金融機関全てが保有しているこれら証券化商品等について、国全体の分を集計しそれを公表しているということでございます。それをトータルいたしますと、サブプライムの分も含めて3月末時点で22兆円強という数字であったかと思います。そのうち、サブプライム関連の証券化商品というのは1兆円まで減ってきているということでございます。

ファニーメイ、フレディマックがアレンジしたRMBSというのは、ファニーメイ、フレディマックが保証をしているというところが一つの特徴であろうかと思いますが、これらの証券化商品は、基本的には質の高い住宅ローン、いわゆるプライムを中心に証券化を行っていると承知いたしております。そういう意味で、サブプライムそのものとは損失率、損失の発生度合いといったことにも差があるのではないかと思っております。

いずれにせよ、今回の米国当局による発表は、保証をしているGSE2社の財務の健全性をサポートしていくという趣旨でございますので、そういう意味ではこれら住宅関連RMBSの証券の価値を支えていくという上ではポジティブなニュースではないかと思っています。

(以上)

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