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佐藤金融庁長官記者会見の概要

(平成20年 7月28日(月)17時05分~17時30分 場所:金融庁会見室)

【長官より発言】

私のほうからは特にございません。

【質疑応答】

問)

改めてということになりますが、アメリカの住宅公社2社を支援するための法案が成立する見通しとなりました。この法律の成立によりまして、公社への資金繰り支援の融資とか、公的資金による資本注入といったことが実施できるようになるということですが、日本の金融庁といたしまして、アメリカの政府等に期待することを改めて伺えればと存じます。

答)

ご案内のとおり、7月26日、米国の(連邦議会)上院において、GSE(政府支援機関)への融資枠の拡大や、GSEへの公的資金による資本注入を可能とする住宅関連法案が可決され、ブッシュ大統領の署名によって成立する見込みと承知しております。

今回の米国政府及び議会の一連の対応につきましては、GSEの経営悪化懸念による市場の混乱等を早期に収束するための取組みが迅速になされたということだろうと思いますが、これをポジティブな動きとして歓迎したいと思います。他方で、グローバルな金融市場の動向を見てみますと、今回のこういったポジティブな要素と並列するかたちで米国経済の先行き不透明感を示す指標なども相次いでおり、全体としてみると緊張が続いているということだろうと思います。

金融庁としては、このグローバルな金融市場の混乱が続いている中にあって、引き続き警戒水準を維持しつつ、様々なマーケットの動向、あるいはその動向が我が国の金融機関に与える影響などについて、内外の関係当局とも連携しながら注意深くフォローしていきたいと思います。今後ともマーケットや金融機関の動向などに即応して、権限・責任を有する各国当局によって、あるいは最も関係の深い当局によって、迅速・的確な対応がとられることを期待しているところでございます。

問)

アメリカの通貨監督庁は25日、ネバダ州とカリフォルニア州の2つの地方銀行の業務を停止させたと発表したと聞いております。その理由は、資産価値と収益が減少して、資本不足に陥ったと説明されております。アメリカの銀行破綻は今年すでに5件発生しておりまして、これで7件目ということになっております。アメリカにとどまらず我が国でも市場の混乱が長期化すれば、日本の地域金融機関の健全性も脅かされるのではないか、といった見方もでてきておりますが、当局といたしまして、ストレステストの実施状況等も含めて長官のご見解を伺えればと思います。

答)

まず、事実関係としては、7月25日に米国の地方銀行であるファースト・ナショナル・バンク・オブ・ネバダ(ネバダ州)とファースト・へリテッジ・バンク(カリフォルニア州)の2行が資本不足に陥っているとして閉鎖された旨、米国の通貨監督庁より公表されたと承知しております。また同日、当該2行の全ての預金と一定の資産がミューチュアル・オブ・オマハ・バンクに承継される旨、米国の連邦預金保険公社(FDIC)により公表されたということも承知してところでございます。

ご指摘のように米国においては、地域金融機関の破綻がここのところ相次いでいるということでございますが、おそらく個々の機関ごとに事情は異なるのかと思いますが、おそらくわりあいと共通している背景には、米国における住宅ローン債権、あるいはそのローン債権を証券化した金融商品の価値が大幅に劣化するという事情があるのだろうと思います。また、その背景には当然のことながら、米国の住宅セクターの状況の悪化、住宅価格の低下、住宅ローンの延滞率の上昇、あるいは住宅在庫の積上りなどが相次いでいるということもあるのではと思います。

したがいまして、米国の地方銀行の破綻が直ちに我が国の地域金融機関の健全性に直結するものではなく、だいぶ事情が異なるのであろうと思います。住宅ローンだけに特化しているビジネスモデルを有している我が国の預金取扱金融機関はあまり見当たらないということでありますし、また、住宅ローンの供与にあたっては、かなり厳格な審査を行うということが一般的であろうかと思います。

ただ、もちろん今般のグローバルな市場の混乱が長期化すれば、保有している有価証券の価値への影響、これはすでにこれまでこの3月期等において認識をされ公表されているわけですが、そういった経路でのリスクの顕在化といったこともありうるでしょうし、また、米国の実体経済のダウンサイド(下方)リスクが顕在化するといったことが起きればそれに関連して我が国の実体経済も影響を受ける、あるいは地域経済の状況が必ずしも芳しくないといったようなことが続いている、こういった様々な要素がございますので、こういった経路を通じて日本の地域金融機関の財務の健全性にも影響が及ぶ可能性はございます。しかしながら、これは様々な間接的なルートを経由しての話ということでありまして、米国における地域銀行の破綻が直接影響を及ぼすという性格のものではないと思っております。

それから、地域金融機関を含めた銀行等における健全性確保のためのリスク管理のオペレーションですが、我が国は世界に先立ってバーゼル II (新しい自己資本比率規制)を導入したわけですけれども、その中の第二の柱がございまして、そこでは金利リスクと並んで与信集中リスクの管理が大きな柱となっております。そのことに加えまして、我が国の場合は早期警戒制度と組み合わせる形で第二の柱を実施に移しているわけですが、その一環として監督指針で市場リスクへの対応、その際の着眼点として、ストレステストの実施であるとか、市場リスクの計量において損失額が大きく発現するシナリオの分析、こういったところを掲げているところでございまして、各地域金融機関においても規模や抱えるリスクの特性に応じて適切に努力をされていると思っております。

問)

不動産・建設会社の経営破綻(はたん)がこのところ我が国で相次いでおります。この理由の一つとして、金融機関の融資が細って、資金繰りが悪化したということが指摘されております。長官として、現状の認識と、政策対応の必要性を含めて、ご見解を伺いたいと存じます。

答)

現状認識でございますが、この点につきましては、先月、金融庁が、中小企業金融の現状についての実態ヒアリングを行ったところでございます。その中で浮かび上がってきた点として、マンション在庫の増加や、改正建築基準法による着工の遅れ等を背景として、不良在庫を抱えた一部の不動産業者において資金繰りが厳しい状況にあるという状況が浮かび上がってきたということでございます。状況が厳しくなってきた企業に対して、金融機関の融資審査もそれに応じたものになってきているというふうに承知をしております。もとより、個別の貸出しにつきましては、金融機関自らの経営判断に基づき行われるものでありますけれども、各金融機関が適切なリスク管理を大前提としつつ、自らの責任と経営判断で、金融仲介機能を十全に発揮していただくことが重要だというふうに考えております。

政策対応という点につきましては、何点か取り組んできているわけでございますけれども、例えば、1点目に中小企業金融の円滑化に向けたパンフレットを作成して配布をしています。2点目として、金融検査マニュアル別冊中小企業融資編、これの説明会を全国でやっているわけですけれども、この説明会において、今申し上げたパンフレットの配布、周知等に努めている。3点目といたしまして、金融庁の検査・監督が不動産関連業種に対する融資に影響を与えているという声も散見されたことに対応する形でございますけれども、金融庁が金融機関に対して特定業種への融資について抑制的な指導をすることはないというメッセージを明確に発信し、例えば金融庁のウェブサイトにも掲載しているといった対応。4点目として、各地の商工会議所などに呼びかけて、金融円滑化ホットラインにおいて借り手の声を把握するキャンペーンを実施している。5点目として、融資をする側、各金融機関に対しまして、顧客への説明体制に関する自主点検を要請した。こういう対応をしてきているところでございます。

問)

先週、収益性の問題で(公的資金注入行)3行に業務改善命令が出たと思うのですが、ここにきて、地銀の収益力が一部でまた下がっているという意見もある中で、今後の改善計画とか、公的資金注入行に対する監視のあり方などご意見があればお聞かせください。

答)

ご案内のとおり、早期健全化法に基づく公的資本増強行に対しては、公的資金の返済財源を確保するための方策等を盛り込んだ、経営健全化計画というものを策定していただいているわけですが、その履行状況について報告を求め、これを公表することにより、金融機関自身による自己規正を促すという対応を基本としております。計画未達に対しましては、ガイドラインで「当期利益の実績が健全化計画に比べて、「3割以上下振れ」などの要件に該当した場合には、下振れの理由等について報告を徴求し、精査した上で業務改善命令の発動を検討する」というふうにされているわけであります。

今般、ご質問のあおぞら銀行、琉球銀行、岐阜銀行の3行については、今申し上げたような手続きを踏んだ上で、要件に該当するということで、抜本的収益改善策を織り込んだ業務改善計画の策定、履行などを求める業務改善命令を先週金曜日、25日に発出したものであります。

金融庁としては、各行が実効性のある収益改善策を含む業務改善計画を策定し、これを着実に履行することによって、収益力の改善が図られ公的資金の返済が確実なものになることを期待しているということでございます。

地域金融機関の収益力は、地域経済の動向などにも左右される面がございますけれども、公的資金注入行においては、公的資金の着実な返済という着眼点も含めて、金融庁としては注意深く見ていきたいというふうに思っております。現在は、この抜本的な収益改善策を織り込んだ業務改善計画の策定と報告を待っているという状況でございます。

問)

GSEに関連してなのですが、日本の金融機関のGSE関連債券の保有状況について、金融庁は、現状どの程度まで把握されているのかということを改めてお願いしたいのと、GSE関連債券保有による日本の金融機関の影響について改めてお願いします。

答)

GSE債の保有状況等につきましては、さまざまな報道がなされてきているということは承知いたしておりますけれども、報道も、我が国の主要銀行、保険会社等による保有というところに焦点を当てたものだったと思いますが、これら主要な銀行、保険会社のアセット、資産を見てみると、合計すればおそらく800兆円とか900兆円とか、そういうオーダーになるわけです。したがって、その中では、当然のことながら、さまざまな金融商品を保有している、あるいは貸出債権を保有しているということで、相当多様な商品等で構成されるポートフォリオになっているでしょうし、またそれぞれの金融機関によって、そのポートフォリオの性格、構造というものも異なるということであります。こういった大きな、800兆、900兆という中での、一部報道されたようなGSE債の保有額ということでございます。したがって、特定の資産カテゴリーだけに着目して保有状況をピックアップして、逐一、我々当局の方から状況を発表するということは、必ずしもふさわしくないのではないかと思っているところでございます。

当然のことながら、各金融機関のリスク管理の状況、あるいはリスクへのエクスポージャーの状況について、タイムリーに把握しておくということは大変大事なことでございますので、随時そういったヒアリング、情報交換ということは監督対象たる金融機関との間で行っているわけでございますが、本件GSE債そのものに即して、例えば、集計結果を公表するといったような対応は、今のところは考えていないということでございます。

これまで、サブプライム関連の証券化商品ということでは、このことが持つ重み、インパクトの大きさ、それから毀損(きそん)率が極めて高いといった特殊事情がございましたので、金融庁として集計をし、公表をさせていただいたということでございますが、これを逐一、さまざまなアセットカテゴリー(資産分類)に広げていくということは、どうなのかと思っております。それから、今回の米国の政府及び連邦議会でとられた対応によって、GSE債の信用度というものが再確認されたということであろうかと思います。もちろん、先ほども申し上げましたように、こういったポジティブな動きと、さまざまなネガティブな要素が並存している状況ということで、全体としては、なおグローバルな金融市場の緊張というものは続いていると認識しておりますけれども、このことの影響が我が国に波及する経路、チャネルとして、GSE債を通じるリスクの伝播が起きる蓋然性というのは低くなったと認識してよいのではないかというふうに思っております。

(以上)

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