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佐藤金融庁長官記者会見の概要

(平成20年8月4日(月)17時00分~17時25分 場所:金融庁会見室)

【長官より発言】

こんにちは。私の方からは特にございません。

【質疑応答】

問)

先の内閣改造で茂木新大臣が就任されましたけれども、新大臣を迎えるにあたっての率直な感想と、これまでに新大臣と長官がどのようなお話をされたのか、もし具体的な指示のようなものを受けていらっしゃるのであれば、その内容について伺いたいと思います。あともう一つ、渡辺前大臣のこれまでの業績につきましてどのように評価されているのかお願いします。

答)

今般の内閣改造で茂木大臣をお迎えいたしました。幅広い経験と高い見識をお持ちの大臣をお迎えすることができてありがたく思っております。事務方としては茂木新大臣のご指導の下、引き続き「金融システムの安定」、「利用者の保護・利用者利便の向上」そして「公正・透明で活力のある市場の確立」という金融行政の三大目標に向かって、職員一丸となって取り組んでいきたいと思っております。

より具体的な課題としては、サブプライム・ローン問題に端を発するグローバルな金融市場の混乱というのが続いておりますので、これにいかに適切に対応していくかということ、あるいは国内景気に陰りが見える中で、中小企業の業況が厳しくなってきている中で我が国の金融セクターが適切に金融仲介機能を発揮していくようにいかにしてもっていくかといったこと、また三つ目には我が国の金融・資本市場の国際競争力を強化していくという大きなテーマ、こういったテーマが主要なテーマとして含まれることになるのは確実だろうと思います。

渡辺前大臣からは、一年近くの期間にわたりまして大変貴重なご指導をいただいたところでございます。この一年間、まさにサブプライム・ローン問題がちょうど一年前に顕在化をして、それ以来このグローバルな市場の混乱が続いているということですけれども、渡辺前大臣からは非常にタイムリーな、的確なご指導を賜ったと思っております。もう一つの大きなテーマとして、我が国の金融・資本市場を活性化してその国際競争力を強化するという課題も大きかったわけですけれども、昨年末の「金融・資本市場競争力強化プラン」の策定、その後法律事項をまとめて金融商品取引法の改正という形で国会に提出させていただきましたけれども、その法律改正というのも成立を見たというようなことでございます。

問)

茂木大臣とは何かお話をされたのでしょうか。

答)

まだ、顔合わせ程度でございますので、これからじっくりと様々なご指導なりご指示なりをいただくことになると思います。大きな方向感としては当然、先ほど申し上げたような方向感であろうかと思います。

問)

先に発表されました大手行の第1四半期決算では、不良債権処分の増加傾向が鮮明になっておりますし、その収益力が弱まっている状況というのが窺えると思います。今回の決算の内容につきまして長官はどのように評価されていますでしょうか。

答)

主要銀行等の平成20年度第1四半期、4月―6月期の決算でございますが、未だ公表していない銀行もございますので確定的なことを申し上げる段階ではないですけれども、少なくともこれまでに公表された決算を見てみますと、傾向としては実質業務純益が前年同期比で概ね2~3割程度の減益となっていまして、また当期純利益についても減益となっている銀行が多いという状況でございます。

こういった収益状況の背景にある要因としては、第一に、サブプライム関連のものを含む証券化商品等に関して、損失額自体は減少しているわけですけれども、国際的な市場の緊張が続く中で我が国の金融機関においても損失が引き続き発生しているということ、第二に、原油や穀物、あるいは様々な原材料価格の高騰等を背景に景気の下振れリスクが顕在化しつつありまして、不良債権処理をはじめとする与信関係費用が増加しているということ、そして第三に、預貸ビジネス、手数料ビジネスといった本業における収益力が伸び悩んでいるといったことが挙げられるのではないかと思っております。

いずれにいたしましても、金融庁としては、金融市場の動向やそのことが金融機関に与える影響などについて、内外の関係当局とも連携しながら注意深くフォローしていきたいと思っております。

問)

先日の財務局長会議についてお伺いします。先ほど長官がおっしゃったように景気の下振れリスクというのが顕在化していると思うのですけれども、先だっての財務局長会議で、地域金融の現状とか、金融機関の貸出姿勢、経営内容についてどのような報告があったのかということについてお願いいたします。

答)

先般の7月31日の財務局長会議は、新しい事務年度に入って第1回目ということでございました。会議では、金融庁と財務局との間での認識や情報の共有を図るという狙いで、金融庁の各部局から金融検査・監督における最近の課題等、幅広い事項について説明を行ったところでございます。

会議の具体的な中身につきましては説明を差し控えますが、地域金融に関する当方の現状認識について申し上げれば以下のとおりでございます。

まず、地域経済の状況についてですけれども、これは先ほども申し上げましたように原油や穀物、あるいは原材料価格の高騰等を背景に景気の下振れリスクが顕在化しつつあって、地域金融機関の主たる取引先である中小企業の業況は厳しい状況にあると認識しております。

次に金融機関の貸出姿勢につきましては、まず貸出動向を見てみますと、中小企業向け貸出残高は若干の減少を示しているということでございます。また、こういった状況も踏まえまして、6月に金融庁でアンケート調査を実施したわけですけれども、その調査結果によりますと以下のようなポイントが浮かび上がってきたということでございます。少なくとも6月調査時点での認識としては、第一に、原油や原材料価格の高騰、あるいは売上げの低迷等を背景に中小企業の業況感は厳しいということ、第二に、資金繰りが厳しくなってきているということもありますが、その資金繰りが厳しくなっている要因としては、金融機関の融資姿勢等よりもむしろ販売不振あるいは在庫の長期化等といった営業面の要因が大きいということでございます。

次に地域金融機関自身の経営状況、経営内容についてですけれども、地域金融機関はいわゆるリレーションシップ・バンキング(地域密着型金融)の取組みをここ数年行っているわけですけれども、その中で中小企業の再生と地域経済の活性化を図ることなどを通じて金融機関自身の収益性の向上や財務の健全性の確保に努めるという狙いでございますけれども、こういった取組みがある程度成果をもたらしてきているという中で、全体として見ると、地域金融機関の自己資本比率や不良債権比率といった健全性に関わる指標が改善のトレンド(基調)の上にあるということかと思います。

以上申し上げましたような状況の下で改めて申し上げますと、地域金融の円滑化というのは民間金融機関、特に地域金融機関の最も重要な役割の一つだと思います。金融機関は適切なリスク管理の下で的確なリスクテイクをして、資金供給の一層の円滑化に努めることが重要であろうかと思います。また、併せて信用秩序の維持の観点、更に金融仲介機能を発揮していくという観点からも、民間金融機関自身の財務の健全性を維持するということも不可欠でございます。この二つの要請を同時に満たすように民間金融機関に促していくということが金融行政の課題であろうかと思います。金融庁としては積極的、かつ、きめ細かい実態把握を行い、金融機関の財務の健全性の維持と、地域の中小企業に対する円滑な資金供給の確保、これがよい循環をもって相互に補完していく、そういった状況の実現を目指していきたいと思っております。

問)

総理が与謝野経済財政相に総合経済対策を検討するよう早速指示したと聞いておりますが、金融庁関連でいいますと中小企業金融の円滑化についてどういう手立てを講じるかということになるかと思いますが、茂木大臣から事務方に経済対策の検討など具体的な指示が現時点であったのでしょうか。

答)

現時点で直接具体的なご指示はいただいておりません。土曜日(2日)以来、大臣自身申し上げているように中小企業金融の重要性は再三指摘されているわけでありまして、仮にご指示があった場合には迅速に最大限の工夫をして検討を行うことは当然のことだろうと思います。

先ほども申し上げましたように、原油高、原材料価格の高騰といったことを背景として景気下振れリスクが高まっている、リスクが顕在化している状況で、中小企業の業況は厳しい状況にあると金融庁としても認識しています。  その中で、中小企業金融の円滑化というのは、民間金融機関の最も重要な役割のひとつだと思っておりますので、先ほど申し上げたような精神をもって努力をしていくことになろうかと思います。

問)

金融庁として後押ししていくという何か具体的な手立てはあるのでしょうか。先ほどから長官の話を伺っていますと、中小企業の円滑化と財務の健全性の確保というのは、この景気の下振れリスクが高まる中ではなかなか両立させるのは困難であり、中小企業への融資を増やせば健全性に影響が出るかもしれません。その辺の行政の置かれた難しい環境下でどのような手立てを考えているのか、もう少し突っ込んで伺えますか。

答)

具体的な話についてはこれから検討していくことになると思います。まとまった段階でお話しできると思います。

それから、金融機関の財務の健全性と金融仲介機能の強化ということが相容れないようなものであるとは必ずしも思っておりません。財務の健全性がしっかりしていて、自己資本が十分にあるという状況の下では、当該金融機関は比較的的確なリスクテイクを行うことができるでしょうし、そのリスクテイクを行う際にきちんとしたリスク管理を維持しながら行うことによって、不良債権の発生を早め早めに手立てを講じることによって抑えることができるでしょうし、それがうまくいけば財務の健全性を維持しつつ、より大きなリスクテイクが行われることになる。ただエクスポージャーを増やすということだけではなくて、貸出が様々な経営上のアドバイスをしたりサポートしたりすることと組み合わされる、リレーションシップ・バンキングというのはまさにそういうところに真髄があろうかと思いますが、そういったことと組み合わされることによって融資先の企業の業況も改善する、あるいは悪化が食い止められるということがあろうかと思います。そういうことによって、金融機関自身の健全性も保たれていくという好循環が働くようなことが望ましいと思っております。

十分な、きちんとしたリスク管理を行わずにエクスポージャーを増やす、リスクテイクだけ先行することになりますと、時間の経過とともにその結果として不良債権が増えていく、自己資本が毀損(きそん)される、新たなリスクテイクを取りにくくなる、結果として金融仲介機能の発揮が制約を受けるということになり、これは悪循環のほうだと思いますが、そういう悪循環の世界に陥ることなく好循環の世界を強化していくという方向感だと思います。

現実の世界では、なかなか簡単に好循環の世界だけが実現することにはならないと思いますが、ある程度財務の健全性も回復している地域金融機関に、それぞれの地域の実情、個々の融資先企業の実情に合わせて創意工夫を発揮し、エクスパティーズ(専門性)を発揮していただいて、仲介機能を発揮していただくというご努力に期待したいと思っております。

問)

金曜日に、(生命)保険会社の改善報告が提出されましたが、今後よく見ていく点とか、再発防止について長官がどのような点を重視されていくのか教えてください。

答)

先週の8月1日に、それに先立って業務改善命令が出された10社から当庁に業務改善計画が提出されたところであります。各社それぞれの内容ですが、比較的共通している大きな要素としては、第一に経営管理(ガバナンス)を改善・強化する観点から経営陣に対する支払漏れの発生状況や原因分析の定期的な報告、第二に内部監査体制を改善・強化するという観点から監査部門の人員増強や支払漏れに焦点を当てた特別監査の実施、第三に支払いもれなどの再発防止の観点から契約に関する自動名寄せシステムの導入あるいは診断書の電子化、といった措置が盛り込まれていると承知しております。

金融庁としては、まずは各社がそれぞれ自らの責任で業務改善計画に盛り込まれた措置を着実に実施していただくことが何よりも重要であると考えておりまして、各社における実施状況をフォローアップしていく中で業務改善プロセスの定着を後押ししていきたいと思っております。

(以上)

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