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佐藤金融庁長官記者会見の概要

(平成20年8月11日(月)17時02分~17時20分 場所:金融庁会見室)

【長官より発言】

私からは特にございません。

【質疑応答】

問)

先ほど政府・与党の連絡会議が開かれて、総合的な経済対策について政府の基本方針が示されたと聞いております。この方針の趣旨を踏まえて月末までに更に細かい対策を打ち出すようですが、金融庁としては具体的にどのような取組みができるのか教えてください。

答)

本日、「『安心実現のための総合対策』に関する政府・与党会議」が開催され、「安心実現のための総合対策について」が取りまとめられたものと承知しております。この中で、柱立てとしては、(1)物価高等に直面する国民生活の不安を解消し、国民が安全・安心を実感できる対策、(2)「持続可能社会」への変革加速化のために必要な措置、(3)新価格体系への適応を円滑化するために必要な措置という柱が示されているところであります。

金融庁としてはこの柱立てに示された方針に則って、当庁として可能なものについてできる限りの貢献をしたいと考えております。

本日の取りまとめの中にもありますように、世界的な原油・食料価格高騰や景気悪化懸念は中小企業などに重大な影響を及ぼしつつあり、当庁としても中小企業などの業況は厳しいと認識しています。また、中小企業向け貸出残高は昨年9月以降減少傾向で推移しており、中小企業などの資金繰り判断は厳しいと承知しております。もとより、中小企業金融の円滑化は民間金融機関の最も重要な役割のひとつであり、民間金融機関には適切なリスク管理の下、的確なリスクテイクを行って資金供給の一層の円滑化に努めていただくことが重要であると思っております。また、その際、民間金融機関の財務の健全性を維持するということも、これは信用秩序の維持という観点からも、そして的確なリスクテイクを行う金融仲介機能を果たすという観点からも大事なことだと思っております。金融仲介機能の発揮ということと財務の健全性の維持という2つの要請を満たしていくように、相互に補完しあって強めていくということを促していくことが大事だと思っております。

こういう観点から金融庁では、これまでも金融機関や商工会議所等へのヒアリング調査、中小企業など借り手の声を幅広く取り入れる金融円滑化ホットラインの開設等を行ってきたところであります。今後、さらにきめ細かい実態把握を行い、その結果を検査・監督に的確に反映させていくことが重要であると考えています。よりきめ細かい実態把握としては、財務局による金融機関の融資動向等に関する調査、さらには金融庁幹部の地方出張により直接地域の声を伺うといった実態把握が含まれます。いずれにしましても、金融庁としては、総合対策の取りまとめに最大限貢献していくとともに、こうした中小企業金融の円滑化などに向けて全力をあげて取り組んでまいりたいと思っております。

問)

今のお答えの中にありました、幹部の全国派遣によるヒアリングを先週から行っているとお聞きしておりますが、具体的な方法や期間、さらにその結果をどのように反映させていくのかについて教えてください。

答)

全国の財務局を通じて、各地域の中小企業の経営相談に携わっておられる方々を対象にしたアンケート調査を実施しているところであります。9月中には調査結果を取りまとめたいと考えております。もちろんこれは中小企業の状況や金融機関の融資動向等について的確に把握するための取組みでございます。それと、金融庁の幹部を各地域に派遣する取組みですが、これは先ほど申し上げましたように、中小企業者や地域金融機関の生の声を伺うために、8月中を目途に各地域の中小企業金融の実態について直接ヒアリングを実施することとしており、先週よりこの取組みを開始しているところであります。これらの取組みの調査結果の金融行政への反映については、その内容を踏まえる必要があり、現時点で確たることは申し上げられませんが、今申し上げたような観点を踏まえつつ、具体的な取組みについて検討してまいりたいと思っております。

問)

先日、自民党の麻生幹事長が経済対策のひとつとして、300万円までの株式投資について配当金を非課税にすべきだと主張し、これに対して茂木大臣も「十分に検討すべき課題だ」と述べていますが、この問題について月末までの税制改正要望に盛り込むことも含めて、金融庁としてどのような対応をとるべきだと考えていますか。

答)

もとより金融庁は、「貯蓄から投資へ」という流れを推進していく立場でございまして、証券税制の分野でもこれまでも様々な取組みを行ってきたということでございます。ご案内のとおり、我が国においては約1,500兆円の個人金融資産のおおむね半分が現金・預金として保有されており、国民一人一人がより豊かさを実感できる社会を構築するためには、この個人金融資産に対して適切な投資機会を提供していくことが益々重要であると考えます。いずれにしましても、税制改正については8月末までに取りまとめて税制当局に要望しているところでありまして、平成21年度の要望内容については関係者のご意見等も踏まえつつ8月末に向けて検討していきたいと思っております。

問)

先週の会見でも出たと思うのですが、先週、大手銀行の四半期決算、4―6月期が出揃いまして、かなり振るわないといいますか、赤字というところも出てきています。この金融機関の収益力や経営を取り巻く現状についてどういうふうに見ていらっしゃるでしょうか。

答)

先週、主要行等の平成20年度第1四半期、4-6月期の決算が出揃ったところでございます。この評価につきましては先週も中途の段階でお答えしたわけですけれども、そのとき申し上げた認識に大きな変更を加える必要はないと思っています。すなわち一つには実質業務純益が前年同期比で概ね2~3割程度の減益となっている、そしてもう一つに最終的な利益、当期純利益につきましても減益となった銀行が多いということでございました。

こういった収益状況の背景としては、これも先般もお話ししたところでございますけれども、第一に、サブプライムの関連を含む証券化商品等に関して、損失額自体は減少してきていますけれども、国際的な市場の緊張が続く中で我が国の金融機関についても損失が引き続き発生しているということ、第二に、原油・原材料価格の高騰等を背景に景気の下振れリスクが高まっており、不良債権処理をはじめとする与信関係費用が増加しているということ、そして第三に、預貸ビジネス、あるいは手数料ビジネスといった本業における収益力が伸び悩んでいるという状況にあること、こういったことが背景にあると思っております。

いずれにいたしましても、金融庁としては、グローバルな金融市場の動向やそのことが我が国の金融機関の経営に与える影響等について、内外の当局とも連携しながら、引き続き注意深くフォローしていきたいと思っております。

問)

証券税制に関してですけれども、去年、与党の協議会で21年度と22年度の形というのはできたわけですけれども、それはそれとして改めて金融庁とてしても証券税制の再見直しと言っていいのかどうか、去年の議論は議論としてもう一度庁内で議論するという理解でよろしいのでしょうか。

答)

昨年の証券税制について一定の現時点における結論というものが取りまとめられ、それ以前に一昨年までの議論の経緯もあるということでございます。全体として現に固まっている制度、そしてこれまでの経緯、こういったことにも配意しながら、8月末の税制改正要望に向けた検討を行っていくということでございますが、先ほども申し上げましたように、金融庁としてはもとより「貯蓄から投資へ」という流れを推進していく精神でこの証券税制の問題には取り組んできているということでございますので、そういった前提での検討ということではあろうかと思います。

問)

麻生幹事長が配当金の非課税ということについて言及したことについてのご感想はどうでしょうか。

答)

麻生幹事長のご発言について、私ども事務方が直接論評を加える立場にはないと思いますけれども、我々金融庁の立場からいたしますと、先ほども申し上げましたように、証券税制については「貯蓄から投資へ」の流れを推進していくという立場でございますので、そういう観点からご発言を受け止めているということでございます。

問)

優遇の話ではよく、金持ち優遇ではないかとか、そもそも株式を持っていない人に効果がないものをやるのはどうなんだという疑問点も与党、公明党、その他からも出されているとは思うのですが、「貯蓄から投資へ」という流れの中でその株式優遇税制の位置づけというのをどうお考えですか。

答)

今、ご紹介いただいたようなご議論も昨年末の税制改正のご議論、これは政府部内の議論、それから与党等におけるご議論の中でも出てきているということでございます。そういった要素も含めた議論を経て昨年末に現在固まっているような税制が合意されており、固まっていることだろう思います。1,500兆円に及ぶ個人金融資産に適切な投資機会、選択肢を与えるということ自体はいずれにせよ大変重要な課題であると思っておりますし、また、このことが我が国の金融・資本市場の活性化に資する面も大きいと思っておりますので、様々なご意見、ご指摘等を踏まえながら、これから与党でのご議論も含めてそれらが進んでいくということだろうと思います。

(以上)

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