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佐藤金融庁長官記者会見の概要

(平成20年8月25日(月)17時02分~17時25分 場所:金融庁会見室)

【長官より発言】

私の方からは特にございません。

【質疑応答】

問)

2点ほど質問させていただきます。

税制改正の関連なのですが、株式投資の配当や譲渡益を高齢者については非課税にする要望を行うと報道などもされております。先ほどの茂木大臣の講演でも、小口投資家や高齢者についての優遇策を検討しているというような話もあったそうなのですが、具体的な今の検討状況がどうなっているのか。また、こうした案は、自民党が先にまとめております「健康現役社会実現のための検討事項」というのがありまして、それに近いものではないかと思うのですが、それとどのような違いがあるのでしょうか。

答)

証券税制に関します税制改正要望を8月末に提出する予定でございます。大きく二つの柱を考えておりまして、一つは、小口投資家の拡大の観点から小口投資家向けに毎年一定額までの上場株式等への投資に対する優遇措置を設けるということ。それからもう一つは、高齢者の老後の安心という観点から、高齢者の受け取る配当、譲渡益に対して優遇措置を設けるということでございます。ただ、現在まだ最終的な詰めの作業を行っているところでございますので、現時点でこれ以上の具体的な内容についてはコメントを差し控えたいと思います。

それから、自民党の合同部会で公表をなさいました、「高齢者の安心と活力強化に関する主要検討項目」というのがございましたが、この中に高齢者投資優遇制度というものの創設を検討する旨記載されております。金融庁の税制改正要望は今申し上げましたとおり、現在最終的な詰めの作業を行っているところでございますので、現時点で両者の間の具体的な関係等についてのコメントをすることは差し控えさせていただきたいと思います。

いずれにしましても、証券税制についての平成21年度の税制改正要望の基本的な考え方としては、貯蓄から投資への大きな流れを作るという観点から、我が国の個人金融資産1,500兆円に適切な運用の機会を付与するという精神で取り組んでいきたいというふうに思っております。

問)

次に、少し前ですが、日本銀行が発表しました月報(金融経済月報)でも、景気の現状について、「さらに減速」から「停滞」ということばを使いまして、判断を下方修正しているわけですけれども、金融庁として、今の景気の現状についてどのように認識しているのか改めてお答えいただきたいのと、また、金融機関の経営等に与える影響みたいなものも、併せてどのようにお考えなのかお聞かせください。

答)

日本銀行が8月19日の金融政策決定会合において「当面の金融政策運営について」という文書を決定し、この中で我が国の景気について「エネルギー・原材料価格高や輸出の増勢鈍化等を背景に、停滞している」というふうに表現されたことは承知をいたしております。

金融庁は、我が国経済全般について、その現状認識等を申し上げる責任と権能を持っているわけではございませんけれども、政府としては、今月の月例経済報告において、基調判断として景気はこのところ「弱含んでいる」というふうにされ、また先行きについては「当面弱い動きが続く」と見られています。なお、「アメリカ経済や株式・為替市場、原油価格の動向等によっては、景気が更に下振れするリスクが存在することに留意する必要がある」というふうにされているところでございます。

金融セクターを所管する金融庁の立場から申し上げれば、例えば、我が国の銀行の4-6月の四半期の決算の動向を見てみますと、全般的に収益が低調になっておりまして、その中で不良債権処理をはじめとする与信関連費用が増加するといった動向が読み取れるわけでありまして、景気停滞の間接的な影響が出てきているというふうに読み取れるかと思います。この背景の一つには、グローバルな金融・資本市場、サブプライム・ローン問題に端を発したグローバルな金融・資本市場の混乱が継続するということがあるでしょうし、また、原油高、原材料高等に起因する我が国の景気下振れリスクの高まり、その中で中小企業の業況が厳しくなっている、とこういった状況が背景にあるということは確実であろうかと思います。

これは以前から申し上げておりますように、サブプライム・ローン問題に関して言えば、我が国の金融機関によるサブプライム・ローン関連商品の保有というのは欧米の金融機関と比較して相対的に限定されている、ということでございまして、これを踏まえれば、現時点ではこうした金融・資本市場のグローバルな状況が直接我が国の金融システムに深刻な影響を及ぼすという状況ではないと考えておりますが、引き続き今後の金融・資本市場の動向には十分注意していく必要があると思っております。

それから、実体経済の悪化に伴う中小企業の業況悪化等につきましては、金融庁としては、現在、これも政府部内で作業が進められております「安心実現のための総合対策」のとりまとめに可能な範囲で最大限の貢献をしていくという心構えでございまして、その中で、中小企業金融の円滑化に向けて可能なことをできるだけ盛り込み、かつ、実施していくということで取り組んでいきたいというふうに思っております。

問)

今の、金融庁としての緊急経済対策の内容なのですが、もう少し具体的に固まってきているところは何かあるのでしょうか。

答)

政府全体としての総合対策の中で、厳しい状況を迎えている中小企業について、資金繰りの円滑化ということが一つの柱になろうかと思います。その中で、政府系金融機関における役割というのも重要だと思いますけれど、それと歩調を合わせて民間金融機関の信用供与の円滑化ということも重要な柱になってくると思いますので、そこに光を当てて取組みをしていくというのが、金融庁の役回りということだと思います。

この点につきましては、しばらく前から金融庁としても問題意識を持っておりまして、いわゆる合理性に欠ける貸し渋りということがないかどうかについては、注意深く実態把握をしていきたいというふうに思っていたところでございまして、既に先々週あたりから、金融庁の幹部が直接地方へお邪魔して、金融機関の皆さんとの意見交換、あるいは、借り手である中小企業の皆さんからのヒアリング等々も実施しているところでありますし、また、金融機関に対しては、財務の健全性を維持しつつ、適格なリスク管理を行いつつ、必要な場合にはきちんとしたリスクテイクを行って、中小企業への資金供給を行っていくということについて、改めて要請を行うと、こういったすぐに取り組める事柄については取組みを既に始めているということでもございます。

具体的な内容、更なる詳細につきましては、おそらく、今週中くらいにはまとまることになるのではないかと思いますので、それまでお待ちいただければと思います。

問)

今、幹部の方が派遣されて実態を調査しているということなのですが、地方の現状、中小企業の現状はかなり厳しいという理解でよろしいのでしょうか。

答)

繰り返し申し上げておりますように、原油高の影響、あるいは原材料価格の高騰といった、いわば個々の中小企業にとっては外部の要因によって経営が相当圧迫されているというケースがあるのは事実だろうと思います。そういう意味で、中小企業を取り巻く業況が全体として厳しいものであるという認識は引き続き持っているということでございます。

問)

その外部環境の中で、いわゆる金融機関の貸出の態度が悪化しているところは大きな要因になっているのでしょうか。

答)

金融機関の貸出姿勢、融資態度が変化しているかどうかについては、ある程度指標として、統計的にとっているものでございますけれども、明らかにそれが悪化しているというデータには、私自身はまだ接していないということでございます。

問)

幹部の方の声でもそういったものは、今のところ上がってきていないということでしょうか。

答)

まだ、全体をカバーしているわけでもないですし、まだ部分的ではありますけれども、当然のことながら、地域によって、あるいは業種によって、非常に厳しい状況にあるという声は聞いているところでございます。

問)

先ほどの証券税制に関してですが、二つの柱ということでしたが、適切な投資運用機会の提供と高齢者を優遇するということ(との関係)は、なかなかピンとこないのですが、なぜ資産形成層ではなくて高齢者なのか、そこのところをもう少し噛みくだいて説明いただけますか。

答)

適切な投資機会の提供ということは、我が国の金融・資本市場の競争力強化・活性化という政策課題についてお話しするときにも申し上げていた点でありまして、いわば、そういう政策課題とも整合的であるということを意識した表現を使わせていただいたということです。全体で見ると、その政策課題といわば収斂(しゅうれん)していく部分が大きいのかなという意識を持っているのですが、いまお尋ねの高齢者にとっての優遇措置といったような部分は、今申し上げた我が国の個人金融資産1,500兆円、これがどのような構成になっているか、内訳なども踏まえていくという趣旨も含まれているということでございます。

問)

内訳が多いからそこに優遇するというのは、結局、去年まで議論が膠着(こうちゃく)していた「金持ち優遇」になるのではないのですか。お金がないところを豊かにしてやろうというのが政策課題なのではないですか。

答)

政策課題というのは、一方で、政策的なインセンティブ(誘因)の付与というものが実際の経済主体の行動に結びついて効果をあげる、すなわち、実効性をもたなければいけないということがあろうかと思います。そしてまた他方で、ご質問いただいたように、いわゆる「金持ち優遇」との批判があるということもございますので、そういった批判にも十分配慮し、実効性を確保しつつそういった声にも配慮した枠組みを作れないかどうか詰めている、ということでございます。

問)

それに絡んで、大臣が先ほどの会見でイギリスの個人向け投資奨励制度であるISA(個人貯蓄口座)を手本にしたいというようなことに言及されたのですが、現状、金融庁の中で、イギリスISAについての検討というか研究はどういったところまでされているのでしょうか。

答)

今のご質問は、大臣が外国特派員協会で講演なさったお話だろうと推測しますが、私、講演そのものを聞いておりませんが、先ほど申し上げた二つの大きな柱のうちの一つめが、小口投資家の拡大という観点から小口投資家向けに毎年一定額までの上場株式等への投資に対する優遇措置を設けるということであるわけですが、この柱と、今ご質問なさった点というのは共通項があるかもしれません。具体的な内容につきましては、先ほど申し上げましたように最後の詰めの作業を行っておりますので、この程度にとどめさせていただきたいと思います。

問)

税の簡素化という観点から(すれば)、高齢者や小口投資家の優遇というのは、更に(税制が)複雑になる感じがして、財務省中心にこれから反対の声があがってくるかと思いますが、そのあたりいかがでしょうか。

答)

一般的に税制というのは、特に証券税制については小口投資家を含めた幅広い層に活用されることが大事で、制度ができるだけわかりやすいものであって、投資家の利便にかなうものであることが大事と思っておりまして、そういう意味では、現実的なものにするということは大事な点であろうかと思っております。いずれにしても、そういった点を含めて、これから議論が深められていくと思います。

問)

今の話に関連して、簡素でわかりやすいものといったときに、昨年の税制改正大綱で、配当については100万円までというものと譲渡益500万円(まで軽減税率を適用するということ)で合意があったと思いますが、今月これから金融庁が出す要望というのは、それにかぶせて新たな非課税枠を設けようという要望とするものなのか、去年のものをブラッシュアップ(改善)、リニューアル(更新)して作ってほしいという要望のどちらでしょうか。

答)

これは先般もお尋ねにお答えした点ですが、昨年末にその時点における証券税制の一定の結論が得られたわけで、できるだけその結論との整合性を維持しながら制度全体を考えていくことは大事な論点であり、今回の具体的な要求内容との詳細な関係については、今日この時点ではご勘弁をいただきたいと思います。

問)

小口投資家に対する減税は恒久的なものになるのか、あるいは時限的なもののどちらになるのでしょうか。

答)

その点も先ほどから申しているように、現在、最終的な詰めを行っていますので、これ以上の詳細なことは今日の時点ではコメントを差し控えさせていただきたいと思います。

(以上)

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