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佐藤金融庁長官記者会見の概要

(平成20年9月1日(月)17時01分~17時31分 場所:金融庁会見室)

【長官より発言】

私のほうからは特にございません。

【質疑応答】

問)

先週末なのですけれども、金融庁として09年度の概算要求と税制改正要望をまとめられました。概算要求では前年並みの195人の増員、税制改正では小口投資家や高齢者向けの思い切った投資非課税優遇措置制度を求めておりますけれども、今回の要求・要望の理由や狙いなどについてお聞かせください。

答)

まず予算要求のほうでございますけれども、4点ほどの重点項目というものを掲げておりまして、第1点はサブプライム・ローン問題を契機とするグローバルな市場の混乱への対応といったことにも端的に現れておりますように、海外監督当局との緊密な連携というものがますます重要になってきているということで、その対応のための体制の充実強化を図るということ。第2に、金融システムに内在する様々なリスクを早期に認識し、抽出し、的確にそれを監督行政に活かせるよう、そのための体制を充実・強化すること。第3に、市場強化プランを着実に推進し、信頼と活力のある市場を構築するため、市場監視体制の強化などを図ること。そして第4に、金融サービス利用者保護の施策を更に推進していくということのための体制を整備するということでございます。

具体的には、第1の海外当局等との連携強化のために20名程度、また、金融システムに内在するリスクの認識・抽出・活用といったことで45名程度、また、市場監視体制強化を含む市場強化のための体制整備として95名程度、更に利用者保護施策推進等のための体制整備として35名程度、合わせて195名の増員をお願いしているところであります。

また、予算要求につきましては、新たな行政需要に対応するための定員の増員に伴う経費のほか、海外当局との連携強化、市場監視体制の強化、利用者利便の向上、業務効率化のための情報システムの整備費といった項目を中心に231億円の予算を要求しているところでございます。

税制改正要望につきましては、「貯蓄から投資へ」の流れの促進、また我が国金融・資本市場の競争力強化に資するための環境整備といった観点から、必要な税制上の措置を要望しております。ご案内のとおり、我が国の個人金融資産は1,500兆円に及ぶわけですけれども、その内訳を見てみますと、現金・預金の割合が極めて高くて約52%、対しまして株式あるいは投資信託の割合が依然として低くて9%程度という特徴があるわけであります。また、この個人金融資産の保有者という観点から見てみますと、一つは若年層による株式投資信託の保有が少額で、金融資産残高も少ないということがございますので、長期的な観点から将来のための資産形成を促すということの重要性、それからもう一つ、高齢者による株式投資信託の割合の保有割合が全体の7割を占めるということで、更に近年、家計の利子所得が減少する一方で配当所得が増加するといったこともあり、いわば「第二の年金」としての重要性も高まっているという状況があろうかと思います。こうした状況を踏まえまして、「貯蓄から投資へ」の流れを促進していく中で、小口の継続的長期投資、そして高齢者の投資、これに対する優遇措置が重要であると考えまして、日本版ISA(小口の継続的長期投資非課税制度)の創設と、高齢者投資非課税制度の導入を柱として税制改正要望を行ったところでございます。

問)

来月、今年10月ですけれども、政策金融改革の一環で、商工組合中央金庫(商工中金)と日本政策投資銀行の2機関が株式会社化され、完全民営化に向けて動き出します。また、国民金融公庫などが再編成されて日本政策金融公庫も発足するわけですけれども、改めまして、金融監督を担う金融庁として、こうした動きに対して具体的にどう対応していかれるのか、方針やスケジュール等について教えてください。

答)

金融庁は政策金融改革全般について所掌する立場ではございませんけれども、民間金融を所管している立場から若干お答えをさせていただきます。

ご案内のとおり、政策金融改革においては現行の政策金融機関の担っている機能を抜本的に見直して再編をするということであると承知をいたしております。

このうち商工中金につきましては、本年10月1日に協同組織から株式会社に組織転換することとされておりまして、その際この商工中金の政府保有株式については概ね5年から7年後を目途に処分が行われ、完全民営化が予定されていると承知をしております。この中で商工中金につきまして、本年10月以降、金融庁も経済産業省及び財務省に加えて監督権限を有することになります。

それから日本政策投資銀行につきましては、本年10月1日に解散し、新たに株式会社日本政策投資銀行が設立されることとなっています。あらたな株式会社の政府保有株式については、設立後概ね5年から7年後を目途に処分が行われ、完全民営化が予定されていると承知をいたしております。新たなこの株式会社につきましては、株式会社日本政策投資銀行法の規定によりまして、預金等の取扱いを開始するまでの間における金融庁の関与というものは限定をされておりまして、原則として、リスク管理に関する委任検査にとどまるということでございます。同時に10月1日以降は、金融商品取引法上の登録金融機関となる予定と聞いております。

金融庁といたしましては、株式会社商工組合中央金庫の適切な監督に努めるとともに、株式会社商工組合中央金庫及び株式会社日本政策投資銀行が民間金融機関として、既存の民間金融機関と切磋琢磨しつつ、金融システム全体の安定やその活性化に資するとともに利用者利便の向上に貢献していかれることを期待したいと思っております。

なお、日本政策金融公庫につきましては、金融庁の所管外でございますのでコメントは差し控えたいと思いますけれども、広く一般論として申し上げれば、同公庫が民間金融機関の補完の役割を果たしつつ、国民経済及び金融システムの発展に資することが重要であると思っているところであります。

問)

証券優遇税制なのですが、要望に対して、システム整備も含めてなかなか実行は難しいのではないかという否定的な意見もあると思うのですが、今後の金融庁としての調整の進め方とか、方向性みたいなものを教えていただけますか。

答)

進め方としては、例年そうですけれども、年末の最終結論に向けて与党でのご議論が行われるということだと思いますし、その過程におきまして、要望元である金融庁はもとより、関係業界である証券業協会等々との意思疎通も重要であると思っております。当然、その中では税制当局である財務省との議論というものも行われていくということだろうと思います。

その中で、今ご指摘いただいた実務的な、証券会社の実務における実現可能性と申し上げましょうか、システム等の構築ということも1つの重要な要素であることはご指摘のとおりだと思います。したがって、この点については証券業協会等との議論もしながら進めていくということであろうかと思います。制度が複雑化するのではないか、といったご指摘も一部にあるかと思いますけれども、そういった様々なご意見も踏まえて、全体としてできるだけ簡素で、かつ投資家利便の向上に資するような証券税制の枠組みを検討していくことが重要だと思っております。

問)

先週金曜日に政府がまとめた総合経済対策で、中小企業金融の円滑化に4,000億円程度の対策を行うということが盛り込まれましたが、これについての評価と、金融庁として今後どのように対応していくかということを教えていただけますでしょうか。

答)

今、ご質問の中で挙げられた金額につきましてはおそらく主として政策金融を中心とした世界の話であろうかと思います。

いずれにいたしましても、先週の金曜日にまとめられました「安心実現のための緊急総合対策」中で、金融庁は民間金融を所管する立場から、中小企業金融の円滑化のためにできる限りの貢献をしたいと思っております。具体的に金融庁に関連する施策としては4点ほど入っていると思いますけれども、中小・零細企業金融の円滑化という項目の中で、第1に中小・零細企業金融のきめ細かい実態把握とフォローアップ、第2に一連の金融円滑化に関する金融機関への要請、第3に中小・零細企業の自己資本充実策や事業再生に向けた支援、そして第4に金融仲介機能の発揮・促進に向けた検査対応の一層の改善、このようなことが含まれているということでございます。

もとより、中小企業等に対する金融の円滑化というのは、預金取扱金融機関をはじめとする金融仲介機関の非常に重要な役割であるわけでありまして、特に昨今、原油や原材料価格が高騰する中で価格転嫁が困難と見られる中小・零細企業の資金繰り対策を拡充していくことは、この局面における大変重要な役割であると思っております。そういう意味で、この盛り込まれた対策の実施段階において、金融庁全体として財務局とも十分協力をしながら、この施策の効果的な実施に向けて取り組んでいきたいと思っております。

問)

あおぞら銀行が9月末の決算で赤字になる、下方修正するという報道があったのですけれども、この点について事実を把握されているかという点と、要因についてサブプライム問題があるということですけれども、改めて日本の金融システムに対してどのように認識されていらっしゃいますか。

答)

ご質問の点につきましては、ご指摘のような報道があったことは承知をいたしておりますけれども、何らか具体的な動きがあったというふうには承知をいたしておりません。いずれにせよ、個別銀行の経営に関わる話でございますので、コメントを申し上げるべきではないと思っております。

それから、サブプライム・ローン問題に端を発するグローバルな金融市場の混乱というのは欧米中心になお続いていて、マーケット全体に緊張が残っているというのは事実であろうかと思いますし、おそらく決算期ごとにその影響として何らかの損失が追加的に認識をされ、それが決算に反映されるという動きも、グローバルに見たときに、今後もなおしばらく続いていく蓋然性が高いのではないかと思っております。そういう中で我が国の金融セクターは、これは従来から申し上げているとおりでありますけれども、欧米の金融機関に比べますとこのサブプライム関連、あるいはその周辺部分にあるようなハイリスクの資産の保有というのは相対的には限定をされています。この点につきましては具体的な数値を金融庁で取りまとめをし、サブプライム関連証券化商品についての集計、そして先般は3月期決算に関してサブプライム以外の証券化商品についても集計を行って、集計ベースでの計数を皆さんにご報告したということでございます。そういう中で全体としてのエクスポージャー、そしてそこから発生する損失のマグ二チュ―ドを見てみますと、この問題が直接我が国の金融セクターに影響を及ぼして我が国の金融システムの健全性に大きなダメージを与えるというような状況にはないということを申し上げてきておりますけれども、この認識に現時点において変更はございません。いずれにせよ、グローバルな金融市場の混乱は多少はポジティブな動きもございますけれども、なおネガティブな要素が多数横たわっているということでございますので、金融庁としても内外の金融当局との連携や情報交換も含め、引き続き警戒水準を維持しつつ注意深く見ていきたいと思っています。

問)

証券税制で追加ですけれども、先ほど制度の複雑化の指摘もあるというご発言がありましたが、その制度複雑化の1つに申告事務の負担が指摘されています。すでに今回の要望よりも前の去年の税制改正ですでに譲渡益500万円、配当100万円以上の投資家については申告義務が課されるということで、そこですでに事務負担があるということに加えて、今度の高齢者向けについても非課税部分は還付申告が必要になるということの見通しのようですけれども、申告事務負担を軽減するという意味で簡素化について何か解決策についてお考えがあるかお聞かせ下さい。

答)

今のご質問の中にありました具体的な非課税措置や軽減措置を最終的に確定するための具体的な手続きの部分につきましては、これも年末の決着に向けた議論が行われていく中で固まっていくという性格のものであろうかと思います。大きな制度の骨格と、それから具体的な納税者の踏むべき手続きというのは一体不可分でございますので、その辺をよく整合性を見ながら議論をし、落とし所を探っていくことになろうかと思います。

問)

株券の電子化について二点ほど伺いたいのですが、今日も株主の移動システムの試験的なものが行われたと聞いておりますが、官民をあげた準備状況について現時点のご認識を伺いたいということと、予定どおり来年1月5日に実施することをいつごろまでに最終的に判断するかということをお伺いいたします。

答)

株券電子化については我が国の金融・資本市場全体の信頼性・効率性を高める上で非常に重要なステップであって、これをタイムリーに確実に実施していくということは金融庁にとっても非常に優先順位の高い課題であると位置づけているところでございまして、この点についての揺らぎはないということでございます。このことを大きな混乱なく着実に実施に移していくために、金融庁、業界団体、そして直接この業務を取り扱うセンターである証券保管振替機構、更には具体的に口座管理していただいている証券会社等が緊密な連携をとりあいながら、様々なチェック項目もつぶしていきながら準備を進めているという状況でございます。金融庁としても、業界団体や証券会社等に改めての準備状況のチェック、その準備のプロセスにおける経営トップの方の直接的な関与、様々な漏れのないテストの実施等についてお願いをしているところでございますし、金融庁自身も関係者に対する直接のオンサイトでのフォローアップといったことも含めて取組みをしていく予定でございます。

最終的な判断についてのシグナルということですけれども、現時点において、予定されているスケジュールを変更するという考えはございません。決まっているスケジュールに沿って、粛々と準備をし、粛々と実施に移していくということが重要であると思っております。

(以上)

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