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佐藤金融庁長官記者会見の概要

(平成20年9月11日(木)17時03分~17時24分 場所:金融庁会見室)

【長官より発言】

私からは特にございません。

【質疑応答】

問)

少し前の話になりますが、米(金融)当局による政府系住宅金融に対する経済措置、まず第1弾ということだと思いますが、これについての評価をお願いします。

答)

ご案内のとおり、ファニーメイ(米連邦住宅抵当公社)とフレディマック(米連邦住宅貸付抵当公社)は米国において住宅資金供給の円滑化を目的とする、いわゆるGSE(政府支援機関)でありますけれども、これらの経営悪化懸念から市場に混乱が広がってきていたところであります。これに対応すべく、米国では、GSEへの支援策を含む住宅関連の法律を7月に成立させるなどの取組みがなされてきたところであります。さらに、9月7日に米国政府は、「金融市場の安定」「住宅金融の円滑化」「納税者の保護」という3つの目的を達成すべく、今の法律に基づいて、両社を政府の管理下に置くと共に、財務省による両社の最優先株の購入に関する契約の締結、そしてGSEへの信用供与、さらにはGSEのモーゲージ債券の購入といった支援策を講ずることとしたと、こういうことと承知をいたしております。

これは、GSEの財務悪化懸念を背景とした、市場の混乱等を収束するための取組みであろうかと思います。米国当局の、金融市場におけるシステミックリスクの顕在化を防ごうとする、当局としての確固たる姿勢の表れだとも思います。そういう意味で、日本の金融監督当局としても、この動きを歓迎したいと思っております。

問)

それに関しまして、市場から、専門家等から米住宅の価格が下げ止まらない限りこのグローバルな金融危機は終わらないのでないか、という指摘もあるようですが、今後の金融市場の見通しについてお願いします。

答)

まず、最近の米国住宅市場の状況を見てみますと、連邦住宅公社監督局が公表している今年の4‐6月期の住宅購入価格は、前の四半期に比べて5.4%のマイナスということで引き続き下落しているということでございます。なお、下落の幅は、1‐3月期が6.9%でありましたので、若干鈍化しているということなのかもしれません。他方、中古住宅の販売件数、そして新築住宅の販売件数につきましては、この7月において、前月比でそれぞれプラス3.1%、あるいはプラス2.4%と改善しているということでございます。他方で、住宅ローン全体の延滞率については、依然として上昇しているという状況であると承知をいたしております。

米国では、今年に入って合わせて11行の地方銀行が破綻(はたん)をいたしました。先週5日にも、シルバー・ステート・バンクという銀行が州の銀行監督当局によって閉鎖されるということがございました。そして、この銀行の破綻の最も主要な要因は、貸出の多くが不動産関連貸出となっていたということで、米国住宅市場の状況が米国の金融機関の財務に深刻な影響を及ぼしているというのも事実であろうかと思います。

グローバルな金融市場の動向につきましては、GSE救済策の発表などのポジティブな要素もありますけれども、先ほど申し上げたように、相次ぐ米国地方銀行の破綻といった米国経済の先行き、不透明感を示すネガティブな要素も見られているわけであります。また、更にネガティブな要素としては、証券化商品などの複雑な金融商品のマーケットが、流動性を欠いた状態が続いている、あるいは短期金融市場も緊張が続いているといったような状況です。また、大手金融機関が巨額の損失を認識し、自己資本不足と認識された場合には資本調達が行われると、こういった動きになっていて、このサイクルが回っているということは、1つのポジティブな要素ではありますけれども、なお大きな損失を計上する大手金融機関が存在するといったようなことで、現在の状況はまだ出口が見えていないということだろうと思います。こういった状況の最も中心にあるのが、米国の住宅市場の状況ということだろうと思います。そういう意味では、米国の住宅市場が下げ止まるまで世界的な金融危機は終わらないという指摘がなされるのであろうかと思います。

金融庁としては、金融市場の先行きについて断定的な見解を申し上げることは差し控えたいと思いますけれども、先般来申し上げておりますように、ポジティブな動きがある一方で、ネガティブな要素もたくさん存在しているということで、グローバルな市場の混乱の収束には、なお相当程度の時間を要するものであろうと認識をいたしております。

なお、我が国につきましては、これも繰り返し申し上げておりますけれども、サブプライム関連商品等の保有を欧米の金融機関と比べますと、相対的に限定されているということで、今般のグローバルな金融市場の状況が、直接我が国の金融システムに深刻な影響を与える状況にはないと認識をいたしております。いずれにいたしましても、金融庁としても、警戒水準を維持しながら、様々な市場の動向、あるいはその金融機関に与える影響などについて内外の関係当局とも連携しながら、注意深くフォローしていきたいと思っております。

問)

先ほど、信金中金(信金中央金庫)が、自己資本の増強ということで2,200億(円)、各地の信金(信用金庫)から集めるという発表をされたのですけれども、その件について、信金・信組(信用組合)の中央機関の強化ということについては、金融審(金融審議会)でも議論をしているところですけれども、これから始まる金融審に先駆ける形で資本増強をしたということをどう評価しておられますか。

答)

本日、信金中金が自己資本の充実のために劣後ローンによって2,200億円程度の資本調達を行う旨公表したと承知をいたしております。金融機関の個別の資本政策に関わる経営判断に属する事項でございますので、詳細に踏み込んで当局としてコメントするということは差し控えたいと思いますけれども、一般論として、各金融機関が自助努力によって資本調達などを行い、財務基盤を強化し、その上で金融仲介機能を発揮する態勢を確固たるものにしていただくということは望ましいことだと思っております。

また、協同組織金融機関の場合には、その中央組織が果たす役割というものは極めて大きいと従来から認識しているところでございまして、今後とも信金中金においては、傘下の信用金庫に対する経営相談や資本増強支援制度などを通じて個別信用金庫の経営基盤強化に向けた取組みを積極的に進めていただけることを期待しているところでございます。

問)

米国市場に関連してですが、さきほど大手金融機関の自己資本不足が認識され、資本増強の動きのサイクルが出てきているという話でしたが、昨日リーマン・ブラザーズが巨額の赤字決算を発表し、経営再建策も合わせて公表しましたが、これには資本増強の発表はなかったということで、市場では一部失望したような声もありますが、このリーマン・ブラザーズの再建策の評価と、併せて、米国の民間金融機関への公的資金注入という声も市場ではありますが、どのようなお考えなのか教えてください。

答)

先ほど申し上げましたLCFI(巨大複合金融機関)における損失の早期認識と、必要な場合における資本調達への取組みは、昨年の秋以降全体のサイクルと申しますか、全体の姿を見てみるとそういうトレンドになっているということで申し上げたところでございます。今お尋ねのリーマン・ブラザーズについては、個別の金融機関の経営に関する事項でありますから、直接のコメントは差し控えさせていただきたいと思います。それぞれの金融機関が直面する状況に応じて、最適な対応が基本的には民間主導でなされることがまずは大切であると思います。

米国当局による公的資金を用いた資本注入については、まずは米国当局ご自身が検討される話であろうかと思いますので、我が国の立場で差し出がましいことを申し上げるべきではないと思います。他方で、先ほども申し上げましたようにファニーメイ、フレディマックのGSE2社に対する公的資金の注入は決定されたわけでございます。先ほども申し上げたように、こうした米国当局の動きは市場全体の大混乱を防ぐ、あるいはシステミックリスクを回避するという米国当局としての強い確固たる姿勢を示したものであると思います。米国当局においては、こういった姿勢で今後とも様々な問題に取り組んでいかれると思います。

問)

振り込め詐欺の問題で、被害額が過去最悪のペースで増えており、来週警察庁や全銀協と初めて金融庁の局長が会談するということですが、何か目新しい対策や今後取っていく方策があれば教えてください。

答)

振り込め詐欺の被害件数や被害額が大きくなっているということは遺憾に思っております。これは特に、家族等への思いやりという善意を逆手にとって人を騙すという意味で、大変悪辣(あくらつ)な行為であると思っております。

この問題について、金融機関における取組みも大事ですし、法制度的にも被害者を助ける枠組みも整備されているところですが、各金融機関においてもATMの置かれている店頭などで様々な努力をしていただいていると思いますが、被害者の方、あるいは被害者に潜在的になられる方々について改めて注意喚起をしていくことが重要ですし、そのような注意喚起が実効性を持つような工夫をしていくことが大事だと思います。今後とも各金融機関との間の意見交換の場などで注意喚起をし、警察庁とも連携をとりながら可能な対応に取り組んでいくことが基本だと思います。

問)

GSEへの公的資金投入が発表されたことによって株が大幅に下落し、アメリカの金融機関の間で株式の保有や経営に与える影響を発表する動きが相次いでいますが、株式が下落した影響は何らかの形で日本の金融機関に与える影響はあるのでしょうか。

答)

ファニーメイ、フレディマックの株価の下落ということですか。

問)

はい。

答)

公的資金であれ第三者割当てであれ、増資が行われる、あるいは資本注入が行われるということであれば、株式に関して言えばいわゆるダイリューション(希薄化)がおきますので、1株あたりの価値が下がるということは自然なことだと思います。他方で資本の増強によってGSEが保証するモーゲージ債あるいはGSEそのものが発行している債券の価値はより確かなものになり、スプレッドも小さくなろうかと思います。

GSE債については、我が国の金融機関や世界中の金融機関・投資家が相当規模を保有している状況はあると思いますが、他方で、日本の金融機関がこの2社の株式を大規模に保有しているという状況にはないと思います。

問)

金融システムも含めて、日本に関しては影響はないということでしょうか。

答)

2社の株式については、大規模に保有しているということは聞いておりませんので、その影響は極めて限定的だと思っております。

(以上)

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