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佐藤金融庁長官記者会見の概要

(平成20年9月18日(木)17時02分~17時36分 場所:金融庁会見室)

【長官より発言】

私の方からは特にございません。

【質疑応答】

問)

アメリカのAIG(アメリカン・インターナショナル・グループ)に対して、米政府の方で救済策を打ち出しました。AIGに関する日本法人がいくつかあると思いますが、この日本法人、または子会社、支店等に対して、どのような事業をしていくのかという関心があると思うのですが、金融庁として、どのようにAIGを見ていくのかというお考えをお願いします。

答)

AIGにつきましては、株価の下落、格付けの引下げなど、市場から非常に強い圧力がかかっていたところでございますが、こういう状況の下で、昨日、日本時間の9月17日10時、米国のFRB(連邦準備制度理事会)より、ニューヨーク連邦準備銀行がAIGに対して同社の資産を担保に最高850億ドルを融資するという旨の、AIGに対する救済策が発表されたわけであります。この発表文では更に、米国政府がAIGのエクイティ(自己資本)の79.9%を保有し、普通株及び優先株への配当を拒否することができる、といったことも付されているわけであります。今般の救済策によって、AIGの流動性への懸念というのは大幅に改善することが期待されているところでありまして、我が国としても歓迎しているところでございます。

我が国国内におきましては、AIGグループの保険会社7社が子会社又は支店形態で業務を行っておりまして、当然のことながら、金融庁としては、これらの保険会社に対しては従来より業務の適切性、財務の健全性などについて適切な監督に努めてきているところでございまして、今後も引き続き、今般の救済策も踏まえ、適切な監督に努めてまいりたいと思っております。 

なお、一般論でございますけれども、制度的な枠組みについて若干補足をさせていただきますと、我が国の保険業法上、免許を付与された保険会社であれば、海外の保険会社の傘下の保険会社、子会社の場合であれ、支店形態であれ、傘下の保険会社についても、我が国で引き受けた保険契約については、それに見合った責任準備金を我が国において積み立てることとされております。そういう意味で、制度的枠組みとして契約者の保護が確保される枠組みとなっているということでございます。

問)

昨日の(経済)財政諮問会議、または自民党部会等で貸し渋りの話が出ましたが、米金融不安を受けて地方の貸し渋りが起きないように、という政治からの要望があると思います。今般大臣のほうも、(全国)銀行協会に対して中小企業金融の円滑化に向けた努力を要請したようでありますが、金融庁として、今回の米金融の問題を受けて、貸し渋りへの対策はどのような方針で取り組まれていくのか、よろしくお願いします。

答)

昨日開催されました経済財政諮問会議において、国際金融・資本市場の状況を含む、最近の金融経済情勢について議論がなされました。それを受けて福田総理からは、「最近の金融情勢については、世界の金融・資本市場の動向を注視すると共に、我が国の市場や金融機関への影響、そして民間金融機関の貸出動向を通じた実体経済への影響を、迅速かつ正確に把握する必要がある」というご発言があったものと承知をいたしております。

ご案内のとおり、我が国の景気は、現状、弱含んでおりまして、国際金融・資本市場の混乱によって、更に下振れするリスクが存在していると思います。こうした中で、我が国の中小企業の業況は厳しい状況にありまして、適切かつ積極的な金融仲介機能の発揮が民間金融機関に求められているということかと思います。こうした状況の下で、民間金融機関は、借り手企業の経営実態や特性に対応したリスクテイクとリスク管理をきめ細かく行い、中小企業に対する円滑な資金供給の確保と、自らの財務の健全性の維持ということが、好循環をもって実現していく状態を目指していくということが重要であると考えております。

金融庁としては、このような基本的な考え方に基づきまして、以下の3項目に沿って中小企業金融の円滑化に取り組んでいきたいと思っております。第1は、きめ細かな実態把握と中小企業金融の円滑化に向けた監視、第2は、金融機関等への金融の円滑化の働きかけ、第3は、実態を踏まえた適切な検査・監督ということでございます。

このうち、「きめ細かな実態把握と中小企業金融の円滑化に向けた監視」ということにつきましては、当庁はこれまでも、幹部を地方に派遣して、借り手からの直接のヒアリングを含めた実態把握を実施するとか、あるいは中小企業など借り手の声を幅広く取り入れる「金融円滑化ホットライン」を開設するといった対応を行ってきたところでございますが、今後更にきめ細かい実態把握のために、以下の取組みを行うこととしております。すなわち、一つには、商工会議所等へのアンケート調査を定期的に実施するなど、地域の中小企業・金融機関等からの情報収集に努めること、二つ目に、中小企業金融の実態の監視を強化するため「金融円滑化ホットライン」の一層の周知を図るということ、三つ目に、関係省庁や関係機関との情報交換・連携を強化するということでございます。

改めて申し上げますが、金融庁としては、中小企業に対する円滑な金融は金融機関の最も重要な役割の一つであると認識をしております。今後とも、民間金融機関による中小企業に対する金融の円滑化を図るべく、中小企業金融のきめ細かい実態把握など各般の施策に取り組んでまいりたいと思っております。先ほど茂木大臣が与謝野大臣とともに全銀協(全国銀行協会)を訪問したということも、こういった基本的な心構えに則ったものであろうかと思います。

問)

先ほど日本銀行がアメリカのFRBと600億ドルの米ドルスワップ協定を締結したのですけれども、現状ドルの資金の供給がやや滞っている状況を踏まえて、異例の措置なのですけれども、これについてのご所見をお願いします。

答)

今般の中央銀行、主要国日米欧の中央銀行の間の協調行動に関しましては、現下の金融市場における資金調達圧力、特にドル市場ですけれども、それに対して、金融調節の円滑化を図るとともに、金融市場の機能の維持・安定の確保に資するというものとして、日本銀行において決定されたものでありまして、時宜に適ったものであると考えております。金融庁としては、中央銀行のこうした取組みについて、国際金融市場の安定、ひいては我が国金融市場の安定に資するものとして歓迎したいと思っております。

問)

昨日の自民党の部会と、民主党の部会と、(経済財政)諮問会議と、それぞれ金融庁の資料として、国内金融機関の銀行が中心ですけれども、リーマン(・ブラザーズ)向け債権ということで3,200億(円)、それから1,400億(円)が保全されているというような表を配っていると思うのですけれども、この数字は各金融機関が自分のところで計算して出したものですけれども、信用性というか、そこにはいろいろな見方もあると思うのですが、金融庁として債権の保全が適切かどうかといったことを調べる予定はあるのでしょうか。

答)

このリーマン・ブラザーズに対するエクスポージャーについては、各金融機関がそれぞれの判断で公表しているという状況でございまして、今ご質問の資料というものは、各行が自主的に公表したものを一覧表にまとめたという性格のものでございます。これとは別に、これと並行して金融庁としては、我が国の金融システムの安定を確保するという観点から、当局としての実態調査ということは行っておりますけれども、個別の金融機関へのエクスポージャーがどうであるかということはその都度当局から公表するという性格のものではないと思っておりますので、そのようなことを発表する予定はございません。

ただし、先ほど申し上げました当局としての実態把握を行っていく中で、現時点における認識としては、我が国金融機関のリーマン・ブラザーズに対するエクスポージャー、そこそこ規模があるということは事実でございますけれども、現時点において、各金融機関の自己資本の厚みなどに照らして、各金融機関の経営に重大な影響を与えるような問題は把握されていないということでございます。

問)

先ほどの中央銀行のドル資金供給対策に関連してお伺いしたいのですけれども、FRBと各中央銀行のドル資金供給ということで、金融政策面、中央銀行としての国際連携の一環だと思うのですが、金融監督の面でも国際連携の重要性が指摘されていますけれども、その面で今後の国際連携の対応についてどのようなことを考えていらっしゃるのかお伺いしたいのですが。

答)

中央銀行のレベルにおける国際協調、連携、そして監督当局者のレベルにおける国際協調、連携、情報の共有と、両方とも行われているということでございます。特に、ここにきてマーケットの緊張が高まっている状況においては、その状況に応じて、より密度の高い連携、連絡、情報共有といったことが行われているということでございます。こういう状況の下で、引き続きこういった監督当局間の連携というものも非常に重要でございますので、引き続きこういった状況に応じた連携をしっかりとやっていきたいと思っております。

問)

今回のリーマン・ブラザーズの破綻とAIGへの公的関与に関して、CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)のリスクの所在について注目が集まっていますが、国内の金融機関へのCDSの取引状況について改めて調査されるお考えはあるのでしょうか。

答)

AIGについてはグローバルなマーケットで非常に大規模に金融保証ないしCDSの取引を行っているということで、グローバルなマーケットのシステミックリスクにつながりかねないということで米国当局としても的確な対応を取られたということであろうかと思います。我が国の金融機関の業務内容につきましては、もともとデリバティブの取引を含め全体として、それぞれの各金融機関における市場リスクを含めたリスク管理がきちんと行われているかどうかということを、オフサイト・モニタリングやオンサイト(実地)のインスペクション(検査)でチェックをしているということでございまして、そういう中で見ていくということが基本であろうかと思っております。

問)

本日は9月18日で、9月中間決算期末を間もなく控えているわけですけれども、昨今の金融市場の混乱に伴って株式市場であったり金融市場のボラティリィティ(価格の変動性)が高まっていますけれども、こうした各種マーケットの情勢が、銀行であったり、保険会社であったり、金融機関の中間決算に与える影響についてどう見ていらっしゃるか教えていただけますか。

答)

一つのネガティブな要素としては、これはサインとしては既に3月決算、あるいは6月の四半期決算にも現れていますけれども、日本経済全体の下振れリスクが高まっている、あるいは中小企業中心に融資先の企業の業況が芳しくないということがあって、不良債権に対する引当金の増加といった傾向が読み取れておりまして、こういった傾向は注意深く見ていく必要があろうかと思います。それから一番近いところで、グローバルなマーケットの混乱の影響を受けて、例えばリーマン・ブラザーズの破綻に関連してリーマン・ブラザーズに対するエクスポージャーがある場合にはそのうちの一部が損失として認識されるといったようなこともあるのかもしれません。これに限らずマーケットの状況に応じて損失を認識するという要素もあるいはあるのかもしれません。この辺は9月決算がまとまってから分析をしっかりするということであろうかと思いますので、現時点で予断をもって何かを申し上げるべきではないと思っております。

先ほども申し上げており繰り返しになりますけれども、リーマン・ブラザーズの破綻に伴うエクスポージャーから生じる損失見込み等々に関しては、これが直ちに各金融機関の経営に深刻な影響を与えるような要素となっているという問題は把握していないということでございます。

問)

CDSについて伺いたいのですが、想定元本ベースでの取引残高が世界的にも増加していて、邦銀の取引残高も日銀の資料によると相当額増加しているのですが、この増加に関しては何らかの懸念はもっておられるのでしょうか。また、CDSのカウンターパーティー・リスクが、リーマン・ブラザーズの債権でヘッジしたと言われている部分が本当にヘッジできているのかどうか、その辺りはどのようにお考えでしょうか。

答)

クレジット・デフォルト・スワップという信用デリバティブについて、ここ数年の間に信用リスクのヘッジ手段として急速にその市場規模が拡大したということは事実でございます。基本的には、各金融機関の全体としての信用リスクをコントロールする、信用リスクのマネジメントの手段として使われているケースが一般的であると認識をしておりますけれども、使いようによっては、プロテクションの売りのサイドに偏った形で大量のエクスポージャーを抱え込むということになりますと、そこはリスク管理上の問題にもつながってきうるものであろうかと思っております。グローバルなマーケットで起きているデリバティブ取引市場の拡大ということでございますので、そういったグローバルな市場動向の下で、我が国金融機関も適切にリスク管理を行う中でこういったデリバティブを活用していくということが基本であろうかと思っております。

それから、例えばリーマン・ブラザーズに対するエクスポージャーについてヘッジの仕方が適切であるかどうかというご質問ですけれども、今申し上げた、全体としてのリスク管理の中でどういったポジションを持ち、どういったヘッジをかけるかということは、各金融機関におけるそれぞれのリスク管理全体の中で適切な判断がなされるべきものであろうかと思っておりまして、特定の個社のエクスポージャーに即してヘッジがされているのかどうかということよりは、それぞれの金融機関のトータルなリスク管理の中できちんとした、全体としての管理が行われているかどうかということの方が重要ではないかと思っております。

問)

日本の金融庁は業務改善命令、業務停止命令を発出しましたが、諸外国の監督官庁はどのような動きをしたのか教えていただけますか。

答)

事実関係について正確なところは後ほど監督局の方へお問い合わせをいただきたいと思います。金融庁としての対応はご案内のとおり、我が国の現地法人の顧客に被害が及ばないように、顧客保護の観点、あるいは我が国の市場が混乱しないようにという観点から、9月15日に資産の国内保有命令、そして投資者財産の保全に関する業務改善命令を発出したところであり、かつ、また、リーマン・ブラザーズの我が国の現地法人の方から、長期的に見た場合に支払い不能に陥る恐れがあるという報告を受けまして、業務停止命令を発出したということでございます。この辺の監督官庁としての対応については当然のことながら、現地法人の存在している海外の監督当局においても共通の問題意識を抱いて対応をしてきているというのが最も一般的なお答えになろうかと思います。それぞれの国において、法的枠組みの違いであるとか、あるいは現地法人自身がどういうアクションに出たかといったようなことの違いですとか、そういう前後関係等もございますので、正確なところは監督局にお問い合わせをいただければと思います。いずれにいたしましても、同じような問題意識を共有しながら対応してきているというのが一般的なお答えになろうかと思います。

問)

中小企業金融の関係ですが、信用保証協会の保証融資の承諾が今、非常に減っていまして、それが結果として中小企業の資金繰りを悪化させているのではないかという事実があります。その減っている理由が、金融機関がそういった斡旋というか紹介をしないせいで、結果としてそれが貸し渋りにつながっていると同時に、去年の10月に導入した責任共有制度の問題もそれに拍車をかけているという見方があるのですが、金融庁は信用保証協会も所管していると思うのですが、そういった考え方についてどうお受け止めですか。

答)

先ほどから申し上げておりますように、金融機関は中小企業に対して適切な金融仲介の機能を果たすということが最も重要な役割の一つでございますので、金融庁としてはもともと金融機関に対してそのような役割を強く期待しているということでございます。その中で信用保証協会による保証という制度の利用状況については、今ご質問の中で触れられたような事態があるとすれば、例えば責任共有制度に関しては保証が100%でなければ貸さないというような対応はまさに先ほど申し上げた金融仲介機能を果たしていないということであって、流動性を供給しているだけということになります。ですから、信用保証の責任共有制度の下においては信用供与をする金融機関においても一部のリスク負担をするということでございますけれども、そのリスク負担を前提として、金融機関が融資先企業の業務の実態や資金の使途等をきめ細かく調べて融資審査を行い、適格な場合には然るべきリスクテイクを行って、これを自らの金融機関全体としてのリスク管理の中でうまく位置づけることによって金融仲介機能を発揮していくということが、まさに金融機関の期待されている機能であると思いますので、そういった業務運営というものを強く期待したいと思っています。

問)

先ほどの日本銀行の施策についてですけれども、これはカウンターパーティー・リスクということで各金融機関がドルを抱え込んでいるということだと思うのですが、日本の短期市場で金融機関によるドル取引というものに、現状どういうふうに金融機関への影響が出ているのかについて分析などされていますでしょうか。

答)

ご質問のインターバンク市場における短期金融の動向、あるいはそのドル資金の取引の状況につきましては、今般まさに決定をなさいました日本銀行において正確かつ詳らかに認識をされておられることと思いますので、私から直接コメントすることは差し控えさせていただきたいと思います。

(以上)

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