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佐藤金融庁長官記者会見の概要

(平成20年 9月29日(月)17時03分~17時20分 場所:金融庁会見室)

【長官より発言】

私の方から一点ご報告します。本日の事務次官等会議には、総理、官房長官、松本副長官、鴻池副長官がご出席になられまして、総理からは、役所における仕事の仕方に関して、スピーディーを旨とせよ、悪い情報ほどすぐ上にあげよ、省益を捨て国益に徹せよ、これは自分の仕事ではないと決して言ってはいけない、こういったご指示をいただいたところです。また、官房長官からも、各省庁が連携して仕事に取り組むようにご指示をいただいたところでございます。

【質疑応答】

問)

アメリカで昨日、金融安定化法案をめぐる議会と政府との協議が大筋合意に達しました。不良債権を買い取る金融機関の首脳の報酬制限ですとか、監視委員会の設置等の諸条件も盛り込まれましたけれども、今回の合意についての評価、及びその合意がもたらす日本や世界の金融・資本市場に与える影響などについてお聞かせください。

答)

米国東部時間の9月28日に、ポールソン財務長官及び上下両院の主要メンバーが、金融経済安定化法案に関する暫定合意に至った旨を公表し、その後、下院金融サービス委員会により、同法案のドラフトが公表されたと承知をいたしております。この法案は、現下の緊張したグローバルな金融情勢を踏まえて、米国政府及び議会が、問題解決に向けて精力的な取組みを行われたものでありまして、金融庁としては、米国政府、議会の間において暫定合意に至ったことを歓迎したいと思っております。

この法案は、上下両院での議論を経て決定されるものと承知いたしておりまして、今回の合意が、日本を含むグローバルな金融市場に与える影響、あるいは盛り込まれた措置の実効性等について、現段階で予断を持って断定的な見解を申し述べることは差し控えるべきだろうと思います。ただし、今のグローバルな金融混乱の大きな原因であるところの過大なレバレッジを秩序だった形で解消していくという取組みに寄与するものであろうかと思いますので、現実にそういう効果が出てくることを期待しているところでございます。そういう意味で、金融庁としては、この法案が速やかに成立をし、米国をはじめグローバルな金融市場の安定につながることを期待したいということでございます。

問)

同様にアメリカなのですが、地域金融機関のワシントン・ミューチュアルが破綻(はたん)したり、今日は、イギリスの方でも同様に、地域金融機関の破綻が相次いでいますけれども、アメリカとかイギリスのこういった、いわゆる地域金融機関の破綻が急増しているわけですけれども、こういった破綻が日本の金融機関の経営に影響を及ぼすおそれ等について、金融庁として現状どう考えているのか。例えば国内の金融機関が保有する、こうしたアメリカの地方金融機関の株式や債券の状況等について、新たな調査をするお考えはありますでしょうか。

答)

昨年以来動揺が続いているグローバル金融市場でございますが、その中で米国の不動産住宅市場はなお低迷を続けているということで、不動産や建設業向けの融資や、あるいは住宅ローンに与信が集中している米国の地域金融機関につきましては、経営の悪化が懸念されているわけであります。実際に、先週末の貯蓄金融機関最大手ワシントン・ミューチュアルの破綻をはじめとして、今年に入って13の地域金融機関が破綻しているというところでございます。また、たった先ほどでございますけれども、英国のブラッドフォード・アンド・ビングレーという金融機関が一部国有化されるといったニュースも飛び込んできたところでございます。このブラッドフォード・アンド・ビングレーにつきましても、やはりその与信が、住宅セクター、住宅ローン等に相当程度集中していたという特徴があるのではないかと思っております。

そういう観点からいたしますと、こういった形で住宅セクター、あるいは住宅ローンにそのエクスポージャーが集中しているというビジネスモデルをとっている国内金融機関があるとは承知をいたしておりませんので、また、日本の住宅セクターは米・英ほどの大きな動揺をきたしているという状況でもございませんので、こういった現象が直ちに我が国の金融機関の経営に重大な影響を及ぼす、といった見通しを示唆するものではないのではないかと思っております。

ただ当然のことながら、そういう因果関係とは別に、グローバルな金融市場でなお緊張が続いております。このことがグローバルな実体経済に悪影響を与え、そのことを通じて我が国の金融機関の融資先企業の業況にも悪影響が及ぶといったようなことで、別の因果関係、別のチャネルを通じて悪影響が及ぶ可能性ということはありうるわけでございますので、金融庁としては、引き続き高い警戒水準を維持しつつ、金融市場の動向を注視するとともに、内外の関係当局と一層緊密に連携しながら、適切な対応に努めていきたいと思っております。

なお、国内金融機関が保有する米国の地域金融機関の株式や債券の状況につきましては、一般論としてお答えをしたいと思いますけれども、金融庁としては、金融機関が市場環境の変化も念頭に置きつつ適切にリスク管理に取り組むことが重要であると考えておりまして、このような考え方に立って、米国の地域金融機関の株式や債券の保有状況に限らず、各金融機関のリスク管理状況等について、日常的にヒアリングや情報交換を進めているところでございます。いずれにいたしましても、現時点においてこういった問題が、直接、我が国の金融機関の経営に重大な影響を与えるといった事例は把握されておりません。

問)

今回のアメリカの金融安定化法案の中で、時価会計を一時停止する権限をアメリカSEC(証券取引委員会)に付与するという文言も入っていたかと思うのですが、この点に関連して、日本で同様にそういう権限を入れるべきなのかどうか、ニーズがあるのかどうかという点と、仮に入れる時には、日本でそういう会計処理の停止権限というのは、今仕組み上持っているのかどうかというこの2点についてお尋ねしたいのですが。

答)

お尋ねの点につきましては、先ほど申し上げたような米国内における状況でございますし、また、これから上下両院で議論をされた上で最終案が法律として成立するという段取りでございますので、その中に含まれております個別の施策についてこの時点で具体的にコメントするということは差し控えた方がよろしいかと思います。

一般論として、会計基準というものは、金融・資本市場におけるものさしの役割を果たしておりますので、その果たす役割の重さということは当然前提に考えていくということが共通の理解・認識であろうかとは思います。本件法案における具体的な取組み、具体的な措置についてはこの時点ではコメントは差し控えさせていただきたいと思います。

問)

先週末に大和都市管財に関しての二審の判決が出たのですが、この判決についての評価と今後の対応について教えてください。

答)

大和都市管財事件の控訴審判決におきまして、国の主張が認められなかったことについては、遺憾に思っております。今後の対応につきましては、判決内容を十分に精査しつつ、関係当局とも協議しながら検討していきたいというふうに思っております。現時点で、これ以上のコメントは差し控えさせていただきたいと思います。

問)

少し日にちが経ってしまいましたが、財務大臣と金融担当大臣が兼務することになったわけですが、ご感想と、財金再統合という話もありますが、いかがでしょうか。

答)

このところの米国やグローバル市場における金融不安といったこと、そして国際金融情勢が我が国の国内経済にも大きく影響を与えうること、こういった中で、国内の関係当局が密接に連携すると同時に海外当局との連携も非常に重要で、その必要性が一層高まっている局面だと思っております。その高まりに応じて国内当局間の連携、海外当局との連携も強化されてきている実態にあると思います。総理はこうした点を考慮されて今回の財務大臣と金融担当大臣の兼務を判断されたと受け止めています。

いずれにしましても、金融庁としては、金融システムの安定、金融サービスの利用者の保護・利用者利便の向上、そして公正・透明な金融・資本市場の確立という、この3つを大きな行政目的として位置づけた上で、透明かつ公正な金融行政の遂行に一貫して取り組んできたということでして、財金分離の趣旨を踏まえつつ、引き続き金融行政の適正な運営に努めてまいりたいと思います。

中央省庁改革における財務省と金融庁の発足以来、両省庁はそれぞれ独立して運営を行ってきており、今回の兼任は、中川大臣が責任者となって独立した2つの省庁の連携に万全を期するためのものと思っておりまして、いわゆる財金分離との関係についても特段の問題はないものと考えております。

(以上)

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