英語版はこちら新しいウィンドウで開きます

佐藤金融庁長官記者会見の概要

(平成20年10月6日(月)17時02分~17時32分 場所:金融庁会見室)

【長官より発言】

私の方からは特にありません。

【質疑応答】

問)

先週末、米国の方で金融救済法案が成立しましたが、それに関するご所見をお聞かせください。また、それに関連して、法律を施行するにあたって米国債の増発が見込まれるとされています。その引受け先として日本とか世界各国が国債を引き受けるのではないかという見方も出ていますが、それについてお考えをお聞かせください。それで、米国債の引受けみたいなものが、今週のG7(主要7か国財務大臣・中央銀行総裁会議)でも検討されるとも言われていますが、G7との関係についても触れていただければありがたいです。

答)

米国時間の10月3日金曜日午後1時過ぎ、日本時間で申しますと10月4日土曜日午前2時過ぎ、先に上院にて一部修正の上可決された緊急経済安定化法案が米国の下院においても可決され、そのあと、大統領署名を経て成立したということでございます。今般の法案の成立は、米国政府と議会が現下の金融情勢を踏まえて、問題解決に向けて所要の取組みを行ったものとして歓迎したいと思います。今後この法案に盛り込まれた措置が着実に実施されることで、米国及び世界の金融市場の安定につながることを期待いたしております。

この法律の評価についてのお尋ねでございますけれども、その前提として、この現在の世界の金融市場の混乱に関して、基本的にはそれぞれ権限と責任を有する当局が、自国の金融市場、金融セクターの状況に応じてそれぞれ的確な対応をとる、また、その際に関係当局が緊密な連携を図りながら進めていく、ということが重要であると思っております。この法に盛り込まれております不良資産の買取りのスキームがうまく機能すれば、市場で流動性の枯渇した証券化商品などについて売買が戻ってくる、結果として市場価格が今よりは分かりやすくなるということがあるでしょうし、またこれがうまく機能すれば、銀行のバランスシートから不良資産を切り離すことができ、その結果として、銀行にとっての追加損失のリスクというものが遮断されるという効果を持つのであろうかと思っております。そういう意味で、この法律に盛り込まれたスキームができるだけ速やかに、適切な方法で実施に移されることを期待しているということでございます。

それから、この法律の実施に伴って米国債が増発される可能性があって、これを日本などが引き受けるよう要請をされている、といった一部の報道につきましては、現時点で金融庁としてそのような要請がなされているとは承知いたしておりません。

それから、最後に次回のG7においての議題でございますけれども、現下の国際的な金融市場の混乱、この問題への対応というのは、当然のことながら議論の中心となると予想されますけれども、議題の詳細は議長国である米国からまだ公表されておりません。したがって、現時点で具体的なコメントを申し上げることは差し控えたいと思います。一般論として申し上げれば、麻生総理の国連演説の中でも触れられておりますように、我が国にはバブル崩壊以降、金融安定化の問題に取り組んできた経験と知識がありますので、国際会議等の機会を通じて、できるだけこれを伝えるということで、世界の金融・資本市場の安定化に貢献していくことが一つの役割かと考えております。

いずれにいたしましても、グローバルな金融市場における緊張というものは強いものが続いておりますので、金融庁としても高い警戒水準を維持しながら、金融市場の動向などを十分注視するとともに、内外の関係当局と一層緊密に連携しながら適切に対応に努めていきたいと思っております。

問)

保険の関係で、米保険大手のAIG(アメリカン・インターナショナル・グループ)が、国内でも営業しているアリコの売却と、それに加えて、AIGエジソン生命、AIGスター生命の売却方針を発表しました。これについての金融庁としてのお考えをお聞かせください。また、それに絡んで、売却のスキームの関係で、保険契約の分割譲渡を金融庁のほうとしても認めるのか認めないのかという報道が一部にありますが、その契約の移行に関してのお考えもお聞かせください。

答)

10月3日金曜日にAIGが事業再編計画を公表し、日本のAIGグループの保険会社につきましては、生命保険会社3社、すなわち、アリコ、AIGスター生命、AIGエジソン生命を売却する意向を示したところでございます。

お尋ねの、我が国保険業界の再編につきましては、民間企業同士の経営判断に属する事柄でございますので、当局としてのコメントは差し控えたいと思います。ごく一般論として申し上げれば、保険会社各社においては、それぞれの経営判断の下で、しっかりとした財務の健全性を維持しつつ、顧客のニーズにマッチした質の高いサービスを提供していっていただく。そういった事業展開に取り組むことによって、経営基盤の強化と顧客サービスの質の向上ということの実現につなげていっていただくとありがたいと思っております。

これは、お尋ねの中には入ってございませんけれども、念のために申し上げておきますと、今回のこの3社の売却、あるいは株主の移動による我が国における保険契約者への影響については、一般論として、仮に保険会社の株主が変更した場合であっても、既存の保険契約に直接に影響が及ぶものではないと考えております。保険会社は、現地法人の形態であれ、支店の形態であれ、我が国において引き受けた保険契約の額に見合った責任準備金を積み立てることとされておりまして、契約者の保険の支払いが確保される枠組みとなっているところでございます。

いずれにいたしましても、この我が国にあるAIGグループの保険会社については、今後の動向を注意深く見ていきながら、引き続き適切な監督に努めていきたいと思います。

それから、保険契約の移転単位の見直しにつきましては、昨年秋、金融審議会金融分科会第二部会において議論が行われまして、12月の第二部会報告では、十分に議論を深めつつ、引き続き丁寧に検討すべき、と位置づけられたところでございます。本件につきましては、本年9月、第二部会より保険の基本問題に関するワーキング・グループに対して、今後の検討テーマの一つとして検討が付託されたところでありまして、同ワーキング・グループで、今後議論されていく(テーマの)一つであると考えております。ただし、本件については現時点において、いつから議論を行うのか、いつまでに結論を出すのかという具体的なスケジュールは固まっていないと理解しております。いずれにいたしましても、金融庁としてはその議論にも注視していきたいと思っております。

問)

今、おっしゃいましたけれども、AIGの保険についてなのですけれども、実際に契約者の方はすごく不安に思っていらっしゃると思いますけれども、改めてそのような皆様に対してのコメントをお願いいたします。

答)

先ほど申し上げましたように、我が国の保険業法に基づく保険会社の財務、経理のあり方につきましては、我が国で契約された保険契約については、それに対応した責任準備金を積み立てることとされております。そういう枠組みが整っているわけでございまして、今般の米国におけるAIGグループの問題が表面化する以前から、我が国における3社の営業というものは、こういったルールに則って、適切に財務の健全性を維持しながら行われていたと思っております。加えまして、日本にあるAIGグループの生命保険会社3社自身が、以下のようなメッセージを発表しているということでございます。すなわち、今般のAIGの事業再編計画に関して、当該3社の株主が変更となっても、顧客の保険契約が変更するものでないこと、サービス体制等についても変更がないこと、こういった点を発表していると承知しております。

問)

金融市場の混乱を受けて、今日の東京株式市場は一時500円安と大幅に下がったわけですが、これは2004年2月以来の安値ということです。株価の水準そのもののコメントは求めませんが、銀行の財務に与える影響についてですが、金融庁としては従来からストレス・テストをやっていると承知しておりますが、今日の株価水準を見てみると10,000円割れも伺うような状況となってきました。10,000円を割れた場合の、金融機関の財務の健全性についてどのようにお考えでしょうか。

答)

株価が大きな下落を示しているわけですが、この株価が我が国の金融機関の経営に与える影響については、各金融機関で保有する株式の規模や銘柄等は異なるので一概に申し上げることはできないですが、全体として見ると我が国の金融機関は近年株式の保有を減らしてきておりまして、株価変動による財務への影響は以前と比べて相当小さくなっていると認識しております。例えば日銀のデータによりますと、平成10年8月末で45兆8千億円あったものが、直近の平成20年8月末では20兆5千億円余りということになっています。

ストレス・テストというお尋ねですが、例えば9月末時点で株価、これは日経平均で捉えてみますと、本年6月末と比べて16%強下落しております。この間の株価下落が金融機関の財務に与える影響について、例えば主要行等についてはこの16%強の下落を使って一定の仮定を置いて試算した場合に、6月末の自己資本比率が平均11.9%ございましたけれども、これが0.3ポイント程度下落するということでございまして、これがひとつの例ですけれども、こういったことも併せて考えますと、今般の株価下落も、我が国金融セクターとしての姿で見ると、預金取扱金融機関の財務の健全性を大きく損なうものではないと思っております。

いずれにしましても、このグローバルな金融市場の混乱、また、それに端を発する株式市場の動向等影響が続いておりますので、引き続き警戒水準を維持して注意深く見ていきたいと思います。

問)

メガバンク、地方銀行の中小企業向け貸出の運営スタンスについての現状のご認識と、金融庁と中小企業庁が共同で始めています実態調査の結果を今後の金融行政にどのように反映させていくのかという2点について教えてください。

答)

以前から申し上げておりますが、中小企業に対する金融仲介を行うということは銀行など金融機関にとっての最も基本的な重要な役割だと思っております。その際に、きちんとしたリスク管理を進めつつ、同時に的確な融資審査などを行いつつ、必要なリスクテイクを行うということが必要になることは当然であります。リスクに見合ったリターンが確保される枠組みのもとで、きちんとした審査に基づく必要なリスクテイクが行われることによって、金融機関の収益にも貢献するということもあるでしょうし、そのことが財務の健全性の維持にも貢献しうるということだと思います。こういう意味で財務の健全性の確保ということと、金融仲介のための所要のリスクテイクを行っていくということがいわば相互補完的に働く、よい循環が実現することを期待しております。

もとより金融庁としては、地域金融機関を中心に中小企業向け融資についてはリレーションシップ・バンキングの取組みをここ数年積極的に進めてきたところでありまして、現にその成果が具体的な形で現れているケースもあると思います。こういった点も踏まえつつ、ぜひ、金融機関においては金融仲介機能の発揮に努めていただきたいと思っております。

それから、中小企業の実態調査については、中小企業庁とも連携することによって、相互補完的に、より実態に即した、また、改善策を見出せるようなヒントをより多く見つけられるような実態調査を行って、そのことを金融機関が中小企業をサポートしていく役割の実現に具体的に結びつけていくような活用になればと思っております。

問)

今の関連で、中小企業庁と連携して調査する話は、いつごろから始めて主にどのようなことを調査するのでしょうか。

答)

詳細は、後ほど監督局にお尋ねいただきたいと思いますが、金融庁は財務局・財務事務所、それから金融機関との間の既存のチャンネルを使ってこれまで様々な実態調査をしてきており、また最近は貸し手である金融機関の側だけでなく借り手である中小企業サイドの皆さん、具体的には商工会・商工会議所の経営指導員の皆様といった方々からも実態を直接伺っているということでございます。他方、中小企業庁の方は経済産業局を中心に、商工会・商工会議所はもちろんでありましょうけど、地域ごとにあります支援協議会等のネットワークがあると思いますので、そういったものとの間の補完関係も意識しながら、あるいはそういった中小企業再生支援協議会のような再生に向けた取組みのノウハウも参考にしながら、できるだけ有機的に連携して中身の濃い調査に結び付けていきたいと思っております。具体的な調査、いつごろからどういう形でということについては監督局にお尋ねください。

問)

この週末、イギリス、ドイツ、フランス、イタリアの首脳が金融危機について話し合ったと思いますが、今日の東京市場の下げは、一説にはヨーロッパでの連携が思ったより具体的な成果が出せなかったからという見方もありますが、長官としてヨーロッパの対策についての評価と欧州の金融市場についてどのようにご覧になっているのか教えてください。

答)

欧州の現地時間の10月4日に、イギリス、ドイツ、フランス、イタリアの首脳がパリで緊急会合を開き声明を発表したということでございます。これは大きく捉えますと、現下のグローバルな金融情勢、特にヨーロッパ域内での金融市場の動向などを踏まえて欧州各国がEU(欧州連合)加盟国として調和の取れた対応を取っていくのだという意思を示されたものとして受け止めております。そのことと、例えば本日の株式市場における日本の株価の動きについてコメントする材料は持ち合わせておりません。

問)

関連ですが、先週1週間を振り返りますと、フォルティスだとかフランス・ベルギー系の大手のデクシアとか、具体的に個別の大手を含めた金融機関の公的管理が相次ぎ、週末にはドイツをはじめいくつかの国で預金の全額保護という措置が取られて、欧州での動きが活発に見えますが、改めて、アメリカの次の欧州の金融システムについてどのようにご覧になっているのか教えてください。

答)

大局的に見た場合には、いわゆるサブプライム・ローン問題、証券化商品の市場の流動性が枯渇して市場での価格がわからない、そういう中で金融機関同士の間のカウンターパーティー・リスクが高まっている、そういった状況が特に不動産融資に密接に絡む分野に近いところに位置している金融機関の一部について影響が及んできているということだと思います。この間、欧州の各国で公的な関与を含め様々な対応が取られているということですが、これはそれぞれの欧州各国において、そのような金融機関の問題がシステミック・リスクの顕在化につながらないように対応していくという強い意思を表したものであろうかと受け止めております。

問)

先週末、大臣から大和都市管財の訴訟について上告しない旨の意思表示がなされましたが、この件のご所見と背景の説明を、もしも可能であればお願いします。

答)

先週の金曜日、3日の夜に中川金融担当大臣から「私としてはこれ以上の手続きを取らないとの考えを持っている」というご発言があったわけです。

金融庁としては、大臣のこのご判断を踏まえ、現在関係省庁と最終的な協議を行っているところでございまして、現時点でこれ以上のコメントを申しあげることは差し控えたいと思います。

(以上)

サイトマップ

ページの先頭に戻る