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佐藤金融庁長官記者会見の概要

(平成20年10月20日(月)17時02分~17時23分 場所:金融庁会見室)

【長官より発言】

冒頭私から一点ございまして、IAIS(保険監督者国際機構)執行委員会の副議長の件でございます。本日の報道発表資料でご案内のとおり、保険監督者国際機構の執行委員会が先週の10月17日にハンガリーのブタペストで開催され、執行委員会の副議長に、総務企画局の山崎 達雄参事官(国際担当)が選任されましたのでご報告いたします。執行委員会は保険監督者国際機構の主要な決定を行う最高意思決定機関であり、その副議長に当庁の幹部が就任することは、我が国の海外当局との連携強化に資するとともに、昨今の金融情勢への保険監督者国際機構の取組みにおける我が国の更なる貢献にも繋がるものと考えております。

私からは以上でございます。

【質疑応答】

問)

アメリカなのですけれども、11月大統領選後にも経済・金融危機について話し合う緊急サミットが開催される運びとなりました。G8だけではなくて、新興国等も参加して金融市場の安定化策を話し合うと見られます。こうした動きに対するご評価をお聞かせください。また、サミットでは金融危機の再発防止のための金融機関の監督や規制強化の議論が中心となると思われますけれども、こうした世界的な規制強化の動きについての評価をお聞かせください。

答)

10月18日の米・仏・EC(欧州委員会)共同声明において、3首脳は世界経済が直面する課題に対応するための一連の首脳会合を開始するとの考えについて来週他の首脳たちにも呼びかけることで合意した、とされました。また、第1回の首脳会合を米国の選挙後まもなく米国内で開催するとの考えも示されているということでございます。この首脳会合の具体的枠組み等については、今後各国間で協議されていくものと思われますが、来たる首脳会合では金融危機の再発防止、金融システムの強化や世界経済の後退を防ぐための政策全般について幅広く協議され、具体的な成果につながることに期待したいと思っております。

また、世界的な規制強化の動きについてのお尋ねでございますけれども、今般のサブプライム・ローン問題に端を発するグローバルな金融市場の混乱につきましては、規制当局の立場からさまざまな対応策を盛り込んだ金融安定化フォーラム(FSF)の報告書が本年の4月にとりまとめられたところでございます。この報告書は本年7月の北海道洞爺湖サミットでの世界経済に関するG8首脳宣言においてもその全ての勧告の早急な実施が求められているところでございます。この報告の内容を見てみますと、今般のグローバルな市場の混乱についての原因分析を行うとともに、その分析の結果を踏まえた再発防止策が多数掲げられているということでございます。例えば典型的な原因としては、過大なレバレッジをかけて短期的な利益の追求が行われる中で、透明性が確保されず情報伝達も極めて不十分であったと、また、格付けへの過度の依存といったようなことも指摘されていたわけであります。こういった原因にさかのぼって、再び今般のような金融市場の大混乱を起こさせないようなそういうメニューというのが多く掲げられているということで、これらは金融システムあるいは金融市場の安定のために必要な、いわば中期的な取組みということであると思います。その意味においては、所要の規制を各国が協調しつつ導入していくというこういう枠組みになっているというふうに思います。

他方で、これとは別に今現在我々が直面している状況というのは、金融システム全体が非常に不安定になっている、高い緊張が市場の中に蔓延(まんえん)しているということでございますので、これをいかに円滑に正常化させていくかと、いわば短期的な課題というのも非常に大きな課題であるというふうに思っております。その中では、一言で申し上げると、「オーダリー・デレバレッジング」と申しましょうか、過大なレバレッジが存在しているわけでありますけれども、これを秩序立った形で解消していくという取組みが必要不可欠かと思います。各金融機関において、損失をきちんと認識をし、その結果として自己資本が足りないということであればそれぞれ資本調達を行い、また、将来に向けて追加的な損失が発生しにくくなるように不良資産を切り離していくと、こういった取組みの積み重ねが重要であり、現在そういった取組みが進行している、かつ、民間当事者だけでそのオペレーションが行いきれないということに備えて各国の公的な取組み、政策面の取組みも打ち出されているということであろうかと思います。

いずれにいたしましても今般のグローバルな金融市場の混乱については、国際的な協調の下での解決が不可欠でありまして、G7(七か国財務大臣・中央銀行総裁会議)の行動計画やG8首脳声明を踏まえ、各国当局が協調して迅速に対応していくことが重要であるというふうに思っております。

問)

昨日のテレビ番組等で中川大臣が株価下落による銀行の財務悪化を防ぐため、会計処理ルールの緩和を検討していることを明らかにしました。念頭にあるのは、いわゆる「その他有価証券」の含み損や含み益を自己資本に反映させる際のやり方の変更等にあると思われますが、バーゼル合意等の整合性なども踏まえて、現時点で金融庁としてどういった対応をお考えでしょうか。

答)

自己資本比率規制上の銀行の有価証券の評価損の取扱いについて検討する旨の中川大臣のご発言について報道されているということは承知いたしております。有価証券の評価損が自己資本比率に与える影響は銀行の資本の構成等により、あるいはポートフォリオの中身等によりさまざまでありますけれども、自己資本比率規制上いわゆる「その他有価証券」の評価損が生じた場合、これが自己資本の基本的項目(ティア1)から控除されることにともない、補完的項目(ティア2)の上限も同時に減少することとなりますので、その分更に自己資本比率を低下させる可能性があるということは事実でございます。他方、自己資本比率規制は金融機関の健全性を図る共通の物差しとしてバーゼル合意の下で設計された国際的な枠組みがベースにございまして、我が国においても「その他有価証券」の評価損の取扱いはバーゼル合意と整合的なものになっているということでございます。金融庁としては、有価証券のボラティリティ(変動率)、価格のボラティリティが非常に高まっている現在の環境下で、健全性の指標としての合理性や国際的な枠組みとの整合性などを考慮しつつ、そのあり方について検討しているところでございます。

問)

金融機能強化法に関してなのですが、明日、骨子を与党の方で出すというお話があったと思うのですけれど、強化法に関しては、金融庁としては、3月に失効したものをそのまま復活させるのではなくて、柔軟に、一部見直した上で法案化していくということよろしいのでしょうか。確認なのですが。

答)

そういうことでよろしいかと思います。現在の我が国の地方経済、あるいは中小企業をめぐる状況というものには極めて厳しいものがあるということで、こういった状況で改めて、地域金融機関の金融仲介機能の発揮ということが強く求められる状況にあると思います。その中で、各地域金融機関がそれぞれ十分にリスクテイクを行って仲介機能を発揮していただけるように、自己資本不足、あるいは自己資本が十分であるという自信が必ずしも持てないようなケースであって、かつ、民間の市場だけではその問題を解消しきれないというような場合に備えて、予防的に公的資金による資本注入という枠組みを作っておこうという趣旨でございます。

この、現にございます金融機能強化法、申請の期限は今年の3月末で切れていますけれども、この機能強化法を更に使い勝手の良いものにしつつ、これを今申し上げたような目的のために活用していくというものが私どもの基本的な考え方でございます。

問)

使い勝手の良さということなのですけれども、旧強化法では、収益計画を出させた上で、経営責任の明確化というものを図ったと思うのですけれども、この使い勝手の良さというものは、経営責任とかモラルハザード防止とのバランスがあると思うのですけれども、その点について長官はどのようにお考えなのでしょうか。

答)

使い勝手を改善するその具体的なポイントにつきましては、現在まだ検討中でございますので、この点についてのスペシフィック(個別具体的)なお答えは、この時点では差し控えさせていただきたいと思います。

問)

一般論で結構なのですけれども、公的資金を注入する枠組みとモラルハザードというものは常に表裏一体であるべきだと思うのですけれども、そこのところは今回のケースでは、地域金融機関が自力で資本調達ができない状況になってきているとすれば、そこのところは切り離して考えるということなのでしょうか。

答)

今回の、今のこの事態というものは、我が国の経済全体から見ると、相当程度、外国から津波が押し寄せてきたような側面も強いわけでありまして、そういう中で我が国の地域経済や中小企業の活動というものを地域金融機関に金融面から支えていっていただきたいという仕組みというか、そういう発想であるわけです。そういう発想を意識しているということが一つの、使い勝手を良くしていく、その流れの基にあるということでございます。

ただ他方で当然のことながら、公的資金を使うということは、最終的には場合によって納税者負担に繋がるという可能性もあるという意味で、言ってみれば納税者がリスクを取るというような枠組みでもございますので、そういう意味で、投入した公的資本というものについて、回収が困難でないことといった点は、現行法でも当然あるわけでございますし、ごく一般論として、モラルハザードを助長させるような仕組みに安易に繋がっていくということができるだけ避けられるように気をつけていくというのも、これもごく一般論ですけれども、こういった制度設計を行う際には、考慮すべきポイントの中に入ってくるのかなとは思います。

問)

確認をお願いします。先ほどの、「その他有価証券」の自己資本比率規制の扱い方ですけれども、いつ大臣から検討するという指示があったという感じでよろしいですか。

答)

大臣と我々金融庁の中での具体的なやりとりというものは、日々、多様な分野について行われているわけでございまして、一つひとつについて対外的にコメントすべきものではないと思っております。様々な点について、大臣からは、今般のこのグローバルな金融危機に対して我が国としてどのような対応をしたら良いか、我が国の金融システムの安定性をいかに確保していくか、それによって我が国経済への悪影響をいかに極小化していくか、こういった観点から、様々なご指示をいただいているというのは当然だろうと思います。

問)

その自己資本比率規制への反映の仕方というものは、「あり方を検討していくこととしている」と今コメントがありましたけれども、見直すことを念頭において検討していくということでしょうか。

答)

先ほど申し上げた、「検討している」ということに尽きると思います。

(以上)

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