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佐藤金融庁長官記者会見の概要

(平成20年10月27日(月)17時03分~17時34分 場所:金融庁会見室)

【長官より発言】

私の方から特にございません。

【質疑応答】

問)

本日、麻生総理が市場安定化策ということで、中川大臣及び与党に対して、株式市場の安定、金融機能の一層の強化、証券投資の裾野の拡大等々について指示を出されました。この指示に関する長官のご所見、それから今後の金融庁としての対応をお聞かせください。

答)

本日、中川大臣が、麻生総理から次のようなご指示をいただいたところでございます。これらについては、可能なものから実施していくということで、中川大臣の記者会見でそのように公表がなされているということでございます。

一つ目に、株式市場の安定化策として、空売り規制の強化、そして、銀行の株式保有制限の弾力運用。二つ目の柱として、金融機能の一層の強化策ということで、銀行の自己資本比率規制の一部弾力化、適正な金融商品会計に向けた努力へのサポート。更には、金融機能強化法に基づく政府の資本参加枠の拡大の検討。三つ目のグループとして、証券投資の裾野の拡大策ということで、従業員持株会による株式取得の円滑化、というテーマが中川大臣に対する指示として出されたところでございます。

金融庁といたしましては、本日の、麻生総理から中川大臣へのご指示に従って早急に検討を進め、可能なものから速やかに実施に移してまいりたいと思っております。

問)

世界的な市場不安と株価下落を受けて、メガバンクを中心に資本増強を計画する動きが広がっています。こうした動きに対する評価と、現在の日本の金融機関の財務状況に関する認識を改めてお聞かせください。

答)

メガバンクが増資を検討しているという旨の報道があることは承知をいたしておりますが、各社からは、現時点で決定した事実はない、という旨のリリースが公表されていると承知しています。いずれにいたしましても、基本的には個別金融機関の経営判断に属する事柄でございますので、個別事例についてのコメントは差し控えたいと思います。

一般論として申し上げれば、我が国の金融機関を巡る足下の状況につきましては、グローバルな金融市場において急激な円高が進行したり、あるいは株式相場が日々大きく変動するなど、不透明な外部環境が続いているということがあろうかと思います。また、我が国の金融機関につきましても、不良債権処理を始めとする与信関係費用が増加傾向にあること、預貸業務や手数料ビジネスなどの本業における収益が伸び悩んでいること、金融市場の混乱を受けた有価証券の価格が低下していること、といったような影響が、じわりじわりと出てきているということかと思います。こうした中で、我が国の金融機関が、自ら財務基盤の強化へ向けて取り組むということについては前向きに評価していきたいと思っております。

我が国の金融システムそのものは、欧米に比べれば相対的には安定しているということが言えますけれども、今申し上げたような様々なリスク要因が大変大きくなってきておりまして、これらが、我が国の金融セクターにも影響を及ぼしつつあるという状況だと思っておりまして、引き続き高い警戒水準を維持しつつ、フォローしていきたいと思っております。

問)

先ほどの総理指示の中で、「銀行の株式保有制限の弾力的運用」という項目があるのですけれども、ここでいうところの株式保有制限というのは、いわゆる、ティア1(基本的項目)以内に抑えるという意味での保有制限なのか、そうではなくて、5%ルールを指した保有制限なのか、一応この解釈だけちょっと長官からお伺いしたいのですが。

答)

前者の方であります。

問)

株価が今日も下がって、金融機関への影響、特に生命保険会社も含め相当影響が広がってくると思われますが、そのあたりのご所見をもう少し詳しくお聞かせ願いませんか。

答)

バブル崩壊後の1990年代、あるいは2000年代の初頭に比べますと、我が国の金融セクターは、不良債権などリスクの大きな要因というのは相対的に小さくなり、また資本基盤というものも昔に比べて充実してきているということはあろうかと思います。

ただし、これだけ激しい急激な株価の下落というものは、例えば銀行であれば、その保有株式の評価損というものが銀行の財務に一定の影響を及ぼすという因果関係がございますので、それがネガティブな影響を及ぼすということは事実でございます。現時点において、我が国の金融システム全体としての健全性ということを概観した場合には、なお我が国の金融システムが、特に欧米と比べたときに相対的には安定していると思いますけれども、このネガティブな影響、グローバルな市場の混乱が及ぼすネガティブな影響というものは、いずれにせよ注意深く見ていく必要があると思っております。

問)

この影響を抑えるというところで、「自己資本比率の一部弾力化」ということですが、規制ですから、継続性とか評価可能性と言いますか、その観点も必要だと思うのですけれども、どのようなことが念頭にあるのですか。

答)

本日、総理からご指示をいただいた「銀行の自己資本比率規制の一部弾力化」という項目につきましては、ご案内のように、銀行の自己資本比率規制の計算では有価証券の評価損を自己資本から控除することとなっているということで、このため現下の市況を反映した評価損の拡大が自己資本比率の大きな変動要因となることで、金融機関の融資姿勢の過度な萎縮に繋がる懸念があるという認識が背景にあろうかと思います。このことを踏まえて、金融庁としては、一方で健全性の基準、これは、銀行が財務の健全性を持続的、継続的に維持していくことを通じて預金者の保護を図っていくということのために重要なものでございますけれども、その健全性の基準としての合理性や、あるいは国際合意の枠組みということも踏まえつつ、円滑な金融機能確保のために自己資本比率規制における評価損の取扱いの一部弾力化を検討することとしております。

問)

今のことに関連して、お昼の大臣の会見の中で、国内基準を今回対象にしているようなお話があったのですけれども、それはそういうことでよろしいのでしょうか。

答)

具体的な内容の全体像につきましては、今、この時点ではコメントを差し控えたいと思いますが、先ほど申し上げた国際的な合意の枠組みということも踏まえるということは一つの要素になっていく、ということかと思います。

問)

国際的な合意の枠組みの合意のところについて、監督当局としてそれを見直すということの議論を提案していくというお考えはございますでしょうか。

答)

具体的な対応、内容等については現時点ではコメントは差し控えさせていただきたいと思います。

問)

与党に対しても指示が出たと思うのですけど、銀行等保有株式取得機構の活用ということで、以前やっていた銀行の持っている株を買い取ることを再開することも検討したらどうだという話があったと思うのですが、それについて長官のご所見はいかがですか。

答)

与党に対しましては、例えば銀行等保有株式取得機構の活用などの検討と、こういう形での指示がなされているということでございます。これにつきましては、与党におけるご検討というプロセスが今後あるでしょうし、またおそらく、検討にある程度の時間を要するということもあろうかと思いますので、このテーマについてこの時点で私の方から何か申し上げるということは差し控えた方がよろしいかと思います。

問)

これについて、政府ではなく与党指示になっている背景には何か理由があるのでしょうか。

答)

与党に対するご指示としてもう一つございますのが、証券税制についてのご指示でございまして、典型的にこの税制等については与党における税調(税制調査会)でのご議論などのプロセスを経てなされていくということでございますので、そういった性格のものとして位置づけうるものとして与党へのご指示ということになったのだと想像をいたしております。

問)

議員立法かなにかで見直すという流れなのでしょうか。

答)

これから検討していく話でございまして、具体的なそういった形式の話はまだ言及できる段階ではないと思います。

問)

自己資本規制の弾力化なのですけれども、イメージが沸きにくいのですが、例えば、国内基準行であれば4%を少しといいますか、株価の下落が主要因で割り込んでも早期是正の対象にしないこともありうるというようなことでよろしいのでしょうか。

答)

まさにこれから検討していく話でございまして、先ほども申しましたように有価証券の評価損を自己資本から控除するという扱いについて、どのようにしていくかということでございます。

そういったさまざまな自己資本比率を計算する際の分子の要因、それからリスクアセットなどの分母の要因、それらのさまざまな事象が最終的に集約された形ででてくるのが自己資本比率というものでございます。この自己資本比率という客観的な共通の指標を拠り所として、預金者保護等のために行政対応の枠組みが定められているのが早期是正措置ということでございますので、ちょっと別の話ではないかと思います。

問)

銀行のその健全性を担保する自己資本の算定方法とか、株式の保有制限といった、そういう趣旨から設けられているものだと思うのですけれども、これを厳しいマーケット環境の中で金融緩和的な措置で見直していこうと、一部弾力化していこうというのが今回の趣旨だと思いますが、これはどれくらいの期間、恒久的にするものなのか、マーケットがある程度落ち着きを取り戻すまでの期間限定の措置なのか、このあたりを長官としてはどのようにお考えの下に今後対応されていくのでしょうか。

答)

これは、総理からいただいたご指示の中で、株式市場の安定化策ということの中に含まれているわけです。つまり、銀行がその保有している株式の価額というものがティア1を上回ることがないように、という規制でございまして、それが一時的に上回ってもそこは弾力的な運用をしていこうと、そういう趣旨でございます。従いまして、いわば銀行に対して保有株式を市場にどんどん売却していかざるを得ないようなそういう規制を弾力的にしようという趣旨のものでございます。そういう趣旨を踏まえて位置づけ等は考えていくということだと思います。

問)

日本の金融システムについて、全体としての健全性について概観した場合には、欧米と比べて相対的にはまだ安定しているということですが、欧米は金融危機というか異常事態に入っているわけですから、相対比較よりは、今いったい日本の金融システムが危機の入り口にあるのか、あるいはシステム自体が揺らぐようなところまできているのか、そのあたりの、相対比較ではないような評価をいただければと思うのですが。

答)

先ほども申しましたように、バブル崩壊後の1990年代とか、2000年代初頭に比べますと、保有している不良債権・不良資産というものも減ってきていて、自己資本というものも充実をしてきているという中で今回のグローバルな金融市場の混乱、その影響としての株価の急激な下落という状況に直面しているということでございますので、こういった市場の混乱に対する耐久力というのを我が国自身の1990年代等の経験に照らした場合、安定性というのは随分改善してきている中での状況ということで、耐久力は以前に比べてかなり改善してきているということなのだと思っております。もちろんその今般の株価の動きというのは大変急激なものでございますので、その影響というのは注意深く見ていく必要はあるということかと思います。

問)

こうした中で金融機能強化法の公的資金の投入の上積みをしていく意義といいますか、それがどこにあるのかということと、10兆円という与謝野さん(経済財政担当大臣)の意見もあるわけですけれども、それをその10兆円まで拡大するという意見について長官はどう思ってらっしゃるのか。それと、そこまで大幅に拡大する必要性というのが今あるのかどうか、以上につきましてお願いします。

答)

この金融機能強化法の大きな位置づけというのは、中小企業向けの融資を中心として金融機関がしっかりとした金融仲介機能を発揮できるようにその金融機関の財務基盤を万全なものにしていくという、いわば予防的な性格の非常に強いものであろうかと思います。総理から本日この金融機能強化法による国の資本参加の枠の拡大を検討するようにという指示をいただいているわけでございますけれども、この検討にあたっては、今のような趣旨からしても、今後金融市場の急激な変動が生じた場合でも金融機関の財務基盤の安定を確保するということと、地域における円滑な金融機能の発揮のために金融機関が積極的なリスクテイク、金融仲介を行うことを可能とするということが目指されているわけでありまして、そういう意味合いから十分な枠を確保していくという精神で検討していくということになるのではないかと思っております。

問)

金融庁は長官が佐藤長官になられてから状況を非常に先読みしてあらゆる対応を講じていくという、フォワードルッキングという考え方を強調されてきましたが、この9月、10月に入ってから急激な市場の変化、日経平均で7,000円とか、ダウで8,000ドルとかいうこの急激な変化は、やはり金融庁としては先読みした中で、読みきれなかったという理解でよろしいのでしょうか。

答)

このフォワードルッキングの意味合いなのですけれども、さまざまなビジネスモデルとか、あるいは金融機関の経営のあり方等の中に潜んでいる大きなリスク要因あるいはかく乱要因といったもの、構造的な要素も大きいと思いますけれども、そういったことをできるだけ早く見つけ出していく、それからもちろんグローバルな市場の変化ということにも注意を払っていく、そういう中で金融機関の経営に与えるリスク要因というのをできるだけ正確に、かつ、できるだけ早く抽出をしてあらかじめ手を打っていくという心構えでございます。そういう意味では、昨年の秋以来このサブプライム・ローン問題についても、その基本的な構図を分析したり、あるいは、サブプライム関連の証券化商品に対するエクスポージャーといったものを金融機関からヒアリングして我が国全体としての集計ベースでのエクスポージャーを把握したり、あるいはその少し後に、この単にサブプライム関連の証券化商品だけではなくて、より広い範囲の証券化商品にも範囲を広げてエクスポージャーの状況というものを見てきたということでございます。そういった中でいわゆる証券化商品、今、欧米の市場でいわば混乱の一番大きな要素になっている証券化商品、サブプライム関連のものがその中心にございますけれども、証券化商品やCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)へのエクスポージャーといったものについてもモニターをしてきたということでございます。

これとは別に、グローバルなマーケットの展開として、欧米あるいはその他の地域もあるかもしれませんけれども、さまざまな投資ファンドのリスク許容度が下がってしまった結果、ある時期にはフライト・トゥ・クオリティ(質への逃避)ということで、ソブリンものの債券に資金がシフトするというような動きがあり、また、コモディティ(商品)市場に資金が流れるといったことがあり、比較的近いところでは、フライト・トゥ・キャッシュ(現金・預金への逃避)というような動きにまでなってきていると、こういう非常に大きな、かつ、錯綜したグローバルな市場の混乱が起きている中で、株式市場も非常に大きなボラティリティ(変動幅)を示しているということであろうかと思います。全てを事前に見通すということは、そもそも難しいわけでありますけれども、こういうマーケットの動きというのは、特にグローバルなマーケットの動きというのは世界中に広がるさまざまな投資主体等々の動きの結果として決まってくるものでございますので、可能な範囲でそういった情報収集に努めていくということにつきるのかなと思っております。

(以上)

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