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佐藤金融庁長官記者会見の概要

(平成20年11月 6日(木)17時01分~17時33分 場所:金融庁会見室)

【長官より発言】

私の方からは特にございません。

【質疑応答】

問)

金融機能強化法(改正法案)が今日衆議院で可決になりましたが、経営責任に関する部分や、協同組織金融機関に対して個別の機関の情報公開等、そういった点について修正が加えられました。法案を提出した側として、こういった修正を加えられたことについて、どういうふうにお感じになってますでしょうか。

答)

金融機能強化法の改正案につきましては、衆議院財務金融委員会の修正を経て、本日衆議院本会議において可決いただいたところであります。

法案修正の中身としては、第一に、申請に必要となる経営強化計画の記載事項であります「責任ある経営体制の確立に関する事項」というのを「従前の経営体制の見直しその他の責任ある経営体制の確立に関する事項」というふうに条文を修正し、必要に応じ経営責任の明確化が求められることを法律上明確化するということ。第二に、中央機関が提出する協同組織金融機能強化方針についても第一の点と同様、必要に応じ経営責任の明確化が求められることを法律上明確化すること。第三に、協同組織金融機関の中央機関に対してあらかじめ国が資本参加することを可能とする枠組みにおいて、資本参加を受けた中央機関が傘下の協同組織金融機関への支援を行った場合にその金融機関の名称を公表すること、これらを内容とするものであります。これらにつきましては、(衆議)院内におきまして、与野党の間での精力的なご協議なども経て修正にいたったものでございます。今後参議院でのご審議をよろしくお願いしたいというふうに思っております。

問)

金融サミットについてですが、先月30日麻生総理が、国際的な金融監督体制の協調といったことについて日本から問題提起したいということを会見でおっしゃいました。日本の金融監督当局として、これについて具体的にどのようなイメージを抱いていらっしゃるのか教えてください。

答)

先般、先月30日に新しい対策が取りまとめられた際に行われた記者会見において、総理から、今月15日の「金融・世界経済に関する首脳会合」に臨むにあたっての問題意識の一つとして、金融機関に対する監督と規制の国際協調体制というものが示されたというふうに承知をいたしております。総理はこうした問題意識を示されるにあたり、そのご発言の中で、今般のグローバルな金融市場の混乱の原因として、いわゆる証券化プロセスにおけるインセンティブの歪みといった問題などを指摘されたというふうに承知をいたしております。また、問題を抱えた証券化商品が世界中の投資家の投資対象になったということで金融市場の混乱がグローバルに広がったということも背景として、各局当局間の情報交換・連携が益々重要になってきているということも前提となっていると思います。11月15日のサミットに臨まれるにあたっての具体的な主張内容であるとかいったことにつきましては、今後官邸を中心に検討が行われていくものというふうに承知をいたしておりますが、いずれにいたしましても先般の会見において総理は、このサミットに臨まれるにあたっての大きな問題意識を披露されたものというふうに理解をいたしております。

問)

同じ会見で総理が、時価会計についてどこまで貫徹させるべきか、みたいな形で問題提起をされました。今、日本の企業会計基準委員会等でも見直しみたいなものも議論になっていますが、あくまで時価会計をきちんと機能させるということだと考えており、時価会計自体を緩めるといった判断は今のところなされていないのではないかと思うのですが、その辺についての金融庁として見解をお聞かせください。

答)

企業会計基準委員会(ASBJ)についてのお尋ねでございます。

議論の前提として一点まず確認をしておきたいと思うのですが、会計専門家のみなさんが使っている「時価会計」ということばは、国際的にはむしろ公正価値会計(フェア・バリュー・アカウンティング)のことを意味しているのだと思います。これは、市場に十分な取引があって市場価格が信頼できるものである場合にはその価格による評価を用いる、すなわち「マーク・トゥー・マーケット」ということですけれども、市場が混乱している場合など信頼に足る市場価格がない場合には、むしろ合理的に算定された価格、すなわち理論値による評価、英語でいえば「マーク・トゥー・モデル」というのを使いますが、こういう両方のことのセットがフェア・バリュー・アカウンティング、公正価値会計という内容を構成しているわけですけれども、会計専門家はこのことを指して「時価会計」と呼ぶことが多いのですけれども、一般的に巷では「時価会計」というのは先ほどの二つの要素のうちの前半だけ、すなわちすべからく市場価格を用いるということが「時価会計」であるというふうな誤解があるのだろうと思います。

そういう意味で今のお尋ねの意味合いも公正価値会計(フェア・バリュー・アカウンティング)についてどう考えるかというお尋ねというふうに受け止めたいと思いますが、そういう意味ではまさに今おっしゃっていただきましたように、企業会計基準委員会というのは時価会計をきちんと機能させるための運用指針を示したものである、あるいは公正価値会計をきちんと機能させるための運用指針を示したということであろうかと思います。これは10月28日に企業会計基準委員会からQ&Aという形で解釈が公表されたものであります。

繰り返しになりますが中身を申し上げれば、金融商品の実際の売買事例が極端に少ない場合や売り手と買い手の希望する価格差が著しく大きい場合などには、今のような極端な市場価格ではなく、合理的に算定された価格、すなわち理論値を用いることが適当な場合があると、こういうことを明確化したという内容でございます。

これとは別に企業会計基準委員会は現在、金融商品の保有区分の変更についても検討を行っているところでございます。具体的には、国際的な会計基準の動きも踏まえ、金融商品の保有目的に関して、売買目的有価証券やいわゆる「その他有価証券」から、償却原価法で評価を行う満期保有目的債券に区分を変更することを例外的に認めるかどうか、こういった点について検討が行われているというふうに承知をいたしております。

金融商品会計を含めた会計基準につきましては、引き続き、民間主体であり独立した主体である企業会計基準委員会において、国際的な動きも踏まえつつ、適切な検討・対応が行われるものというふうに考えており、金融庁としてはこのような適正な金融商品会計に向けたご努力をサポートしていきたいというふうに思っております。

問)

金融ADR(裁判外紛争解決支援制度)の件でお尋ねしたいのですが、今週金融審議会の合同部会で法整備に向けた議論が始まりました。それぞれ業界ごとに紛争処理機関を作っていますが、なかなか消費者サイドからの対応ができていなかったのではないかといった問題意識から今回の議論に入っていったと思うのですが、現状長官が認識しておられる各業界の取組みへの評価と今後の法整備のあり方みたいなところについてお聞かせ願えませんでしょうか。

答)

各業界においても業界団体を中心として個別の紛争の適正な処理に向けた努力がある程度は行われているというふうに思っております。他方で裁判によれば時間もかかる、お金もかかる、精神的な負担も非常に大きいといったこういう状況の下で、この裁判外の迅速な処理というものが公正かつ中立に高い信頼度を持って確実に進められるということが最終目的でございますので、その目的に照らしたときに、そういった金融サービス利用者の方々の信頼も得て、かつ、確実にそういった適切な運用がなされるような仕組みというものを常に展望していると申しましょうか、理想的な姿として常に念頭に置いておくということは大事なことであろうかと思います。具体的にどういった法制度に基づいてどういった仕組みを作るか、あるいはそもそもそういった法制度に至らなくても今申し上げたような意味で実効性のある信頼し得る制度ができるのかどうか、こういった点を含めて今ご議論をいただいているところだというふうに思っております。

問)

株価ですけれども、今日、大幅に下落ということで、9,000円を割り込みました。先週一時バブル後最安値を付けて以来、順調に持ち直していたように見えたのですけれども、ここにきて再び9,000円割れという状況をどのようにご覧になっているのかということと、9,000円割れの状態での銀行の自己資本に与える影響について、ストレステストなどあればご紹介いただきたいのですが。

答)

日々の株価の動向や水準については、それぞれ、日々様々な投資主体が、市場に様々な形で参加することによって、結果として成立しているものでございますので、それについて、一つひとつコメントをすることは差し控えさせていただきたいと思います。

こういった株価の水準が、我が国の金融セクターに及ぼす影響についてのお尋ねでございますけれども、これについては、従来より一定のストレスをかけた場合の影響度というものを研究いたしておりますけれども、具体的に特定の水準をおいた場合に、こういう姿である、と逐一申し上げるということは差し控えたいと思います。

問)

9,000円割れという状態での、銀行の自己資本に与える影響についてはどのような見解をお持ちでしょうか。数字は措いて。

答)

株についてのお尋ねでございますけれども、銀行が保有している様々な有価証券全体について、その価格の変動によって銀行のバランスシートなり財務に一定の影響を及ぼす、含み益の場合であれば含み益としての影響があるでしょうし、含み損に転じた場合には含み損としての影響が出てくるということだろうとは思いますけれども、そういった有価証券全体について、それぞれの金融機関において、十分なリスク管理を行う中で、足下の顕在化した、と申しましょうか、あるいは実際に市場で成立した価格をベースとした評価、そしてまた、将来に向けた様々なリスク管理上の取組みをしていっていただくということが何よりも大事だと思っております。

問)

金融機能強化法(改正法案)の国会審議の中で、中小企業向けの貸出について、条件緩和債権の例外事項というのでしょうか、それを3年から5年というように拡大する、という大臣の答弁がありましたが、これが実際の現場で与える影響というのはどのように見ていらっしゃいますでしょうか。

答)

やや定性的なお答えにならざるを得ませんけれども、中小企業を取り巻く状況が厳しい中で、借り手企業の資金繰りや、経営改善を図るために金融機関が借り手に対して返済条件の緩和、例えば、返済期間の延長とか、金利の減免等といったようなことを柔軟に行えるということに応じることを可能とするような枠組みになれば、金融機関のそういった行動に繋がって、中小企業の改善努力をサポートするものになっていくということだろうと思います。こういったことが、より、今申し上げたような意味で個別金融機関の取組みに結びついていくようにすることが大事だと思っていまして、その意味で、金融庁サイドとしては、監督指針、それから金融検査マニュアルを改定して、中小企業向け融資に関して、貸出条件を変更しても、貸出条件緩和債権、いわゆる不良債権に該当しない場合の取扱いを拡充するということにしたわけであります。そしてまた、今回の監督指針や検査マニュアルの改定を、更により確実に、実効性のあるものにするという趣旨から、実際の金融検査あるいは監督の現場において適切な対応が確保されることが重要であるという問題意識から、財務局を含めた全ての検査官、監督担当官に対して当該施策の趣旨を徹底するということで、大臣から文書で直接ご指示をいただくということも考えているというところでございます。更に、この条件緩和への対応を含めて、中小企業の実態を踏まえた柔軟な対応をより一層徹底していただくように、金融機関に対しても、各金融団体を通じて要請文を発出するということを予定しているということでございます。

問)

先ほどの時価会計の話なのですけれども、来週から銀行の決算が本格化して、一部今週も理論値を使った会計処理をされている銀行も出てきているのですが、理論値を使うところと、市場価格でいくところとバラつきがあると、同じ目線で見るというところで問題も生じてくるのではないかと思うのですけれども、何か金融庁として、どちらかに統一しろとか、そういうような対応をとる、というようなところはいかがお考えでしょうか。

答)

先ほども、市場が混乱している場合などの、市場に信頼に足る市場価格がない場合には理論値を使うというときに、「信頼に足る市場価格がない場合」というものを特定するという作業が前段として必要なわけです。その作業をするにあたっては、おそらく、各金融機関それぞれに異なる有価証券、同じ種類であっても銘柄も違うでしょうし、おそらく取得価格といったことも違ってきているわけだと思うのです。それぞれの金融機関において、ポートフォリオの中身というのは相当バラエティーがあるのだろうと思いますし、先ほど申し上げた、まさに信頼に足る市場価格がない場合として、実際の売買事例が極端に少ないとか、あるいはオファー(売値)とビッド(買値)の間の価格差が著しく大きいとか、そういうことを企業会計基準委員会は示しているわけですけれども、そういった事実が該当する金融商品、銘柄であるのかどうかといったことも、おそらくそれぞれ保有している有価証券によって事情が異なるものがあるのだろうと思います。そこは、それぞれの金融機関においてこういった事実関係をきちんと整理をして決算を作り、その作られた決算を監査法人、監査人とよく議論をしていただくということが必要になってくるということであろうかと思います。

金融庁として見ていくべきは、そういったきちんとした事実認識に基づいて、監査人との間でもきちんとした共通認識に基づいて、こういった理論値の使用というものが行われていく、というプロセスが大事だろうと思っておりまして、そこの点には注意をしていきたいと思います。決算発表が一巡したところで、どのような状況になっていたのか、ということは、ヒアリング等をしてみるという選択肢はあろうかと思っております。

問)

それは、監査法人にヒアリングするということですか。

答)

そこは別に、今はそんなに具体的に考えているわけではなくて、事後的に実態がどうであったのかということを把握する、ということも選択肢としてあるということを申し上げただけです。

問)

金融機能強化法に関連しまして、附帯決議がなされていたかと思いますが、これの金融行政に与える影響というものを、長官はどのように受け止めていらっしゃるのかということを伺えればと思いますけれども。

答)

附帯決議が採択されました、衆議院の財務金融委員会において、政府としてこの附帯決議、正確な文言は忘れましたけれども、附帯決議の趣旨を踏まえて対応していくということを申し上げていると思います。具体的な対応というのは、それぞれの局面で、行政当局として附帯決議に盛られた点を心構えとしてきちんと抱きつつ、具体的な行政対応を進めていくということであろうかと思います。

問)

例えばそれは、銀行法上、法律に基づく様々な措置も含めてということですね。

答)

附帯決議の内容はかなり多岐にわたっていますので、それぞれの項目ごとにおそらく、意味合いというか。

問)

支配株主のところですが。

答)

今ある附帯決議、これは衆議院の財務金融委員会における附帯決議ですけれども、これが現時点においては全てであって、これを踏まえて対応していくということに尽きると思います。

問)

個別事例で恐縮なのですが、所管は東京都かもしれませんけれども、商工ローン大手のSFCGが、顧客の3割に対して一括返済要求を求めて、それに対して借り手側の中小企業が集団提訴というような訴訟になっているわけですけれども、貸金業者を所管する立場の金融庁として、今回の事情をどのように見ておられるのか、はたまた、東京都との連携などはどのように考え、実際にどうされているのかといったところを教えてください。

答)

従来より金融庁は、この貸金業をめぐる問題につきましても、貸金業法に基づいて、利用者保護に悖(もと)るようなケースがあれば、事実をきちんと確認したうえで、厳正な対応に努めてきたということでございます。個別の会社に対する具体的な対応について言及することは差し控えたいと思います。

また、このお尋ねのケースというものは、都道府県登録業者というケースでのお尋ねでございますので、それを前提に申し上げれば、都道府県登録業者であっても、金融庁では状況に応じ、債務者等の利益保護の観点から、関係の都道府県と十分連携を図りつつ、厳正・適切な対応に努めていきたいと思っているところでございます。

金融庁ではご案内のとおり、貸金業をはじめ、金融サービスの利用者からの苦情・相談を受け付けているところでございます。個社名についての言及は差し控えますけれども、例えば、「延滞などもなくて、正常に返済を続けていたけれども、一括返済や追加担保を差し入れるように求められた」とか、あるいは「延滞等を理由に、一括返済や法的手続きを求められた」などの苦情が寄せられてきているのは事実でございます。それから、日本貸金業協会においても、苦情を受け付けておりまして、問題の解決に努めていると承知をいたしております。当局として、協会を通じた実態把握ということも大事だと思っております。

(以上)

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