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佐藤金融庁長官記者会見の概要

(平成20年11月10日(月)17時02分~17時23分 場所:金融庁会見室)

【長官より発言】

私の方からは特にございません。

【質疑応答】

問)

7日、金融庁は預金取扱金融機関の自己資本比率規制の弾力化を発表されました。担当課から説明がありましたが、長官から、規制の弾力化の狙いと想定される効果をお願いします。

答)

先般の経済対策に盛り込まれた銀行等の自己資本比率規制の一部弾力化について具体案が固まったことから、先週末の11月7日にその内容を公表させていただいたところでございます。

具体的には、国内基準行について、株式・債券等の有価証券評価損を自己資本比率の計算上控除しないこととする、また、国際基準行について、国際合意と整合的な範囲で、国債等リスク・ウエイトがゼロの債券について、評価益・評価損ともに自己資本にカウントしない取扱いを選択することを認めるものでございます。対象期間はこの平成20年12月期から平成24年3月期までの時限的措置でございます。

今回の措置は、グローバルな金融市場の混乱やボラティリティ(変動)の高まりが見られる中で、このことが自己資本比率を急激に変動させ、そのことを通じて金融機関の金融仲介機能が低下しないように監督上の特例措置を講じたわけで、それが狙いでございます。

金融庁としては、今回の措置により、現下の状況においても、金融機関が金融仲介機能を適切に発揮していただくことにつながることを期待するものでございます。

問)

先日のG20では、金融危機への実体経済への悪影響を懸念して、金融機関の金融規制・監督強化の促進などの声明が出されました。今週末からワシントンで開催されるG8でも、金融規制・監督強化が重要なテーマになるとみられ、麻生首相も金融機関に対する監督と規制に関する国際社会の新たな協調体制の構築を提唱することを表明されています。改めての質問になりますが、世界的な規制強化の動きについての評価と、監督体制の連携強化についてのお考えをお聞かせください。また、こういった世界的な動きは、金融庁が目指している「ベター・レギュレーション」に何らかの影響を与えることになるのかどうかといった規制強化に向けて動き出している各国の動向と国内での監督姿勢のありかたの関係についてもお願いします。

答)

大変大きなテーマで、語り尽くすには相当時間が必要だと思いますが、かいつまんでお答えします。

11月8、9日にブラジルのサンパウロで開催されたG20の財務大臣・中央銀行総裁会議の共同声明では、「金融混乱の再発防止のための監督規制の枠組みの再構築を世界的に行っていく必要がある。」という強いメッセージが示されたものと認識しております。また、こうした議論も踏まえて、来たる11月15日に米国のワシントンで開催される金融・世界経済に関する首脳会合においても、金融混乱の再発防止、金融システムの強化のための政策等幅広い議論が行われるものと認識しております。

こうした規制の見直しや監督当局間の連携強化の動きは、サブプライム・ローン問題に端を発する今般のグローバルな金融混乱に対応していくという趣旨で、特に、金融機関が国境を越えて世界的に活動し、そこで取引される金融商品も国境を越えて国際的なマーケットで取引されるという実態があるわけで、こういう実態の中で、ある面では金融システムの変化あるいはグローバル化といった実態に監督や規制が追いついていなかったという認識に基づいているものであり、こういった問題に世界が協調して対応していこうという取組みであると理解をしております。この点に関しては、本年4月のG7(七か国財務大臣・中央銀行総裁会議)に提出された金融安定化フォーラム(FSF)の報告書の金融システム、金融市場の安定のために必要な規制等を中期的な取組みとして各国が協調しつつ導入していくという枠組みになっているところでございます。

他方、ご指摘のとおり、金融庁では昨年の夏以来、金融規制の質的向上(ベター・レギュレーション)に向けた取組みを進めているところであります。これは、例えば時代遅れとなっている規制の手法を修正し、あるいは今後過剰な規制に陥らないように気をつけながら、必要な規制について実効性、効率性、透明性などを改善していこうという取組みでございまして、先ほど申し上げた国際的な、所要の規制を強化していくという大きな流れと矛盾するものではないと捉えております。例えば、以下のような点については、先ほどの国際的な規制監督の見直しにも沿っている部分があるのではないかと思っています。

一つには、ベター・レギュレーションの四つの大きな柱のうちの一つは「優先課題の早期認識と効果的対応(リスク・フォーカスト、フォワード・ルッキングなアプローチ)」というものでございますので、深刻な問題が潜んでいる分野や将来リスクが顕在化する分野について早期に認識し、それに見合った効果的な行政資源の投入に努めるということがあるわけでございます。

また、ベター・レギュレーションの当面の具体的な取組みの中には、市場動向の的確な把握、海外当局との連携強化、金融機関との対話の充実などが含まれておりまして、これらは、今回の金融危機が市場発のものであり、グローバルな広がりを見せていることに対応したものであるというふうにも言えるのではないかと思っております。

いずれにしましても、金融庁としては、今回の金融危機の悪影響をできるだけ限定するための当面の対応、いわば短期的な対応と、今回のような危機を再発させないような中長期的な取組み、更に加えて我が国の場合には我が国の市場の活性化・競争力強化に向けた取組みを、相互に適切なバランスを取りながら進めていく、取り組んでいくことが重要であると思っております。

問)

最初の質問に関連した自己資本比率のことなのですけれども、意地悪な推測と言っては変ですけれども、いわゆる今回の見直しによって、自己資本比率が、これまでのものと、新しい基準で出来たものと二つある形になるのですけれども、例えば、自分の財務体制に自信があるところは、「従来の基準でやってもこれだけあるのです」というようなことを決算の時に言ったりすることによって自分の健全性をアピールすることを考えると、そういうことをしないところはちょっとおかしいのではないかという、あらぬというか、本来の目的とは違うような効果が、結果として出てきてしまうのではないかというような懸念も一部指摘されているようではあるのですが、そのあたりの検討というか、議論というのは、これまでどういうことを踏まえて今回の結論に至ったのか聞かせていただけますでしょうか。

答)

自己資本比率の計算の方法について、一部、特に国内行については一部変更されるということでございます。これは、ご指摘のとおり、金融監督上、金融規制上の自己資本の計算の仕方についての修正ということでございます。「実態は変わらないではないか」というご指摘もあるのかもしれません。ただし、自己資本比率というものを共通の物差しとして、基準として、金融行政上の対応が定められている枠組みの中で、金融庁としては、その枠組みについて、時限的な措置として、結果として出てくる自己資本比率がマーケットの激しい動きによって振り回されて、それが各金融機関の金融仲介機能の発揮に悪影響を及ぼすということがないようにということで、それを期待して行った措置、―これからパブリックコメントのプロセスがございますけれども―、そういう措置であるわけです。それで、もともと銀行経営、あるいは金融機関経営においては、経営者の皆さんにおかれては、規制当局、監督当局と向き合うだけではなくて、もともと、むしろより多くの他のステイクホルダー(利害関係者)がいるわけで、それは株主であり、債権者であり、取引先であり、あるいは従業員であり、地域でありということだろうと思いますけれども、そういった多様なステイクホルダーとの関係を良好に保っていく中できちんとした説明責任を果たしていく、こういった多くのステイクホルダーと向き合っていらっしゃるのだろうと思います。

規制当局というのは、その向き合っていらっしゃる多くのステイクホルダーの一部でしかないわけでございまして、そういう意味では、銀行経営、あるいは金融機関の経営全体の中で、各金融機関において、自らの財務の健全性をきちんと維持しながら、かつ金融仲介機能をしっかりと果たしていくという取組みをしていっていただきたいと思いますし、また、そのことについて多くのステイクホルダーの方々に的確な情報発信をしていっていただくということが大事であろうかと思います。

問)

金融機能強化法(改正法案)の審議に絡んで問題となっている農林中金(農林中央金庫)なのですけれども、現行、農林中金は預金保険法の対象ではなくて、農林水産業協同組合貯金保険法の対象になっているという事実があります。今般の事情をかんがみれば、そもそも預金保険法の対象に入れておくべきだったのではないかというような意見もありますし、今、農林中金は農水省と金融庁の共管なわけです。なので、なぜ農林中金が現状預金保険法の対象になっていなくて、今回新たに対象に入れるというところの法律的な枠組みというか建てつけについて、長官としてどのようにお考えですか。

答)

まず、預金者保護、貯金者保護というのは、現状、預金については預金保険法に基づき、また、農林系統金融機関の貯金については貯金保険法に基づき、預金者の保護、特に小口預金者の保護のスキームが定められているということでございます。その保険料の負担であるとか、全体としての財政のあり方については、それぞれ別の仕組みとして構築されているということでございますので、二つに分かれているということでございます。

今回の金融機能強化法は現行法においても、単体としての農林中金は対象にしていたわけでございます。その趣旨は、我が国全体の経済を見渡したときに、自己資本不足が場合によって懸念されるけれども、市場における資本調達、自力での資本調達が必ずしも容易ではないという状況に備えて、必要な場合には公的な支援によって資本基盤を磐石なものにし、金融仲介機能をしっかりと果たしていっていただくという趣旨であるわけですけれども、この文脈の中では、農林系統金融機関もその他の銀行等についても同様であるという趣旨であろうかと思います。

(以上)

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