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佐藤金融庁長官記者会見の概要

(平成20年11月17日(月)17時01分~17時29分 場所:金融庁会見室)

【長官より発言】

私からは特にございません。

【質疑応答】

問)

先日閉幕した金融サミットでは、金融監督の国際連携の強化のほか、内需刺激のための財政出動で各国が協調する方針が打ち出されました。一方で、これまでの米国主導の国際金融体制には新興国などから強い批判が出ましたが、長官の今回のサミットについての評価をお聞かせ願いたいと思います。また、今回の宣言が今後、金融危機にどういった成果をあげていくのか、長官のご見解を教えていただきたく思います。

答)

ご案内のとおり、15日に米国のワシントンにおいて、先進国と新興国の20カ国・地域の首脳が一堂に会し、金融・世界経済に関する首脳会合が開催されたわけでございます。この会合後に公表された首脳宣言では、第1に、世界的な経済状況の悪化に対応して、必要に応じ内需刺激策を講ずる、といった、マクロ経済上の政策対応を行うということのほか、第2に、金融市場の改革のための5つの共通原則ということで、複雑な金融商品に係る情報開示の強化など市場の透明性及び金融機関の説明責任の向上、規制の対象となる市場・商品・市場参加者の見直しなど健全な規制の強化、金融市場における公正性の促進、監督当局間の連携など国際連携の強化、そしてIMF(国際通貨基金)など国際金融機関の改革といった5点が示されました。また第3に、この改革の共通原則を実施するための47項目にわたる具体的な行動計画が定められ、その中には、我が国から提案した内容も多く盛り込まれたものと承知をいたしております。

今回の首脳宣言においては、世界経済に大きな影響力を有する先進国及び新興国の首脳レベルで、現下の金融危機に対する認識を共有し、世界的な経済悪化への対応、そして金融危機の再発防止、金融システムの強化のための改革について、協調しつつ所要の措置をとっていく枠組みが合意されたということでございまして、世界経済と国際金融市場の安定にとって意義あるものであったと考えております。また、麻生総理から提案した、金融機関に対する監督・規制の国際協調、格付けのあり方、会計基準のあり方などについての我が国の主張が、首脳宣言に多く反映されたことも、意義深いものと思っております。

いずれにいたしましても、来年4月30日までに開催される次回会合に向けて、最大の成果が得られるよう、金融庁としては、各国当局や国内の関係当局等と協調しつつ、今般の首脳宣言の行動計画についてその着実な実施を図るとともに、金融安定化フォーラム(FSF)などの場における、金融危機の再発防止、金融システムの強化に向けた国際的な議論に、引き続き積極的に参加してまいりたいと思っております。

問)

欧米に比べ限定的と言われたサブプライム問題の国内金融機関への影響なのですけれども、それが世界的な金融危機に繋がった結果、2008年9月期の国内金融機関の中間決算が、主要行、地方銀行ともに軒並み水準が悪化しています。改めての質問になりますけれども、現時点での国内金融機関への影響をお聞かせください。

答)

主要行等を含めた銀行の平成20年9月期決算について、これまでに公表された結果を見てみますと、前年同期比で大幅な減益となっているところが多いわけであります。一部は、赤字に陥っているところもあるということでございます。その主だった要因としては、市況の悪化による手数料収入の減少、与信関係費用の増加、株式等の減損処理の増加などが挙げられるのではないかと思います。

他方で、グローバルな金融市場の混乱に伴って、欧米の主要金融機関では、直近の決算で大幅な赤字を計上しているといったところも見られるわけでありまして、欧米の当局においては、公的資金による資本増強、あるいは銀行等の一時国有化といった例外的な措置を、相次いで講じているという状況にあろうかと思います。このような状況と対比すれば、グローバルな金融市場の状況が我が国の金融システムの健全性に与える直接の影響というのは、欧米と比較して、引き続き相対的には限定されていると思っております。ただし、グローバルな金融市場の混乱が、株価の動きを通じて、あるいはグローバルな実体経済の後退などの影響を受けた我が国の実体経済の動向などを通じて、国内金融セクターにもネガティブな影響を及ぼしているという状況はございます。従いまして、引き続き高い警戒水準を維持しながら、注意深くフォローしていきたいと思っております。

問)

日曜日の報道で、ハートフォード生命の米親会社が、(米国)財務省に公的資金を申請したということですが、日本法人への影響と、日本の契約者がどう対処すべきか、監督官庁としてメッセージをお願いします。

答)

ハートフォード生命の親会社である、米国の(ザ・)ハートフォード・ファイナンシャル・サービシズ・グループ・インクが、米国貯蓄金融機関監督当局(OTS)に、貯蓄貸付組合持株会社への組織変更の申請を行うと同時に、米国財務省による資本注入プログラムへの参加を申請したという旨の発表を行ったと承知をいたしております。今般の発表は、個別の金融機関の資本政策といった経営判断に関する事項であり、かつ、現時点においては申請段階でありますので、当局として立ち入ったコメントをすることは差し控えたいと思っております。

一方、我が国においては、米国ハートフォードの100%子会社として、ハートフォード生命が現地法人の形で業務を行っております。金融庁としては、従来から保険業法に則り、業務の適切性、財務の健全性等について、オフサイトモニタリング等を行って、適切な監督に努めてきているところでございます。

この国内法人の販売している変額年金保険についての報道があったと承知をいたしておりますが、これも個別の金融機関の販売している個別商品に関する事項でございますので、立ち入ったコメントは差し控えさせていただきたいと思いますけれども、一般論として、変額年金保険などの投資性の高い、リスク性商品の販売に関しては、従来から保険業法及び保険(会社向け)の(総合的な)監督指針において、リスクの所在などに関して、保険会社から契約者に対して適切かつ十分な説明を行い、かつ、必ず契約者から説明を受けた旨の確認を行うための方策を講ずるといったことなどを、生命保険会社、銀行などの生命保険募集代理店に対して求めているところでございます。金融庁としては、こういった銀行窓販(窓口販売)を含む保険募集において、契約者への説明がきちんと行われ、顧客においては、受けた説明に則って、合理的な投資判断をしていただくということが大事だと思っておりますので、引き続きこういった対応に努めていきたいと思っております。

問)

繰り返しの質問になるのですが、今のところ日本法人の財務健全性については特に問題はないということで。

答)

現地法人の形で、保険会社として日本国内での営業を行っておりますので、これに対しましては、100%我が国の保険業法が適用になるということでございまして、その保険業法に則って、金融庁としての通常の監督が行われているということでございます。あんまり個別の話に立ち入るのはいかがかと思いますけれども、11月12日の報道で、ハートフォード生命が提供する変額年金が、昨今の株安により運用停止になったため、約200億円の損失が発生したという記事があったようでございますけれど、この点に関しては、ハートフォード生命から誤報である旨のプレスリリースが同日に公表されていると承知をいたしております。

問)

金融審議会の決済ワーキング・グループでの議論ですが、現在議論が進んでいますが、その中でいわゆる「代金引換サービス」をめぐって宅配便業界等から規制強化であるといったふうな反発も出ているようですが、消費者保護行政を担っている、消費者保護のための規制ということですが、そのあたりの金融庁としてのご見解を改めてお聞かせください。

答)

ご質問の件は、金融審議会の第二部会の決済に関するワーキング・グループの関係だと思いますが、これは電子マネーなどの決済に関する新しいサービスが普及するなど決済をめぐる環境変化を踏まえて、決済全般について幅広く総合的に検討することが重要という問題意識で設置をし、ご議論をいただいているというものでございます。ご質問の「代金引換サービス」についてもこうした検討の一環としてご議論をしていただいているところでございまして、金融庁としてはこの金融審議会でのご議論を踏まえつつ、利用者保護、そして決済システムの安全性・効率性、更には利用者利便の向上、イノベーション(革新)の促進と、こういったさまざまな観点から、どのような対応を取ることが適切かについて検討をしていくことが大事だというふうに思っております。

問)

サミットの行動計画の件で伺いたいのですが、まず一つ、「健全な規制の拡大」という柱のところで、中期的措置とあり、公開格付けを付与する信用格付会社は登録されるというふうに書いてあります。日本ではかねて金融審議会で登録制導入の是非も含めて議論してきたところだと思うのですが、金融審の今後の議論との関係の結論が出てしまっていますので、今後どのように進めていくのか伺いたいのと、また、導入するとしたらいつ頃になるか、時期的なめどはどのようにお考えでしょうか。

答)

格付会社に対してはご案内のとおり、米国では既に登録制の下での規制が導入済みであるわけです。欧州連合(EU)でも導入の方針というものが決定されるという状況にございます。こういった点も踏まえて、我が国でも投資者保護の観点から格付会社に対する公的規制の導入に向けた検討を既に開始しているということでございまして、ご議論が順調にまとまって方針が明確化されれば次の通常国会を目途に法案を提出するというスケジュール感も念頭に置いているところでございます。

金融商品は国境を越えて取引をされている、その金融商品に対して格付けが付与されるということで、いわば国境を越えて利用されている格付けが投資者にとって有用であり公正・公平であるためには、各国で国際的に整合的な規制を導入し、協調して監督していくということが重要であろうかと思います。その意味でも今般の首脳会合において、総理から各国当局に法的権限を持たせる方向の議論を提案し、国際的行動規範に整合的に信用格付会社に対する監督を実施していく、あるいは公開格付けを付与する信用格付会社を登録制にするといった方向での合意が得られたということは、今申し上げました日本国内での検討に一定の方向性を付与する効果があるというふうに思っております。

問)

もう一点、同じ柱のところの紙でいうと、09年3月末までの当面の措置というところに、当局は金融機関が信認を維持するために十分な量の資本を維持することを確保すると云々、国際基準設定主体は云々、より厳しい資本要件を設定する、と書いてあるのですが、この間10月末に政府が発表しました、市場を安定化されるという金融の対策を含めた諸々の対策が出された中に、銀行の自己資本規制を弾力化させるという方針が盛り込まれて実際に動き出しているところだと思うのですが、そういう日本国内の対応と、ここのサミットで盛り込まれております十分の量の資本を維持すること、確保すること、より厳しい資本要件を設定するといった行動計画は矛盾しないのでしょうか。

答)

今のご質問の部分というのは、行動計画の方ですか。宣言の方ですか。

問)

行動計画の柱で2つ目の健全な規制の拡大というのがあり、その中に健全性に関する監督というのがあって、09年3月末までの当面の措置というポツが4つあるのですが、3つ目のポツであります。

答)

これは、今回のグローバルな金融混乱の中で、大手金融機関における不十分なリスク管理や、あるいは蓋を開けてみたら必ずしもリスクに見合った十分な資本が確保されていなかった、といった問題認識で、リスクに見合った、きちんとしたリスク管理の中での、十分な資本を維持していくということの重要性を改めて確認したということであり、かつ、来年3月末までの措置としてこういった取組みを行っていくというふうに位置づけたということであろうかと思います。ここの「自己資本規制」というのは、銀行が財務の健全性を維持していくための共通の枠組みとして大変重要なものであり、我が国としてもそういった基本的な認識の上に立ってこの自己資本比率規制の運営に取り組んでいく必要があるというふうに思っております。

先般決定し公表し、現在パブリックコメントにかかっているということだと思いますが、自己資本比率規制の一部弾力化については、我が国にやや特有の事情と申しましょうか、典型的には我が国の銀行が株式へのエクスポージャーが相対的に大きい、その中で、我が国の株式市場において株価が非常にボラティリティが高くなってきている、その背景には海外の投資ファンド等の動きがある、ということで、結果的に、例えば東京証券取引所でPBR(株価純資産倍率)の平均値が1を下回るといったような、必ずしも合理的には理解しにくいような、そういう事態が出てきている、他方で有価証券の評価損というものが自己資本比率の計算上、ティア1(基本的項目)から控除されるという仕組みになっておりますので、その海外の投資ファンドの動きによって我が国の預金取扱金融機関の金融仲介能力というものが大きく振り回されて、仲介能力が損なわれるという、ここの因果関係をどこかで遮断するということが、我が国の経済全体の運営の上で必要性が極めて高いということで取られた臨時の措置ということでございます。こういったやや危機的な要素をはらんでいる変動要因への対応ということと、中長期的な制度としての信頼性・規律といったものを維持していくという方の要請との、両方のバランスを取って政策を進めていくということが求められている状況の下での判断であるということでございます。

(以上)

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