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佐藤金融庁長官記者会見の概要

(平成20年11月27日(木)17時02分~17時32分 場所:金融庁会見室)

【長官より発言】

私からは特にございません。

【質疑応答】

問)

生命保険各社の中間決算が出揃いまして、株価下落などで各社とも財務状況が急激に悪化しているという状況が明らかになったわけですが、10月以降さらに株価が下がっていまして、更に状況が悪化しているのではないかと思われますが、当局としてストレステストや監督上の対応についてどのように取り組んでいくお考えかお聞かせください。

答)

ちょうど昨日、主要生命保険会社を含めた多数の生命保険会社が平成20年度の中間決算を公表し、生命保険会社の決算が出揃った状況だと思います。主要生命保険会社9社の中間決算について見てみますと、総じて本業の利益を示す基礎利益及び中間純利益とも前年同期に比べて減益となっております。基礎利益が17%程度のマイナス、純利益は32%程度の低下ということであります。本業の利益を示す基礎利益の減少要因としては、新規契約獲得の伸び悩みによる保有契約高の減少、金融市場の混乱による利息配当金の減少、そして最低保証付変額年金に関する準備金の積立てなどが影響したと承知いたしております。それから、グローバルな金融市場の混乱やそれに伴う国内株式の下落等を受けて、保有する有価証券の減損、売却損が増加し、また含み益についても減少したと承知いたしております。

他方、もう少し長い目で見てみますと、生命保険会社においては、これまで経営の効率化の推進や内部留保の拡充といったことで経営基盤の強化に努めているところでありまして、こういった取組みを通じて一時期に比べて財務の健全性が改善してきているということも事実であろうかと思います。こういう中で、グローバルな金融市場の混乱等で損失要因が広がっていることかと思います。

こういった状況でございまして、生命保険会社の財務の健全性を示すソルベンシー・マージン比率は、この中間決算におきまして各社とも前期に比べますと30ポイントないし120ポイント低下したということですが、監督上の基準値である200%は各社とも大きく上回っていると承知しています。ちなみに、主要9社の加重平均のソルベンシー・マージン比率は1,033%となっております。

いずれにいたしましても、金融庁としては、生命保険会社の財務の健全性については財務の状況、リスク管理態勢などについて早め早めの情報収集に努めると同時に、現下の厳しい状況の中で引き続き高い警戒水準を維持しながら注意深く見ていきたいと思っています。

問)

民主党が、金融機関に対して中小企業向け融資の情報開示などを求めた「地域金融円滑化法(案)」を参議院に提出する方針ということですが、過去にも地方議会や中小企業団体などからそういう要請があった経緯があったようですが、今、この金融危機の状況の中で金融庁は中小企業向け融資の円滑化に注視されているわけですが、こうした法律の必要性などについてどうお考えですか。

答)

民主党におかれまして、去る11月5日に「経済・金融危機対策」というふうに銘打ったパッケージのようなものが公表されたということだと思います。その中で「金融アセス法」あるいは「地域金融円滑化法」というものを制定するということが提言として盛り込まれていると承知していますが、詳細については把握しておりませんのでコメントは差し控えたいと思います。

今のご質問の関係でいいますと、金融庁のこれまでの取組みとしては、地域金融の円滑化のためには地域の実情に応じて各地域金融機関が自主的に創意工夫を凝らした取組みを行っていくことが重要であると思っております。こういった観点から金融庁では、地域金融機関に対して、地域経済への貢献といったことを含めて地域密着型金融(リレーションシップバンキング)に関する自主的な取組みと、その実績の公表を求めることによって、いわば地域の利用者の目(パブリックプレッシャー)を通じた地域金融機関における取組みの深化、定着を図っているところでございまして、今後ともこうした取組みを促していきたいと思っています。

問)

青森県の信用金庫が四つ合併するということで、県域が一つにまとまるという動きがありました。これについて、地域金融機関の存在は中小企業の経営が一段と厳しくなる中でかなりクローズアップされていますが、もたらす効果や評価についてお聞かせください。

答)

本日、青森県内の四つの信用金庫(八戸信用金庫、あおもり信用金庫、東奥信用金庫、下北信用金庫)が平成21年11月を目途に合併を目指すことで合意したという旨の公表を行ったと承知いたしております。

経営再編等は基本的には各金融機関の経営判断の問題でございますので、こういった動きについて個別のケースについて直接立ち入ったコメントは控えさせていただきたいと思いますが、一般論で各信用金庫が将来を見据えて経営判断をなさったことについては敬意を表したいと思います。本件に関して言えば、この合併によって経営基盤が更に強化されて、地域の利用者のニーズに対応した金融サービスの提供やより円滑な資金供給といったことを通じて、地域経済の発展に貢献していっていただくことを期待しております。

問)

関連ですが、今後こういった動きは金融庁としては他の地域にも広がっていくことを期待したいというか、あるいは金融危機が広がる中で動きが広がっていくと見られているかどうかお聞かせください。

答)

先ほども申し上げましたように、経営統合・再編というのは各金融機関の自主的な経営判断に基づいて決定されるべきものだと認識をいたしております。一般論で申し上げれば、経営統合によって店舗や人材の効率的な配置、システム投資の効率化、ノウハウの多様化などによって経営効率の向上に結びつけることができる可能性があるのだろうと思います。そういう意味では、金融仲介機能を安定的、かつ、効果的に発揮していくための経営基盤の強化ということで、一つの選択肢であることは間違いないと思っております。

いずれにいたしましても、将来を見据えて経営戦略の構築あるいは経営基盤の強化に各金融機関自身の経営判断で取り組んでいただくことは大変重要なことだと思います。

問)

農林中央金庫が1兆円超の自己資本調達を発表しましたが、農林中金といえば金融機能強化法で争点になっていることもありますが、こうした金融機関が自力で資本調達する動きをどのようにお考えですか。

答)

農林中央金庫が本日、平成21年3月末を目途に1兆円を超える規模の増資を決定し、会員に対し協力を要請していくという旨の公表を行ったと承知しております。

個別金融機関の資本政策というのもまさに経営判断にかかわる事柄でありますので金融庁として個別事案に立ち入ったコメントは差し控えたいと思います。一般論で申し上げれば、現在のようなグローバルな市場の混乱が続いている中で、金融機関自身が先を見据えつつ、自ら経営努力を行って財務基盤の強化に向けて取り組まれるということは大変重要なことだと考えております。

問)

少し関連するのですけれども、地域金融機関全般でいいますと、中間決算が一巡しまして、ただいま金融庁としても集計中だと思うのですけれども、この地域金融機関の自己資本の増強の必要については、長官は今どのようなご認識を持たれているのでしょうか。

答)

まず、地域金融機関の中間決算の状況ですけれども、昨日までに全ての地域銀行でこの中間決算が公表されているということでございます。有価証券の減損処理であるとか、あるいは信用コスト、不良債権処理費用の増加といったようなことで、減益やあるいは一部赤字となった銀行があるということでございます。地域銀行110行のうち96行が減益ということで、この96行のうち更に35行が赤字と承知をいたしております。全体像、概要につきましては、現在集計作業をやっているところでございます。

こういった決算内容になった背景としては、申すまでもなく、サブプライム・ローン問題に端を発したグローバルな金融市場の混乱ということが、我が国の実体経済に影響を及ぼしている、また更に株式市場に大きな影響を及ぼしているということがあり、また我が国の地域経済や中小企業の業況というものが厳しい状況にある、といったことがあるのだろうと思っております。こうした中で、金融機関の融資審査が慎重になっているという指摘もあると思っております。

お尋ねの自己資本の強化については、各金融機関にしっかりと財務の健全性を維持していっていただく、経営基盤を強化していっていただくという観点からも、それから各金融機関に地域経済の中で中小企業に向けた融資をしっかりと展開をし、金融仲介機能を発揮していただくということのためにも、大変重要な取組みであろうかと思っております。こういうことで、金融庁としてはこれまでも、金融仲介機能の発揮ということに向けて、様々な施策を講じてきているということでございます。当然のことながら、この自己資本の強化ということへの取組みについて、それをマーケットベースで円滑に実施しきれないケースに備えて、金融庁としては金融機能強化法(改正法案)というものを国会にお出しをし、今ご審議をいただいているということでございまして、機能強化法もまさにこういった全体の取組みの一部であると思っております。

問)

今月の18日に大臣が談話の形で示された空売り規制に関してなのですけれども、先日、東証の斉藤社長が、特に空売りの株の手当ての確認を証券会社に義務付けるという内容について、「もう少し実務を踏まえた行政対応をしてほしい」という趣旨のご発言をされていましたけれども、まだパブコメ(パブリック・コメント)をこの間締め切ったばかりなので、これから対応が変わるのかもしれないのですけれども、改めて、その政策の意図と、今後の対応について考えていることがあれば教えて欲しいのですけれども。

答)

ご質問の中で触れていただいた、東証の斉藤社長のコメントに関する報道があったことは承知をいたしております。

我が国において、空売り規制に関しては、既に空売りに関する確認義務や、株の手当てのない空売りの禁止の措置が講じられております。今般の追加的な措置につきましては、これらの措置について、実効性を一層より確かなものにするという趣旨で、証券会社における確認手続などについて、法令上明確化を図るという趣旨でございます。そういう趣旨で、内閣府令の案に関するパブリック・コメントの手続を実施したところでございます。今後、このパブリック・コメントの手続の中でお寄せいただいたご意見等を踏まえて、内閣府令の改正の作業をしていくことになると思います。その際には、今申し上げた、規制の実効性を十分に確保していくということが前提となりますけれども、同時にその中では、証券会社の実務の円滑ということにも十分留意していく必要があると思っております。

問)

二つお伺いしたいのですけれども、1点目が、最近、大学、企業もそうですけれども、デリバティブなどに絡めた損失の計上を発表するところが増えておりますけれども、こうした大学などの資産運用について、適合性の原則の観点から、そういうものを販売する、主に外資系などだとは思うのですけれども、そういった金融機関の問題というのはどのように考えていらっしゃるのか。もう1点が、月曜日にFRB(米国連邦準備制度理事会)が発表した追加の金融対策、最大8,000億ドルですけれども、GSE(政府支援機関)債や証券化商品の買入れという話ですが、効果と副作用の両方を指摘する声があるかと思うのですが、ドルの信認の低下といった面から日本円への影響を含めて、ご所感をお聞かせいただきたいと思います。

答)

第1点目のお尋ねにつきましては、我が国において広く名前を知られているような学校法人で、その資金の運用の中で様々な投資をなさり、その中で、昨今のグローバルな市場の混乱の結果として、リスクが顕在化して損失を抱えているということかと思います。おそらく、個別のケースごとにどの程度の専門的な投資判断がなされたのかということについては、様々であろうかと思いますので、あまり断定的なことを申し上げるべきではないと思いますが、一般論として、投資家の様々なニーズにあった投資対象となる金融商品を、その投資家の理解度にあった形で、その合理的な投資判断をするために必要十分な情報を提供するということは、こういったリスク性の投資商品を販売する業者において、当然心がけるべき重要なポイントであると思っております。おそらく、金融商品取引法に基づく法的な枠組み、その中でプロの投資家、アマの投資家、あるいは特定投資家、一般投資家という区別もあるわけでございますけれども、こういった点に加えて、本年4月でしたか、各金融業界と金融庁との間で合意をし、共有をしている14項目のプリンシプルがありますけれども、このプリンシプルの中にも、こういった十分な説明、情報の提供ということに繋がる基本原則というものは含まれていると思いますので、そういう意味でも、プリンシプルに則った適切な業務運営に心がけていただきたいと思っております。

それから2点目の、米国当局による追加的な市場安定化策でございますが、その柱は、一つは資産担保証券を保有している投資家向けの融資制度、2,000億ドル規模の創設、そして、GSEが発行する債券及びファニーメイ(米連邦住宅抵当公庫)、フレディマック(米連邦住宅金融抵当公庫)、ジニーメイ(米連邦政府抵当公庫)が保証する住宅ローン担保証券を買い取る、こちらのほうは6,000億ドル規模と言われていますが、こういった追加的な金融市場の支援策が公表されたということかと思います。こうした一連の施策は金融危機の解決に向けて、米国として責任ある判断をなさり、対応が採られたということだと理解しておりまして、こういった一連の措置が、これまでに既に講じられている措置とも相まって、金融市場の安定化に資することを期待したいと思っております。

問)

先ほどの空売り規制の件なのですが、これは先ほどおっしゃたように、証券会社の実務の円滑化についても十分留意する必要があると、これは規制のあり方について大幅な軌道修正も避けられないとのお考えなのか、その辺の、東証の社長のご発言をどのように踏まえていくのかということをお伺いしたいのと、もう一つ、そもそも今回の空売り規制の強化の意義なのですが、株券の手当てをせずに実際に取引をしているのは、全体のボリュームの中でどの程度の割合を占めているかということをちょっとお伺いしたいのですが。

答)

そもそもパブリック・コメントという手続を踏ませていただいていること自体が、実務に携わっていらっしゃる方々、あるいは幅広く投資家の方々、実際に市場で取引をなさっている市場参加者の方々の、そういった実務面の立場からのご意見も伺って、それを、妥当なものについてはパブリック・コメントに付した案に反映させていく、元々こういう手続でございますので、先ほど申し上げましたように、この規制の実効性ということと、実務に携わっていらっしゃる証券会社の業務の円滑さ、ということの両方の要請を踏まえて、バランスの取れた内容になるように、パブリック・コメントでいただいた意見もよく斟酌しながら検討していくということであろうかと思います。取引の中での空売りのウエイトにつきましては、これが圧倒的な割合を占めているという状況では一般的にはない、と承知をいたしておりますけれども、正確なところは、総務企画局の方にお尋ねいただき確認していただければありがたいと思います。

(以上)

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