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佐藤金融庁長官記者会見の概要

(平成20年12月15日(月)17時00分~17時32分 場所:金融庁会見室)

【長官より発言】

私からは特にございません。

【質疑応答】

問)

改正金融機能強化法が12日に成立しました。改めて長官のご所感をお聞かせください。中川大臣が12日夜の記者会見で、今週中に施行したいと述べられていましたけれども、施行予定日等についても長官から教えていただきたく思います。

答)

改正金融機能強化法が12月12日の金曜日に成立したところでございまして、ここに至るまでの関係各位のご尽力に対して深く感謝申し上げたいと思います。

ご案内のとおり、この改正法は国の資本参加を通じて金融機関の金融仲介機能を強化することにより、厳しい状況に直面する地域経済及び中小企業を支援することを目的としたものでありまして、これまでの各般の施策、あるいは金融機関における取組みの後ろ盾となる重要なものであると思っています。

今後速やかにこの制度が実際に利用可能なものとなるように、関係政令、内閣府令などの整備のための手続きを一気呵成(かせい)に進めるということで取り組んでいます。具体的な施行日については、まだ政府内で検討プロセスにありますけれども、金融庁としては17日の水曜日の施行を念頭に置いているところでございます。

問)

金融機能強化法の関連ですが、既に報道されているように一部地方銀行から強化法による資本注入を希望する声があがっています。一方で地銀の現場サイドでは、中小企業向け融資の減少というのは、貸し渋りということもあるのでしょうが、少子高齢化とか地方の構造的不況に今回の金融危機が追い討ちをかけて地元企業の資金需要が減少しているとも思われます。長官の地方経済についての現在のご認識と、改正強化法を機能的に運用するための施策などをお聞かせ願えればと思います。

答)

ご案内のとおり、米国のサブプライム・ローン問題に端を発したグローバルな金融市場の混乱が我が国の実体経済や株式市場などを含め、我が国金融セクターにも影響を及ぼしてきているという状況だと思います。こうした、ある意味では外的な環境変化の下で地域経済や中小企業は大変厳しい状況に直面していると認識しています。

全国の財務局を通じて11月に実施した商工会議所に対するアンケート調査の結果を先週の金曜日の12日に公表しましたが、売上げの低下等を背景に中小企業の業況感は前回の同様の調査(8月実施)に比べて全体的に厳しさが増しています。その中で資金繰りについても前回調査に比べて全般的に厳しさが増しています。その要因としては、今のご質問の中でもちょっと触れていただきましたが、販売不振や在庫の長期化などといった営業要因の割合が最も大きいわけですが、同時に金融機関の融資態度や融資条件という項目の割合も上昇しているところです。

こうした厳しい経済状況の下、金融機関においては、より一層適切かつ積極的な金融仲介機能を発揮していただくことが求められていると思います。こういったことも踏まえまして、改正金融機能強化法を今週半ばに施行すべく関係政令・内閣府令等の整備の手続きを進めているところでございます。また、この制度について今後全国各地で金融機関向けの説明会を開催して、この制度の周知を図りたいと思います。またさらに関係団体などに対してこの制度の利用の検討について積極的に呼びかけてまいりたいと思っています。

金融機関においては、中小企業をはじめとする借り手企業が期待する金融仲介機能を十分に果たしていくため、この制度の積極的な活用を是非ご検討いただきたいと思います。

問)

企業の社債やコマーシャル・ペーパー(CP)の発行が難しくなっているというお話を最近聞くのですが、長官の企業の年末の資金繰りに対するご見解をうかがいたいのと、また、追加経済対策でも金融機関に対して企業の資金繰りに特段の配慮をするように要請するということがありますが、要請以外に企業の資金繰りという面で何か今後対策を検討されていらっしゃったら教えてください。

答)

年末ないし年度末に向けた企業金融の状況についてですが、まず、中小零細企業の状況については、今も幹事社の方のご質問にお答えしたところですが、同時に大企業においてもここのところ社債・CP市場の起債環境が悪化するといったことで企業金融が逼迫している面があると認識しています。こうした状況も踏まえて、先般金曜日に総理が記者会見において企業の資金繰り対策を最重要課題の一つとする「生活防衛のための緊急対策」を発表されたということかと思います。金融庁としては、従来から繰り返し金融機関に対し資金供給の円滑化を求めてきたところでございまして、改めて年末あるいは年度末の企業金融に対する特段の配慮を要請する予定としております。

この関連では、大企業の資金繰りということも中小企業の状況と合わせて注意深く見ていく必要があると認識しています。社債、CP市場の起債環境の悪化によって銀行借入れへのシフトが起きているという指摘もあるところだと思います。市場を通じた直接金融と、銀行融資を通じた間接金融の双方のチャネルがそれぞれ円滑に機能することによって、金融システムあるいは金融市場が全体としてしっかりとした金融仲介機能を発揮していくことが重要であろうかと思います。この関連では、金曜日に発表された対策の中でも「政策金融による危機対応業務の発動」という項目が入っていて、その中にCPの買取りも含まれていたと思います。市場を通じた直接金融の動向についても引き続き関心を持って注意深く見ていきたいと思っています。

問)

金融機能強化法についてですが、17日施行ということで、今後のスケジュールというか、申請から注入に至るまでの流れみたいなものを確認しておきたいのですが、例えばアメリカのタープ(TARP、そのうちの資本注入プログラム)のようにある程度申請期限というものを区切った上で、そこまでの申請を求めるというふうな運用を考えておられるのか、そうではなく、五月雨式といいますか、(申請が)来る順々にそういった審査をしていくといったことを考えておられるのか、年末なり年度末の資金繰り等々考えますと、ある程度締切みたいなものを設けてやった方が合理的かなと思うのですが、その辺はいかがでしょうか。

答)

まず、制度としては、締切は3年あまり後の平成24年3月までということでありますが、先ほども申し上げましたように当面の取組みとしては、まずは、今日も臨時の緊急の財務局長会議を開かせていただきましたが、金融庁及び各財務局一丸となって全国の金融機関に対してきちんとした説明会を開催させていただいて、制度の内容・趣旨・使い方等々について中身の濃いご理解をいただくように努めるということが第一弾、そしてまたそれと同時に年末を控えておりますので、年末金融について各金融機関において特段のご努力をお願いしたいということで、金融仲介機能の発揮についての要請を改めてしていきたいということでございます。

それに先立って当然のことながら、この関係の政令・内閣府令の整備というのもやっていき、それをベースに今の説明会なども開催するということになろうかと思います。そういった特に中小企業向け金融への取組みというのをきちんとやっていただく中で、各金融機関の経営者の皆様には是非先を読む経営をやっていただきたいというふうに思います。実体経済の状況が厳しい中で、またグローバルな市場の混乱によってマーケットのボラティリティ(変動)が非常に高くなっている中で、半年後、1年後、2年後に自分のところの金融機関の実態というのはどういうリスクにさらされて、どういう姿に成り得るのかというフォワードルッキングな発想で経営に取り組んでいただきたいと思っております。そういう中で、同時に地域において中小企業に対する金融仲介の機能をしっかりと果たしていっていただくということでございまして、資本政策のところは経営判断の要素が当然入ってきますけれども、そういった先を読む経営の中で資本増強という経営判断に至る金融機関が増えてくる蓋然性は相当あるのではないかと思いますし、またその中でマーケットベースでは調達しにくいというようなケースも出てくる可能性はあるというふうに思っておりまして、そういうときの備えとしてこの改正金融機能強化法は存在しておりますので、是非このスキームを前向きに使っていただきたいと思っております。

こういった働きかけの中で、どの位の申請がどれくらいのタイミングで出てくるかという点については、予断をもつべきではございませんので、先ほどのご質問につきましてはこの辺の状況の全体をよく見ながら取り組んでいきたいと思っております。ただ、現在のような状況の下で速やかな取組みを各金融機関には是非お願いしたいと思いますし、またそのような取組みに対して当局の側も迅速な対応が求められているということかと思います。

問)

水曜日に施行ということであれば、年内に注入というのは理論的に可能になるのでしょうか。つまり、審査期間もあれば金融機関側が検討しなければいけない時間もあるということがあると思うのですが、一方で、年内に(資金が)入らないと年末越えの資金に直接的に使えないということであれば、どうなのかという意見もあるのですが、そのあたりの審査のスピードアップはどの位一気呵成にできるものなのでしょうか。

答)

大事なことは年末に向けて中小企業の資金繰りを応援するということで、金融機関から中小企業への融資が年末までにしっかり行われるということが一番大事なことだろうと思います。そういったことの結果として、あるいは既に保有している貸出債権の劣化などによって負担が大きくなるということが出てくるのは少し後の段階になってくると思います。そういったことを先を読みながら経営判断していただき、増資に取り組んでいただくということが重要でございますので、年末ということを意識した場合には、まずは、金融機関からの融資がしっかりと出ていくということが大事なのではないかというふうに思っております。申請する金融機関の側でそういった経営判断に至るまでの道筋、あるいは申請を行い、実際に資本注入がなされるまでの必要となる様々な手続きは当然踏んでいくということでありますが、その手続きを踏むには最低限の時間はかかると思いますが、とにかく与えられた条件の中で最も速く進むように努力をしていくということかと思います。

問)

また強化法の件で細かい話ですが、財務局を通じて行う説明会というのは、年明けから各財務局で一回ずつですとか、スケジュールというかどのような形でやるのかということをまず一点お聞きしたいことと、水曜日に施行するということになると、政省令に関してパブコメの手続は飛ばすということになると思いますが、これは緊急性を要するということでパブコメをしなくていいという、あの規定を使って行うという理解でよろしいのでしょうか。

答)

まず全国での説明会ですが、年明けからといったそんな悠長なスケジュール感を持ってはおりません。当然年内から始まるというふうに思っております。

それからパブリックコメントについてですが、今ご質問の中でお答えもおっしゃっていただいているのですが、この現下の厳しい経済情勢にかんがみて速やかに施行する必要がとにかく高いという認識を持っております。したがって、行政手続法第39条第4項第1号にございますが、「公益上緊急に命令等を定める必要があるため、第1項の規定による手続きを実施することが困難であるとき」という条項に該当するものというふうに判断をいたしまして、パブリックコメントの手続きを省略することとしております。それから内容的に見ても、例えば多数の金融機関に一律に新たな義務を課するといった性格のものではないわけであり、むしろ多数の金融機関に新しいオプションを使う機会を提供するということでございますので、そういう内容面に着目しても、パブリックコメントの必要性ということと、この急いでやるべしという要請とを秤にかけたときには後者の方が大きな重みを持っているということかと思います。

問)

金融機能強化法の資本注入枠ですが、当初の準備段階では2兆円という数字を前提というのか、それくらいでいわれておりましたが、金曜日(12日)の段階では12兆円が準備されることになり、それに関する説明を改めて伺いたいというのと、3年間で12兆円という数字は必要にして十分なものなのか余り得るものなのか、そのあたりの先行きの見通しも伺えたら助かります。

答)

機能強化法に基づく資本参加枠の拡大ということは、ご案内のとおり10月に発表されました対策の中でも十分な資本参加枠を確保するということが謳われていたものでございます。その精神に沿って、とにかくこのグローバルな金融市場の大混乱が進行中でございますので、どういった事態が起きても十分な対応ができるような大きな枠を確保すると、こういう考え方で10兆円を追加し12兆円という枠にしたということでございます。

この12兆円という枠のマグニチュードについて参考までに申し上げれば、これまでに97、98年の金融危機以来これまでに投入した公的資金による資本注入の額が12.4兆円ですので、ほぼそれに匹敵するような規模になっているということもいえようかと思います。それからこの12兆円すべてが使われるということでも必ずしもないかもしれませんが、仮に一つの前提としてすべての預金取扱金融機関のうち半分くらいの金融機関がこれを使うというふうに前提をいたしますと、その半分の金融機関について自己資本で4パーセンテージ・ポイント上昇するということでありますし、それからティア1の自己資本、中核的自己資本について、今の半数の金融機関という前提で考えるとこれが1.5倍になるというくらいの規模でございまして、そういう意味で、先ほど申し上げましたような相当な大きなボラティリティがあっても対応できるような規模にしたということでございます。

それから既存の2兆円に今年度の第二次補正予算で10兆円加えることによって12兆円になったというのは、この平成20年度すなわち来年3月末までの期間を念頭に置いたものでございます。この期間内に12兆円使用することも可能であるわけでございますが、年度が変わると政府保証枠というのは洗替えが行われますので、そういう意味で平成21年度の当初予算においても拡大後の枠、12兆円を同額要求するという対応を考えているわけでございます。従って、1年間の枠として12兆円が用意されている、各年度に12兆円が用意されている、というふうにご理解いただいてよろしいかと思います。当然22年度以降の枠については、またそのときの予算編成過程で対応していくということかと思います。

問)

話は変わりますが、本日、野村ホールディングスが、アメリカの巨額詐欺事件で逮捕されたバーナード・マドフ氏が運営するヘッジファンドなどに対する投資残高を発表しました。これに関連して、野村以外の日本の金融機関への影響も含めて金融庁のご見解をお願いします。

答)

米国の連邦捜査局(FBI)がマドフ氏を逮捕し、このマドフ氏が関与するファンドをめぐって被害額が最大で500億ドルに達する可能性があるといった報道がなされているということは承知しております。

これに対しまして野村ホールディングスは、以下のようなプレスリリースを公表しているところであります。第一にマドフ氏に関連するエクスポージャーは275億円相当であると確認していること、第二にこれらのエクスポージャーは当社の自己資本に比してその影響は限定的であること、こういった内容でございます。

現時点で我が国の金融機関がこの関連で巨額のエクスポージャーを抱えているという情報には接しておりませんが、いずれにいたしましても我が国の金融機関の財務の健全性にこの事案が与える影響等については注視していきたいと思っております。

(以上)

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