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佐藤金融庁長官記者会見の概要

(平成20年12月22日(月)17時01分~17時23分 場所:金融庁会見室)

【長官より発言】

私の方からは特にございません。

【質疑応答】

問)

2009年度予算の財務省原案で、金融庁は国際担当の総括審議官の設置や、監督強化のための人員増が認められました。この点についての長官のご所感をお願いします。

答)

来年度の金融庁の機構・定員について、20日に財務省原案の内示がありまして、国際担当の総括審議官の設置、それから定員について45人の純増など、体制整備が認められたところでありまして、査定当局のご理解に感謝申し上げているところです。

ご案内のとおり、このグローバルな金融市場の混乱が続いているという状況の中で、やはりグローバルに実体経済の悪化あるいは市場の不安定性というものが続いているという状況かと思います。こうした状況の中で、国際的には金融庁としても各国の当局と金融規制・監督の面で協調・連携を強化していく必要があると認識をしております。特に当局間のハイレベルでのネットワークの構築といったこと、あるいは情報共有といったことが、ますます重要となってきているわけです。これとの関係で、当局として金融機関の財務の実態などについてのモニタリング能力というものが、ますますより高い水準のものとして求められているという状況かと思います。こういう意味で、外国当局との連携強化やグローバルな市場動向のモニタリング能力の強化といったことは、ベター・レギュレーション(金融規制の質的向上)の中の項目でも重点事項として入っているわけでありまして、こういったことを支える組織についてお認めいただいたということは、大変心強いわけであります。こういった状況を踏まえてご査定いただいたと思っておりまして、今回お認めいただいた機構や定員を最大限効果的に活用していくと、それによって様々な政策課題に適切に対応していくということが重要だと思っております。

問)

おそらく、本日が本年の最後の長官会見だと思いますけれども、この1年を振り返っての総括をお願いいたします。それから、金融庁・金融行政にとって平成20年がどのような1年だったか、長官ご自身の感想も併せてお聞かせください。

答)

まだちょっと早いような気もしますけれども、定例の会見としては最後ということでございますので、お答えをさせていただきますと、この2008年という年は、グローバルな金融・資本市場の混乱と、それに対しての当局の対応に関して、おそらく歴史の中で人々の記憶に留められる1年であったのではないかと考えています。まだ過去形ではないわけでありますけれども。

ご案内のとおり、米国のサブプライム・ローン問題を契機としたグローバルな金融・資本市場の混乱によって、欧米では大手投資銀行をはじめとする金融機関の破綻(はたん)や、多くの金融機関における巨額の損失処理などが続いているところであります。これに対して各国の当局は、金融機関への資本注入や大規模な流動性の供給といったことなどを通じての当面の危機対応ということと、それから、こういった金融危機の再発防止に向けた中長期的な枠組みの再構築、こういった両面の取組みがなされていると。この中長期的な枠組みの再構築の中には、信用格付の役割と利用の見直しや、あるいはディスクロージャーの信頼性向上、あるいは金融機関に対する健全性規制の強化といったことが含まれるわけですが、こういう枠組みの再構築という課題にも取り組んでいくということかと思います。

こうした中で、先ほどもちょっと出てまいりましたけれども、各国当局間の国際的な連携の必要性が特に高まってきている。また、各種国際会議に参加をし、そこでの議論に積極的に参加する、あるいは情報の共有をしていくということもその重要性を高めてきているということかと思います。これに関連して、日本国内においても金融庁の取組みとして、例えばサブプライム関連、あるいはその後はより広い範囲の証券化商品を対象として、我が国金融機関のエクスポージャーを集計ベースで公表するといった取組みを行いましたし、またこういう市場環境の中での我が国の各金融機関の健全性について、注意深くモニターをしていくといった取組みを行ってきたところであります。また、市場の過度の変動が我が国の実体経済に悪影響を及ぼすという因果関係を和らげるために、金融機能強化法の改正や、中小企業金融円滑化のための各般の取組みを行っているというところでございます。

他方、こうしたグローバルな金融危機に関連した取組みと同時に、金融庁では、我が国金融・資本市場の競争力強化を目的とした「市場強化プラン」というものを進めております。また同時に金融規制の質的向上を図るための「ベター・レギュレーション」という取組みも進めております。こういった中長期的かつ前向きな政策課題にも併せて取り組んできているということでございます。

こうした中で、本年6月には金融庁の前身である金融監督庁の設立から、ちょうど10年が経過するという節目を迎えました。その間、今日まで透明・公正な金融行政の遂行に努めてきたところであります。今後とも金融システムの安定、利用者の保護・利用者利便の向上、そして公正・透明で活力ある市場の確立という金融行政の3つの目標に向かって、職員一丸となって取り組んで行きたいと思っております。

問)

自民党の方で、銀行等保有株式取得機構の買取り再開法案というのが了承され、予算の方も二次補正で20兆円という大幅な枠を用意されて、来年の国会が通れば速やかに再開するということですが、銀行関係者の中にはこれだけ大きな規模の買取りをできるようにしたところで、なかなかこの低い水準の株価だと売るに売れないので効果が限定的なのではないかという見方もありますが、このあたりの買取り再開の効果に関する長官のご所見を伺えればと思います。

答)

先ほども申し上げましたが、グローバルな金融混乱の中で、株価のボラティリティ(変動)というのが非常に高まってきたということかと思います。その株価の下落というのが、我が国の金融機関の財務に影響を与え、そのことがまたそれら金融機関の金融仲介機能にも悪影響を及ぼして、我が国の実体経済にもグローバルな金融混乱の影響が及ぶという因果関係があるわけでございます。この因果関係をできるだけ限定させていくということで様々な取組みをこれまで行ってきているわけでございまして、金融機能強化法もそうでしょうし、あるいは貸出条件緩和債権の取扱い、自己資本比率規制の一部弾力化、とこういったことも全てそういう文脈の中で位置付けられるわけであります。

そして、この銀行等保有株式取得機構の活用・強化というのもこういう大きな取組みの中の一つというふうに考えております。株価がいわば異常に大きなボラティリティを持って動いていくということに対する、一つの安心感をもたらすものとしての効果は確実にあるというふうに思っております。各銀行が保有している株式のその取得簿価との関係というのは様々であろうかと思いますが、おそらく様々な経営判断によって株式について保有し続ける、あるいは処分をするという様々な判断がなされるのだろうと思いますが、そういった各金融機関における経営判断がなされたときに、それが株式市場にネガティブな影響を及ぼさないように安心感を提供するという意味では、確実にそういう効果があるというふうに思っております。

問)

今の関連で前にもお聞きしたことがあるかもしれませんが、金融機関が株価に非常に脆弱であり、これだけ(株価が)低迷する度に株を買ってやるという議論が出てくるわけですが、そもそも銀行が株を持つということについて、それ自体を見直すという、今日も自民党でそのような意見が出ていましたが、長官はその点をどのようにお考えでしょうか。

答)

一番大きく位置付けた場合には、各金融機関が、それぞれどういうビジネスモデルでどういった資産を保有するか、その中でどういうリスク資産の配分を作っていくかということは、それぞれの金融機関においてしっかりとしたリスク管理の下でお決めいただく、という性格のものであろうかと思います。他方で、我が国金融機関にかなり共通した一つの傾向として、株式のエクスポージャーが諸外国の金融機関に比べて相対的に大きいという面があったのは事実だと思います。そういったことも踏まえて、この「銀行等の株式等の保有の制限等に関する法律」においては、銀行の株式保有をその中核的自己資本(ティア1)の範囲内に収めていただくという規制をかけたわけでございます。現在その規制は十分に達成され、ティア1の範囲内、ティア1を相当下回る水準にまで抑制されてきていることかと思います。

こういった中で、もちろん大量の株式を保有することはそれなりの市場リスクを抱えることになるわけでありますので、保有し続けることについて、経営判断として、あるいはリスク管理上の観点も踏まえて十分合理的なものであるのかどうか、こういった点をそれぞれの金融機関においてその都度、その時点その時点で判断していっていただくということが、重要であろうかと思います。この辺はすぐれて経営判断に属するものであろうかと思いますが、いずれにせよきちんとしたリスク管理の下で、リスクに見合った損失吸収バッファーというものを持っておく、あるいは、保有している損失吸収バッファーに見合ったものに抱えているリスクを抑えていくというのは、リスク管理の基本であろうかと思います。

問)

極めてその公のルールとして規制をさらに、ティア1の二分の一というのではなくもう少し、もう持たせない、三分の一にする、とそういうことは今のところ考えていないと、基本的に各金融機関が民間の経営判断としてリスク管理すべきだと、そういうことでよろしいですか。

答)

現時点では、基本的にはそういう考え方です。

(以上)

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